ドリーム小説
徹夜続きの雑務で眠くて目が開かない。ふぁ、とあくびをしながらマルコはダイニングで遅めの朝食をとっていた。行儀悪く頬杖ついてパンを貪っていれば、ふと両側にどっかりと座ってくる二人の男たちがいた
「なんだよ、マルコ。随分遅い朝飯じゃん。大したもん残ってねぇだろ?」
「そりゃお前が人の分まで食い荒らすからだろい・・・」
「何食ってんだ?パンにコーヒー、サラダって・・・ぷぷっ。上品すぎて似合わねぇな」
「・・・お前ら、朝っぱらから人のことからかいに来たのかよい」
本当に暇な奴らだよい、とマルコは二人に顔も向けずひたすらパンを咀嚼した。睡眠不足のぼぉっとした頭でこの二人を相手にするのは正直言って面倒くさい。無視を決め込んでやろうとするマルコの前に、サッチはおもむろに今日の新聞を広げてみせた
「・・・?なんだよい。新聞なら後で読むから置いとけって」
「やー、今読んだ方がいいと思うぜ」
「あ?」
「記事はちっちぇけど、マルコにとっては大ニュースだろうからな」
サッチはテーブルに頬杖ついて、マルコが横目で自分を見ているのを承知でにやりと笑ってみせた。なんなんだと思えば、今度はエースが椅子から身を乗り出して「これだよ、これ」と記事を指で指し示した
「エース、テーブルに膝付くなよい。行儀悪ぃ」
「んなこといいから見ろって。これ、ここ。マルコが気に入ってる女のことが書かれてんだって」
「あ・・・?」
「ほら、あの海軍本部の白髪頭の女・・・なんつったっけ名前忘れた、」
「だよい。おいエース、指どけろ」
「え、・・ぅおっ!?」
マルコにドンと押されたエースはバランスを崩し無惨にも後ろへひっくり返った。「いってーな!!」と打ちつけた腰をさすりながら悪態つくエースを無視してマルコは新聞の記事を真剣な顔で読み進めた。書かれていたのは数日前の新聞に載っていた海軍の事故のことと、それに関わった軍人の処罰について。マルコは数日前の新聞記事の内容を思い出す
『海軍本部将校、海賊討伐に向かい返り討ちにあい全艦全滅。乗船していながら戦いに加わらず仲間を見殺しにした大佐の真意は・・・?』
そんな記事だった。記事を読んだときはマルコもサッチもエースも驚いたものだ。彼女と会うこと数回。けっして親しいわけでも馴染みなわけでもないけれど、がそんな冷酷なことをする人間には思えなかったから。しかし新聞以外に情報源はなく、今となっては冷酷無慈悲な海軍将校というレッテルを貼られている、そんな彼女への処罰は・・・
「2週間の謹慎、ねぃ・・・」
その処罰が厳しいものなのか軽いものなのかはわからない。もしかしたら裏ではもっと厳格な処分を下されているのかもしれない。ただマルコは懸念する。今はどんな想いでいるのだろう
朝食を適当に済ませ、マルコは白ひげの部屋の扉を叩き新聞の記事を伝えた。白ひげはマルコが来ることを予想済みで、入ってきた息子にグラララと笑いかけた。白ひげはマルコが心配していることもお見通しだった
「新聞読んだか、マルコ」
「あぁ、読んだよい。そんで・・・あいつのことで話がしたくて来たんだ」
「あぁ、わかってらぁ。しかしひでぇもんだな。『船に同乗しながら戦いに加わらず仲間が倒れていくのを黙って静観。何もせず仲間を見殺しにした罪は重い。海軍本部の信頼を失墜させる行為』だってな」
「・・・」
マルコは黙り込む。何よりも仲間を大事にする白ひげは仲間殺しを絶対に許さない。新聞に書かれたの行為は白ひげを不機嫌にさせるものでしかない。を船に乗せたいというのがマルコの願いだが、白ひげは彼女の乗船を許してくれないかもしれない。そう思っていた、マルコの不安は杞憂に終わる
