ドリーム小説


わかってる
こんなのただの我が儘だって
わかってる
こんなのただのヤキモチだって
でも、それでも、愛しているから独占したいと思ってしまう
神様、この想いはそんなにいけないことなのですか





□ 魔女の条件U 〜The Adventure of Lovely Twins〜 <15> □





人の噂が蔓延するのは恐ろしいほど早く、それはまるで新種のウイルスか何かのようだとさえ思えた。
を抱きしめキスをしていたという話は、その日のうちに学校中に広まった。夕食をとろうと大広間の席についたは、グリフィンドールの男子仲間のニヤニヤ笑いに迎えられることとなった。
「おいおい、、どういうことだよ」
「一体いつからに目つけてたんだ」
「え?」
「え?、じゃないぜまったく!俺なんてが転入してきたときから狙ってたのによ」
男子たちはを取り囲み、彼に反論させる暇も与えず質問攻めにした。状況が読めないばかりがハテナマークを浮かべる。そして、「お前とのキス事件、もう学校中の噂になってるぞ」と教えられ、ようやくはじわじわと耳を赤くしていくのだった。

そんなやり取りを教師席から眺めていたスネイプは当然おもしろいわけもなく。
(妹が妹なら、兄も兄というわけか・・・)
苦々しい顔を浮かべ、内心では沸々とマグマを煮えたぎらせていた。まさかのまさかだ。と喧嘩別れして数十分しか経っていないというのに、まさかこんなにまで状況が悪化してしまうとは。神に見捨てられたか、呪われているとしか思えない。
を睨むように見つめていたスネイプは、ふっと視線をスリザリンの席に向けた。
がいる。の噂を聞いたらしい。何が面白いのか、にやにや顔で食事をしていた。
ドラコがいる。とスネイプの関係を知り、の味方をするドラコは近くの生徒が噂話をするのを面白くない顔で睨んでいた。
そして、いつもドラコの隣に座るがいない。噂話が広がってしまって、問いつめられるのを気にして部屋にいるのかもしれない。いや、もしかしたらスネイプとの喧嘩が尾を引いていて、胸を痛めて部屋で泣いているのかもしれない。
(また傷つけてしまったか・・・)
こんな喧嘩をするつもりなんてなかったのに。スネイプは後悔の念に苛まれていた。いつも以上に不機嫌な顔でため息をつくと、食事も途中でナイフを置き、重い腰を上げて席を離れた。







寮生が夕食に行ってしまった静かな部屋に一人、はベッドの中にうずくまり鼻をすすっていた。頭の中をいろんな感情が巡っていて破裂しそうだった。
スネイプと喧嘩をして別れてきてしまった後悔
スネイプに理解してもらえない哀しみと寂しさ
への嫉妬
冷静になれない自分への苛立ち
それから、いきなりのキスでを掻き乱すへの戸惑い

―――僕が、代わりにはなれませんか

つい先程見せられた真剣な蒼い瞳を思い出す。ブランケットの中で体を丸め、にキスされた自分の唇を噛みしめた。
(なんで・・・、なんであんなことするの、
勝手なことをしてを困らせるに少しだけ腹が立った。から唇を離した後、にっこりと笑ってこう言ったのだ。
『この噂が、あなたの恋人の耳にまで入るといい』
『え・・・?』
『そうしてあなたの恋人が腹を立てて僕を憎んでくれれば、僕は堂々とあなたを奪えるから』
『な、・・何を言うの、っ』
そんな綺麗すぎる笑顔でそんな甘い言葉を紡ぐ。ずるいと思った。顔を赤らめるに微笑んで、は華麗に去っていった。
は寮に戻るや女子寮の部屋に閉じこもり、夕食の誘いも断った。大広間になんて行けるわけがない。何人もの生徒にキスを目撃されたのだ。今頃盛大な噂になっている。夕食になんて行ったら、スキャンダルを抱えた女優よろしく、質問攻めにあうのは目に見えている。
そんなところ、スネイプに見られたくなんてない。
の頭の中は、スネイプがどう思うかでいっぱいだった。この噂もまたすぐにスネイプの耳に入るだろう。ただでさえスネイプはのことを疑っているのだ。「これで新の恋人同士になれましたな」なんて皮肉を言われるにきまっている。
(どうすればいいの・・・っ?)
解決策が見つからない。はブランケットの中で頭を抱えこんだ。



