ドリーム小説
時間は進み、夏休み前最後の難関である期末テストも無事終了
ちなみにこのテストで赤点が出た教科は夏休み中登校して補習を受けなければならない
それゆえにだけでなく他の生徒たちの気合いもいつも以上だった
そして試験翌日。数教科のテストが返された
ちなみに今回世界史に全勢力を費やしたの他教科の結果は、もちろん散々だった
1時間目:数学 12点
「マジか、・・・」(サボ)
「へへ・・・今回世界史しか勉強してなかったもんで」
「お前・・・ここ・・・かけ算間違ってるぞ」
「・・・」
2時間目:英語 20点
「記号だけでよくここまでとったもんだな」(エース)
「運はいいんだよね、昔から」
「んで他は?問2、Iの所有格・目的格・所有代名詞を書け。んなのアイ・マイ・ミー・マインに決まって・・・」
の解答『 テク ・ マク ・ マヤ ・ コン 』
「・・・」
「呪文ぽかったことだけは覚えてて・・・」
3時間目:現代文 15点
「「。テスト見せろ」」(サボ&エース)
「な、なんで!?」
「下手なギャグマンガ見るよりおもしれぇからに決まってんだろ」(エース)
「けど、アホなお前でも問4くらいできてるだろ?」(サボ)
「問4?あー・・・。『我輩は猫である』に出てくる猫の名前はってやつ?」
「そうそう。問題見たとき思わず吹き出したけどな。『我輩は猫である。名前はまだない。』って本文にあるのにさ」
「は・・・!!そうか・・・」
「「そうか?」」
の解答『 タ マ 』
「「なんで名前つけちゃったの・・・!?」」
珍解答を連発させながらテスト返しは進み、いよいよ4時間目は世界史の時間
名前の順番で返されるテストをは両手を組んで祈りながら待っていた
そしていよいよだ。マルコが彼女の方をちらりと見た
「次ー。パツコ」
「おっす!!」
気合い十分には立ち上がった。なぜか緊張して、教壇まで歩くのに手と足がそろってしまった
はっきり言って自信があった。いつも50点もいかないけれど、今回は魂を削って勉強した、つもりだった
もうパツコと呼ばれるのも今日で最後だ!鼻息荒く教壇まで歩き、ドキドキバクバクしながら返却を待った
「ほらよい」
マルコに半分に折られた答案を返された。マルコの顔は苦笑いだった。は不安になる
それは降参の苦笑い?それともまだまだ甘いなっていう苦笑い?その答えは、答案用紙の点数が物語っていた
「あ・・・・・・」
の世界史の点数。84点。いまだかつてとったことのない高得点だった
本当なら小躍りして喜びたい点数だった。けれどマルコに提示された賭けの点数は85点以上。1点足りない
ドキドキバクバクしていた期待と興奮が一気にスゥッと引いていくのが分かった
「残念。惜しかったねぃ」
「・・・」
答案を見つめたまま動かないにマルコが穏やかに声かけてくれた
いつもみたいな意地悪さは感じられない。本当に惜しかったと言ってくれているのが伝わった
けれど負けは負けだ。しかたがない。はがっくりと首をさげて沈んだため息をついた
「あと・・・1点・・・だけど」
「ギリギリ」
「アウト・・・ですよねぇ」
あぅぅ・・・と落ち込むの頭をマルコは丸めたプリントでぽんぽんと優しく叩いた
「まぁ合格点には届かなかったけどねぃ。よく頑張ったんじゃねぇかい」
「・・・はい」
「随分勉強してたみたいだしな。よく見直しして次頑張れよい」
「・・・・・・はい」
珍しく勉強のことでマルコが褒めてくれた。すごく嬉しいと思った
けれど今のには心から思いきり笑うことはできなかった
だって彼女の目標は、マルコに名前で呼んでもらうことだったんだから
*
エースもサボも「すげぇ・・・!!なんで世界史だけ!?」とめちゃくちゃ驚いてくれたけれど
結局その日の午後の授業、はもぬけの殻のようにぼぉっとして過ごしていた
