ドリーム小説
知らぬ者ばかりの土地とはいえ、マルコは写真付きの手配書が配られている札付きだ。いつどこで誰にばれるかわからない
赤いバンダナを巻いて特徴的な頭を隠し、胸に刻まれた白ひげの誇りは中にタンクトップのシャツを一枚着て見えないようにして細心の注意を払う
オーロラ海賊団を倒した、姿の分からない謎の海軍将校の情報収集のためにとマルコは村の酒場を梯子していた
何軒目になるかわからない店内に入った瞬間、中のどんちゃん騒ぎにマルコは細い眼を真ん丸にしてそれからすぐに細く戻し、ため息をついた
(ここもかよい・・・)
行く酒場行く酒場すべてこんな感じだ。村人はみんな喜びに大酒をくらい、まともに話をできる者が少ない。そのため、敵海軍将校の情報はまったく集まらない状態だった
「いらっしゃい。悪いね。今カウンターしか空いてないんだ」
人の良さそうなバーテンダーが呼んでくれて、マルコはカウンターの方に近づきながら「別にかまわねぇよい」と愛想よく笑う。カウンター席は人もまばらで、目に留まるのは壁際に座って一人酒している女。黒いズボンにベスト着用だなんて軍人みてぇだ
女はテーブルに突っ伏して殻のままの胡桃をいじっていた。横顔をちらりとのぞき見る。美人は美人だ。背中に流れる長い髪が綺麗。火照った肌を見るとだいぶ酔っているようだが
席につき、出されたジョッキを一口飲み、尻のポケットから出した手配書の束を眺めた。一番上にある9,200万の一味に×をつけて二枚目をめくる。グラスを拭きながら何とはなしに見ていたバーテンダーが興味深げにマルコに声をかけてきた
「お客さん、賞金首狙いのハンターか何かかい?」
マルコは顔を上げて何度か瞬きする。睨むような目で手配書を見ていたらそう思われてもしかたがないか。否定するのも面倒で、素性を隠すにはいいかとマルコは曖昧に笑って応えた
「まぁ、似たようなもんだよい」
「強そうだ、お客さん」
「そりゃどうも」
とりあえず笑顔で嬉しい素振りを見せ、マルコはジョッキを傾けた。すると老年のバーテンダーはマルコの方に顔を近づけてきて、内緒話をするように口元に手を当て、こそこそ声で話をする
「そこのお嬢さんも同業者かもしれないよ」
「あ?」
「さっきお客さんと同じように手配書の束眺めてたからね」
彼女の秘密を知っているんだというように、バーテンダーは得意げににんまり笑う。マルコは「へぇ」と興味なさそうに応えて、けれど横目でしっかりと彼女を視界に入れた
今はテーブルに突っ伏して殻つき胡桃を指で転がしている。半分に折れた体は細っこくて、とても豪腕には見えないが
カツン、コロコロコロ・・・
act 4 : 賽は投げられた
不意に軽い音が聞こえてマルコの手元に胡桃が転がってきた。彼女の手元が狂ったらしい。マルコは胡桃を指でつまみ上げ、彼女の方に顔を向けた。彼女は突っ伏していた両腕から気だるそうに顔を上げてマルコの方を向いた
初めて顔を真正面から見られた。やっぱりなかなかの美人だ。酒が入っていて眼がとろんとしていて色っぽい。じっとマルコを見つめてくる彼女に思わず声をかけてしまったのは彼女が放つ、人を・・・男を引きつける魅力のせいだ
「食いてぇのかい」
「・・・」
これ、と指で摘んだ胡桃を振ってみる。まるで小さな子を相手にしているようだ。けれど彼女は気を悪くした様子はなく、しばらくして静かに頷いた
「任せな」
「あぁ、お客さん。器具なら、」
バーテンダーが胡桃割り用の器具を取り出そうとするのをマルコは「いらねぇよい」と制する。堅い胡桃を人差し指と親指で挟んで思いきり力を込めれば、パキッと良い音がして胡桃の殻が割れ目のところで綺麗に割れた。バーテンダーは目を丸くして賞賛する
「おぉ、すごい。鍛えてますなぁ、さすがはハンターだ」
バーテンダーの悪意のない笑いにマルコは苦笑する。彼は完全にマルコが賞金首ハンターだと思いこんでいるようだ
「ほらよい」
腕を伸ばして彼女に胡桃の実を差し出す。上を向けて開いた彼女の手のひらに実を載せてやった。彼女は無言で受けとり、じっと胡桃を見つめていたが、ふっと顔を上げてマルコに向かってにこっと笑った
「ありがとう」
「・・・」
・・・おい。・・・おいおいおい
不覚にも彼女の笑った顔に魅入ってしまったマルコ。今のはかなり・・・可愛かった。マルコに剥いてもらった実をコリコリと食べる姿はなんだかリスに似てる
会って数分の彼女に俄然興味がわいた。マルコは席をひとつ横に詰め、彼女の隣に腰掛ける。距離を縮められ、彼女はもごもご口を動かしながらマルコに視線を向けてきた
「・・・?」
「なぁ」
「(ごくりと飲み込んで)はい」
「あんた、一人かい」
「はい・・・まぁ」
「なら好都合だ。場所、換えねぇかい」
「え・・・?」
「あんた、島の人間かい」
マルコの質問に彼女は首を横に振る。「流れもんかい」と問われ、今度は少し考えた後、彼女は縦に頷いた。マルコは人の良い顔で笑ってみせる
「俺もだよい」
「旅人さん・・・?」
「まぁ、そんなもんだ。・・・なぁ。似た者同士、今までの旅の話でもしねぇかい」
マルコの提案に彼女はパチパチと何度か目を瞬きさせる。わかっていない彼女にマルコはグッと顔を近づけ、彼女の耳元に口を寄せて耳打ちした
「二人きりで」
これでわからなきゃ経験のないガキだな。果たして、彼女はマルコの意図をくみ取った。彼に囁かれた彼女の耳がほんのりと色づいていく。うぶなところもまた可愛い。誘われることに慣れていないのだろうか。しかしこれで断られたら男としてだせぇな。そんなことを思っていれば、彼女の唇が小さく開いて、クスリと笑いながら返事が返ってきた
「明日の夕方までに帰してくれるなら」
なんだろう。誘われ慣れないうぶなガキかと思っていたのに、返す返事はマルコの予想を裏切る120点の女の回答で。その顔もまたたまらなく可愛くて。自分から仕掛けておいて、マルコの男の本能に火をつけられてしまった
思わず手が伸びてしまったのはその本能のせい。彼女の細い顎に指をかけて上を向かせ、唇を重ねた。ほとんど不意打ちで奪ってしまったキス。二人が交わした初めてのキスは胡桃の香りがした
抵抗されたらすぐに唇を放して「冗談だよい」と白旗を揚げるつもりだったけれど、彼女は黙ってマルコに合わせて目を閉じてくれた。あぁ、150点だ
騒がしい店内で二人の接触に気付く者はなく
年老いたバーテンダーはちらりと二人を見て、すぐ目をそらし知らない振りをしてくれる
テーブルの上には飲みかけのグラスが二つと、割れた胡桃の殻が二つ
この出逢いが、マルコとの物語のはじまりだった
※やっと出逢えた・・・。手が早いマルコと、貞操観念の低い。甘いえろラブ設定が好きです
『賽は投げられた』=運命の歯車はすでに回ってしまった(カエサル) ラブ世界史
※act5は裏口からお入りください
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