ドリーム小説
かつて同じ訓練を受け、同じ辛苦をなめた兄姉に屈辱的な顔をさせるのはあまり心地良いことではなかった。けれどこれが現実です。どうか受け止めて・・・そして私のことは諦めて放っておいて欲しいとは願った。の攻撃を受け止めたカリファの鉄塊は完全に崩れ落ちた。左腕一本ではの蹴りを受け止め切れず、石壁に叩きつけられたカリファはよろよろと立ち上がって苦々しい顔でを睨んだ
「・・・っ、あなた」
「・・・」
「この数年間で・・・一体何をしていたの!?」
特殊訓練でも受けていない限りここまでの大成長は遂げられないだろう。その道力値、8500。ルッチとカリファを足したどころか、今ウォーターセブンに潜入捜査しているカクとブルーノを加えても足りない。そばで見ていたルッチはシルクハットの鍔をクッと前に下げた。けれどその額には僅かに汗が浮いている
「いえ、特には何も。改造もされていませんし、変な薬にも手を出していません。ただひたすら鍛錬ばっかり積んでいましたが」
それだけです、とは笑う。ガープやつる、時にはクザンを相手にして。いつ出兵を命じられてもいいように。どんなに高額な賞金首相手でも負けないように。負けたら最後、海軍本部の将校たちにどんな目で見られることか。それを考えれば負けることが怖くて、ひたすら死にものぐるいで鍛錬を積んでいた
「これでもまだ実力行使をお選びでしたら、私も逃げはしませんが」
「・・・」
「ルッチ・・・」
予想だにしなかった展開にカリファはの蹴りをくらった左腕を押さえながらルッチに次の指示を仰いだ。ルッチは無駄なことをしない。そして頭の悪い男でもない。年下の幼馴染みだ格下だと思っていたに、今の自分たちでは敵うはずのない道力値を突きつけられて。やってやろうじゃないかと立ち向かっていくような熱血漢ではない
「カリファ。長官に連絡を」
「なんと・・・?」
「海軍本部将校のCP9誘引は一時見送り、と」
「・・・!」
を真っ直ぐ睨み続けるルッチをカリファは怪訝な顔で見つめる。カリファの視線を横から受け、ルッチは淡々とした声で「早く行け」とだけ呟いた。カリファは悔しげに下唇を噛みしめる。「了解・・・」と短く返答し、剃で姿を消した。再び二人きりになり、ルッチはを真っ直ぐ睨んだまま唇を開いた
「ルッチさん、」
「勘違いするな、今日に限っては見送るだけだ。時期を見直し、俺はまたお前に声をかける」
「何度来られても同じですよ。私はお断りし続けると思います」
「それはどうかな」
「・・・?」
不意にルッチが唇を引き上げて笑った。肉食の動物のようにぺろりと舌なめずりをする。「ハットリ」と彼が囁けば、彼の肩に留まっていたハトがクルルと喉を鳴らして羽根を羽ばたかせた。浮上するハトにの視線がいく。その僅かな隙を見逃さず、ルッチは音も声も立てずに地を蹴り次の瞬間にはの眼前に移動し彼女の両腕を掴んでいた
「・・・!?」
「強くなっても油断しやすいところは相変わらずだな」
「なに、」
ドンッと石壁に背中を叩きつけられ衝撃には眉をひそめる。道力値の差を理解した上でルッチがを攻撃してきたとは考えられなかった。「なんですか」と怪訝な顔でルッチを見上げた瞬間だった。鼻先を掠める木材の薫りと鉄錆のような血の匂い。気付けば彼に唇を重ねられていた。両手首を壁に固定され、蹴りを入れようにも石壁と彼の間に体を挟まれて身動き取れず
「・・・、ん・・・ぅっ!」
「・・・」
すぐに放れていってくれるのかと思ったキスはの思いとは裏腹に深くされ。歯を割ってねじ込まれた舌に口内を荒らされ、は眉をひそめてルッチに抵抗を見せた。彼の下唇に歯を立てて噛み切ってやればさすがの彼もようやくを解放した。息を荒らしながらルッチを睨み上げるの両手首を放してやり、赤い血の滲む自分の唇を親指でぬぐいクッと喉を鳴らして嗤った
「相変わらず慣れているな。男に緩い生活をしているのか」
「私の勝手ですよ・・・。なんですかいきなり。勧誘にキスは関係ないでしょう」