帰りのHRの後もサッチに「。魂抜けてんぞ」と釘を刺されながら部活へ向かった
ハードな部活もなんとか最後の気力を振り絞って乗り切った。あとは着替えて、いつも通り部活ノートをまとめて
それを社会科教員室へ届けに行くだけだ
「先生。部活ノート持ってきましたよ」
「おぅ。いつもご苦労さん」
「ここ置いておきますね」
はいつも置いているテーブルの上にノートを置いた。マルコは机に向かっている
ペンの音からしてたぶん他のクラスのテストを丸つけているのだろう。あぁ・・・4時間目の嫌な記憶が蘇ってしまう
本当は少しでもマルコのそばにいたかったけれど、今日はもう帰ろうと挨拶しようとしたときだった
「惜しかったねぃ」
「え・・・」
マルコの方からに声をかけてきた。キィと椅子を回してマルコはの方を向く
かけていた眼鏡をおでこに上げて、マルコはに向かってふっと困ったような顔で笑った
教室でもかけてもらった言葉だけれど、二人きりで言われると胸にジンと響いた
も笑い返す。いつもみたいなにっこり笑顔じゃなくて、少し哀しそうな笑顔で
「はい、惜しかったです・・・。でもですね、でもあほの私なりにちょっと収穫もあったのでよかったです」
「へぇ。なんだい、それは」
「あのですね、今回すっごい久しぶりに死ぬ気で勉強したら、世界史ちょっと面白いなって思えたんですよ」
「そうかい・・・」
「はい。だから・・・だから、また次頑張りますよ」
は頑張って強気な表情を作って宣言する。マルコは真剣な顔で彼女を見ている
「それで、次は絶対85点以上とって、先生にパツコって二度と言わせなくしてみせますから」
「おぅ・・・」
「絶対・・・絶対ですよ・・・次は」
「・・・」
「次は・・・。・・・――っ」
「・・・」
の宣言をマルコは黙って聞いていた
頑張って、いつもの自分らしく、あほで明るい自分になろうと彼女はするけれど。でもそれもそろそろ限界だった
だってどんなに我慢しても、悔しいと思う自分がいるのだ。頑張ったのに越えられなかった結果があるのだ
我慢していたの表情が崩れる。マルコと眼を合わせられなくなり、彼の足下に視線をさげた
唇を噛みしめて眉を寄せて、閉じた彼女の両目からぽろぽろと涙が零れた
「うぇ・・・、悔しいです・・・・・・――っ」
「・・・」
それは彼女がマルコに見せる初めての感情だった
いつものふらふらで飄々とした彼女とは違う、素直な彼女の感情に思わずマルコの頬は緩んだ
ふとサッチが「褒めてやったら?」と言っていたのを思いだす
マルコは笑いながら後頭部をかくと、自力で涙をとめようと奮闘するに声をかけた
「おい。世界史のテスト持ってるかい?」
「ふへ・・・?はい、持ってますけど・・・」
「出せよい」
「・・・?」
どうして?と目尻と鼻を赤くしながら首を傾げるにマルコは片眉を下げて笑う
「花丸ぐらいならつけてやる」
「え・・・。・・・マジですか?」
「マジですよい」
ほら、と手を伸ばしてマルコは催促する。ぐすぐすと鼻を鳴らしていたはパッと行動を起こす
鞄から世界史の答案を取り出すと、それをすぐにマルコに渡した
「お、お願いしまっす・・・!」
「あいよ」
答案を渡しながら、さっきまで泣いていたの顔はワクワク顔に変わっていた
目も真っ赤で泣いた跡は消えないけれど、マルコに褒めてもらえるのは嬉しかった
けれど、そこで事態は変わることとなる
すぐにもらえると思った花丸はいつまでたってももらえず、マルコはの答案をじぃっと穴が開くように見つめていた
「あのぉ・・・マルコ先生?」
なんだろう。やっぱり花丸なんてやらねぇよい!世の中そんなに甘くねぇ!とか言うのだろうか
そんなことを考えていたは、マルコの片眉がぴくりと上がるのを見た
「お前・・・これ」
「は、はい・・・?」
「テスト返されてからすぐに見直ししたかよい」
「え・・・。あー・・・してないですね」
「はぁ・・・」
