ドリーム小説
海軍本部内及びマリンフォード全域に響き渡る突然の警報。軍人も市民も人々はみな足を止め、何が起こったのだと周囲に気を張り巡らせていた。状況報告は本部最上階の執務室、センゴクのもとへと迅速に伝えられた。デスク上の電伝虫が突如として必死な形相で叫びを上げる
『センゴク元帥!!至急応答願います!』
「聞こえている!なんだ、この警報は。敵襲か!?」
『いえ違います、気象台から緊急臨時速報です。ここより約200qほど離れた海で巨大な海震が探知されました!』
「海震だと・・・っ!?」
『それが謎の海震で、震源地と思われる地帯にはプレートは一切存在しません!何もない海から突如地震が発生したと思われます!』
報告してきた海兵は『ありえない現象だと研究所も大至急解析しています!』と口早に報告する。説明を受けたセンゴクはピンと来るものがあった。この広い世界で自然現象以外に地震を起こせるものがあるとすれば・・・センゴクが知る限りではそんな存在は一人しかいない
「白ひげか・・・っ」
やられた。センゴクはギリリと奥歯を噛みしめる。サカズキも合点がいったらしく、ふんっと鼻息を荒くし皮肉っぽく口端を上げて笑った
「まさかこんな小娘を奪うのに親玉が手ぇ貸してくるとはのぉ」
そこまでして奪いたいものか。こんな事態でもを小馬鹿にするような発言は変わらない。けれど話題の中心にいるは海震の意味も白ひげがどう関係しているのかもまったくわからず疑問符を浮かべるばかり。ただセンゴクが険しい表情で電伝虫の向こうの部下に指示を出すのを見ているしかなかった
『数分後に大津波が来ます!どういたしましょう』
「マリンフォード市街に緊急速報を流せ!全市民高台まで避難、及び市街を巡回中の全海兵は市民の誘導に全力を注ぐよう伝えろ!」
『了解しました!合わせて強震への対処も報じます。間もなく震度6強程の揺れが来ると気象台から連絡が・・・・・―――っ』
通信兵の声はそこで途切れ、代わりに電伝虫の顔がザッと青ざめた。カタカタカタと地面が小刻みに揺れ始め、『き、来ました・・・っ!!』と通信兵のこわばった声が執務室に響き渡った。次の瞬間小さな揺れは一瞬で強大な揺れへと変貌した。激しい横揺れはまるで巨人が要塞を鷲掴みにして横に揺さぶっているかのようでとても人が立ってはいられない。センゴクもサカズキももその場に膝をつき倒れてくる家具や照明器具から身を守るので精一杯だった。激しい音を立てて窓ガラスもすべて割れていく。割れた窓の外からは地響きと市街地の人々の悲鳴が聞こえてきた
「くそ・・・っ、やってくれる白ひげめ・・・っ!!」
揺れが少しずつ小さくなっていく。センゴクはデスクに手をついて立ち上がると電伝虫の受話器を鷲掴み指示を出した
「大尉以下の者は市民の避難に尽力するよう伝えろ!少佐以上はそのまま待機、この機に乗じた敵襲の可能性がある。十分に警戒の目を光らせろ!」
『し、しかし・・・元帥!気象台より次の報告がっ』
「今度はなんだ!?」
『地震の第二波、第三波を観測したと報告が!本部への到達は約30秒後ですっ』
「・・・―――っ。ともかく市民の避難が最優先だ!!」
30秒で何をしろというのだ!?だが焦りは禁物だ。緊急事態だからこそ迅速かつ適切な対応をとらねば多くの命が失われる。センゴクは受話器を握りしめ市街の様子を見下ろした。白い服を着た海兵たちが素早い動きで市民を高台へ誘導している。この様子ならなんとか避難は完了させられる。そこへ再びカタカタカタと第二波の揺れが訪れた。第一波よりは弱いが、それでも膝でバランスをとらねば立っていられない
「サカズキ、、無事か!?」
「だ、大丈夫です」
「かぁ・・・こんな不安定な足場じゃぁ、ろくに戦えんぞ」
「それが白ひげたちの狙いだろう。油断するな」
敵はどこからどんな形で来るかわからない。執務室内は地震の揺れでめちゃめちゃに荒らされた状態だった。はよろよろと立ち上がるとセンゴクがいるデスクまで歩き机に手をついてバランスをとった。そこからなら窓の外の様子がなんとか見えた。こんな状況でも夕陽は美しく橙色に輝いていた。蒼い海を、青い空を赤く染めていく。まるで世界が燃えているようだった
「、離れていろ。ここはガラスの残骸がひどい」
「あ、はい・・・」
センゴクに言われては足下を見た。確かに割れたガラスの破片が無数に散らばっていて危険だ。その場を離れようとデスクから手を浮かせた。けれどその瞬間、は見た。落ちたガラスの破片のひとつにキラリと映ったそれは、けっして見間違えるはずのない蒼い炎
act 40 : Fly high!!!
