※本丸や審神者についていろいろ捏造ありです。
※台詞ネタバレあり。ゲーム中の台詞(特殊会話含む)を随所にお借りしています。
「たーだいまー。全員無事戻ったよー」
どうなるかと思った初陣だったけど、俺たちは見事勝利で飾り全員破壊されることなく無事帰還することができた。
けれど本丸の玄関先で出迎えてくれた彼女は俺たちの姿を見るや、さーっと顔色を青くさせる。
「ぶ、無事じゃないです……っ!」と声をあげて草履を引き摺って駆けよってくる。
そんなに慌てたらまたこけるよ。
まぁでも仕方がない。
無事って言っても破壊されなかったというだけで俺たちはみんな満身創痍の状態だったんだからね。
打刀の俺は軽傷で済んだけれど短刀たちは全員重傷だ。
でも刀身は破壊されていないのだから死ぬことはない。
きちんと手入れをすれば元に戻る。
それはこんのすけからも聞いているから彼女もわかっているはずなのだが、見た目ぼろぼろに傷ついた小さな子らの姿に女である彼女が平静でいられるわけもなかった。
「すぐに手入れを……っ」
彼女の一声で短刀たちはあっという間に手入れ部屋に押し込められてしまった。
ここで俺は意外と彼女の機動力が高いことを知る。
重傷の短刀は三振り。
もともと設置されていた手入れ部屋は二部屋。
これは順番待ちかなと思っていれば彼女は何の躊躇いもなく資金を投入し、あっという間に三つ目の手入れ部屋を増設してしまったのだ。
のんびりまったりした性格の人だ、なんて勝手に思い込んでいた。
彼女の判断の早さと俺たち刀剣を思いやる気持ちに俺はちょっと感心してしまった。
◆ 四つ葉の君 <弐> ◆
傷ついた短刀たちを手入れ部屋にぶちこんで多少ほっとしたのか、青かった彼女の顔色も元通りに。
さて、重傷の彼らはこれでよしとして、軽傷の俺はどうしたものか。
短刀たちの手入れが終わるのを待つしかないけど、まぁでも軽傷なんてかすり傷程度だし必要ないっちゃない。
部屋で適当に休ませてもらおうかと思っていたら、くるりと振り向いた彼女に深々と頭を下げて謝られた。
え、いきなりなに?
「えーと……」
「ごめんなさい、お待たせてしてしまって」
「何が?」
「手入れ部屋、資金が足りなくて四部屋目はまだ増設できないんです」
「あぁ」
なんだ、そんなことか。
そんな頭を下げるようなことじゃないのに、彼女はひどく申し訳なさそうな顔をする。
「本当なら部隊長の君を先に手入れすべきですのに……」
「いいよ、そんなの。俺は軽傷で済んだし。死にそう……って泣きべそかいてる五虎退差し置いて先に直してもらうのも気が引けるしね」
戦場からここまで戻ってくる間、五虎退の周りでは五匹の虎が主人のことを心配しておろおろしていたのを思い出す。
そんな彼を差し置いて軽傷の俺が先に手入れなんかされたら虎たちにぐるると喉を鳴らして唸られそうだ。
今だって虎たちは主人が直るのを手入れ部屋の前にちょこんと座って待機しているのだから。
だから俺は後回しでいい。
そう言うと彼女は渋々でも納得してくれたのか「わかりました」と頷いた。
しかしその返事とは裏腹に彼女はとても不服そうな顔をしている。
いや、不服っていうのとはちょっと違うかな。
たぶん資金不足で手入れ部屋を増設できない自身を情けないとか思っているんだろう。
真面目だなぁ。
今からそんなんじゃ、これから先もっと刀剣が増えて重傷者がわんさか増えてみんなで手入れ待ちになんかなったらどうするんだろう。
なんとなく顔を真っ青にしておろおろする彼女の姿が想像できるけど。
いや、意外とさっき見せた機動の速さでなんとか対処しちゃったりするのかな。
まぁそれはそのときが来たらお手並み拝見するとしようかね。
さて、俺はこれから手入れ部屋が空くまでどうしていようかな。
短刀たちの手入れはそれほど時間はかからないらしいけど、それまで特にすることもない。
軽傷とはいえ初陣だったためいろいろな方向に注意を張り巡らせて多少の気疲れはある。