どのくらいそうしていただろう。時間にしてみたら1時間にも満たないかもしれない。泣き疲れていたは、いつの間にかうとうと眠ってしまっていた。遠くで寮の扉が開閉する音と、続けて聞こえてきた寮生の賑やかな声で目が覚めた。起き抜けのぼぉっとした頭でいたは、だがしばらくしたら女子たちが部屋に戻ってきて質問攻めにされるであろうことを思いだし、重苦しいため息をついた。
だが、その予想に反して、しばらくしても誰も部屋には入ってこなかった。ホッとする反面、何かあったのかとは気になる。
その何かは、確かに起こっていた。

―――貴様・・・っ、もう一度言ってみろ!!
―――えぇ、何度でも言ってやるわよ!一度なんて言わず、二度でも三度でもね!!

(な、なに・・・?)
大声で怒鳴りあう声が女子寮にまで届いた。尋常ならざる声の大きさとその口調に込められた怒りを感じ、は寝ている場合ではないとブランケットを押しのけて靴を履いた。ぐしゃぐしゃの髪も整えず、ローブも杖も置いたまま、は談話室に続く扉を勢いよく開けた。
扉一枚隔てた向こうは嵐だった。怒りの渦が部屋の中心で暴れ狂っている。
遅れてやってきた者でも状況がすぐに読み取れる構図がそこに存在していた。談話室は完全に喧嘩の舞台となっていた。
対立するのは、ドラコと
クラッブとゴイルに羽交い締めにされたドラコと、二人の男子に両腕を押さえつけられる
二人とも闘犬のように怒り狂った表情で互いを睨み付け、双方の手には杖が固く握りしめられていた。
荒い息を吐いてに飛びかかろうとするドラコは、今までにないほど怒り狂っていた。対するの顔にもいつものような人を見下した冷たい嘲笑はなく、頬を紅潮させて眉をきつくつり上げている。二人の周りでは多数のスリザリン生が遠巻きにその光景を見つめていた。
は何があったのかさっぱりわからず、辺りを見回し、パンジーの姿を見つけるや小さな声で問いかけた。
「パンジー、一体何があったのっ?」
「あ、・・・・・」
パンジーがの名前を呼んだ瞬間、周りで見ていた寮生たちが一様にを振り向いた。
「え・・・」
皆からの視線を受け、は戸惑う。だが、同時に賢いは察した。二人の喧嘩の原因を作ったのは、自分なのではないかと。
事実、そうだった。再び罵声を浴びせ合い始めたドラコとの怒声に隠れるように、パンジーが事の発端をに耳打ちして聞かせた。


