ドリーム小説
自分を見下ろすシチロージの目が言っていた。
とぼけても無駄だ、と。
自分は全てを知っている、と。
シチロージの目に嘘やはったりの色は見えなかった。
だからも、割とあっさり白旗を振ってみせた。
「どうしてシチさんがそんなこと知ってるの?」
シチロージにベッドの上に組み敷かれたまま問う。
シチロージもまた、割とあっさり事の真相をばらしてくれた。
何でも、つい先日の酒の席でのこと。
いつも冷静で乱れることのないヒョーゴにしこたま酒を飲ませて、本人から根掘り葉掘り聞いたんだとか。
「そういえばお酒弱かったなぁ、ヒョーゴ・・・」
ばれてしまっているのなら、もうとぼける必要もない。
は自然な口調で彼を親しげな呼び名で呼んでみせた。
シチロージがふっと笑う。
「小悪魔なお嬢さん」
「うん?」
「あんたにも聞いてみたいことがあるんですぁ」
シチロージはの両の二の腕を掴むと、ぐいっと引っ張って上半身を起こしてやった。
自分はシーツの上で胡坐をかき、真正面に鎮座するを真っ直ぐ見つめて、にやりと笑った。
「あんた、どこまで本気なんです?彼との関係に」
恋
するアルビノ 2
彼との関係
ヒョーゴとわたしの関係
そんなの今まではっきりと考えたこともなかった
は自分の中で自問自答する。
好きだとも、愛してるとも言ったことはないし、言われたこともない
好きなときにキスして、セックスして、体だけの関係
ヒョーゴとわたしの関係
何だろう
本気かどうか考える前に、それすらわからない
気持ち悪いなぁ
なにか、明確な定義はないのかなぁ
「ヒョーゴ殿が言ってやしたけど、付き合っているわけじゃないんでしょ?」
「うん」
「体だけの関係なんでしょ?」
「うん」
シチロージの質問に、は淡々と答えていく。
揺らぎのない目でじぃっと見つめてくるに、シチロージは眉間に皺寄せてため息を吐いた。
「お嬢さん・・・それね」
「うん」
「世の中じゃ、セフレって言うんですぜ?」
「うん。知ってるよ。知ってるけど・・・・」
「けど?」
そこで珍しく、は少しだけ困ったように、悲しそうに、笑った。
面と向かって言われると、やっぱり抵抗あるなぁ
は肩をすくめて苦笑いしてみせる。
軽い拒絶の意を見せたに、シチロージは興味をひかれた。
「彼氏彼女ってわけじゃぁないんでげしょ?」
「うん」
「なら、やろうと思えばあたしとだってできるって?」
「うーん・・・・・・・・・・・」
冗談半分に意地の悪い質問をしてやれば。
あっさりと肯定の返事が返ってくると思ったのに、はたっぷり時間をかけて唸り、そして。
「ごめんね、シチさん」
綺麗な手を顔の前に真っ直ぐ立てて、は苦笑して「だめ」と拒絶した。
を誰とでも寝る商売女だと思っていたわけではない。
だが、もっと曖昧な答えが返ってくるのだとシチロージは予想していたのだ。
意外にもすっぱりとした返答に、シチロージは少々面食らった。
「ヒョーゴ殿とは寝られて、あたしとはダメって・・・。ちょいとプライドが傷つくんですがね」
「ごめんね。シチさんが嫌いなわけじゃないんだけど」
「だけど。何です?セックスするんなら、別にヒョーゴ殿とじゃなくても構わんでしょ」
もしかしたら、あたしの方があんたのこと癒してあげられるかもしれないじゃありませんか
女を口説く時の極上の笑みでを見つめてにやりと笑い、彼女の手を取って甲に軽く口付けた。
はといえば、そんな彼に流されることなく、くすりと余裕の笑みを浮かべていた。
「だめ。シチさんとはできないよ」
優雅な仕草で彼の手元から手を引く。
不満げな顔をするシチロージに、は目を伏せて唇で笑った。
「恋人がいる人とはしない主義だから」
「ほぉ。そいつぁまたご立派な志しで」
「うん。だからね、シチさんはユキノさんを大切にしなきゃ」
「なら、あたしがユキノと別れたらヤッってくれるって?」
「私とするためにユキノさんと別れるの?そんなシチさんはやだなぁ」
「ほら。そうやってもっともそうな理由を作って、あんたは逃げるわけだ」
苦笑いしながら話しをしていたを、シチロージは鋭利なナイフで斬って落としてみせた。
の表情からゆっくりと笑みが消えていく。
ねぇ、お嬢さん
閉じていた心のドアの隙間から、するりと刃物を突き通すような鋭い言葉。
いつも飄々としたの顔から笑みが消え、見たこともない真剣な表情でシチロージを見つめていた。
「あんたがあたしと寝ないっていうのは、本当はそんな理由じゃないんでしょ?」
「・・・どうしてそう思うの?」
どうして?
