ドリーム小説
あまり体が丈夫な方ではない私は、しょっちゅう貧血で倒れては保健室のお世話になる。
そのおかげで保健医のシチさんとはすっかり仲良しさん。
シチさんは金髪に青い目のなかなかに恰好いい先生で、女子たちからの人気も高い。
でもシチさんにはユキノさんていう恋人がいることをみんなは知らないみたい。
私も、彼は素敵な大人の男性だと思う。
でも恋愛の対象として見たことはない。
先生と言うより、大人の男と言うより、まるで旧知の友人のようなさっぱりした関係。
なんだと、私は思っていたのだけれど。
どういうわけかな。
ただいまの時刻、午後の4時50分。
帰りのホームルームも終わり、校内に残っている生徒も残りわずかという時間。
場所は保健室のベッドの上。
起きあがろうとしたところにストップをかけられて。
シチさんにキスされている私がいるんだけれど。
恋
するアルビノ
どうもお世話になりました、と。
いつものように一言告げてベッドから起きあがろうと肘をついたところで。
それはもういきなり。
何の前触れもなく、不意打ちのキスをされた。
―――・・・・シチ、さん?
唇を合わせたままぱちくりと瞬きすれば、超至近距離で笑うシチロージの青い目が見えた。
保健室の時計の針が、カチ・・コチ・・と時を刻む音だけがする。
カチ・・コチ・・カチ・・コチ・・
たっぷり15秒分のキス。
彼の唇がゆっくりと離れていき、に向けてふっと余裕綽綽の笑みを浮かべた。
「ご馳走様で」
「なに?いきなり」
本当になんなのだろう。
じっと見上げるの顔を見て、彼は楽しそうににっと笑った。
「おやまぁ。慣れてるって感じでげすねぇ。キスくらい、どーってこたぁない?」
「そんなことないよ。これでもわりと驚いているんだけどな」
そう言うわりにはは随分と落ち着いているように見えた。
彼氏でもない男にいきなり唇を奪われたというのに、眉一つ動かさない。
普通の女子高生らしい感情が欠落しているというか。
色素の薄い綺麗な目で真っ直ぐにシチロージを見つめていた。
「シチさんって結構手、早いんだね。今までもこうやって女の子に手出してたとか?」
「人聞きの悪い。嬢だけでげすよ」
「はぁ・・・。なるほど、そういう殺し文句で口説き落としてきたんだね」
「おやおや・・・。つれないお人でげすねぇ」
さもがっかりしたような台詞をはきながら。
だが言葉とは逆に、シチロージは余裕の笑みでの頬に指を滑らせる。
彼の冷たい義手の感触が、は嫌いではなかった。
「お嬢さんが珍しく可愛らしい顔で寝てるもんだから。思わず手を出してみたくなってしまいやしてね」
「うーん・・・つまり、いつもは可愛くないと」
にっと唇を綺麗に上げて笑うは、まるで可愛い小悪魔のよう。
シチロージもそれに合わせて、の顎に指をかけて持ち上げる仕草をした。
「普段のお嬢さんはすました猫みたいだからねぇ」
ゴロゴロと、本物の猫にするように、の喉をさする。
もそれに合わせて、本物の猫のように気持ちよさそうに目を細めた。
「よく言われる。生意気だって」
「んー・・・いぃや生意気とはまた一味違う」
それからシチロージは視線を左上に投げて考えるポーズをとった。
「年のわりに冷静で狡猾で・・・」などとのことを評していたかと思えば。
すっきりした顔をして、「あぁ」と何かを思いついたような顔をした。
「猫というより、蛇に似てるかもしれやせんね」
「蛇?」
「あぁ。それも混ざりけのない、白蛇だ」
蛇
その響きに、は懐かしさを覚えた。
―――蛇・・、かぁ。
あぁ、そう言えば。
以前、『彼』にもそんなことを言われたことがあるなぁ。
『。お前の前世は・・・蛇かもしれんな』
因縁めいた言葉だ。
世の男の目には、自分はそんな冷たく狡猾な生き物に見えてしまうのか。
赤い目で男を誘惑して
白く細い身体で男の肢体にまとわりつく
淫靡で穢れた生き物の姿が脳裏を横切る
肘をついて中途半端に上半身を起こしていたは、シチロージから顔をそらして伏目がちに保健室の床を見つめた。
長いまつげが綺麗に揺れて、彼女の口から悩ましげなため息が零れる。
『彼』の言葉を想起する。
今ここにいない、男のことを考えるの顔は、ひどく艶めいてシチロージの目に映った。
「色っぽい顔してやすねぇ。誰のことをお考えで?」
「え?・・・・ぁ」
不意をつかれて肩を押され、再びベッドに身を沈めさせらる形になった。
シチロージの左の義手が、の細い右手首を彼女の顔の横に縫い付ける。