言い争いの始まりは、を侮辱したことだった。
夕食を終えたドラコがここで休息をとっていたときだ。戻ってきた寮生たち、特に女子生徒たちが途絶えることなくの噂をしているのだ。
はやっぱり付き合っているのだ、とか。
人が行き交う廊下で人目もはばからずキスするが素敵だ、とか。
とスネイプの関係を知っているドラコは、そんな話をが聞いたら絶対に悲しむとわかっていたから、面白くない顔でそれらを聞き流していた。だが、その中に聞き流せない声が割り込んできたのだ。
「でも、さんって前から付き合っている恋人がいるって聞いたわ。それなのに他の人とキスって、どうなのかしら」
涼しげな声で割り込んできたのはだった。それまで人の話になんて自分から入ってこなかったが、いきなり特ダネを持ち込んできたのだから周りの生徒は驚くばかり。だが、人間とは畏怖よりも、好奇心に強く惹かれる生き物らしい。ドラコに厳しく止められているのも忘れ、が持ち込んだ情報の面白さに少女たちは食いついたのだ。
「ねぇ、それって本当なの?」
「嘘ぉ、・・・。って彼氏いたの!?全然わかんなかった」
きゃあきゃあと黄色い声で話を大きくしていく女たちに、ドラコのこめかみが僅かにひくつく。
「一体誰なの?」
「ね、ねぇ、。あなた知ってるの?の彼氏が誰なのか」
「そこまでは知らないわ。でも、恋人がいるのは確かみたいよ」
は瞳を細めて妖しく笑い、飄々と言ってのけた。少女たちの声は賑わいを増す。とは話をするなとドラコに言われていても、好奇心に支配された少女たちの関心は止まらない。
苛々しながらドラコはそれを聞き、視線を故意にそらしていた。後少しが何か言ったら、監督生権限をフルに利用し思いきり忠告してやろうと準備をしながら。
だが、ドラコの怒りの線は、そのすぐ後にが嘲笑とともに発した言葉で容易く切れることとなる。
「恋人がちゃんといるのよ。それなのにとキスなんてしたりして。さんって、奥手で誠実なのかと思っていたけど、意外と尻軽の魔性なのね」
ぷつり、と。
そのたった一言でドラコの中で何かが切れた。怒鳴るでもなく、射殺すように睨むでもなく。ドラコはソファーを立ち上がりの前に躍り出るや、
「何よ?」
ふん、と鼻で笑うを静かな怒りを持って見つめ、そしてこれ以上ないくらい冷たい嘲笑でを見下して言ってやった。
がなんだと?仮にそうだとしても、貴様に比べれば何万倍もは可愛らしいさ。人に嫌われるのが本当に似合いの、友人など一人もいない、可哀想な、この、・・・・くそ女」
「・・・・・なんですって・・・」
二人の怒りを抑えた静かすぎる口調が余計に空恐ろしく、周りの生徒は息を飲むことすらできない。
は綺麗な眉をこれ以上ないほどつり上げてドラコを睨み付けていた。このまま膠着状態が続くかと思いきや、意外なほど早くキレたのはの方だった。「友人など一人もいない」という言葉が相当堪えたらしく、犬歯を剥き出しにドラコに飛びかかっていく。ドラコに向かっていくがローブから杖を取り出すのを見た生徒たちが「やばい!」と危険信号を察知し、二人掛かりでを止めに入った。
「私に触らないで、穢らわしい!放しなさいよ!!」
「放したらマルフォイに飛びかかるんだろうが!」
「おい、いいから杖を放せよ!あぶねぇ!」
「放しなさいよ、この・・・・放せっ!この男を!殺してやるんだ!」
物騒な言葉がの口から飛び出し、周りで傍観していた下級生たちも抑えつける少年二人も、に睨みつけられるドラコも表情を歪めた。はひたすらドラコを罵倒し続けた。
「許さない!なんであんたなんかにそこまで言われなければならないわけ!?何様!?絶対ただじゃ済まさない!」
目を血走らせては怒りに狂う。だがドラコはそんな彼女を冷たい目で見返した。
「なんで、だと?何故なのか、理由もわからないのか。・・・はっ!愚かしいにも程がある」
「なんですって!?あんたが私の何を知ってそんなことが言えるのよ!!」
「ならば言うがな。お前がの何を知っている?!勝手な憶測で彼女を愚弄したのは貴様が先だろう!!」
を見下し、唾を吐くように冷笑とともに言い切ってやった。勝ち誇った顔で見下ろされ、の中でも何かが切れた。理性のリミッターが外れる。冷静さを失ったは、ドラコとしか知らないはずの事実を皆の前で暴露してしまった。
「何よ、必死になってかばったりして!そんなにさんのことが好き!?それとも王子様気取り!?どうせあんたなんてさんに一度振られているくせに!」
が発した言葉が談話室に木霊する。立ちつくす生徒たちは初めて耳にする事実に目を丸くし、ドラコを見やる。ドラコは両耳を真っ赤にし、奥歯を噛みしめていた。
「貴様・・・っ、もう一度言ってみろ!!」
「えぇ、何度でも言ってやるわよ!一度なんて言わず、二度でも三度でもね!!」
さらし者にされたことで、羞恥にドラコの理性の糸がぷつりと切れた。ローブから杖を取り出しに向けたところで後ろからクラッブとゴイルに止められたのだった。