「俺個人としての感情だ」
「・・・」
荒々しい口付けまでしておいてしれっと自分の気持ちを告げる。ルッチが自分を好いていてくれることはも知っている。だからこそ尚更彼の気持ちは受け取れない
「私みたいな小娘などを相手にしなくても、ルッチさんおもてになるじゃないですか」
無口で端正な彼は酒場でグラスを傾けているだけで女の方から寄ってくる。自分みたいな生意気な小物の女を相手にするなんて。あなたには不釣り合いだ、やめた方がいいですよ。そう言ってもルッチの目はしか見ていないのだ
「他の女に興味などない。俺が手に入れたいと思う女はお前だけだ、」
「・・・素敵な殺し文句ですね」
「俺は冗談は言わない。酒がない昼間でも構わないのなら、久々にお前を抱きたいものだ」
「・・・、・・・」
「なぁ、」
体を放したルッチが再び一歩との距離を詰めてくる。は壁を背に顔だけを背けた。肉食獣の熱い息を首筋に感じて少し身が竦んだ。首筋に唇を押し当てられ噛まれるのではないかと奥歯を噛みしめる。けれど彼はそれ以上は何もせず、ゆっくりと顔を放していった
「・・・」
「次に会ったときはいい返事を期待している」
「・・・先程も言いましたよ。何度来られようと、私はお受けできません」
「そうかな。お前の心に若干迷いと乱れがみえるがな」
「え・・・?」
「意志が揺らいでいる。その分つけ込みやすくて助かるが」
何気ないルッチの一言に、はキスをされたとき以上の衝撃を受けた。まるで心の中を見破られたようでぞくりとした。いつの間にか戻ってきたハットリを肩に留まらせ、ルッチはシルクハットのずれを直し両手をポケットに突っ込む。そして「いずれまたな」と別れの一言を告げてさっさときびすを返して行ってしまった。建物の影の中に溶けこむように消えていく。彼はどこまでも闇の住人なのだ
ルッチが去ってからもまるで彼がそこにいるかのように感じたのはきっと彼に移された血の匂いのせいだ。は壁に手をついて少し覚束ない足取りで石畳の明るい通りに出た。青く澄んではいないのが残念な空を仰ぎ、はぁといつもより大きく息を吐く。ルッチの気から解放されてホッとした。戦闘力では負けないだろうけれど、彼が放つ狂気と殺気には勝てそうにないから
「・・・疲れた」
コテンと壁に頭を預けて横向きでもたれかかる。もうひとつため息をついて、あぁそういえばそろそろつるのところに戻る時間だと現実の空気を取り戻す。せっかく休暇をくれたつるに疲れた顔のままでは戻れない。ぺちぺちと自分の頬を軽く叩いた。そのときだ、不意には背後から肩を掴まれ思わずびくりと跳ね上げた。ルッチが戻ってきたのかと思いこみ、少し困った顔で後ろを振り向いた
「なんですか・・・。まだ何かあるんですか、ルッチさん」
「ルッチって誰だよい」
「ルッチさんというのはですね・・・、・・・え?・・・あ、・・・・・・っ!?」
act 26 : 振り向けば奴がいる 2nd season
まさかのまさかとは思ったけれど。その特徴的な髪型を忘れられるはずがなく。まさかのまさか。そればかりがの脳内を埋め尽くす。は目を真ん丸にして、背後に立つ背の高い彼を見上げた
「マ、マルコさん・・・っ?どうしてここに」
驚きがほとんどだが、若干の呆れも混じる。レスタ島といいリセロ島といい、どうして出かけるところ出かけるところに彼が居るのか不思議でならない。けれどそれは彼も同じ考えらしく、どうして俺が行くところにいつもお前がいるんだとマルコは眉をひそめて頭を掻いている
この世のすべての人々は大きな歯車の上に立って生きている
すべてはその歯車の巡り合わせ、一度歯車が噛み合えばそれが運命
大きく回り一周して戻ってくるのだから、どんなに遠く離れていてもきっとまた会える
※ヒロイン、危険な男に好かれる体質のようです。動物系(ゾオン)に人気です。不死鳥とか豹とかヤガラとか(笑)
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