ドリーム小説
ここは世界の海を守る絶対的正義の中心。そう易々と宝を奪われるわけにはいかない。センゴクはギリリと奥歯を噛みしめ、ダンッと机に拳を叩きつけた
「くそ、やってくれるわ・・・っ!!」
まさかこんな形でを攫われることになろうとは。だが彼女を海賊に奪われたまま大人しくしている海軍ではない。センゴクは勢いよく後ろを振り向き「サカズキ!!」と彼の名を呼んだ。こういう事態を想定して執務室に彼を待機させておいたのだ。だがセンゴクが呼ぶまでもなく冷徹な男はすでに黒い革手袋を嵌めて戦闘の準備を済ませていた
「そんな大声で呼ばんでももう準備はできちょりまさぁ」
割れたガラスをガシャガシャと踏みしめて助走をつけるやサカズキは窓枠を蹴って上昇し海軍本部の頂上、天守閣の瓦屋根の上にガシャンと着地した。マリンフォードで一番高い位置から空を飛ぶ蒼い鳥の姿を捉える。を乗せたマルコは地上の海兵からの攻撃を体に受け止めていた
「逃がしゃせんよ」
威厳ある濃い眉をつり上げ、男は地獄の炎を拳に宿す
*
「海賊を逃がすな!撃ち落とせぇっ!!」
「はっ。無駄だよい」
地震の揺れから体勢を立て直した海兵たちが不死鳥の姿のマルコを狙って銃を撃ち続けていた。だが弾丸はマルコの体には当たるものの傷はすぐに再生していく。マルコには平凡な攻撃は効かない。さっさとマリンフォードを抜け出したいのだが、背中にを乗せているため彼女に弾が当たらないようにして飛ぶとどうしても軌道が限られる。海軍もそれを計算してマルコの軌道を狭めるように撃ってくるから敵もどうしてなかなかだ
「ちぃ・・・、どっかに抜け道はねぇのかよい」
「マルコさん、本部の裏手にまわってください」
「あ?」
「本部裏側は激しい海流のせいで侵入されることが少ないので表側よりも警備が薄いんです」
「ナイスだ、。行くよい、しっかり捕まってろ」
「はい!」
はマルコの両翼の付け根をしっかりと掴み、加速するスピードに振り落とされないように身をかがめた。小型戦闘機のように真っ直ぐに飛びマルコは本部の天守閣を目指す。だが本部の屋根で仁王立ちして待ち伏せする強敵の姿を視界にとらえマルコはギクリと体をこわばらせた
「やべぇ・・・っ!!赤犬が待ち伏せてるよいっ」
「・・・っ!」
それはまずい。の顔にも焦りの色が浮かぶ。急ブレーキはかけられない。マルコは慌てて軌道をそらした。その瞬間を狙ってサカズキの攻撃が二人を襲う
「流星火山・・・―――っ!!」
「・・・!!」
「よけてください!」
の叫びに瞬時に反応したマルコはヒュッと風を斬って無数の溶岩の拳を避けた。覇気を纏った攻撃は不死鳥といえど軽傷では済まされない
「あちぃ・・・!尻尾が焼けたよいっ」
「・・・赤犬さん、本気だ」
遠目にもわかる。サカズキの鋭い眼光は本気で海賊のマルコを撃ち落とそうとしている。それから海賊に加担するをも同様に
「わしがいて逃げられると思うなっ!!」
「・・・!」
サカズキが吠える。ビリビリと大気が震えていた。彼が放つ凄まじい殺気と初めて向き合い、はゾッとした。けれど怖がっていてもしかたがない。サカズキの向こう側に行けなければとマルコに活路はない
「さぁて、どうするかねぃ。前方にはマグマの大将、後方には鉄砲玉の嵐。、お前はどうしたい」
「・・・そうですね」
「おぅ」
「・・・前へ・・・行きましょう」
「へぇ・・・」
それでいいのかい。の性格には程遠い好戦的な答えにマルコは口角を上げる。はマルコの背の上でバランスをとってクラウチングの姿勢で座った。バサバサと風にはためく真っ白いコート。重く肩にのしかかる白い正義。はパチンパチンと音を鳴らして両肩の留め金を外すと、もうずっと背負っていた白い正義を空中に放り投げた
「・・・お前、」
「逃げていたら何も変わりませんものね」
立ち向かわなければ。しっかりと前を向いて、逃げ続けていたものと向き合わなければ。それができなければ私はきっと前には進めない。自由を掴むことなんてできない
「マルコさん、真っ直ぐ飛んでください」
「真っ直ぐって・・・このまま行ったらあいつの攻撃もろに喰らっちまうよい」
「大丈夫です。私が何とかしますから」
「なんとかったって、」
「大丈夫。・・・私を信じてください」
「・・・」
あなたはいつも私を信じてくれていた。自身のない私の言葉を信じてくれていた。だから私はそれに応えたい
マルコは自分の背中から彼女の想いを感じ取り、ふっと眼を細めて笑った。あぁ彼女の中で何かが変わり始めている。マルコは彼女を信じ、「真っ直ぐ行くよい!」と叫ぶと飛行速度を更に上げた。加速して飛び込んでくる蒼い鳥をサカズキは唇をめくり上げて凶暴な表情で迎え撃つ
「真正面から来るたぁ、臆病もんの貴様によぅそんな度胸があったもんじゃわい」
ボコボコボコとマグマが煮えたぎる不吉な音が彼の拳から生み出される。『大噴火』だ。拳を引いて構えるサカズキの唇がにやりと不敵に笑う。あなたが発する私を見下し侮蔑するその覇気にいつも逃げていた。けれど今は違う。はキッと眼差しを鋭くし、不安定なマルコの背の上でバランスをとって両足で立ち上がった
