ドリーム小説
レスタ島の港から遠く離れた、島のほぼ中心に大きな森がある
その森の更に中心に、樹齢何百年になるのだろう、荘厳とも言える大きな樹が立っていた。ざわざわと生い茂る葉の隙間から幾筋もの光の柱を地上に降り注ぐ。森の動物たちからすればそれは家にも等しい存在
その樹の枝に乗れば、島全体がゆうに見渡せた。港に停泊する海軍の船も、戦いの様子も。海賊や海軍どもの動向も丸わかりだ。しかも港からは遠く離れているから見つかることもない。だからマルコはここを偵察場所に選んだのだが
「なにぃ・・・?あいつら、負けたのかよい」
港付近から昇る幾筋もの細い煙。手錠を嵌められて繋がれた海賊ども。マストを折られ、小さな炎と煙をあげている海賊船
どこからどう見ても海軍の勝利なのは明白
(9,200万だろい。弱かねぇはずだが・・・)
巨大樹の枝に座り込み、港に双眼鏡を向けていたマルコはチッと舌打ちする。白ひげの親父が次の獲物にと狙っていた首だったのだが、偵察でマルコが島にやってくるのとほぼ同時に海軍が攻め入ってきてしまったのだった。タイミング悪く海軍に獲物を襲われてしまったが、やってきた海軍の兵力が大したこともなく、マルコは「こりゃ、海軍の方がやられるよい」と予想していたのだが
「大どんでん返しだよい」
マルコは眉をしかめて港にいる海軍本部の軍人たちを双眼鏡で確認した
(シェパード中佐にグローブ中佐、・・・能力者は大佐級のシャリングルぐれぇか。確かシャリシャリの能力、超人系パラミシアか)
確認できた将校らでは9,200万の一味を相手にしてどっこいどっこいぐらいだと思うのだが。マルコは双眼鏡を外してぼりぼりと頭を掻く
「さっき援軍に来やがったのは一体誰だ・・・」
港に姿が見あたらないのは後から援軍で到着したそいつだけ。その謎の軍人が来て、戦局は一気に海軍に傾いたのだ。なかなかの手練れだ。今は謎の存在だが、そいつがいつか白ひげ海賊団と相見えたときのことを考えると今のうちに情報を得ておきたい
(日が暮れるな。軍人どもは港に駐屯か・・・なら、村に降りてみるか)
よっ、と反動をつけて枝を蹴った。枝から地面までゆうに10メートルを超えている。落ちながらマルコは青い炎を纏った不死鳥に姿を変え、バサリと羽根を羽ばたかせてオレンジ色に変わり始めた空に飛び出した
*
村で一番大きい酒場が、その日の夜はいつも以上の賑わいで盛り上がっていた。がやがやと騒がしい店内。すべてのテーブルを笑顔の村人が埋め尽くし、あちこちでグラスや瓶をぶつけ合っている
今夜は祭りだ。村を脅かしていたオーロラ海賊団が海軍にやっつけられたのだから、こんなめでたい日はない
「レスタ島に乾杯!海軍本部様々にかんぱーい!!」
誰かの掛け声に店内の客全員がグラスを頭上に掲げる。この盛り上がりはきっと明日の朝まで・・・いや、あと数日は続くのだろう
テーブル席の方は騒がしいことこの上ない。けれど賑わう店内でカウンターの席だけは人がまばらだった。店主がどんちゃん騒ぎに参加しているため、数人のバーテンダーがカウンターの中から客の相手をしている
そのカウンター席の一番端。壁際の席には一人で腰掛け、酒を飲んでいた
「・・・」
カラン、と。無言でグラスを揺らす。氷が奏でる綺麗な音は店内のらんちき騒ぎにかき消される。つまみのナッツを時折口に放り込み、後はひたすら酒を飲んでいた
「海軍本部様ばんざーい!大将様々に敬礼!!」
相変わらず後ろのテーブル席類は大賑わいだ。「大将は来てないんですけどねぇ」とは心の中で茶々を入れる
