ドリーム小説
更衣室で汗で貼り付く服と格闘しながら制服(半袖ポロシャツ&スカート)に着替えて
言われたとおりは鞄を持って社会科教員室へ向かった
ドアをノックすると中から「開いてるよい」とマルコの声が聞こえてきた
「失礼します。先生ー、部活ノート持ってきましたよ」
「ご苦労さん。そこのテーブルに置いといてくれ」
言われたとおりノートをテーブルに置くと、は椅子に座るマルコの背中を見つめた
マルコのTシャツが部活の時と違う。きっと着替えたのだろう。けれどまた汗をかいて背中の部分が濡れている
机の下を見れば裸足にサンダルで、ジャージの長ズボンの裾を膝ぐらいまでまくっている(田んぼスタイルだ)
おじさんのわりにふくらはぎにはしっかり筋肉がついていて逞しい足をしている
無意識にマルコの体を観察している自分に気付き、はうしろめたさと気恥ずかしさに目をそらす。けれど耳は赤い
「じゃ、帰ります。お疲れ様でした」
「おぅ。気をつけて帰れよい、パツコ」
「・・・また」
帰り際にまで言ってくれちゃって・・・。は帰ろうとした足を止めて首だけで振り返った
仕事をする彼の背中を細い眼でじとっと見据える
「あのー・・・マルコ先生」
「んー?」
呼んでも振り向かない彼にかまわず、はいつもとは違ってちょっと真面目な声で問いかけた
「なんでですか」
「あー・・・?何がだよい」
「なんで私のことだけあだ名で呼ぶんですか?」
「・・・」
マルコの相づちが途切れる。回転式の椅子がキィと音を立てて回って彼はに顔を見せた
おでこに眼鏡をかけたマルコは持っていた赤ボールペンでがしがしと頭を掻いた
「なんだ、いきなり」
「んー・・・。前から一度ちゃんと訊いてみたかったんですよ」
「・・・なんで俺がお前のことをあだ名で呼ぶのか、か」
「そう」
「なんだい。嫌なのかよい、あのあだ名」
「嫌っていうか・・・まぁ嫌ですけど。でも私にはって名前があるのになぁとお・も・い・ま・し・て」
「可愛いじゃねぇかい。パツコ・デラックス」
「・・・可愛くないです。先生センス最悪」
「ほぉ。言うねぃ」
マルコは椅子の肘掛けに肘をのせて頬杖ついて笑った。けれどすぐに「あ」と何かを閃いた顔に変わった
「じゃ、こんなのはどうだい」
「・・・?」
それからマルコはにある提案を出した。いや・・・提案というよりは、それは挑戦状に近かった
「来週の期末テスト。世界史で高得点とれたらもうあだ名で呼ばねぇ。お前のことちゃんと名前で呼ぶようにするってのは」
「な・・・なんですと!?」
どうだい、とマルコは不敵に笑う。はびっくり仰天の表情でマルコの顔を見つめた
なんて教師らしい提示。そんな賭けみたいなことでに勉強させようという魂胆か!?
しかし単純なはそれはそれでいいかもしれないと簡単に引っかかる。けれど気がかりなことがひとつだけあった
「あのー・・・」
「ん?」
「ちなみにですね・・・、高得点というのは何点ぐらいなんでしょうかね?」
アホっ子の自分でも手が届くような点数ならいいのだが・・・。やや不安げな笑顔のにマルコはにやりと笑う
あ、やばい。あれは意地悪なこと考えている笑い方だとの笑顔が引きつる
「何点だと思う?」
「えーと・・・50点?」
「あほ」
「う・・・。じゃ何点ですか」
「85点以上」
「うぎゃ・・・っ!!」
べしゃりと潰されたような悲鳴をあげる。そんな・・・希望が見えない
だって前回の彼女の世界史の点数は43点だったのに、いきなり倍近い点数をとれと言うのか
どんな魔法を使えばいいのだ。いるのなら助けて欲しい、ドラ○もん。キテ○ツ君でもいい
「夢見てねぇで勉強しろい」
「・・・勝手に頭の中を読まないでくださいよ。うぅ・・・85点・・・85点・・・」
何かの呪文のようにブツブツと唱える。背負うオーラは陰っている
楽しそうなのはマルコばかり
「どうするよい?」
「うぐぅ・・・」
迷う・・・迷う・・・迷う。は腕組みをして唸りながら上を向いたり下を向いたりを繰り返す
希望の薄い賭けだけれど、もし達成できればマルコに名前で呼んでもらえるようになる
好きな人に、好きな声で、名前を呼んでもらえる。本気で彼が好きなら、ここで頑張らなきゃ女が廃る!
は「よし・・・」と決意し、ずさっと両足のスタンスを広げて気合を入れた
「その勝負・・・う、受けてたちましょうっ!」
「ふはっ。いい度胸だよい」
マルコは唇に指を添えて肩を揺らして笑う。本当に見ていて飽きない、飽きさせない娘だ
・・・まぁ、だからきっと自分も彼女を好きになったのだろうとマルコは一瞬だけ眼差しを優しくする
その眼をすぐに意地悪なそれに変えてマルコはに一言「ま、せいぜい頑張れよい」と言った
そしてその日からいまだかつてない彼女の猛勉強が始まるのだった
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