「マルコ、なんてしけた面してやがる。そんな面してたら奪いてぇもんも奪えねぇぞ」
「親父・・・、」
「何を心配してやがる、アホンダラが。お前ぇの好きにすりゃいいって俺は言ったはずだろう」
今更その女を船に乗せねぇなんて俺は言わねぇよ。ちいせぇこと気にすんじゃねぇ。グラララと笑って言ってくれる、それだけでマルコの表情は緩んだ。ちいせぇちいせぇと連呼する白ひげの器の大きさにマルコはようやく口元をほころばせた
「しかしな、この記事が本当だとして。2週間の謹慎処分たぁセンゴクの野郎も随分生ぬるくなったもんだ」
「それは俺も解せねぇところだよい。の行為が海軍の信用失墜だってんなら普通はクビにでもするもんじゃねぇのかねぃ」
「あぁ・・・、きっと他の軍人だったらそうしたんだろうよ」
「他の・・・?は他の奴とは違うってことかい」
「あぁそうさ。センゴクの野郎・・・いや、裏で手を加えてんのはつるかガープか。どっちにしろ、海賊に海の女神をとられたくなくて必死になってんだろうよ」
「・・・どういうことだよい、親父」
まただ。その言葉を今までに何度か耳にした。「海の女神」。の話になると時折混じるその言葉の意味をマルコは知らない。ただ白ひげは言う、がいれば海軍は苦もせず海の恩恵にあずかれるのだと。白ひげはの何を知っているのだろう。マルコは白ひげの正面に立ち、彼を見上げた
「親父、教えてくれよい。なんで親父もあのつるって婆さんもを只者じゃねぇみたいに言うんだい」
「・・・」
「はただの海軍の軍人じゃねぇのか?」
一体彼女は何者なのだ。海の女神とは何なのだ。とどんな関係があるのだ。彼女のことを知りたい。マルコは白ひげを真っ直ぐに見つめた。真剣な息子の目に白ひげは眼を細めてしばらく無言で見下ろしていた。ビリビリと強く感じるマルコの想い。白ひげは静かに口角を上げてニッと笑った
「マルコ。お前ぇは本気なんだな」
本気であの娘に惚れてんだな。白ひげは肩を揺らしておかしそうに笑う。そんなことを親父に改まって訊かれるとは思いもよらなかったからマルコはびっくりしたというかちょっと照れくさかったというか。唇をややとんがらせて明後日の方を向いて気恥ずかしさを流す。けれどマルコの想いは揺らぐことはなかった
「この年になって冗談で好いた惚れたなんて言うはずねぇだろい。はなから本気に決まってる」
一目見たときから心は決まっていた。こいつを絶対に手に入れてみせると。何が何でも自分のものにしてみせると。海賊らしい傲慢さでマルコは白ひげに向けて笑ってみせる。白ひげは息子の答えに満足そうに肩を揺らす
「いいだろう。教えてやろうじゃねぇか」
「おぅ」
「マルコ、お前ぇはとんでもねぇ女に惚れちまったんだってことをとくと語ってやるよ」
「は・・・?とんでもねぇ女・・・って」
が?あのゆるゆるの娘が白ひげに一目置かせるようなそんなすごい存在だというのか。眉を歪めて首を傾げるマルコに白ひげはグラララと大口開けて笑う
「心して聞きやがれ。あの娘に惚れたんなら命を賭けろよ。モビーが生きるも死ぬも、マルコお前ぇ次第になるかもしれねぇんだからな」
「・・・え・・・?」
にやりと意地悪な顔で宣言され、さすがのマルコも目を丸くする。そして白ひげは語るのだ。深い声でゆっくりと。彼が知る海の物語を愛する息子に。自分が叶えることのできなかった想い、手にすることのできなかった宝への想いを息子に託すために
act 34 : 受け継がれる想い
※act17の白ひげの回想シーンとややリンクです。予想つきやすい設定でつまらなくて申し訳ないです・・・
←
□
→
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送