ドリーム小説
「グララララ。色恋沙汰に理屈はねぇぜ、息子たちよ。てめぇと相手の生きる道が違うってだけだ」
サッチとエースの息子二人に泣きつかれた白ひげは、酒を飲みながら笑ってそう説いた
「おぉ、説得力ある。さすが親父、人生の経験値が違う!」
「グラララ。煽てても何も出ねぇぜ、サッチ」
「はは、んなつもりねぇって。・・・あー・・・、けどよぉ親父」
「あぁ、わかってらぁ。お前ぇが何を言いてぇかはな。・・・なぁ、マルコ」
白ひげに呼ばれ、マルコは親父を見上げる。トレードマークと同じように笑う白ひげに対し、マルコはやや気まずげな表情を浮かべていた
「俺やこいつらの言いてぇこたぁわかるな」
「あぁ・・・、わかってるよい、親父」
「またえらい相手に惚れちまったもんだな。まさかよりによって海軍本部の大佐とは」
「・・・」
事実を知っても白ひげはグラララといつものように笑ってくれるからマルコを責めるつもりはないらしい。そもそも大海賊白ひげはそのぐらいで腹を立てるほど器の小さい男ではない。だが愛する息子マルコへの助言と警告は忘れない
「俺の船には、敵と恋に堕ちるべからずなんて掟はねぇ。マルコ、お前ぇの好きにすりゃあいい」
「・・・親父」
「グラララ。俺は何も心配しちゃいねぇよ。今更お前ぇがこの船を裏切って敵の女のとこに行くなんてこと、俺は微塵も思ってねぇしな」
「何言ってんだよい。んなの当たり前だろ」
白ひげからの大恩を忘れたことなどない。息子と呼んでくれることへの感謝を忘れるなどありはしない
「だからお前ぇの自由にしやがれ。お前ぇはお前ぇなりに、こうしたいって望みがあんだろうよ」
「あぁ・・・」
自由に生きることを許してくれる白ひげにマルコはようやく頬を緩めた。マルコは右手に彼女が載っている新聞を握りしめ、白ひげの正面に立つ。そして次に出たマルコの言葉に白ひげはにやりと笑い、サッチやエース、周りで話を聞いていたジョズたちは目を丸くするのだった
「親父。俺はこいつをこの船に乗せてぇんだ」
act 12 : 今ならお一人分席空いてますよ
モビーディックが浮かぶ海よりもだいぶ離れた、ここマリンフォード。世界の海の正義を司るここは今日も平和で穏やかだった。鳥が安らかに囀るぐらい平和
そんな本部の一角、軍人が武術などの訓練に使う鍛錬場には一人でいた。本部の出撃がないときはは自主的に鍛錬を重ねて体が鈍るのを防いでいた。いつもはガープやつるが相手をしてくれるのだが、今日は二人とも忙しいため彼女一人で自主練だ。鍛錬場の中の至る所に設置されたマネキン(敵を想定)は彼女の攻撃練習のせいでボロボロになっている。中には体術六式の嵐脚や指銃の攻撃を受けて真っ二つ・穴だらけにされて、もはや使い物にならないマネキンもある
「はぁ・・・」
鍛錬場の入り口に腰掛け、は青い空を見上げてため息をついた。仕事や何かに打ち込んでいるときは集中できるからいい。けれど、こうして一息つくとついついため息が零れてしまう。原因は、・・・きっと「彼」のせい
「白ひげ海賊団一番隊隊長・・・、不死鳥マルコ」
手配書で彼を見つけたあの日から、もう何度その肩書きと名前を口に出したかわからない。なぜか口にしてしまうのだ。なぜか気になってしまうのだ。誰かに特別興味を抱いたのなんて初めてだった。あの日から新聞が届くとついつい白ひげ海賊団の記事は載っていないか探してしまうのだ。それだけでは飽きたらず、終いには自由時間に書庫まで行って過去の記事を漁る始末。・・・はっきり言って重症です
「はぁ・・・もやもやする。・・・外に出たい」
本部に籠もりっぱなしの日々が続き、つい本音が零れる。そんなの独り言を拾ってくれる人が不意に目の前に現れた
チリンチリン♪
「・・・!」
「あららら、おつるさんとこの別嬪嬢ちゃん。一人で自主鍛錬?偉いんじゃないの」
「青雉さん」
額のアイマスクともじゃもじゃの髪型が特徴。海軍本部大将クザンはを偏見の目で見ない数少ない軍人の一人だ。階級差はだいぶある二人だが、クザンはの実力を買っていた。体術六式をすべて使いこなしCP9に勧誘されながら、「今のままで十分です」と笑って勧誘を蹴るの破天荒ぶりも気に入っていた
