ドリーム小説
絶対に高得点をとってやる!!
そう決意した日からは人が変わったかのように黙々とテスト勉強に打ち込んだ(ただし世界史だけ)
休み時間や昼休みはブツブツと教科書を音読。昼はお弁当を食べながらノートの見直し
部活中でも10分の休憩時間に単語帳をめくる日々
「・・・お前、何か変なもんでも食ったのか?」
「・・・」(黙々と自主勉)
あまりの変わり様にエースに心配されるも自習に没頭するの耳には届かない
そうして二日、三日、四日と過ぎていき、五日を過ぎた辺りから彼女の目の下には隈ができはじめた
三日坊主の予想を裏切る奮闘ぶりに担任のサッチ先生も心配してくれた
「おい、。お前ちゃんと寝てんのか?勉強すんのはいいことだけど、睡眠は大事だぞ」
「だいじょうぶれーす・・・」
「・・・」
机に突っ伏したまま片手を挙げて応える。声は掠れ気味で生気が感じられない。これは大丈夫じゃないな
サッチは両手を腰において「やれやれ・・・」とため息をついた
*
「てなわけで、ここ最近『ピッチピチで元気いっぱい』のいつものがクラスにいないんだけどさ」
「・・・」
「どうしてくれんのよ俺の可愛い教え子をさぁ。・・・ねぇ、マルコ先生よぉ」
「・・・よい」
社会科教員室に赴いたサッチは扉に寄りかかって姿勢で部屋の住人に彼女の近況などを教えてやった
マルコは回転椅子の上で胡座をかき、猫背になって頬杖ついて彼の愚痴っぽい話を聞いた
「はね、お前の理不尽な賭けに勝つためにいつになく頑張っちゃってるわけよ。隈まで作ってね」
「へぇ」
「寝不足でなんかもう可哀相なくらいなのよ。そこんとこ、お前はどう思ってるわけ?」
「赤点だらけのあいつが勉強する気になってんだ。いい傾向だよい」
「本当にそう思ってんのか?」
「・・・思ってるよい」
少し間をおいて答えれば、サッチに「嘘つけ」と笑われた。けれどその笑いに皮肉や意地悪さはない
二人は昔からの腐れ縁。長く一緒にいすぎて互いの癖や趣味まで知る仲だ
だからサッチはマルコの恋心もよくわかっている
「子ども相手に。しかも好きな子相手に大人げねぇなぁ、マルコ先生」
「・・・うるせぇよい」
「名前くらい、呼んでやりゃいいだろうが」
「・・・んな簡単に言うな」
それができりゃあ、こんな苦労はしねぇよい。そう言うとマルコは片手で頭をがしがしとかいた
眉間に皺が寄ったばつが悪そうな顔。そんな顔、他の生徒の前ではけっしてしない、余裕のない男の顔
そして特徴的な髪型のせいで隠せない両耳はうっすらと赤く染まっていた
「天下のマルコ先生にも弱みがあるってね」
「・・・あー・・・くそ。なんでお前にばれちまったのかねぃ」
「はっはっは。俺とお前の仲だぜ。わからねぇわけねぇだろ」
マルコは平静を装うのが巧い。他の人間にはわからないだろう。けれど旧い付き合いのサッチにはすぐにわかった
マルコがを見るとき、そこには特別な感情があることに。4月にが入学してきてからずっとだ
「ま、どんな結果になるかはわかんねぇけどさ。あいつが頑張ってるってことは伝えたぜ」
もし彼女が賭けに負けたとしても、それぐらいは褒めてやったら?
彼らしいお節介を言い残してサッチは「じゃぁな」と部屋を去っていった
マルコは両手を後頭部で組んで椅子の背もたれに体を預けた。古い椅子がぎしりと音を立てる
(名前ねぇ・・・。頭ん中ではいつも呼んでんだけどねぃ)
声に出さなければ伝わらないのはわかっている。けれど声に出してしまったら顔にも出てしまいそうで困る
「10代の思春期のガキかよい・・・」
何やってんだと自分で自分を鼻で笑う。まさかこんな年になってまた恋する気持ちが再熱してしまうなんて
自分でも信じられないのだ。しかも相手は生徒ときたもんだ。おいそれと手なんて出せない
けれど彼女を想えば想うほど体の中で熱は燻る。だからせめてもとあだ名なんかつけて熱を抑えようとしているのに
彼女が自分の教科の勉強を頑張ってくれているのは嬉しい。高得点とってくれれば嬉しい
けれど一方で、彼女が勝負に負けてくれればこのままあだ名で呼び続けられるという気持ちもあった
これは彼女の勝負であり、同時にマルコの勝負でもある。さて、軍配はどちらにあがるのやら・・・
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