ドリーム小説
「久しいな、」
そう言って男は黒牛の仮面をゆっくりと外してに素顔を見せた。仮装の衣装も脱ぎ捨てトレードマークのシルクハットを頭に乗せれば、どこからか飛んできたハトが彼の肩にとまった。そこに現れたのはが予想した通りの人物で。が知る、昔の彼と何も変わらぬ姿で。は懐かしさに思わず眼を細めてしまう
「やっぱりあなたでしたか、ルッチさん」
ルッチと呼ばれた男は無表情を崩すこおとはなかったが、彼もまたとの再会に懐かしさを覚えていた。とルッチ。二人は幼き頃、同じ場所で六式の訓練を受けた同志だった。ルッチの方がずっと年上で、が四式まで習得したところで彼はCP9に引き取られていった。けれどそれまでの数年間をともに生き、ともに死線を越えてきた。修練という生き地獄をともにした、血の匂いのする幼なじみ
「お変わりありませんね、相変わらず凄い覇気」
「お前も何も変わらないな。相変わらず甘えと緩さが抜けない」
「あはは・・・。褒め言葉、じゃないですよね?」
「あぁ。侮辱だ」
「やー・・・本当に相変わらず厳しいなぁ」
CP9の実質的リーダーを前にしてもの緩んだ笑顔は変わらない。それに慣れているルッチもの飄々とした態度に苛つくこともない
「でも本当にお久しぶりですね。まだこの街で任務中でしたか」
「あぁ。4年近くもいると飽き飽きしてくる」
「まぁそう言わず。素敵な街じゃないですか。安全で豊かで、なんの不満があると」
「そんなことはどうでもいい。それよりもだ、」
「・・・」
無駄を嫌うルッチはさっさと本題に入ろうとする。も何を言われるかはわかっていた
「何度か海軍本部経由で話がいっているはずだ。それなのになぜ一度もお前からの返事がない」
あぁやっぱり言われた、とは困ったような顔で笑う。笑って誤魔化そうかというの甘い考えは、けれどをCP9へという彼の本気の眼に打ち砕かれる。を睨むように見つめるルッチの表情は険しくなるばかり
「なぜまだあんな生ぬるい海軍の中で生きている」
「生ぬるい、ですか。まぁルッチさんたちからすればそうでしょうけれど」
「海軍本部はお前が生きる場所ではない。俺とともに来い」
「あー・・・残念ですが、ルッチさん。私はサイファーポールの諜報活動にも生殺与奪の特権にも興味がありませんので」
遠慮します。は困ったように笑って緩く手を振る。ルッチのように血を見ることを好む者ならCP9を最高の生き場所とできるだろうが、はむしろ逆だ。自分が怪我をするのは平気だが人を怪我させるのはあまり好きな方ではない。けれどルッチは誘いの手を緩めない
「興味があるかないかではない。資質があるかどうかだ。そして、お前にはCP9に身を置くだけの才がある」
「褒めていただけるのは嬉しい限りですが・・・、ちょっと考えものです」
「何を考える。お前の力、海軍などで腐らせておくにはもったいなさすぎる」
CP9筆頭のルッチが認めるの力。それが如何ほどのものか。ガープはの道力は4000を越えていると言っていた。今の時点ですでにはルッチの上をいっており、それはルッチも感じ取っていた。その恐ろしいまでの力をどこで使う。全身に凶器を忍ばせたような体をもちながら、ゆるゆると笑って海軍本部の生ぬるい湯の中で生きている。それがルッチには我慢ならなかった
「俺とともに来い、。俺たちはお前の力を必要としている」
「必要・・・ですか」
「そうだ」
その力を世界政府のために。ルッチの言葉に、は平静を装いながらも心の中はわずかにざわめいていた。お前が必要なのだ。たったその一言が、今の弱った彼女の心にはひどく響く。必要としてくれる人がいる。必要としてくれる場所がある。欲しかった言葉をくれる。ならば、必要とされていない海軍にいるよりもいいのではないか・・・
「できれば前向きに検討してもらいたい。お前を引き入れること、俺は本気で考えている」
「本気、ですか。ルッチさんの本気は怖いからなぁ。・・・ちなみに私が嫌だと断ったらどうするおつもりですか」
「そのときは実力行使も厭わない」
「うわぁ・・・」
力尽くでも、と舌なめずりをするルッチには苦笑いした
「でもそれはやめた方がいいかと思いますよ」
「・・・?何故だ」
「何故って、理由は簡単です。今のルッチさんでは私には勝てないからです」
