ドリーム小説
ひとつ、気になることがあった
つるとレイダーのお説教後、とりあえず風呂に入ろうと着替えをしていたは、いつの間にやらスーツのズボンのポケットに入っていた見覚えのない物に気付いた。逆さまにしたズボンからコロンと転がり落ちてきたのは
「・・胡桃、の殻?」
指でつまみあげてしげしげと眺める。それは乾いた胡桃の殻、の片割れ。がレスタ島の酒場で食べていたものだ。いつの間にポケットに?自分で入れたのだろうか。酔っていたからよく覚えていない
「あの人、かな・・・?」
ふと脳裏を横切ったのは、酒場から夜をともにした彼の顔だった。けれど彼が胡桃の殻をに託した意図もわからないし、確信もない。捨ててしまおうか・・・。一度はゴミ箱の上に持っていった手を、しかしは再びデスクの上へ戻し、机の上にコトリと殻を置いた。取って置いたからといって何になるわけではないけれど、どうしてか捨てられなかった。それはきっと彼の顔を思いだしてしまったから
『あんたが気に入ったんだよい』
嘘でもいい。そう言われたとき、確かに嬉しいと思えたから
「あの人・・・、何者なんだろう」
窓の外に目を向ける。青い空に白い雲が浮かんでいた。名前の知らない鳥たちが悠々と大空を飛んでいるのを見ながら、そんなことをふと考えたりした
act 10 : 彼が海賊だと知った日
レスタ島から戻ってきて数日が経った、とある日のことだった
お説教されたこともあり、はここ数日は本部内で静かに過ごしていた。ガープ指導の元で鍛錬に明け暮れたり、レイダーが両手いっぱいに抱えてくる書類の処理をしたり、マリンフォードの街中をぶらぶら散歩したり。欠伸が出そうなほど平和な日々を過ごしていただった。そんなゆるゆるの彼女の脳天にピシャリと雷が落ちてきたのは、これまたのどかな陽気の午後のことだった
コンコン。軽いノック音の後、「失礼します」と声がして入ってきたのはの部隊の年若い二等兵士。彼の両手にはタ○ンページ並に厚みのある書類の束が抱えられていた
「大佐。最新版の手配書をお届けに参りました!」
「はい、ありがとうございます」
「どちらに置けばよろしいでしょうか?」
「えーと・・・、じゃこっちまでいいですか?今ちょっと手が放せなくて」
「了解しました!」
若いだけあって元気いっぱいの海兵はのデスクまで歩み寄り、彼女の前にそっと手配書の束を置いた。大量の書類にサインと捺印をしていたは顔を上げ、海兵ににこりと笑顔を向ける
「ご苦労様です。いつもありがとうございます」
「いえ。大佐こそお休みもなくお疲れ様でしょうから、・・・(・・・あ)」
「・・・?」
敬礼のまま動かなくなった海兵には首を傾げる。海兵くんはの首筋に何かを見つけたご様子で、彼女からすっと視線をそらした。の方に向いた彼の耳がやや赤みを帯びているのに気づき、彼が何を見たのかも合点がいった。の首筋には数枚の絆創膏が貼られている。きっとそれのせいだ。隠されたその向こうを想像したのだろう。レイダーのお説教を思い出す。「お隠しください。若い海兵には刺激が強いんですよ」
「・・・」
「時間大丈夫ですか?10分後には水中訓練が始まりますよ」
「あ、・・はい!失礼します!」
海兵は慌てた様子で部屋を後にしていった。はふぅとため息をつき、首筋の絆創膏を指で撫でた。ただの痣だから痛みはない。けれど不思議なことに夜になると体中につけられた痕が燃えるような熱を発するのだ。こんなこと今まではなかったのに・・・
は手配書の束を引き寄せてページをめくった。定例会議があるたびに分厚くなっていく手配書。すべてに目を通すのは結構な時間がかかる
「わ。また随分とルーキーが増えてる」
左手で頬杖ついて、右手でパラパラとページをめくって流し読みしていく。どの海賊もみな良い感じに悪党面をしている。しかも、どれもこれも似たような顔が多くて暗記しようにも覚えきれない
「四皇の額は相変わらずかぁ・・・、あ。赤髪の額が上がってる」
赤髪の手配書に記された「0」の多さに思わずは嘆息する。グランドライン三大勢力の一角を担うのだから当然の額か。他の四皇も同様か、それ以上の額がついている。そのまま何気なくめくっているとページが白ひげ海賊団の域に入った。もう何十年も海賊団の頂点に君臨する一軍だ。これもまた額が桁外れだ。ページ数が多すぎてじっくり見ている暇はない。は1ページ3秒程度のスピードでめくり続けていた。けれどリズム良くめくっていたその手がピタリと止まる時が来た
「え・・・・・・?」
の両目が真ん丸になり、止まったそのページの手配書の写真に釘付けになる。そこに映る見覚えのある顔にの頬をたらりと汗が流れ落ちた
"白ひげ海賊団一番隊隊長 『不死鳥マルコ』"
戦闘後の写真だろうか。顔は煤だらけで額からは血が流れており、負傷した肩に蒼い炎を灯している。何よりも、ぺろりと舌なめずりするその仕草は、レスタ島で彼がに見せた表情そのもの
「え・・・、・・・えぇっ!?」
衝撃的な事実をつきつけられ、は目を白黒させる。なんということだ・・・、まさかのまさかだ。何が賞金首ハンターか。彼はれっきとした海賊だ。しかも世界の海を揺るがす白ひげの右腕的存在ではないか
(なななんで・・・、嘘・・・っ、そんなことってあるの!?)
の頭の中はプチパニック状態。目の前に大悪党の一角がいて、捕らえる絶好の機会を逃がしてしまうなんて。海軍将校としてどうなんだ。あぁ・・・ばれたら絶対怒られる。しかもの場合それだけじゃない。大海賊の大悪党相手に体を許してしまうなんて、不貞のでもいまだかつてないことだった。白髪の頭を両手で抱え「うわぁ・・・っ」と唸っていただったが、ふと思い出す
「あの人・・・、私が海軍の人間だって知ってた」
別れ際の会話を回想する。そうだ。子電伝虫のメッセージを聞かれてしまったから、彼はが本部大佐であることを知っていた。素性も名前も。ならば、それが分かった上で彼はに言ったことになる
『俺のもんにするよい』
「・・・、・・・」
彼の言葉が脳裏に蘇る。はますますもって訳が分からず混乱する。海軍と海賊。正義と悪。対極に立つ者同士、交わることはできないはずなのに、彼は何を考えてそんなことを言ったのだろう。彼の真意がわからない・・・
『次会うのはきっと海の上だな』
「そうでしょうね・・・、きっと」
あのときの彼のにやりと笑った意味を知る。同じ海に生きる者同士、再会する可能性は十分にあるだろう。ただひとつ覚悟しなければいけないことがあるとすれば、それは次に会ったとき二人は確実に敵同士。刃を交わすこともあるということ
の指が首筋の痕を絆創膏の上からそっと撫でる。彼につけられた痕がチリリと燃えるように熱を放つ。まるで"会いたい"と言っているかのように・・・
※すみません、マルコの手配書写真捏造しました。あんな表情で写ってたらいいなぁ・・・(妄想)
2人一緒に出てくる場面が少なくてすみません・・・
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