まさか今回のレスタ島の戦いで一番戦果をあげた人物がカウンターの隅っこにいるなど村人たちが気付くはずもなく。だからといっては自分の勇姿や武勇伝をひけらかすような性格でもなく
「今日から俺たちは自由だー!!」
「・・・、・・・」
おー!!と大歓声があがるのを背に、はグラスに残っていた酒を一気に煽る
「同じのお願いします」
「お客さん。大丈夫ですかい?さっきから酒ばっかり飲んでるけど」
「大丈夫です。弱い方じゃないですから」
「なんか食わないと胃荒れるよ」
苦笑しながらバーテンダーが出してくれたのは付け合わせのパスタ。サービスだよ、と人懐っこい笑顔の年取ったバーテンダーにも笑顔で「ありがとう」と返す
何気ない人の厚意が嬉しい
スッと胸に響く
(本部ではなかなか感じられないからなぁ・・・)
行儀悪く頬杖ついてパスタにフォークを巻く。の口から疲れたため息が零れる。ふと目を閉じれば、瞼の裏にはさっきまで一緒に戦っていた他の将校たちの顔。みんな、を見て睨んで顔をそらす。その原因はよくわかっている
が援軍に来た時点でほとんどの将校らは戦いの結果を確信していた。今までが赴いた戦いで敗戦で終わったものはない
が来れば海軍の勝利に終わる は戦場に福を招く
いつからか言われるようになった海軍本部の中のジンクスのようなもの。予想に反せず、このレスタ島での海賊討伐も海軍の勝利に終わった。そのことを、
「いやぁ、福招きの大佐が来てくれたおかげだ」
「あぁ。がいてくれると心強い」
と素直に賞賛してくれる者もいる。けれど将校の大半は、
「本当にな・・・。大事な福をこんなところで使わせてしまい、大佐殿には申し訳ない。我々がひ弱なばかりに」
「だがしかし、大佐が勝利を導いてくれるのも事実。本当に、・・・『いてくれるだけ』で結構だ」
への妬みをべったりと塗りつけた言葉で揶揄する者が多い。特により階級が上の将校は、大将並みにあるの実力も気に入らないのだ。が戦地に来れば、手柄のほとんどはに奪われるから
「・・・一応鍛錬の賜物なんだけどなぁ(お婆ちゃんもガープお爺ちゃんも訓練となると鬼のようだからねぇ)」
「はい?」
「うぅん。独り言です」
は誤魔化すように笑ってフォークに巻き付けたパスタを口に運ぶ。少量のパスタをたいらげると、また酒を浴び始めた。バーテンダーのおじさんが「倒れない程度に」と苦笑してパスタ皿を引っ込めていく
「自由!自由!今日からおっれたっち・・・、フリーダム!!!」
店内の熱は一向に冷めない。むしろ熱くなる一方で、客数はどんどん増えていた。大合唱のように自由、そして愛と平和を謡う
どうしてだろう・・・
熱気に背を向けるの心中にじわじわと滲み出てくる・・・"羨ましい"
カウンターに突っ伏し、つまみに出た殻のままの胡桃を人差し指で転がしてもてあそぶ
カラン
act 3 : ドアベルが聞こえた
騒がしい喧噪の中にかき消されるドアベルの音。どんちゃん騒ぎが止まることはなく、新たな客は空いている席はないかと店内を見回す
「いらっしゃい。悪いね。今カウンターしか空いてないんだ」
の相手をしてくれるおじさんバーテンダーが新しい客に声をかける。男はバーテンダーの声に応え、人混みをぬってカウンターの方へと近づいてきた
「あぁ。別にかまわねぇよい」
語尾に特徴のある言葉遣いをする男はバーテンダーに愛想よく笑い、の二つ隣の席を引いた
※やっと出逢うところまで来ました・・・。次で二人が接触します
バーテンダーのおじちゃん優しいなぁ
店内の騒ぎようはナミの村がアーロンの支配下から抜け出したときと似たような感じで
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