「道力値8500をなめないでいただきたいですね」
右腕のシャツを捲り上げ、はサカズキと同じように右拳を後ろに引いて構えた。正拳撃ちの構え。いつかガープの正拳と相打ちになったときの感覚を思い出し、武装色の覇気を最大まで上げて力をためる。を乗せたマルコがサカズキにとってベストの間合いに入った瞬間、赤犬が牙を剥き出しにして吠えた
「大噴火・・・―――っっ!!!」
マルコとをゆうに飲み込めるほどの巨大なマグマの拳が二人を襲う。まるで太陽が迫ってくるような高熱にマルコは「・・・っ!!」と彼女の名を呼んだ。果たして勝機はあるのか。だが次の瞬間、目前まで迫ったマグマの熱塊の中心に向かっては右拳を突き出した
「七式『雷轟』・・・――っ!」
の拳とサカズキの巨大な熱塊がぶつかり合った瞬間、マリンフォード内に強大な雷が落ちたような轟音が鳴り響いた。マルコは真正面に起こった現象に目を剥く。が放った正拳がマグマの正拳の中心に穴を開けていた。貫通され生まれたマグマのトンネルをマルコはスピードを落とさず飛び抜けた。マグマを完全に抜けると、そこは海軍本部の裏手側。二人はサカズキに背を向けていた
「やった・・・!」
「おいおいおい・・・やるじゃねぇかよい!!」
ホッとしてはマルコの背にぺたりと座り込む。が予想したとおり本部の裏側の警備は手薄になっていた。飛んでくる弾丸の数も大したことはない。マルコは「上昇するよい!しっかりつかまってろい」と指示を出し、嘴を空に向けると急上昇した。遠くでサカズキの吠える声が微かに聞こえる
「ちぃ・・・っ、小娘が小癪な真似をっ!!海兵どもは何をしちょるかっ!?」
『無駄だ。裏手の警備は軍曹以下が取り仕切っている。そうでなくとも地震で態勢が総崩れしていてはろくな攻撃などできん』
サカズキの左手首につけられた小型電伝虫からセンゴクの声が流れてきた。センゴクはずっと執務室の窓からすべてを見ていた。がサカズキの攻撃を受け止めた瞬間、センゴクも目を剥き度肝を抜かれた。誰も気付かなかったというのか、六式を越える体術を身に付けた者の存在に。センゴクは拳を握りしめる。奪われた宝の価値は大きすぎるほど大きい。だがもはやすべてが遅い
『サカズキ。・・・我々の、』
負けだ。センゴクの声は潔く、それはサカズキの苛立ちを煮えたぎらせた。ぶつけようにも敵はもう遥か空の彼方。赤犬の叫び声が無惨な姿となった海軍本部の空に響き散っていく
「・・・・・・くそったれが・・・―――っ!!!」
『まったく・・・。やってくれる、白ひげ海賊団め』
マリンフォードが受けた被害は甚大だ。だがその中で最も大きな損失は、海軍が20年籠の中で護り育ててきた海の女神を奪われたことだろう。女神を背に乗せた蒼い鳥がもう半分以上沈んだ夕陽に向かって悠々と飛んでいくのをセンゴクは眼を細めて見送った
act 41 : 白い正義が空を舞う
とうに地震もおさまり、クザンの力でマリンフォードに到達する前に津波も凍らされ、高台に避難していた市民たちが少しずつ市街に戻ってきていた。夕陽に橙色に染まった空を見上げていれば、バサバサと音を立てて落ちてくる白いコートが目に入った。レイダーは腕を伸ばして落ちてくるコートを受け止める。あぁ見覚えのあるコートだ。それはもう何度も自分が彼女の肩にかけてきた正義のコート
「行っちまったね」
後ろから声をかけられ、レイダーはコートを受け止めた両手をそのままに振り返った。そこには穏やかな表情のつるがいた。レイダーは帽子の下でふっと笑って「そうですね」と答える
「面倒な娘がいなくなったよ。少し・・・静かになるかね」
「そうですね。自分は小言を言う機会がなくなり退屈になりそうです」
「はは。じゃぁ、その分を部下の説教にあてたらいいさ」
「はい。そのつもりです」
ビシバシしごきますよ、とレイダーは快活に笑う。「頼もしいねぇ」とつるは肩を揺らし、たちが飛んでいった方の空を見上げた
「ようやくだ。甘ったれ娘が自分の道を選んで巣立っていったよ」
「寂しくなりますか」
「ふふ。そんなこと言ってる暇はないよ。四皇白ひげ海賊団に、海軍大将クラスの戦力が加わっちまったんだ。いつか海で相対したとき、・・・大変だよ」
海の女神の血を引く娘と、女神の加護を受けた海賊一団と戦うのだからね。それ相応の対策を考えないと倒せはしない
「私らも立ち止まっている暇はない。忙しくなるよ」
「はい。お供いたします」
「ありがたいね。・・・・・・けどね。まぁ、まずはこの荒れ狂った街を綺麗にするとしようかね」
「あ・・・。はい!お手伝いいたします」
「ふふ。頼むよ、レイダー」
敬礼するレイダーにつるは肩を揺らし、再び橙色の空を見上げた。二人の姿なんてもうとうに見えない。つるはゆっくりと目を閉じ穏やかな笑みを口元に浮かべ、赤く染まる海に背を向けた
※脱出成功!いろいろ不自然なところがあるかもしれませんがご容赦くださいっ
←
□
→
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送