声が聞こえた。彼の声が聞こえた。は窓の外を見つめる。けれど視界に映るのは赤い夕陽と橙色の空だけ。声がどこから発せられたのかはわからない。けれど確かには彼の声を聞いた
「津波の到達まであと何分ある!?」
『到達予想まで残り3分です!』
「それだけあれば何とかなるな。クザンに連絡して奴を津波の対処に回せ!」
『了解しました!』
「考えたもんじゃな。津波を凍らせるつもりですかい」
「それしか方法はあるまい。くそ・・・、第三波がもう来たか」
ぐらぐらと揺れる地面に少し慣れたのかセンゴクもサカズキも悪態がつけるほどにはなっていた。そんな二人を尻目に、は揺れの中でただぼぉっと窓の外を眺めていた。のおかしな様子にセンゴクが気付く
「・・・?何をしている」
「・・・」
センゴクに声をかけられてもは無反応で割れたガラス片を踏みながら尚一層窓辺に近づいていった。ガラスが抜け落ちた窓枠に手をつき、大きな夕陽と橙色の空を見つめる。真っ赤な太陽がゆっくりと海の中へと沈んでいく瞬間を迎える。そしては再び声を聞くのだ
―――飛べ!!!
「聞こえた・・・」
「?」
「聞こえた・・・、呼ばれてるっ」
世迷い言のように独り言を呟くをセンゴクもサカズキも奇異の目で見つめる。は窓枠をしっかりと掴むと身を乗り出して真上を見上げた。視界いっぱいに広がる朱色に染まる高い空。その中に一粒の蒼を見つけ、は嬉しさに破顔した。そしては自分の意志をすぐに行動に移した。白いコートをひるがえして窓から数歩離れると助走をつけて窓の外に向かって思いきり飛び出した。これにはさすがのセンゴクとサカズキも目を剥いた
「な・・・っ、・・・――っ!?」
「おどれ、死ぬ気か!?」
センゴクは大慌てで窓辺に駆けより真下を覗き込んだ。地上に降り積もった瓦礫の上に横たわるの無惨な姿が・・・、だがそこにはなかった。は何処へ消えたというのか。訳が分からずにいれば、それは突然センゴクの視界を横切っていった。蒼い炎を纏った不死鳥はその背にを乗せて空へと上昇していくところだった
*
今までに感じたことのない風の強さには最初目を開けられないでいた。空を飛ぶというのはこういうことか。月歩で宙を駆けるときとはまったく違う感覚だった。自由に空を飛ぶ彼はこんな気持ちの良い風をずっと感じていたんだ。は不死鳥の姿に変化した彼の首にしがみつき、ゆっくりと目を開けた。視界いっぱいに広がる蒼はもう何度も見たけれど、こうして触れるのは初めてだった
「よぅ、お待ちどうさん」
「マルコさん・・・っ」
「危機一髪だったよい」
本部の最上階から飛び降りたをマルコは地面すれすれのところでキャッチしてくれた。それは本当に紙一重の所業だった。二人の意志がシンクロでもしてなければ不可能なことだった。どうしてわかったのだろう、が飛び出してくると。どうしてわかったのだろう、マルコが攫いに来てくれると。わからない。わからない・・・けれど、理由なんて必要ないと思った
「マルコさん・・・」
「おぅ」
「マルコ、さん・・・――っ」
「・・・?」
何度も名前を呼んでくる彼女にマルコは前を向いたまま「どうしたよい」と問いかける。けれど彼女からの返事は返ってこない。その代わりに首にぎゅっとしがみついてくる彼女にマルコは穏やかに眼を細めて彼女のしたいようにさせてやった
あなたが来てくれた。ただそれだけで私は涙が出るほど嬉しいのです
※脱出成功なるか!?まだちょっと続きます
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