愛用している自転車を横に控えたクザンはきっとこれから海にお出かけなのだろう
「青雉さん、お散歩ですか?」
「あぁ、まーそうだな。ちゃん、ヒマ?」
「暇・・・と言われたらまぁ暇ですが」
自主謹慎中なので、鍛錬以外に特にやることはない。クザンは特徴ある厚い唇を上げてニッと笑った
「じゃ、一緒に行くかい。今ならお一人分席空いてますよ」
「え」
クザンは自転車の荷台をぽんぽんと叩いてを誘う。にとっては嬉しいお誘いだったが、一応大人しく生活している身分なので。はて、どうしたものかとちょっと迷う
「うーん・・・」
「あぁ・・・、自主謹慎中だっけちゃん」
「はい」
「まぁ、いいじゃないのよ」
「青雉さん、相変わらず適当ですね」
「だってそれが俺のモットーだからね」
出撃するわけじゃないんだし、ただの散歩だから。「ほら」と手を差し伸べるクザンを見上げ、はしばらく考えてから「じゃ、・・・お言葉に甘えて」と彼の手を取った。久々の海への外出にの胸は心躍る
「レイダー。の姿が見あたらないね。どこ行ったんだい?」
昼を少し過ぎた頃、長い会議がようやく終わったつるは「鍛錬の相手をしてほしい」と言っていたを探していた。部屋にも鍛錬場にもいない。財布やら携帯用子電伝虫も部屋に置きっぱなしなのを見ると、街に出かけたわけでもなさそうだ。問われたレイダーも首を傾げるばかり
「存じません。自分も探しているところなのですが、見当もつかず」
「まったく・・・。大人しくしていろって言われて、10日程度しかもちゃしないね」
「どうなさいますか。全体放送でお呼びいたしましょうか」
「いや、いいさ。お腹が減ったら帰ってくるだろうよ」
「そうですね」
まるで犬か猫のようにを扱う保護者二人。しばらく放っておこうと決めたところで、二人の話が聞こえたらしい通りすがりのガープがひょっこり顔を出してきた
「を探しとんのか?」
「おや、ガープ。起きたのかい。会議中盛大に寝こけていた奴が」
「おつるさん。そいつぁ言わねぇ約束だろ」
痛いところを突かれ、ガープは苦笑して頭を掻く。レイダーはピシッと敬礼でガープと向き合った
「ガープ中将。大佐の居所、お心当たりがおありですか?」
「あ?心当たりっちゅーかの、わしはを見かけたぞ」
「え?一体どちらで」
「ならついさっき、青雉のクソガキとチャリンコで出かけたぞい」
「は・・・!?」
「・・・まったく、あの子は」
言うこと聞きゃしないんだから・・・。つるはこめかみを押さえ、レイダーは疲労にがくりと肩を落とす。ガープばかりが腕を組み、「なんじゃい。なんか問題でもあるのか」と不思議そうにしていた
「まぁ、正式な訓告ではないので問題はないのですが・・・」
「あ?」
「あの子はね、今自主謹慎中なんだよ。この間の出撃で馬鹿やってきたからお仕置き中なんだよ。それなのに海に出かけたりして・・・、まったく」
「なに・・・?ぶは・・・、ぶわっはっはっはっ!に謹慎?あの子を陸地に留めておこうとしたのか。そりゃ無理に決まっとろう」
そんなこと、おつるさんあんたが一番よくわかっとるはずじゃがな。ニッと歯を見せてガープは笑う
「あの子は海の子じゃぞ。抑えつけても、本能が海に出たいと体を突き動かす」
「・・・」
「自由にさせてやれ」
「・・・わかってるよ」
ガープの言葉が理解できるつるは目を閉じて静かに息を吐く。意味の分からないレイダーばかりが首を傾げて立ちつくすのだった
※白ひげは器の大きい男でいてほしい。息子の好きな人が海軍でも海賊でも「グラララ」って笑って許してくれればいいな
大佐の意外な強さをちょっとだけお披露目。六式使いです。それだけじゃないのですが、彼女の実力をいつかどこかで書きたいな
ガープ爺ちゃんとつる婆ちゃんは、の過去を含め秘密を知っているようです
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