ドリーム小説
あぁ、眩しい
目を閉じているのに瞼の裏は真っ白で
モールス信号みたいに星々がチカチカと点滅している
カーテンの隙間からさし込む眩しい光にマルコは眉をしかめてゆっくりと瞼を押し上げた。何度か瞬きをして焦点を合わせる。額に手を置き、そのまま後ろに髪を撫でつけて頭をガシガシと掻きむしる。なんとか目は覚ませたが、体を起こす気にはなれなかった
(・・・やりすぎたよい)
体がだるくてしかたがない。思わずため息をついてしまう。こんなに倦怠感を感じるまで女を抱き続けたのはいつぶりだろう。本気にさせやがって・・・と、隣で眠る彼女に理不尽な文句を(頭の中で)言いながらも、本気でそう思っていない自分にむずがゆさを感じる
しかし、だるい・・・。男の自分がそう感じるのだから、女の彼女の体の負荷は相当だろう。マルコは片手で体を支えながら上半身を起こした。一枚のシーツに二人でくるまって寝ていたため、隣で眠る彼女の体からシーツがずれて眩しいくらい白い体が露わになる。マルコに背を向けて横向きで眠る彼女の体は、夕べは真っ暗でわからなかったが光の下で見ると雪ように白く美しい。けれどその白い肌には今や無数の赤い花が咲いていた。首筋に、鎖骨に、肩に、二の腕に。胸の上に、脇腹に、太腿に、体中余すことなく
「・・・やべぇな」
夕べの自分よ・・・どんだけ夢中だったんだよい・・・。自分の年を考えて(枯れてはいないけれどさすがに若者だとも思ってない)ちょっと自己嫌悪
しかし彼女はよく眠っている。それもそうだ。一晩で何度も果て、気を失うほど抱かれればそれも仕方のないこと。肌と同じく白い髪は乱れているがさらさらと肌触りがよく心地良い。思わず彼女の額に落ちた前髪をかきあげてやった。起きる気配はない。すやすやと眠るあどけない横顔
(寝顔はなんか幼いよい・・・)
抱いているときの淫らな女の顔とは違う。昨日の夜の酒場で出逢ってから半日も経っていないのに、彼女はいろんな顔を見せてくれる。他にどんな顔を持っているのだろう。彼女への興味は尽きることはなく、後から後から湧くばかり
「あんたのこと、全部知りてぇなぁ・・・」
つい考えていたことが小さな呟きになって口からこぼれ落ちてしまった。マルコは眼を細めて彼女の横顔をのぞき込み、柔らかな頬を親指の腹ですっと撫でた
act 6 : コール3回、のち落雷
『プルルルルル』
「・・・!?」
突然聞こえてきた音(というよりは生き物の変わった鳴き声)に、彼女の頬を撫でていたマルコは思わず肩を跳ね上げさせた。それは船で聞き慣れている、子電伝虫の受信音
(どこにいる?)
マルコは辺りを見渡し、子電伝虫の音がする方に耳を傾ける。静かにしているとベッドの下に落ちた彼女のズボンのポケットから子電伝虫がもぞもぞと這い出てきた
しばらくして2回目のコールが鳴った。彼女が起きる気配はない。気にはなったが、さすがに勝手には出られないとマルコは切れるまで放っておこうと決めた。だが子電伝虫の3回目のコールの後、自動的に留守電モードに切り替わった。『ピー』という機械音の後に発信者の声でメッセージが入る。そのメッセージに、マルコは自分の耳を疑うことになる
『おはようございます、大佐。今どちらですか?』
若い男の声だった。昨夜彼女を自分の腕の中に抱いたマルコとしては、自分の知らない男からの電話に軽く眉をひそめてしまいたくなるが。それよりもマルコの頬をぴくりと動かしたのは、そのメッセージの中に紛れ込まれた聞き覚えのある階級名だった
(今・・・、なんて言ったよい・・・?)
『まさかのまさかですが、酒の多量摂取などなされていませんよね。あぁ、それからまさか今いらっしゃるそちらは普通の宿で、なおかつお一人で泊まられているのですよね?』
いえいえ一人じゃないですよ、とはつっこませてくれない雰囲気の声だった。若いくせに説教じみた声なのは、きっとこれが彼女に対して初めての注意じゃないからだ。まぁ、酒場での誘いに安易に頷いた辺りで薄々気づいていたが、この女結構ゆるゆるな性格らしい。今までも他の男と同じようなことが、それも一度や二度ではなく何度かあったのだろう。マルコの表情がやや不機嫌になる。いや、だが今はそれよりも気にしなければいけないことがある。マルコは子電伝虫の言葉を一言一句聞き漏らさないように耳をそばだてた
『まぁそれは後でお聞きするとしまして。大佐に急ぎお知らせしたいことがあります。昨日大佐がお出かけになられた後すぐにクザン大将から連絡が入りまして、昨夜のうちに本部から復旧の応援を寄越してくださいました。というわけで、船の修理は昼には終わりそうですので――』
伝達事項だけ話して通信は切れた。子電伝虫がゆっくりと目を閉じて再び睡眠に入るのをマルコは呆然と見下ろす
突然降ってきたビッグすぎる情報に、マルコの頭がやや混乱する。こめかみを押さえ、状況を把握せんと起き抜けの脳をフル回転させる
そのとき、タイミングがいいのか悪いのか、今の今までぐっすりと眠っていた彼女がもぞもぞと動き出した
「んー・・・」
「・・・」
「・・・うー・・・、なんか・・・体いたいぃ・・・」
「・・・」
奇怪なうめき声をあげながらコロンと仰向けに体勢を変えて額に手の甲を押し当て、まぶしそうに閉じた目と眉をしかめる。猫みたいな仕草が可愛らしくてちょっと色っぽくて良かったけれど、今はそれを目で楽しんでいる場合じゃない。マルコは呆然と彼女を見下ろしていた
一晩でいろんな顔を見せてくれた彼女だけれど。興味は尽きることなくすべてを知りたいと思える彼女だけれど。今マルコが一番知りたいことは・・・ただひとつ
「・・ん、ぅー・・」
「海軍本部の・・・、大佐?」
「んー・・・?はぁいぃ・・・」
彼女は額にかざしていた手を緩く揚げて、マルコの呼びかけに気だるげに答えた。それからのろのろと起き上がり、
「ごくろぉさま、です・・・、・・・かいぐんほんぶたいさ・・・、到着しましたぁ・・・」
完全に寝惚けている声で、目もほとんど閉じた状態だが、彼女はマルコに向かって海兵の敬礼をしてみせた。マルコの頬がひくりと引きつる。演技だとはとても思えない。右手の角度もばっちり。身体に染みこんだ挨拶と敬礼に、彼女の言葉が真実だと思わせられる
「・・・マジかよい」
再びぱたりと寝に入ってしまった彼女―――を見下ろし、まさかまさかの展開にがしがしと頭を掻く。コール3回、のちマルコの上に落ちてきた突然の落雷
床で『ZZZ・・・』とスヤスヤと眠るかたつむりが運んできたのは青天の霹靂だった
※不死鳥隊長、海軍本部の大佐を手籠めにしてしまいましたの巻
の寝起きはこんな感じで。ゆるゆるの子なので。すべてゆるゆるです。でもアッチはよく締まります(黙らっしゃい!)
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