白い枕の上に広がる、の細い髪。
小さな獣を狩る獅子のごとく、シチロージは彼女を真上から見下ろしてにぃっと笑う。
絶体絶命のはずなのに、だがはといえば、まるで動じていない冷静な顔で彼を見上げていた。
「ホント。冷静でいやすねぇ」
「こんな小娘になんか手出して。ユキノさんにばれても知らないよ?」
「ご心配には及びませんで。ユキノとは今、喧嘩中でしてね」
「はぁ、それじゃ私はその間のユキノさんの穴埋め?」
「いやいや、まさか」
シチロージは苦い顔で笑い、生身の右手をの口元に寄せた。
男の人にしては繊細な指先が、の唇を軽く押しつぶす。
その指が、今度は彼女のネクタイの結び目に引っ掛けられ。
シュルリ、と器用にストライプのネクタイを緩めた。
「シーチさん・・・」
「はい?」
シチロージの顔はあくまで楽しげで。
今度は彼の指がのブラウスのボタンにかかった。
プツリ、プツリ、と4番目のボタンまで外されて、透けるような白い素肌と相反する藍色の下着がさらけ出される。
その間はシチロージの手を払うでもなく、彼の行為をじっと見つめていた。
シチロージの顔が近づいてくる。
唇に軽いキスを落とし、頬に口付け、彼女の柔らかい耳たぶを甘く噛んで。
左手は自由なのだから、彼の頬を叩いて拒むこともできた。
だがはシチロージの頬を叩くでもなく、黙って彼の好きなようにさせていた。
『彼』とは違う唇の感触。(シチさんの唇はよく手入れされていて柔らかい)
『彼』とは違う体温。(シチさんの体は、義手を除いてすごく熱い)
『彼』とは違う匂い。(シチさんの体からは、保健室の薬の匂いがする)
シチロージの唇が鎖骨まで降りてきて、開いたブラウスから見える両胸の間にそっと口付けた。
スカートからブラウスを引っ張り出して、生身の熱い手のひらが女の細い腰の線を撫でる。
触り方も、感じさせ方も、『彼』とは違う。(シチさんは、すごく繊細な手つきで女を扱う)
亡羊と天井を眺めていた。
の体がぴくりと跳ねる。
不意にシチロージの右手がスカートの中に侵入してきて。
それまで全く動じていなかったの体も、さすがに反応を返した。
白い太股を、女の熱を上げる手つきで撫で上げられ。
これ以上は流石になぁ、とがストップをかけようとしたところで。
ゆっくりと、彼の方から動きをとめていった。
「やらしい顔してる」
「え?」
「男を喜ばせ慣れてやすねぇ」
「そ、かな」
「あぁ。もっといい顔も見てみたいんでげすがね。これ以上は、ね」
好き勝手いじくりまわしていた彼女の身体から、シチロージはわりとあっさり身を引いた。
自分で外したブラウスのボタンを、下から順に掛け直していく。
突然のシチロージの変化に、だがも戸惑うことなく平然と彼の動きに合わせた。
「やっぱりユキノさんにあわせる顔がない?」
シチロージが衣服を整えてくれるのに素直に身を任せ、無邪気に彼に笑いかけた。
なんだかんだ言ってシチロージはユキノにぞっこんなのだ。
悪戯めいたことはしても、一線を越えるようなことはしないのだろう。
そう思っていた、の考えは、だが正解ではなかった。
ブラウスのボタンを、一番上を除いて掛け直してくれた。
めくれあがったスカートの裾を直してくれた。
「さすがにこれ以上のことをしたらね」
彼の左の義手がの手首から放れ、冷たい手の甲が優しくの頬を撫でる。
シチロージの青い目は真上から、真っ直ぐにを見下ろして、告げた。
「ヒョーゴ殿に殺されかねやせんから」
シチロージはにっこりと笑って、義手の甲での頬をペチペチと二度叩いた。
ヒヤリ・・・
冷たい機械の手で叩かれた頬から、ゆっくりと熱が奪われていく。
保健室の横を、部活を終えて家路に向かう生徒たちが通り過ぎていく。
保健室に引かれたカーテンの細い隙間から、夕暮れの橙色の光が差し込んでくる。
色素の薄い彼女の目に夕陽が当たり、赤く染め上げる。
アルビノの赤い目に動揺はない。
ただ、いつもより少しだけ大きく見開かれているだけ。
見下ろす男の優しい青い目を、赤い目がただじっと見つめていた。
続きます。
アルビノ・・・色素欠乏の生き物のことです。白蛇とか白兎とか白鼠とか。白い肌(体毛)と赤い目が特徴。
ヒョーゴの前では飄々としているも、シチさんにはちょっと圧され気味?
さすがシチさん、百戦錬磨。
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