※白ひげ海賊団のナースさんたちの名前を捏造しています。
もし公式で発表されたら即修正します。
日が昇る。
丸窓から差し込む優しい光が彼女の目を覚まさせる。
重たそうに半分ほど開いたの瞼は、けれどそれ以上開くことはなくそこで留められた。
まだ夢の中にいたいという至極自然な欲求が完全に目を覚ますことを拒んでいた。
(頭痛い……ぼうっとする)
視界も思考もなかなかクリアになってくれない。
原因は明確、昨夜酒を飲み過ぎたせいだ。
頬にあたるシーツの冷たさがなんとも気持ちよい。
このまま二度寝してしまいたくなる。
本能のままに、半分しか開いていない彼女の瞼はゆっくりと閉じていく。
(……。あれ?)
けれど半分ほどの視界にぼんやりと映った光景に違和感を感じ、は今しがた閉じたばかりの瞼をパチリと開けた。
今度は全開に近いまでに開き、パチパチと数回瞬きをして視界をクリアにする。
彼女の目と鼻の先、すぐそこにあったのは覚えのある男の胸だった。
「え……?」
状況がよくわからず、思わず間抜けな素の声が彼女の口から零れ落ちる。
目の前には鍛え上げられた男の胸筋。
そしてそこに大きく刻まれているのは白ひげ海賊団のシンボルマーク。
まさかとは首を上に向け、この体の持ち主の顔を仰ぐ。
彼女の予想通り、そこにはすやすやと眠る一番隊隊長の姿があった。
「マっ」
(……ルコ、さんっ)
思わず声をあげてしまいそうになるのを寸でのところで心の声に切り替えて彼の名を呼ぶ。
は驚きの表情のまま固まってしまう。
これはあれか、寝起きドッキリというやつか。
なんで、どうして、一体何があったというのか。
(うわ……私、記憶ない)
思い出そうとするも二日酔いの頭はズキズキと痛みうまく記憶を引き出してくれない。
かろうじて思い出せるのは白ひげに誘われ船長室で酒を飲みながら母の話をしたところまでだ。
そのあとのことはまったく思い出せない。
どうやらここは彼の部屋のようだが、なぜ自分もマルコと一緒に寝ているのか。
しかもがっちりと片腕を腰に巻きつけられて、ほとんど抱き合うような形で。
「なんで……」
「ん……、ぁ?」
「あ」
「くぁ……。よぅ、起きたかい」
の声に誘われたかのようにタイミング良く彼も目を覚ました。
再び大きなあくびをひとつしてマルコは「おはようさん」と腕の中の彼女に挨拶をする。
状況がよく理解できないままもとりあえず「おはようございます」と挨拶を返し、それから彼に疑問を投げかけた。
「あの、ここってマルコさんの部屋……ですよね?」
「おぅ」
「私、ゆうべ……あれ……確か船長……父様の部屋で話をしていて」
「らしいな」
「で、なんで今マルコさんの部屋に?」
わけがわからない。
どうして彼と同じベッドで寝ているのか。
しかもマルコは上半身裸だ。
(え、裸?)
改めてそのことに気付くやの脳裏を「まさかっ」の3文字が高速で流れていった。
彼女はすぐさまブランケットの中の自分の体を確認する。
だがの心配は杞憂に終わる。
ネクタイとシャツの第1ボタンは外されていたが、それ以外は昨夜と同じ格好のままだった。
服の乱れも特にない。
記憶がないまま男女の行為に及んだ、なんていうことはなさそうだ。
「何もしてねぇよい」
彼女の行動の意味を容易に汲み取ったマルコは苦笑して身の潔白を唱える。
は彼から視線を外して「そうですか……」と少し赤い頬を掻いた。
変に彼を疑ってしまった自分が恥ずかしい。
後ろめたさからしおらしい態度になる彼女はなんとも可愛らしく、思わずマルコの悪戯心がむくりと顔を出す。
「なんかあった方がよかったかい」
「いえ……、さすがに記憶が全然ないのはちょっと」
「だな。どうせヤルなら正気のお前ぇを喘がせてぇしな」
「それもそれでちょっと……。マルコさんって実は結構助平親父ですよね」
「スケベは否定しねぇ。けど親父は撤回しろよい」
「わっ。ちょっ……もう……、やめてくださいよ」
くしゃくしゃとやや乱雑に頭を撫で回され、やめさせようとは彼の手を掴もうと試みる。
けれど挙げた手は逆に彼に掴まれてしまい、更には手首をシーツに縫い付けて体を仰向けにさせられてしまった。
寝起きとは思えない軽やかな動きに、二日酔いに侵された彼女の体は容易に組み敷かれてしまう。
真上からじっと見下ろされ視線をロックされてしまい、からは目をそらせなくなってしまった。
勝者の余裕か、マルコの口元に笑みが浮かぶ。
見つめる先の彼の顔がゆっくりと下りてきて、弧を描く唇はの額に優しい口付けを落として離れていった。
「マルコさん……?」
「いいもんだねぃ」
「……? 何がですか」
「朝起きて、好きな女が腕の中にいるってことがな」
嬉しさを隠そうともせずマルコはを見下ろして幸せそうに笑う。
相変わらず彼は聞いているこちらが恥ずかしくなるようなストレートな物言いをする。
(もう……返事に困ることを)
彼の言葉は嬉しかったけれどなんとも照れくさくては耳を赤くしてぷいっとそっぽを向いてしまう。
もちろん彼女のそんな素っ気ない態度ですらマルコにとっては一興でしかないのだが。
「あぁ、そうだ。お前、部屋決まってないんならここ相部屋にして一緒に生活するかい」
「はいっ?」
「そうすりゃ夜這いに行く手間も省けるよい」
「よば……。やっぱり夜伽専用に勧誘したんですね、私のこと」
