ドリーム小説
「遅いと思って探しに来てみればこれかい。懲りない娘だね、まったく」
つるに呆れた顔でため息をつかれ、は居心地悪げに苦笑いを浮かべるしかなかった
「反省の色なし、と。こりゃまたレイダーに報告して説教部屋行きだね」
「うはぁ、3時間コース・・・。でも濡れ衣なんですけどね」
別に密会していたわけじゃないのですよ・・・とは言っても、見知らぬ男とキスしてるところを目撃されたら言い訳のしようもない。あぁ、こんなところで日頃の行いが・・・自業自得か。は早々に説得を諦める。その間にもつるの視線はさっさとからマルコへと移っていた
「さて、ね」
若干腰の曲がった老人特有の姿勢で。つるはマルコを頭の天辺から爪先まで吟味した。じろじろと見られマルコは落ち着かない。一応中に着たシャツで白ひげのマークは隠しているが、向かい合った老婆の目はなんだかそれすら見透かしていそうで気を抜けない。検分を終えたつるはハァと疲れたため息をついた
「なるほどね。あんたかい、うちの可愛い娘をたぶらかした海賊っていうのは」
「たぶらかすたぁ人聞き悪いよい。騙した覚えはないし、俺はただ勧誘しただけだ」
「悪党が海軍の軍人に何用だい。何のつもりでに声をかけたんだかね。船長命令かい」
「いぃや。俺の独断だよい」
「船員個人の独断・・・?おやおや、そんなことが許されるのかい。隊長レベルにまでなると違うんだねぇ、そこまで自由な権限があるとは。さすが四皇の船長は懐が深いね」
「え・・・?」
「・・・」
マルコの頬がぴくりと引きつる。やべぇ・・・ばれてるよい。この婆さん侮れない。焦る彼の隣ではが、どうしてつるはマルコの素性を知っているのかと首を傾げていた。つるはため息をついて「当たり前だろう、知らない方がおかしいよ」と呆れ果てる
「何年軍人やってると思ってるんだい。もう10年以上も手配書に載ってる顔だよ。ねぇ、白ひげんとこの一番隊隊長、不死鳥マルコ」
「へぇ・・・。嬉しいねぃ、顔を覚えていてもらえてるなんて。婆さん、あんたこそ何者だよい」
「海賊に名乗る名前なんて持ち合わせてないよ。まぁ、の養母ってことだけは言っておこうかね」
「養母?・・・どういうことだよい」
「そんなこと今はどうでもいいんだよ。それよりもだ」
つるは曲がっていた腰をトントンと叩いてゆっくりと伸ばし、険しい眼差しでマルコを睨み付けた。その一睨みで3人の周りだけ空気が変わった。目の前に立つ人物を老婆と侮るなかれ。その眼光だけで彼女は威嚇の覇気を飛ばしてきた。数メートル先に立つマルコとその隣に立つの髪をわずかに揺らす
「あんたがどこの誰であろうと関係ないんだよ。うちの娘に手を出した罪は重いよ」
手塩にかけて育てた可愛い娘を海賊になんて誘って心を揺さぶってくれて。覚悟はできているんだろうね。眼を細めて笑う年老いた女海兵、歯の抜けたしわがれた顔、骨の浮き出たか細い腕、強さを主張するものは何もない。けれど確かに目の前の老婆から強い戦意を感じた。はったりの強さじゃない。マルコは唇の片側を上げて笑う
「俺と戦う気かよい、婆さん」
「あんたにその気があるならね」
「老人をいたぶる趣味はねぇよい」
「おなめじゃないよ若造が。見た目で判断しないことだね。年老いてもまだまだいけるよ」
「はは。おっかねぇ婆さんだよい」
鼻で笑うマルコにつるもふんっと老婆にはとても不釣り合いな笑い方で返す。肩に引っかけた白いコートは脱がずにつるは両腕を袖まくりした。骨と皮の目立つ皺だらけの頼りない老人の手。けれど五指を折り曲げればゴキリと関節の音がゆうに聞こえた
「やる気満々だねぃ。そっちがそのつもりなら相手するけどよい、老人相手だからって手加減しねぇぞ」
「あぁ、結構だよ。かかっておいで、ヒヨッコが。・・・、あんたは手を出すんじゃないよ」
「ちょっ・・・お婆ちゃん待って!」
の制止などもはや届かない状態まで二人の精神は高まっていた。突然現れたつるがマルコに喧嘩を売る理由もわからない。マルコもどうしてそれを買うのか。自分をだしにしていきなり戦闘で盛り上がらないでください!あたふたするそっちのけで、つるの右手にはいつの間にかが持つのと同じ海楼石製の短刀が握られているし、にやりと好戦的に笑うマルコの右腕はボボォッと音を立てて蒼い炎に包まれていくし
「さてね。船の出る時間が迫ってるんだ。さっさと終わらせては連れて帰らせてもらうよ」
「は、言うよい。んじゃぁ、俺が勝ったらこいつを連れてってもいいってことかい」
「それは私に勝ってから言うんだね」