することもないのならちょっとだけ休みたいかなと思っていれば彼女の方から声をかけてくれた。
「順番が来るまで部屋で休まれますか?」
「あー……そうね。そうさせてもらおうかな」
催促せずに済んで正直助かった。
それでも一応まだ近侍の任には就いているつもりだから休む場所は彼女と同じところにさせてもらった。
こんのすけが審神者様の部屋ですと言っていた和室だ。
彼女は何かすることがあるらしく台所に寄ってから来るというので俺だけ先に部屋に向かった。
八畳のそこそこ広い和室には文机と座布団、それから行灯が設置されている。
障子も多くて昼間の今はわりと明るい。
なかなか良い部屋だよな。
俺は入り口近くに腰を下ろした。
片膝を立てて座り背を丸める。
刀は立てて肩に立て掛け腕の中に抱きこむ形にしておさめた。
眠くはないが目を閉じた方が多少なりとも疲れがとれるのでそうする。
日も暮れてきて射しこむ陽の光もそれほど強くなくてちょうどいい。
穏やかな風に擦れる木々の葉の音が耳に届いて心地いい。
眠るつもりはなかったけどこれは自然とうとうとしてくる。
けれど人の気配を感じ、眠りの縁をなぞっていた意識は一瞬で遠のいていった。
軽い足音が時折床板をきしりと軋ませながら近付いてくる。
足音が部屋の前でとまると今度は「あれ?」と間の抜けた声が振ってきた。
「寝てしまいましたか?」
誰に問うでもなく彼女が小声で呟く。
俺は緩慢な動きで片目だけ開けると「起きてるよ」と返事を返した。
「ごめんなさい。起こしてしまいましたね」
「別に。ただ目ぇ閉じて休んでただけ。もとから寝てはいないよ」
「そうですか」
本当はうとうとしかけていたけどそれは言わないでおこう。
「横になられていてもよかったんですよ」と言う彼女の手には水を張った桶と手拭いがのっている。
掃除でもするつもりなのだろうか。
「いーよ、一応まだ近侍の任は解かれてないし。それに他の刀はみんな手入れ中なんだから俺まで休んじゃったら誰もあんたを守れないだろ」
「それはまぁ……そうかもしれませんが」
至極当然のことを言ったまでだが彼女は眉を落として申し訳なさそうな顔をする。
どうやら今すぐ俺を休ませたいらしい。
短刀たちが手入れから戻ってきたら交替して休めるから別に今じゃなくてもいいんだけど。
「掃除でもするの?」
彼女が持ってきた桶と手拭いが気になって問いかけると違うと否定された。
彼女は俺の前に腰をおろし自分の隣に桶を置く。
なに?なにする気?
訝しげな顔を向けると彼女はにこりと笑った。
「傷は治せなくても、傷口や顔についた汚れだけでも拭いた方がいいかと思いまして」
あぁ、なるほどね。そのための水と手拭いか。
彼女なりに気遣ってくれたんだろうけど「あんまり意味ないよ」とため息込みで事実を伝える。
俺たちは刀剣に宿った付喪神。
体に負った傷は本体である刀の方を手入れすればすべて元に戻る。
人間のように消毒したり縫合したりといった処置は無意味だし不要だ。
そのことは彼女もこんのすけから聞いているはずだけど。
「理解はしています」
ちゃんとわかってはいるらしい。
けれど人間である彼女は怪我をした俺を前にして何もせずにはいられないんだって。
「何かさせてもらいたいんです」と言って俺の前から動かない。
意外と頑固なのかもしれない。
俺はひとつ息をつくと顔を部屋の外に向けたまま彼女に問いかけた。
「あんたが拭いてくれるの?」
「え?」
「えっ、て……なに。違うの?」
何かさせてもらいたいって言うから、てっきり彼女がやってくれるのかと思ったんだけど。
彼女はまさかそう言われるとは思っていなかったらしく驚いた顔をしている。
俺は顔を動かさず視線だけを彼女に向ける。
たぶんかなり目付きも態度も悪く見られただろうね。
横目でじっと見つめているとまるでその視線に圧されたかのように「ご所望でしたら……」と委縮した返事が返ってきた。
なにそれ。
俺の圧に負けて了承したの?
