ドリーム小説
マルコが女を抱くとき、そのほとんどは儚い一夜物語で終わる
引きずらない、未練は残さない、その理由は簡単明白、あとが面倒だから。けれどそんな彼の思惑とは裏腹に、たった一度の情交でマルコに惚れてしまう女も少なくはない。別れの時、「また会えますか・・・?」なんて涙を浮かべて懇願する女もいる。けれどそのたびにマルコは「縁があればな」と軽くあしらって背を向けてきた
「ぁふ・・・。・・・ねむ」
「・・・」
鏡の前に立ってうつらうつらしながらネクタイを結ぶ彼女の後ろ姿を、マルコはベッドに腰掛けて眺めた。この女もそうなのだろうか、と考えながら。去り際に寂しそうな顔で「・・・これで終わりですか?」なんて、次を期待する言葉を吐くのだろうか。そうだとしたら、彼女もまた今までの女と変わりない平凡な女なのだと思わざるをえない。そんなことをぼんやりと考えながら彼女の着替えが終わるのを待っていた
act 7 : そして彼女はくるりと振り返り
「大丈夫ですよ。情が移ったりしませんから」
きっちり服を整えた彼女は、ベッドに腰掛けるマルコに眠そうな笑顔を向けて言った。別にマルコが何か質問したわけじゃない。マルコはただ黙って待っていただけだ。けれど心の中では確かにその話題について考えてはいたわけで、彼女の方から突然話題を振られ、マルコはちょっとびっくり。沈黙するマルコに彼女は目を細めて笑う
「あれ?違いましたか。そんな顔されていたので」
「いや・・・まぁ、・・・違わねぇけど、な」
その通りだ、と心を読まれたことをマルコが認めれば、彼女は得意げに笑う
「面倒な女はお好きじゃないのでしょう?」
「・・・なんでそう思うんだよい」
「そういう雰囲気をお持ちです」
「ふぅん・・・、男遊び慣れしてんな」
皮肉・・・のつもりはないが口に出してから「嫌味っぽいよい・・・」と反省するマルコ。けれど彼女は気にした様子もなく
「褒め言葉・・・ですかね。それとも、侮蔑でしょうか」
「好きにとったらいいよい」
あんたの自由だ、と判断は彼女に丸投げする。果たして彼女はどちらの意味で受け取ったのか。きっといい方にとったのだろう、彼女の顔に力の抜けたいい感じの笑顔が浮かぶ。男遊びに慣れていると言われてそれを賛辞と取るか・・・、嬉しそうな顔しやがって。マルコは平静を装いながらも内心ではちょっと落胆
掴めない女だ。あんなにも熱く激しく抱かれても、彼女の心には何も残らないのか。彼女の中に熱いしぶきを放っても、男の想いの欠片も残らないのだろうか。掴めない、それはまるで水のように。そう思ってから、「いや違う、彼女にはもっと似合う言葉があるな」とマルコ思い直す。彼女は・・・は、―――海のような女だ
「なぁ。んなワンナイトラブばっかで、寂しくねぇのかよい」
「え?」
「恋人は作らねぇのかい」
「あぁ・・・。いたこともありますが。けど私は恋人と離れて恋愛できる器用な人間じゃないようなので、もうやめました」
それが彼女なりの恋の経験値から導き出した答え。恋は、恐ろしい。そう言う彼女の笑顔はなんだかちょっと寂しそうだった
「二度三度関係を持って、情なんか移って万が一恋に堕ちたりしたら大変だから」
「どう大変だって?」
「だって、海は広いんですよ。この広い海の上で、途方もない遠距離恋愛に身を焦がすことになるなんて」
次はいつ会えるのかと相手を恋い慕い、切ない想いに胸が押しつぶされそうになる。そんなのはごめんだ・・・そう言っているようにマルコには聞こえた。恋をしたら互いを求めて恋い焦がれて身を滅ぼすことになる。ならば相手に情を抱く前に終わる、一夜限りの愛に燃えたい。彼女が欲する愛はひどく短命
「一晩だけ愛していただければ、私はそれで十分です」
「そうかい・・・。んじゃ、もしもまたどこかで出くわしたとき、俺が別の女の肩を抱いていても文句ねぇと」
「はい。『何よ、私のこと抱いておいて!』なんて言いませんよ。束縛なんてつまらないことしませんから」
安心してください、と彼女は猫みたいに目を細めて笑う。それは無邪気な笑顔なのだが、向けられた方が寂しくなるような笑い方。なんだかその笑顔のまま霞となって消えてしまいそうでマルコは不安になる。夕べあんなに強く抱いてたくさん痕を残したのに、彼女が一瞬でふっと消えてしまいそうな気がして・・・。気がつくと感情よりも先に体が動いていた。マルコは無言で彼女の手首を掴んで引き寄せ、彼女の体をベッドに押し倒す
「・・・!」
「悪ぃな。せっかく綺麗に着替えたのに」
マルコに上から見下ろされ、彼女は驚いたように目を丸くしてパチパチと目を瞬きさせる。そんな彼女にゆっくりと顔を近づけていけば、何をされるのか察した彼女はマルコの突然の行動にも関わらず黙って目を閉じてくれた
ゆっくりと重なる唇。弾力のある柔らかい彼女の唇は押しつけるようなマルコの唇を優しく受け止めてくれる。そうして優しいキスをした。夕べ交わしたような激しく相手を求めるものとは違う。互いの唇をゆっくりと重ね合わせる丁寧なキス。優しいリップ音を立てて唇を放して二人とも静かに目を開ける。息もかかるような距離で、マルコは彼女を見下ろしフッと笑った
「・・・?」
「いい女だな・・・、あんた」
マルコの最高の褒め言葉に彼女は一度目を丸くし、それから照れたように笑って「ありがとう」と答えた。彼女は両腕を伸ばしマルコの首にそっと巻き付ける。そうして二人はもう一度静かに唇を重ねた
キスなんて今までいろんな女としてきたさ。けど、こんなにも胸の奥に染みこむキスは初めてだ。マルコの中で燻っていた「名前のない」ひとつの感情がはっきりとした形となって現れる
"なぁ、人が恋に堕ちるのにどのくらいの時間がかかると思う。たった一晩の関係で・・・なんて言ったら、あんたは笑うか?"
※自分の気持ちにはっきりと気付いたマルコでした
マルコ、キス巧そうという管理人の勝手な妄想。激しいのも優しいのもお手の物だといいな
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