そうして今の現状がある。
少年二人に抑え込まれると、彼女の暴言に飛び出しクラッブとゴイルに全力で止められているドラコ。互いに互いのプライドを傷つけ、傷つけられ、双方引けぬ状態が続いていた。動かぬ体で、二人の武器はその口から吐き出される罵詈暴言。
「恋人でもないくせにさんを必死でかばうようなことして、それで彼女の心が自分に向いてくれるとでも思ってるわけ!?」
「黙れ!!友人に手を貸して、擁護して何が悪い!?貴様のように友人の一人もいない者にはわからんのだろう!」
「友人!?はっ、聞いて呆れるわね。本当は恋人にしたいくせに、振られちゃったばっかりに、しょうがなくそう言って自分を慰めているだけじゃない!」
の唇は滑らかで、そこから繰り出される言葉は暴力にも近かった。ドラコの心を抉り、彼の舌を弱らせた。
「見苦しく親友なんてポジション取って彼女の隣にいたりしてさ!未練がましいのよ!!」
「貴様にそんなことを言われる筋合いはない!僕は彼女を親友と認め、そして彼女も僕をそう思っている。まぁ、友人のいない貴様に理解しろという方が難しいかもしれないがな!」
「・・・っ!」
友人などいない。
ドラコの何気ない一言が思いの外の心を鋭く貫いた。一瞬怯むも、だが表情にも態度にも出さず、はドラコの言葉をかみ砕くように奥歯を噛みしめた。
「何よ・・・っ。あんたなんて、・・・あんたなんて自分の力では何一つできない、手に入れられない卑怯な臆病者のくせに!」
「なんだと・・・?!」
滑らかな悪態に、毒が混じる。それはドラコのプライドも、マルフォイとしてのプライドも傷つける言葉だった。それがわかっていて言葉にしてしまったのは、怒りに我を忘れたの過失だった。だが、切れた理性は自分の力では元に戻せず、暴走を止めることはできなかった。
「監督生のバッジだって、クィディッチのキャプテンも、シーカーの座だって、お金と父親の力で奪ったんでしょうよ!この卑怯者!!」
「き、貴様・・・っ、」
ドラコの顔が憤怒に真っ赤に染まる。抑えつけるクラッブとゴイルも限界だった。クラッブが抑えていたドラコの右腕がするりと抜けて自由になる。ドラコの杖先が真っ直ぐに向き、誰もが「まずい!」と感じた瞬間。