あんたの意志じゃないのか。
だったらいい、そんなのおもしろくない。
俺の視線から逃げるように彼女は少し俯いてしまう。
そんな彼女に俺はまたひとつため息をついて、そして出陣前から気になっていたことを訊ねた。
「あのさ、訊いていい?」
「……?はい、私に答えられることでしたら何でも」
「なら遠慮なく」
「どうぞ」
「……。あんたさ、俺のこと怖いの?」
「え?」
「なんか俺と話すときちょっとびくびくしてるように見えるんだけど」
出会ってまだ一日も経ってないし彼女と言葉を交わすのも数える程度なのだけれど。
その数回を思い返してみても彼女は俺と話すときなんとなく薄い壁一枚隔てているように感じていた。
知り合って間もないのだからそれも仕方ないことかと思っていたけれど、短刀たちが現れて彼らに接するときの彼女の態度を見て、あぁ違う、俺だけなんか違うなって確信した。
「出陣のときもあいつらの頭は撫でてやってたけど俺には何もなかったじゃん」
「あ……それは」
「それは?」
「……」
口を噤まれてしまう。
やっぱりそういうことなのかな。
「怖いなら怖いって正直に言ってくれていいよ」
曖昧な態度をとられ続ける方があとあと面倒だし。
まぁ正直怖がられて腫れ物に触るように接せられるのはあまり気分がいいとは言えないけど。
でもそれであんたをどうこうしたり不貞腐れて戦闘を放棄したりするなんてことはしない。
ただあんたの本音をちゃんと聞いておきたいだけ。
そう伝えると彼女の返答はすぐには返ってこなかった。
俯き気味になって正座した膝の上で組んだ指を何度か組み替えて、なんと答えようか考えているようだ。
しばらくすると彼女は小さいけれどはっきりとした口調で言った。
「私は、君のこと怖いとは思っていません」
へぇ、そうなんだ。
本当にそうなのかな。
「本音?」
俺は半信半疑の気持ちのまま問い返す。
彼女は「はい」と返事して頷くと、「ただ」とその先を続けた。
「ただ、こうは思っています。刀剣加州清光の方は主である私に触れられるのを嫌だと思っているのではないかと」
「は?」
予期していなかった彼女の言葉に俺は思わず素の声が出てしまった。
なんでだよ。
何がどうなって彼女がそう思ったのかがわからない。
出会ってからのほんの半日足らずで俺は彼女に何かしただろうか。
彼女を避けるようなことをした覚えはないし、むしろ彼女が転んだときはこっちから手を出して助けたのに。
嫌だなんて思ってない。
思っているわけないし、むしろ。
むしろ……?
むしろ、なに?