「・・・先生?」
「あほ」
「は・・・?」
「だからお前はいつまでたってもあほの子なんだよい」
「う・・・。なんですか、傷心の教え子にあほあほって」
見直しなら家でやりますよ、とは赤い頬を膨らませる
するとため息をついていたマルコが不意に口にペンのキャップを咥えてポンッと引き抜いた
それからの死角でキュキュキュッと音を立てて答案に何か書き出した。音からして花丸じゃない
「何書いてるんですか?・・・は!まさか、答案に『あほ』って書いたんじゃ」
「ほらよい」
「え?」
マルコは答案をの眼前にびっと差し出した。何が付け加えられたのだろうとは凝視する
違いは一目瞭然だった
「え・・・!?うぇえ・・・――っ!?」
84点
85点
突然の加点にの真っ赤な両目が真ん丸になる
「んななな、なんで・・・!?」
「問7」
「へ・・・っ?」
「俺の採点ミスだよい」
「・・・うそ」
呆然とするにマルコは「見直ししてねぇからだろい」とため息をつく
けれど、これで見事次第点だ。より先にマルコの顔が困ったような笑顔になる
遅れてじわじわと喜びが実感でき、はゆっくりと破顔していった
「あは・・・っ」
すごい・・・。なんて奇跡。嬉しい。嬉しすぎる
渡された答案を持つ両手が震えている。もう一度点数を確認して間違いないことを確かめては答案を胸に抱きしめた
「や、・・・やった・・・っ!!」
「頑張ったねぃ」
優しい声でマルコが褒めてくれた。は胸に答案を抱いたままぎゅっと目を閉じて喜びを噛みしめる
やった、やった!と狭い部屋を飛び跳ねながら鞄のところまで行き答案をしまった
ウキウキでいるの耳に、不意に椅子の軋む音が聞こえた。マルコが立ち上がったのだ
「約束は守ってやるよい」
「やったやった!・・・って、・・・え?」
マルコはゆっくりとした足取りでのいるところに近づいてきた
どうしてだろう。なぜかはマルコを見つめたまま反射的に後退してしまっていた
「えーと・・・先生?」
「約束だったろい」
「え・・・」
ずりずりと後ろに下がっていたが、ついに扉を背にして逃げられなくなった
二人の間の距離、約30センチ。遠いようで近い。いや・・・やっぱり近いです
身長差がかなりあるのではマルコを見上げる形になる。そのまま見つめ合って十数秒が経ったとき
マルコが唇をふっと押し上げて笑った
相変わらず片眉は少し下がっているけれど、それはが一番かっこいいと思う彼の笑顔
彼の顔が近いのもあるし、その笑顔だけでも胸がドキドキしたのに
「おめでとさん。」
「・・・っ!?」
その言葉にはやられた。マルコが初めて彼女を名前で呼んでくれた瞬間だった
それはもう一瞬で心拍数が上がり、の顔はぼわっと赤くなった
嬉しいという気持ちをあっさりと凌駕するその気持ち。それはもうずっと彼女の心の中にあった想い
ちょっとずつちょっとずつ育てていた小さな種がいきなりポンと芽を出してしまった
だめだ、だめだだめだ・・・わたしやっぱり・・・
(先生が・・・好きだ・・・)
たった一度名前を呼んでもらえただけなのに。あっさりと彼の声に堕ちる
それはきっと、愛の言霊
余談
約束通り、それ以降はパツコとは呼ばれなくなりました
けれどマルコ先生に「」と呼ばれることに耐性ができるまではしばらくかかり
慣れるまでは「」と呼ばれるたびに顔を赤くしていて、その姿を見たサッチに噴き出され
そんなサッチのリーゼントをマルコが丸めた教科書ですっぱたく、という光景が校舎のいろんなところで見られたとか
教師と生徒の恋模様
11:名前で呼べず、あだ名で君を
※これをきっかけでは世界史が得意になります(家庭科はもとから得意でした)
ちなみに他の教科は全部赤点なので夏休み返上で補習です
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