「言うな・・・。だがそんなことはお前に言われずともわかっている」
向かい合った相手の力量がわからないほど勘は鈍っていない。ルッチは眉をひそめてを睨むが、その口元には不敵な笑みが浮かぶ
「一対一で捕らえるなどとは誰も言っていない」
「え・・・女一人に大勢でですか?」
「我々は武士道を掲げているわけではないんでな。目的のためなら手段は選ばない」
「はぁ・・・。まぁ大勢で来られても同じですが。結果は変わらないと思いますよ。たとえそちらの柱の影に隠れていらっしゃる方と二人で来られたとしても」
「「・・・・・」」
沈黙の気配が一つ増えたのをは感じ取った。ルッチの片眉がぴくりと上がる。けれどすぐに「さすがだな」との勘の良さを賞賛した
「ばれているのなら隠れていても意味はないな。出てこい」
「・・・」
ルッチに命じられ柱の影から現れたのは黒いワンピーススーツを着こなしたキリッとした表情の美しい女。彼女もまたがよく知る人物。は彼女に笑顔を向ける
「お久しぶりです、カリファさん。相変わらずお綺麗ですね」
「あら、ありがとう。あなたは変わらないわね、」
「そうですか?」
「えぇ。相変わらずの甘ちゃんよ」
「はは・・・」
本当にCP9の人々は昔から変わらずに手厳しい。もはや乾いた笑いしか出ないを、カリファは眼鏡のフレームを押し上げてややきつい眼差しで見つめる
「無礼者なのも変わらないわね。話は聞こえていたわ。ルッチと私でかかってもあなたには勝てないと?」
「あー・・・、はい」
「ふん。言うようになったわね。道力の低い私だけならともかく、ルッチの道力値は4000間近だと知っても?」
「そうですね。結果は変わらないかと」
戦えばきっと私の勝利、あなた方の敗北で終わりますよ。ゆるゆるの笑みでそう言い切るにカリファは視線を更に鋭くし腰に巻いたイバラの鞭に手をかけた。それを見ては緩く両手を挙げ白旗のようなポーズを取る
「待ってください、お二人と戦いたくはありません」
「挑発までしておいてよく言うわ。ルッチが言ったでしょう?あなたを引き込むためなら実力行使も厭わないと。それに、あなたの戦闘能力はリセロ島での戦いで諜報員が測定済みよ」
確かになかなか高い数値が検出されているが、ルッチとカリファの二人で抑えられない程ではない。すると二人がそう考えているのを感じ取ったは困ったように笑って告げた
「リセロ島では力を抑えていました。CP9の方が調査しているとお聞きしたので。だから」
「だから自分の本当の力はもっと上だと言いたいわけね」
「はい。だから、あの・・・もし戦うおつもりでしたら先に『手合(てあわせ)』をお願いします」
「なんですって・・・?」
「一度だけでいいんです。それで私の道力を測ってください。その結果をみて、それでも戦いたいとおっしゃるならそのときは勝負をお受けします」
CP9を前に物怖じしないの発言。はったり、かもしれない。けれどがそんなことを言う性格だとは思えない。カリファは視線でルッチにどうするか問いかけた。ルッチは「面白い」と口角を上げる
「いいだろう。カリファ、手合してやれ」
「本気・・・?」
信じられないという顔でルッチを見れば、彼は細めた横目で「さっさとやれ」とカリファに命じた。ルッチの眼光には適わない。カリファは渋々という顔でと向き合う
「・・・仕方がないわね」
「ありがとうございます。じゃ、左腕肘上に蹴りを入れます。受け止めてください、カリファさん」
「あなたどこまで無礼者なの。馬鹿にするのも大概になさい。もうさっさと攻撃して」
こっちだって忙しいのよ。こんな馬鹿馬鹿しいやり取りさっさと終わらせて!苛立ちのみえる顔でカリファは両手を合わせ、それから攻撃を受ける構えを取った
「六式遊技『手合』」
静かに呟かれた彼女の声を聞いて、はうっすらと笑って「お願いします」と攻撃の姿勢を取る。ゆっくりと深呼吸をして、そして剃で地を蹴り彼女に飛びかかっていった
そしてその数秒後のことだ。の提案をのんだCP9の二人は、改めて検出されたの道力値に余裕のあった表情を大きく変えることになる
act 25 : 道力値8500の女
※の底力。ルッチの力の2倍を軽く超えます
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