自分の思考に思わず自問自答してしまう。
まぁ今それは置いておくとして、「なんでそう思うの?」と問いたださずにはいられなかった。
彼女は「いえ……あの……」と言いにくそうな様子で口元に指を軽く添える。
言っていいものかどうか迷っているようだ。
「……言っても怒りません?」
俺の目を気にするようにやや上目遣いで問われる。
「聞いてから決める」とすっぱり切り返してやった。
たぶん彼女の答えがどんなものであれ俺は怒らないと思うけど。
彼女はうーんとしばし唸り声みたいなのをあげていたが、意を決したのか口元に添えていた指を外して渋々といった感じで口を開いた。
「その……私に対する君の態度が最初からよそよそしかったので、嫌われているんじゃないかと」
……。あー……、はい。
なるほど……そういうことね。
ずばり指摘されて俺は出会ってからこの半日の彼女と接したときの自分の態度を振り返った。
確かに俺も若干壁のある接し方をしていた自覚はある。
けれどそれはいきなり目の前に現れた若い娘が主だと言われてうまく頭が整理できなかっただけで。
別に彼女が嫌いなわけじゃない。
嫌いだったら転んだやつに手を貸したりしないし。
嫌いだったら自分だけ頭を撫でてもらえなかったことを妬んだりしないし。
俺は別に彼女のことが嫌いじゃない。
だから思ったままに伝えた。
「嫌ってないよ」
「本当、ですか?」
彼女は眉尻を少しだけ下げて不安そうな顔を向けてくる。
なにその情けない顔。
曲がりなりにもあんたが主人で俺は従えられる側なんだけど。
「嘘なんかついてどうするのさ」
「そう、ですよね……」
「うん」
「よかった……。ほっとしました」
本当にほっとしたという顔で彼女は自分の胸元に軽く手を当てて笑う。
帰還してから初めて見せてくれた笑顔だった。
俺の態度が彼女にとって杞憂になっていたことを知り、ちょっと悪いことをしたかなと反省する。
ちょっとだよ、ちょっとだけね。
安堵した笑みを向けてくれる彼女の姿に誤解が解けてよかったなと俺もほっとする。
彼女は笑った顔がよく似合う。
顕現した瞬間も思ったことだけれど、なんていうか、うん、彼女の笑顔を見ていると心が和む。
「あの」
「なに?」
「拭いても大丈夫ですか?」
「へ?」
「顔の汚れ。さっき、あんたが拭いてくれるのかって」
その話題、もうどこかに消えたかと思っていた。
話を元に戻され、まだ諦めてなかったのかと彼女の頑固さを再確認させられる。
彼女はじっと俺を見つめたまま返答を待っている。
なんだろう、主君にこんなこと言うのもなんだけどさ。
なんていうか、「待て」を言いつけられた犬に似ていてちょっと可愛いかななんて思ってしまった。
「拭きたいの?」
「お許しいただけるのなら」
「まぁ……別に減るもんじゃないからいいけど」
どーぞご自由に。
気疲れしていたのもあって根負けした俺は軽くため息をついて彼女の申し出を許可した。
許しをもらえた彼女は表情を明るくさせるといそいそと手拭いを桶の水に浸して用意を始める。
俺は肩に立て掛けていた刀を横に置いて、立てていた片膝も倒してちゃんと胡坐をかいて座り直す。
彼女が膝で滑るようにして一歩こちらに近付いて、左手を俺の右の頬に添えた。
水に触れたばかりの手はひんやりしていて気持ちがいい。
彼女はよく絞った手拭いを反対側の頬にそっと押し当てると丁寧に土汚れを拭いていった。
その間俺はおとなしくされるがままになる。
両の頬を拭き終わると額と鼻筋の汚れも拭いてくれた。
彼女が目蓋や目の周りも拭きたそうにしていたので俺は黙って目を閉じてやった。
されるがままに顔を拭いてもらいながら、よくよく考えれば別に人にやってもらわなくても自分で拭けたなとはたと気付く。
けれどあえてそうせず彼女のしたいようにさせてやったのは、おそらく俺自身が彼女との距離を縮めてもいいかなと思えたから。
しばらくして顔全体を拭き終えた彼女から「終わりました」と声をかけられた。
「どーも」と礼を言って閉じていた目を開ける。
意味ないよと言った行為だったけれど、こうして綺麗にしてもらうとやっぱりさっぱりするし気持ちがいい。