まったくもう……とは呆れたため息をついてマルコの手を払い体を横向きにしてしまう。
今しがたまでの甘ったるい雰囲気が消えていきそうになり、マルコは「冗談だよい」と笑って訂正しの背中をぎゅっと抱きしめてご機嫌を取るのだった。
*
「お酒くさい……」
服からも髪からも、全身からお酒の匂いがする。
一晩中酒を浴びていたのだ、それもしかたのないこと。
加えて、酔いと疲れから睡魔に襲われ風呂にも入らず寝てしまったので不快感がすごい。
はマルコに頼み、浴室を借りてシャワーを軽く浴びさせてもらうことにした。
とりあえず体の清潔さだけはなんとか取り戻した。
濡れた体と髪をタオルで拭き、再び衣服に袖を通す。
けれどそこでははたと気付く。
「これ……シャワー浴びた意味ないかも」
再び身に着けた服はつい先程脱いだばかりの自分のシャツだ。
そこにはこれでもかというほど酒と煙草の臭気が染み付いてしまっている。
着の身着のままで本部を飛び出してきてしまったので今のに着られる服はこの一着のみ。
さて、どうしたものか。
モビーディックでの生活2日目にして、彼女は早々にいろいろと困ったことに直面していた。
「次の島まであと3日だ。そこでいろいろ調達すりゃいい」
「そうします。でもそれまではどうしたらいいですかね?」
「それまでは……」
「……」
「……ナース」
「ナース?」
「にでも頼んでみるかい?」
「はぁ。ナースさん、ですか」
この船には以外にも女性のクルーがいる。
白ひげ自慢の看護師部隊だ。
女のことは女に任せるのが一番いいだろう。
彼女たちに相談すべく、マルコはを連れて医務室へと向かった。
sequel 3 : ようこそ、モビーのオアシスへ
「おーい。ヴィヴィアンはいるかよい?」
「はーい。その声はマルコ隊長ね。何か御用かしら」
綺麗な声が中から聞こえてきて、ついでがちゃりと扉が開いた。
現れたのは美声から容易に想像できるブロンドの美人ナース。
マルコは彼女のことをナース長だとに紹介する。
ヴィヴィアンはマルコの後ろに佇む娘に気付くと彼女に向けてにっこりと笑みを送った。
「あら、新入りちゃんもご一緒で。どうかしたのかしら」
「悪ぃんだけどよ、こいつに何か着る物貸してやってくれねぇかい」
「着る物って、服? えぇ、構わないけれど」
マルコはの衣装事情をかいつまんでヴィヴィアンに伝える。
するとナース長の顔には先程以上の笑みが浮かび、「そういうことなら喜んで」と嬉々としての腕をとった。
「任せてちょうだい。可愛いの見立ててあげるから」
「頼んだよい」
「さ、いらっしゃい」
「え、と……あのっ」
自分を抜きに勝手に話を進められ戸惑うだがヴィヴィアンに敵意は感じられないので掴まれた手を振りほどくこともしない。
とりあえずマルコとは一旦ここでお別れとなった。
医務室の扉はパタンと閉じられ、は彼女に手を引かれ部屋の奥へと進む。
「ここが医務室よ。その奥の部屋が私たちナース専用の生活スペース」
「すごい……、広いですね」
「ナースだけでも結構な人数がいるからね。ここは女ばかりだから、何か困ったことがあればいつでもいらっしゃい。あ……えぇっと」
「あ、です。よろしくお願いします」
「、ね。えぇ、よろしく。私はヴィヴィアン。他のナースもあとで紹介するわね」
辿り着いた先、ヴィヴィアンがカーテンをシャッと横に引くとそこには彼女に負けず劣らず美しいナースたちが大勢集まっていた。
そこはむさ苦しい男所帯の中で唯一華やかな香りが漂う夢のような場所。
突然目の前に広がった花園には目を丸くしてしまう。
驚いたのは彼女だけではない。
予告のない新入りの妹の訪問にナースたちもまた着替えや化粧の手を止めてに好奇の視線を向けた。
「あー、新入りの子!」
「あたし名前知ってる。ちゃんって言うんでしょう?」
「やだ、可愛いじゃなーい。ていうか若ーい、肌つやつや!」
昨夜の宴席にナースたちは出席していなかった。
けれどどうやら噂に聞いていたのことに彼女たちは興味津々だったようだ。
部屋の中から敵意は感じられない。
どうやら歓迎されているようだと察知し、はホッと胸を撫で下ろす。
(よかった……)
と思えたのは、けれどそのときだけだった。
安心できたのは入室直後のその一瞬のこと。
そして数分後にはは知ることとなる。
可愛い妹を手に入れた美人の姉たちによるむちゃくちゃな可愛がりぶりを。
その餌食となった彼女は、今後怪我か病気にでもならない限り絶対にここには近付かないようにしようと固く決意することになるのだが。
それに関しては次の話で語ることとする。
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※自分がスケベであることを自覚しているマルコは最高だと思っています(個人の見解です)。
白ひげのナースさんは美人揃いで羨ましい限りです。
物語上お名前ないと不便なので勝手につけさせていただいてます。趣味全開ですみません。
ヴィヴィアン ─ ナース長。金髪カール。頼れるお姉さん
ヴィオラ ─ 黒髪ストレート。冷静沈着
ヴァレンティーヌ ─ 栗髪カール。エロ可愛い
ヴィオレッタ ─ 銀髪ストレート。のんびり天然
2018/07/07 加筆修正
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