ドリーム小説
偉大なる航路に雷鳴が轟く
「だー!おい、なんでだ!?3秒前までピーカンだったじゃねぇかよ!」
「何言ってんだよい、サッチ。グランドラインに入って何年目の海賊だい。そんなの今更じゃねぇか」
この海の天候は誰にも予測することはできない。サッチが言うとおりつい数秒前まで青空が広がっていた空には今では暗雲が広がっており、バケツの水をひっくり返したようなどしゃ降りの雨が甲板に降り注いでいた。鳴りやまない雷の中で下っ端のクルーたちは必死に帆をたたむ
「うはぁ・・・ブーツん中がびしょびしょで気持ち悪ぃ」
「おい、エース。こんなときに海になんか落ちんじゃねぇよい」
ブーツをひっくり返して水捌けしているエースにマルコは皮肉に笑って言ってやった。エースは眉をつり上げて「落ちねぇよ!馬鹿にすんじゃねぇ」と牙を剥く
「はー、前科のある奴が言ってもねぃ」
「それ何年前の話だよ、しつけぇな!」
これだからおっさんはねちっこくてよ!とエースはふて腐れて仲間の方へ行ってしまった。弟をからかって遊んでいたマルコだが「隊長、親父がお呼びです!」と部下に呼ばれ、「すぐ行くよい」と返事を返した。一歩進んだところで一際でかい稲妻が走りピシャァンッ!!と近くの海に雷が落ち、マルコは思わず空を仰いだ
「今日はまた随分とお怒りの様子だねぃ」
なぁ、海の神さんよ。何がそんなにご不満なんだい。何かあんたの怒りを買うことでもあったのかい。それとも号泣するほど哀しいことでもあったのかい。できるとこなら早くその気持ちを鎮めてくれよい。鳴りやまない雷轟に背を向け、マルコは白ひげのもとへと向かった
act 32 : 雷轟鳴りやまず
センゴクの執務室に響き渡った音はパンッなんていう軽い張り手の音ではなく。それは鉄拳制裁の文字通り拳で思いきり殴りつけられて生まれる、落雷が岩を砕いたような破壊音だった
「・・・――っ」
「貴様は一体、・・・船で何をしちょった!?」
サカズキの重たい一発を左頬にくらいは数歩後ろへたたらを踏み立ち止まった。筋骨隆々の男の正拳をまともにくらい、痛いなんてレベルではなかったけれどは殴られた頬に手を押し当てることもせず、唇の端から血を流したまま黙って立ちつくしていた。向かいに立つ男がその拳でもって裁くは、彼女の罪
討伐先で一人だけ生き残ったのもとへ援軍がやってきたのは彼女が目を覚ましてから4時間ほど後のこと。やってきた船の海兵たちは初め、全滅している海軍の状態とたった一人で立ちつくすの姿を見て彼女一人でこれをやったのかと勘違いし顔面蒼白で総毛立っていた。彼女を救助し、本部に戻るまでの帰路。は一言も口を開かず、周りの船員も彼女に声をかけられるはずもなく。本部に戻りセンゴクの執務室に赴けば、そこにはすでにつるとガープと三大将が招集されていた。疲労困憊の状態で事の次第を報告したは・・・まず真っ先に赤犬サカズキの制裁をくらったのだった
「軍人が軍艦に乗り海賊と顔を付き合わせりゃ、やることは一つじゃろぉが」
「サカズキさん・・・、お言葉を返すようですが」
「何じゃ、言うてみぃ」
「私には加勢という選択肢はありませんでした」
出された飲料水に混ぜられた睡眠薬で眠らされておりましたので。そう告白するの言葉にサカズキ以外の全員が衝撃を受ける。もしそれが本当なら被害を受けたのはの方だ。サカズキにどうこう言われる謂われはない。けれど彼女を殴った男は厳しい表情を崩すことなく、ふんっと鼻息を荒く鳴らした
「そんな証拠がどこにあるんじゃ」
「え・・・」
サカズキの言葉には信じられないという顔で彼を見た。そして後悔するのだ、彼の目を見なければよかったと。自身の絶対的正義しか信じていない屈強すぎる男の眼はが受けた被害を軽く一掃する
「お前、その薬を持っちょるとでも言うのか。あるんなら見せてみぃ」
「・・・ありません。ですが私は確かにスネーク少尉に、」