どうしてそう思うの?
他にどんな理由があるっていうの?
滅多に波立つことのないの心が、珍しく困惑している。
色素の薄い彼女の眼が、ゆらゆらと揺れている。
いつも冷静な彼女の心乱れる姿。
それは男から見れば、純粋に可愛いと思えるものだった。
「なんだかですねぇ」
「なに・・?」
「ちゃぁんと素直な可愛い顔もできるんじゃありやせんか」
シチロージはにっと笑って、真向かいに座るに向かって「おいでおいで」の仕草をしてみせた。
された方のは、いきなりのことに訳がわからず、パチパチと瞬きするだけ。
「なに?・・・って、ひゃ!」
シチロージの突然の行動には慌てるばかり。
いきなり彼に片腕を引っ張られ、はバランスを崩し、シチロージの胸に頬を押し付ける形になってしまった。
彼の鍛え上げられた胸板に手をついて上を見上げようとすれば、今度は手を後頭部に添えられ、頭を彼の胸へと押さえつけられてしまった。
ぎゅっと抱きしめられ、完全に身動き取れない。
「・・・シチさん?」
呼んでもシチロージは答えない。
どうしたのだろうと思っていれば、彼の手がの頭をぽんぽんっと2度叩いた。
それから、まるで小さい子をあやすように、の頭をゆっくりと撫で始めた。
「シチさん・・・?」
「・・・・・・」
「わたし、子どもじゃないよ?」
言っても、シチロージのあやす手は止まらない。
仕方なくも体の力を抜いて、シチロージの胸に身を預けた。
堅い胸板の向こうから、力強い鼓動が聞こえてくる。
ヒョーゴの心音とは、やっぱり違うなぁ・・・
無意識にそんなことを考えていた。
の耳に、優しい声が降ってくる。
「強情でげすなぁ、お嬢さんの心は」
「え?」
「そんなに言葉にするのがお嫌なら、あたしが代わりに言ってあげやしょうか?」
シチロージの手が、ぽんぽんとの頭を優しく叩く。
シチロージの手が、とんとんとの背中を優しく叩く。
「さん。あんたはね、・・・・・・本当はあたしに抱かれるのが嫌なんじゃぁない」
「・・・・・・」
「本当はね、」
本当は、ヒョーゴ殿以外の男に抱かれるのが嫌なんじゃぁありやせんか?
シチロージの胸に手をついていた、の指先が緩く白衣に爪を立てる。
きゅっと指先で白衣に皺を作り、は静かに目を閉じた。
シチロージの言葉が、抵抗なくするりと耳から入ってきて、を圧倒させる。
彼の読心は自分より上かもしれない、と思わずにはいられなかった。
「あんたは知らず知らずのうちに、彼に恋しちまっていたわけだ」
違いますかね?と、ほとんど確信しているくせに、シチロージは念を押す。
目を瞑る、の口元にうっすらと笑みが浮かんで、それはだんだんと深いものになっていった。
どうしてだろう
窓のない地下室みたいだった私の心に
すぅっと一筋の風が吹き込んできたよ
"シチさんには、敵わないなぁ・・・"
わたしは本当は心のどこかでそれを望んでいたのかもしれない
ヒョーゴじゃない誰かが心の奥を見透かしてくれるのを待っていたのかもしれない
「・・・・・私の負け、だよ・・・・・・・シチさん」
彼の手が私の頭を2度叩く。
それはまるで、「よく言えやしたね」と褒めてくれているかのようで。
私は彼の肩に額を押しつけて、じわじわと熱くなっていく瞼の向こうの彼に想いを馳せた。
すみません、次で終わりです
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