ドリーム小説
レスタ島への偵察から戻ってきて以来、マルコの様子がちょっとおかしかった
とはいっても仕事はそつなくこなすし、敵船が来ればすぐさま指揮を執って仲間をまとめるし、そういうところは何も変わりないのだが。おかしいと感じるのは、何もない平和な時間なときだ。宴会を開いていても一人甲板から海を見つめたり、以前はそれほど好んでもいなかった胡桃を食べるようになったり、ニュースクーの新聞なんて読んだらすぐに捨てていたのに大事にとっておくようになったり
「マルコ隊長、どうしたんすかね」
「なんかため息つく回数も増えてきた気がするな」
1番隊の隊員たちは陰からマルコを見守り心配していた。声のかけられない部下たちに代わり、状況を動かしたのは馬鹿騒ぎ好きのこの二人、サッチとエース。この二人があるとき何気なく言った冗談が始まりだった
「なーによ何なのよ、マルコ隊長。んな物憂げなため息なんてついちゃって」
「・・・サッチ、うるせぇよい」
「ちょっと酷いんじゃねぇの。こっちはお前のこと心配してやってんのに」
「おもしろがってるようにしか見えねぇよい」
船に寄りかかって一人酒していたマルコに声をかければ、つっけんどんに返される始末。そっぽを向くマルコに今度はエースが声をかけた
「なぁ、でもマルコ本当に何かあったのか?レスタ島から戻ってきてからおかしいぜ」
「(よく見てるよい、エース・・・。)や、なんもねぇさ。・・・そんなに俺はおかしいかい」
「おかしいっつーか・・・、なんか」
「なんか?」
「・・・言いづれぇけど」
「・・・。いいぜ、言ってみろよい」
エースは仲間の中では末っ子の部類。弟のような存在だからとマルコは余裕に構えてエースに続きを促した。これが間違いだったと後悔することになるのだが。エースは「じゃぁ」と思い切って言ってみた
「なんつーか・・・、恋煩いに見えるっつーか」
「ぶはっ!・・・うぉいうぉい、エース。何言ってんだよ、お前」
エースのびっくり発言に噴いたのはサッチ。せっかく口に含んだ酒が霧状になって宙を舞う。ごほごほと噎せ、涙目でエースの肩を叩いて笑った
「お前、なかなか言うじゃねぇか。天下の1番隊隊長様に向かって」
「だってマルコが言ってみろっつーから。俺だって冗談半分だよ」
「ははは、だよなぁ。うはー、びっくりした。まさかあのマルコが恋煩いって」
「冗談も程ほどにしろよ」とサッチは笑う。エースもつられて「だよな」と笑う。そして二人はやたらと静かにしているマルコの方を向いた。マルコは二人に背を向けてしまっていた。あちゃぁ、呆れられたか・・・と苦笑する二人は、けれど意外なものを目にするのだった
「あ・・・あれ?マルコさん・・・?」
「え・・・。あ・・・マジで?マルコ・・・まさか」
「・・・・・・」
髪型のせいで隠せないのだからそれは観念するしかない。背を向けたマルコの両耳は誰から見てもわかるぐらい真っ赤になっていたのだった。それはもはや肯定以外のなにものでもなく、その日マルコはサッチとエースを楽しませる恰好の餌食となったのだった
act 11 : 不死鳥恋煩い注意報
海賊仲間のサッチとエースという兄弟分二人が俺のプライベートにずかずか入り込んできて、あまりにもうざすぎてどうにかしたいのですが何か良い案はないでしょうか?
今朝食の席で読んでいるニュースクーの一角にある『お悩み相談コーナー』に本気で投稿しようかマルコは考えたりした。そのぐらいサッチとエースの絡みっぷりはうざかった
「なーんかな。信じらんねぇよな・・・、あのマルコがなぁ」
「ホントだよなぁ。俺もいまだに嘘なのかなって思うけどさ。・・・あのマルコがなぁ」
サッチとエースは顔を見合わせ、にやりと笑う
「「恋煩いって」」
「・・・」
食事中のマルコのそばまで行って、わざわざ本人に聞こえる声で言う辺り意地が悪い。マルコは食卓に新聞を広げ、コーヒーをすすりながら聞こえないふりをした
「あ、無視しやがって。聞こえてるくせに」
興味津々な二人はマルコの両隣の席にどっかりと座りこむ。マルコの眉が歪む。あぁ・・・めんどくせぇ奴らが来たよい。関わりたくないとマルコは新聞に視線を向けたままコーヒーカップを傾ける
徹底的に二人を無視するマルコと、懲りずにちょっかいを出しに行くサッチとエース。一昨日辺りから続いており、マルコはいい加減うんざりしていた
「なぁなぁ、マルコ。マジなの?」
「・・・」
「本気なのかよ、恋煩いって」
「・・・」
「俺はまだ信じられねぇなぁ。だって一番隊隊長不死鳥のマルコって言ったら、あれだぜ。エース知ってるだろ?」
「あぁ、有名だよな。マルコの武勇伝は」