「騙されて薬で眠らされていたと言うのか」
「・・・はい」
「ふん。それで大人しく寝ちょったと。だから腑抜けと言われるんじゃろうが」
「・・・――。でしたら私はどうすればよかったのですか」
「あぁ・・・?そんなことも自分で考えられんのか、貴様は」
サカズキは他の将校のように皮肉な顔で嘲笑ったりはしない。けれどその代わり相手を恐怖に追いつめるほどの怒りを露わにする。額に青筋を浮き立てるサカズキの様子に近くの壁に寄りかかっていた黄猿ボルサリーノは「相変わらずサカズキはこわいねェ」と茶々を入れ、その横に立つ青雉クザンはガシガシと頭を掻いてため息をつく
「やれることなど幾らでもあるわい。足に刀を突き立てるなり、舌でも噛み千切るなりして耐えれば済むだけのことじゃろうが」
「・・・」
「それができんのは貴様に軍人としての覚悟が足りんからじゃ。見てみぃ、これを!さっき届いた夕刊にもう軍の失態が載せられとる。『海軍本部将校、海賊討伐に向かい返り討ちにあい全艦全滅』。海軍の恥さらしもいいとこじゃろう!」
「・・・、・・・」
サカズキに突きつけられた白黒の新聞には、あの地獄絵図のような姿と化した海の写真付きで記事が書かれていた。何よりも驚いたのは、それは誰が読んでもを批判する内容で書かれていたということ
『海軍本部将校二名が東の海出身の海賊連合軍を征伐に向かい、返り討ちにあう。海軍側は本部将校大佐一名を残し壊滅。同女性将校は海賊討伐に際し「同行者」という任務で乗船していたため戦闘には加わらなかった模様。仲間の危機を目前にして与えられた任務を優先し加勢しなかった彼女の行動の真意はいかに。今後物議を醸すことになりそうである』
読み終えたは愕然とするしかなかった。違法な薬で眠らせたことに関しては一切書かれていない。だがよく考えればそんなことが記事にされたら「海軍内の不和」として市民の信頼を失うことになりかねない。主犯のスネーク少尉亡き今、一人の失態として済ませた方が海軍の名声はまだ守られる。彼女一人が犠牲になれば・・・
―――赤犬殿に代わって俺が証明してみせよう。君が海軍には要らぬ人間であることを
朧気な意識の中で聞いたスネーク少尉の声が脳裏を横切っていく。だらりと下げた左手に新聞を握りしめは俯いた。見かねたガープがせめてもと「サカズキ、何もそこまで言わんでもいいじゃろうが」と救いの手を差し出してくれたが、それすらも怒り滲透するサカズキは聞き入れようとしない
「失態のすべてを一人に背負わせんでもいいじゃろう。今回の件ではもまた被害者であるわけだし、」
「ガープ中将。あんたはこの娘に甘すぎやぁしませんかね」
「あ・・・?なんじゃと、若造が」
「やめんか、ガープ。サカズキお前もだ」
あわや一触即発かという状況をおさめたのはそれまで黙って聞いていたセンゴクだった。デスクの椅子にどっかりと座った海軍元帥は、両手の指を組んだその上に顎を乗せ大きく鼻で息をした
「の処分は私が決める」
「・・・」
「」
「はい・・・」
「何か言っておきたいことはあるか」
「ありません・・・」
そう返事をするのに迷うことはなかった。もうこれ以上何を言ったとしても自分の言葉は届かないと感じたから
「どんな処分が下っても、甘んじてお受けいたします」
新聞を持った左手を背に、かかとを合わせは右手を額の上にかざしてセンゴクに敬礼を向けた。その顔には彼女らしい笑みもなければ怒りも哀しみもなく。今彼女の中でどんな感情が渦巻いているのか。それはそこにいる誰にもわからなかった。きびすを返し静かに執務室を立ち去っていくの背中に、つるは哀しげに眉を落としてゆっくりと目を閉じた
※赤犬さんがどんどん酷い人になっていく・・・でも嫌いじゃないです(説得力ないな)
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