目の前では満足したらしい彼女がにこにこと笑っている。
改めて状況を考えると、顔なんか拭いてもらってなんだか母親に面倒みられる幼子みたいだ。
ちょっとこそばゆいかも。
急に気恥ずかしくなってきて彼女から視線をそらす。
不意に頭の上にぽんと何かがのった。
何かと思えば目の前の彼女が俺の頭を撫でている。
不意打ちだ。
俺は思わず彼女を見上げてしまう。
「なに?」
「いえ。初陣お疲れ様でした」
「あぁ、うん」
「勝手がわからない中で三振りも連れて。本当に、無事帰って来てくれて嬉しいです」
「当たり前じゃん」
あんたに言われるまでもないよ。
これでも天下の沖田総司の刀だったんだからね。
でも褒められたのはやっぱり嬉しくて、少しこそばゆくて、また彼女から視線をそらす。
彼女は俺の頭を撫で続ける。
出陣前に小さい短刀たちにしたのと同じように。
ただ違うのは、今はあのときよりも随分と長く、そして贔屓目に見ても大事そうに撫でてくれていること。
しばらく撫でたあと彼女の手は静かに離れていった。
もう終わりか。少し名残惜しさを感じる。
すると今度は所在無く胡坐の上にのせていた左手をとられた。
彼女は両手で俺の手を優しく包み込む。
その手に額が触れそうになるくらい頭を下げて、「本当によかったです」と小さく呟いた。
俺は彼女の心中を慮る。
重傷の短刀たちの姿を見たときの彼女の表情と、意味なんかなくてもいいから汚れを落とさせてほしいと請うた彼女の態度。
彼女は彼女なりに、出会って間もない刀剣たちの初陣を心配してくれていたのだ。
俺たちの無事を祈って、ひとり本丸で帰りを待っていてくれた。
俺の左手を包む手は白く、指もか細く、血や汚れとは縁のなさそうな頼りない手だけれど。
その手はとてもあたたかい。
触れられているとほっとする、心が優しくなれる、そんなあたたかさがある。
冷たい刀の俺とは違う。
この人はその身にあたたかい血が流れる、人間だ。
けれどこの人は鋼の塊でしかない俺を、俺たち刀剣を、大事に扱おうとしてくれている。
出会ってまだ一日も経っていない。
彼女のことを俺はまだまだ全然知らないけれど。
「……主も」
「え?」
「主も。留守番お疲れさん」
俺は彼女の手をきゅっと握り返し、空いている右手で彼女の手の甲をぽんぽんと叩いてやった。
主。
あるじ。
ようやく彼女を主人らしく呼ぶことができたよ。
出会ってから半日ずっと悩んでいたんだ、呼んでいいのかなって。
だからなんとなく素っ気ない呼び方をしてしまっていたけれど。
でももう大丈夫、これからはちゃんと呼べる。
改めて決心がつくと胸の中につかえていたものがすとんと落ちて気持ちがすっきりした。
「ねぇ、主」
用もなく主人を呼ぶと、彼女は驚きの表情をゆっくりと笑みに変えて嬉しそうな声で「はい」と返事をした。
呼び名ひとつでそんなに喜んでもらえるなら、あぁもっと早く呼んでおけばよかったな。
うだうだと悩んでいたことをちょっとだけ悔やむ。
「そうです。まだ言っていませんでしたね」
「……?」
彼女は俺の手を解放すると今日一番の笑顔を向けて言った。
いってらっしゃいと言って送りだしたのだから、帰ってきてくれた君をお迎えする言葉はこれじゃないといけないのだと。
「おかえりなさい。加州くん」
彼女もまた少しだけ違う呼び方で俺の名を呼ぶ。
加州くん、だってさ。
うん、そうね……いいんじゃないかな。
「君」や「加州清光くん」より余程いいよ。
少しだけだけど距離が近付いた気がする。
けどやっぱり呼ばれ慣れていないせいかまだ少しこそばゆい。
むず痒い気持ちが顔に出てしまう。
照れているのを隠しているようなちょっと情けない顔で「……ただいま」と返事をする。
向かい合った先にいる彼女は目を細め満足そうに微笑んでくれた。
ゆっくりと日が暮れていく。
こうして俺と彼女の、これから始まる戦いの初日は幕を閉じた。
ねぇ、見てる?かつての俺の主。
この人が俺の新しい主君だよ。
これからどうなっていくかわからないけれど、俺はこの人のために戦おうと思うよ。
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