マルコの隣でエースはソーセージやらオムレツやら頬張りながら語る
「陸地に上がれば女にモッテモテ。知らぬ間に女とともに姿を消し、明け方首にキスマーク付きで帰ってくる。のくせ、恋人はつくらねぇ一匹狼」
「・・・」
「そうそう。娼婦だろうが生娘だろうが、目ぇつけた女は必ず堕とす。そして遂についたあだ名が『夜のスナイパー』、」
「・・・っ聞いたことねぇよい、そんなあだ名!」
さすがにずっと黙っていたマルコもそれにはつっこみたくなった。「お前ぇら、俺のことなんだと思ってんだよい・・・」とテーブルに頬杖をついて呆れた顔をする
「お前ぇら、いい加減にしろい。・・・んなつまんねぇことで人のことからかって面白ぇかよい」
どっとため息をつけば、サッチとエースはむしろ目をキラキラさせる始末
「超おもしれぇ。だって今まで恋愛に本気になんなかったお前が恋しちゃった相手だぜ。興味あるに決まってんだろうが」
「なぁ、マルコ。どんな子なんだよ、俺知りてぇな」
「・・・エース。お前ぇ、だんだんサッチに似てきたよい」
悪友に毒されてきた弟分にマルコはちょっとがっかり。瞳を輝かせて興味津々の二人を交互に見て、マルコは眉を上げて意地の悪い顔で笑う
「教えてやってもいいけど、高ぇよい」
「なにぃ?ひでぇな、金とんのかよ」
「慰謝料だよい。俺の平穏な時間を返しやがれ」
「ケチケチすんなよ!教えてくれよ、マルコォ!」
何がそんなにこいつらを突き動かすのか(戦闘のない日々はそんなに暇なのか)。まだ新聞を読んでいるにもかかわらず、サッチはマルコの背中に、エースはマルコの腹にべったりとくっついて駄々をこねる。これにはさすがのマルコも参った
「うぉい!放れろよい、お前ぇらっ。エース!」
「いーやーだー!マルコが教えてくれるまで放れねぇ」
「どんだけ駄々っ子なんだよい・・・っ、サッチてめぇまで」
「いーじゃねぇかよ。相手教えるぐれぇ、減るもんじゃねぇし」
「・・・、ぐ・・・っ」
邪魔だお前ぇら!とマルコが叫ぶも二人は放れず、周りで見ている連中も微笑ましげに見守るばかり。うざったくて仕方ねぇ・・・、もういい加減にしやがれ!マルコはもはや秘密厳守よりもとっととこの駄々っ子二人をどかしたくてたまらなかった
「あぁー!うぜぇ、お前ぇら早くどけ!どかなきゃ一生教えてやんねぇよいっ」
「え!マジ!?教えてくれんのかよ、マルコ?」
「おー!退く退く、急げエース!」
言うが早いかささっとマルコから離れていく二人に、何だか上手い具合にやられた気がしてマルコは渋い顔をする。だが言ってしまったものは取り消せない。期待いっぱいに待つ二人に観念し、マルコはため息をついて今広げていた新聞の一角を指さした
「え、なに、新聞に載ってんのかよ。有名人?どっかの島の歌姫とか?」
「すげぇ、マルコ。そうだよな、そんぐらいの女じゃなきゃマルコには釣り合わねぇよな」
「・・・うるせぇよい、エース。黙って見ろよい」
「え?どれだ・・・。これって、この間お前が偵察に行った島の記事だろ?海軍とオーロラ一団の戦いのことしか載ってねぇぞ」
「ちっ・・・。よく見ろよい。ここだ」
「へ・・・?」
マルコの指の先に二人は注目する。そこにあったのはレスタ島の戦いの様子を映した写真で。更にマルコの爪の先にいたのは、スーツにベスト姿で戦う長い白髪の女。なかなかの美人だ。マルコ好みの女だ。そこまではいい。だがサッチとエースの目は点になったまま元に戻らず、新聞の写真とマルコを行ったり来たりして何度も確認している。彼らの何か言いたげな視線がとにかくうざかった
「・・・」
「・・・」
「何か言えよい」
「やー、・・・その」
「あのぉ・・・、まさかとは思いますが、マルコさん」
「何だよい」
「・・・これ、・・・この人、海軍本部の軍人ですけど・・・」
「わかってるよい」
だからなんだってんだよい。ふんっと鼻息荒くふんぞり返るマルコは冗談を言っているようには見えず。マルコが本気であることを知り、サッチとエースは二人揃って腰を抜かすのだった
「お、親父ぃ・・・!!」
「マ、マルコがおかしくなっちまった・・・!!」
「何なんだよいお前ぇらは!!」
鬼のような形相の不死鳥に追われた息子二人に泣きつかれ、白ひげは自慢の髭の下の大口をにぃっと持ち上げて笑うのだった
※マルコは照れ屋だといい。クールを装っていたりするといい(勝手な願望)
からかうサッチとエースを書くのが楽しくてしかたありません。仲良いなぁ、白ひげ一団
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