「あぁ。だいぶやる気が出たよい・・・んじゃ、とっとと始めようかい!」
「マルコさん待ってください・・・っ!」
の制止の声など二人には届かないのか。右腕を蒼い炎で包みマルコが地を蹴る。つるに向かって飛びかかっていく彼の背中をはまるでスローモーションか何かのように見つめていた。マルコがつるに牙を剥く。彼と一度戦ったことのあるにはわかる。不死鳥の強さも、そして自分の師であるつるの強さも。だからはっきりと見えてしまうのだ、その喧嘩の結末が。それは何が何でも阻止したい結末だった。だからは全身の血をたぎらせ思いきり地を蹴った。必死だった。それは祈りなど捧げたこともない神に思わず心の中で助けを求めてしまうくらい
act 28 : 神風が彼女の背を押す
一陣の風が自分を追い越していったのをマルコは感じた。次の瞬間彼の視界に映ったのは両腕を広げてつるの前に立つの姿。つるの盾となりマルコと対峙することを決断したの姿だった。ゆるゆるのおっとりした表情を消し、いつか白鯨の上で戦ったときのように覇気を剥き出しにしてマルコを睨み付ける。そんな顔を向けられてマルコが最初に感じたのは嫉妬と怒りだった。をここまで必死にさせるつるという存在に無性に嫉妬した。マルコはその不機嫌な顔のままを睨み返す
「どけよい」
「聞けません・・・」
「どかねぇならお前もろとも相手にするしかねぇよい」
「かまいません・・・、相手になりますよ」
どんな強い覇気を向けられても、ここは譲れない。殺気すら感じる彼の覇気を受けては頬に汗を流す。けれど彼女の眼光は揺るがなかった。突然割って入った盾に、つるもまたの背中に厳しい声をかける
「、手を出すんじゃないと言ったはずだよ。そこをおどき」
「ごめんなさい・・・、その命令だけは従えません」
譲れない、譲れない。たとえ上官であるあなたの命令であろうと今は聞けない。だって私が今守ろうとしているのは海軍の上官ではなくて、私を育ててくれた大切な人だから。何よりも大切。誰にも傷つけさせはしない。はマルコから目をそらさず告げた
「あなたにも守りたいものがあるならわかってくれますよね、マルコさん」
何者であろうと、この人に手を出すならただじゃおきません。緩い緩いと思っていた彼女が初めて見せた強い意志。それは彼女が背中で庇う老婆を守るため。今の想いの強さを天秤で量ったら、きっとマルコは負けるのだろう。マルコは肩を揺らして意地悪げに笑った
「なるほどねぃ・・・。その婆さんがお前の恩人かよい」
「そうです」
「その婆さんがいるからお前は海軍に残るわけかい」
「・・・そうとは言っていません。けれど、あなたが白ひげの船長さんを大切に思うのと同じだから、」
「答えが出たじゃねぇかよい。邪魔なのはその婆さんだってわけだ」
「え・・・?」
「その婆さんを消せばお前は晴れて自由の身。俺と一緒に来られるってことだろい」
「マルコさん・・・何を言って、」
違う・・・そうじゃない。伝えたいことが伝わらない。違う、それもまた違う。彼はが伝えたいことを理解した上で、それをねじ曲げようとしている。マルコの口元ににやりと悪巧みを企む笑みが浮かんだのを見た。そして彼の目がから外れ、とつるの後方を見ているのに気付いた。彼は何を見ているの?その答えはマルコ自身が叫んで聞かせた
「サッチ!その婆さんを狙えよい!!」
「・・・!?」
の両目が驚きに見開く。まさか仲間が隠れていたのか!?気配など感じなかった。これでは挟み撃ちにされる。は条件反射に後ろを振り向いた。新たな敵の攻撃からつるを守るために。けれど振り返った先にあったのは慌てたつるの顔と・・・誰もいない水路通り
「お馬鹿、前をお向きよっ!!」
「え・・・、」
「罠だよ!!」とつるの大声が聞こえては慌てて前を向いた。けれどそのときにはもはや何もかもが遅かった。目の前をすべて覆い尽くす蒼い炎。綺麗だと思った蒼い色に今だけは全身の血の気が引いてゾッとした。「悪ぃな」と耳元で囁かれた次の瞬間にはもう彼の重い拳が彼女のみぞおちに深く食い込んでいた
「・・・かっ、は・・・――っ!!」
自分の腹を抉るボグッという鈍い音が聞こえ焼けるような熱さと激痛にぐらりと視界が傾いた。その一撃での意識は完全に途切れた。苦しみに瞼を閉じる間際、最後に見えたのはマルコの申し訳なさそうな笑みだった
※おつるさんの戦闘力はどのくらいなのでしょうか。ウォシュウォシュの実って・・・
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