ぱんっと、乾いた音が談話室に鳴り響いた。

銃声にも似たそれは、の頬を叩いた音だった。を叩いた手のまま動かず、は叩かれたまま顔をそらして動かず。に杖を向けたドラコは、突然割り込んできたの背中に杖を向ける形となり、ハッと我に返って慌てて杖を下ろした。
談話室に静寂が満ちる。傍観者たちは一様に驚きの顔でを見つめていた。
を放してあげて」
「え・・」
は、を抑えていた少年二人に声をかけた。少年たちは顔を見合わせ不安げにする。だがは、
「大丈夫。話をするのに拘束なんていらないわ」
穏やかなの言葉にこそ説得力があった。少年二人は恐る恐るから離れる。
長い髪が顔にかかり表情を隠していたは、ゆっくりとした動作で顔を上げると闇と呪いを宿した黒い瞳でを睨み付ける。
「何するのよ・・・・」
自由になった手を叩かれた頬に押し当て、悔しさと羞恥に頬に爪を立てた。獣じみたの行為に、だがは毅然として告げた。
「さっき、がドラコに言ったこと」
「・・・それが何?」
「私は、絶対に許さないわ」
の声は静かで、それでいて凜としていて、聞く者すべての耳を支配した。が「許さない」なんて強い言葉を言うのは珍しかった。下級生たちが目を見合わせる。
「あなたがドラコの何を知っているというの。ドラコを貶めるようなことを言うのは、私が絶対に許さないわ」
がこんなにも怒りを露わにした表情を見せるのは初めてだった。ドラコもパンジーも他の生徒たちも、・・・そしてもまた驚きを見せていた。
。ドラコは監督生よ」
「えぇ、知っているわ。だから何・・?」
「たとえ同学年でも、彼の言うことには従って」
「・・・いやよ。なんであんたにまでそんなこと言われなきゃ、」
。監督生として、あなたに命令しています」
「・・・・・・っ」
命令には従って。
の口調は荒げることなく、それがかえっての神経を逆撫でした。悔しさに歯を食いしばる。怒りに満ちた目で睨んでも、先程までドラコにぶつけていたような滑らかな悪態はには出てこなかった。
代わりに浮かび出たのは、目尻に滲む涙。誰にもばれないくらいひっそりと滲ませた涙はこぼれ落ちることはなく、は俯き、行き場のない怒りに肩を震わせた。
、」
は何も言わなくなったに声をかけ、震える肩に手を置こうと腕を伸ばした。だが、の手はの肩に触れることはなく、肩の高さまで上げられた腕が降りることもなく、その不可思議な姿勢に、の後ろで見守っていたドラコは眉をひそめる。ドラコは自分の立ち位置をずらし、に起きた状況を見るや目を見開いた。
「おい、お前!」
焦るドラコの声。周りの生徒たちもざわめき出す。
が腕を降ろせない理由。は杖を真っ直ぐに向け、の広げられた手のひらの中心に押しつけていた。よく見れば、の手のひらは微かに震えていた。
「やめろ、何をする気だ!?」
「私は、・・・私はあなたたちになんて絶対に従わないわ!」
・・・っ」
の杖を手のひらで受け止めながら、を真っ直ぐに見つめた。
その蒼い瞳に見つめられ、の心の中で巨大な闇が渦巻き嵐を起こす。闇は、の寂しさを掻き乱す。



私の自由はどこにあるの
私がやることはすべて認められない
誰も私のことを見てくれない
いつだってみんなが見ているのは私じゃなくて、私じゃなくて・・・


貴女なのよ、ママ


だから貴女さえいなければ



「もう苦しむのはいや・・っ!!」
、やめてっ!」
「ママなんて大っ嫌いよ!!」
錯乱状態のは言葉を選ぶこともできず、本能に促されるがまま叫び声をあげた。そして早口に、その場の誰も聞いたことがない謎の呪文を唱えた。
次の瞬間、の杖先から飛び出た漆黒の渦は一瞬での手のひらから体全体を覆い隠した。黒い亡霊のような姿になったに、生徒たちはみな悲鳴を上げる。は渦に包まれたまま後ろに倒れ込み、そして呪文を発動させたもまた手から杖を放し、その場に倒れた。
・・・っ!!!」
ドラコが叫び、倒れ込むを抱き留めた。すると黒い渦はパンッと音を立てて弾け、談話室の天井に向かい消えていった。渦の中から現れ出たは、ドラコの腕の中でぐったりとして気を失っているようだった。
、大丈夫か!?」
ドラコが必死に呼びかけ、の体を揺する。そして、白い頬を叩いて目を覚まさせようとして、ドラコはギクリとした。全身の血が引いていき、代わりに冷たい汗が背中を流れ落ちた。
「マ、マルフォイ先輩・・?」
「おい、ドラコどうした!?」
「・・・・・」
ドラコの周りに生徒が群がる。皆がの顔を見下ろす。雪のように白い頬は、今や青白く不健康な色へと変わっていた。だが、それ以外にに変化はない。
訝しみ、を心配する人々に告げられたドラコの声は、重く、そして震えていた。
「息を、・・・していない」
「・・な・・っ!?」
「・・・そんな・・・っ」
皆の息が詰まるのがわかった。そして、次第に大きくなるざわめき。女子生徒たちが悲鳴を上げる。
信じられない事態に、スリザリン寮内をパニックが襲う。
ざわめく嵐のような喧噪の中、ドラコの腕の中で、だけが静かに眠りについていた。





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