ドリーム小説
「トライウィザード・トーナメント?」
「そう。三大魔法学校対抗試合。今年、いよいよ復活するそうよ」
「三校って、ホグワーツと・・・」
「ダームストラングとボーバトンよ。どちらも伝統ある魔法学校だわ」
新学期の組み分け儀式そっちのけで、ハーマイオニーとハリーは内緒話に花を咲かせた。
「ホグワーツ以外の魔法学校かぁ。どんな人たちが来るんだろう」
「わからないわ。でも・・・何かしら。何だかすごく嫌なことが起こりそうな気がするの」
ハーマイオニーは神妙な顔つきで、組み分けの終わった新入生に拍手を送った。
□■□わたしとスネイプ先生の奇妙な学園生活 <14>□■□
ダームストラングの船が湖から現れ、続いてボーバトンの空飛ぶ馬車が華麗に舞い降りた。
はじめて見る他所の魔法学校、そしてその生徒に、ホグワーツの生徒たちは興味津々だった。
ダームストラングの生徒は、みな純血の魔法使いだ。
鋭く厳しい顔つきからは、純血としての誇りと威厳が感じられた。
ボーバトンの生徒は、仕草に優雅さと品があり、高い教養を見せつけられ、ホグワーツの男子生徒をうっとりさせた。
ダンブルドアは、ダームストラング校長のカルカロフと、ボーバトン校長のマダム・マクシームと挨拶を交わした。
「遠路はるばるようこそ。双方、旅の疲れを癒し、トーナメントまでゆっくりなされよ」
ダンブルドアの挨拶と炎のゴブレットに関する説明が終わり、1年間に及ぶ三校での合同生活が始まった。
校内を歩く他校の生徒に、ホグワーツ生の目は行ったり来たりしていた。
特に目立つ生徒、ダームストラングのビクトール・クラムやボーバトンのフラー・デラクールは注目された。
クラムの後を追いかける女子生徒は多く、またヴィーラの血をひくフラーに引き寄せられる男子生徒も多かった。
一方で、他校生たちもまた、慣れないホグワーツの様式に賛否両論の意見を交わしていた。
ダームストラング生は、「ホグワーツの方が温かくて良い」と好評を述べた。
だがボーバトン生の中には、ホグワーツの古めかしい様式を嫌がる者もいた。
「オ(ホ)グワーツは、寒いし、う(ふ)るくさくて、住み心地が悪ーいです」
フラーは綺麗な銀色の髪をなびかせ、美しい顔をしかめて不満を漏らした。
周りの友人たちと、ホグワーツの冷たい石畳に文句を言った。
「絨毯はないのでーすか。シャンデリアは。薄暗ーくて、気持ちも暗ーくなりまーす」
「あら。慣れてしまえば快適よ。この暗さも、趣があっていいと思うけれど」
文句たらたらのボーバトンの子女たちを、濃紺のローブを纏ったハニーブラウンの髪の教師がなだめた。
フラーは振り返り、見知った若い女教師に我が儘な子どもの顔を向けた。
「先生ばかり、温かい格好をしていてずるーいです」
「ふふ。だから言ったじゃない。ボーバトンに比べたら、ホグワーツは寒いわよって」
は微笑み、我が儘なお嬢様たちをなだめた。
*
はホグワーツ校内を慣れた足取りで散歩した。
およそ2年ぶりに訪れた母校は、の記憶の中の思い出と何も変わっていなかった。
壁の絵画一つとっても、懐かしく感じられた。
「先輩!」
「先輩、来ていらしたんですね!」
「えぇ、引率でね。みんな元気だった?」
を見つけたスリザリンの後輩たちが続々と走り寄ってきた。
懐かしい寮の後輩に、の顔はほころんだ。
廊下を歩けば、を知る人が声をかけてきたり、遠巻きに注目された。
「さん!」
を見かけたハーマイオニーが声をかけてきた。
ハーマイオニーは2年間でだいぶ大人っぽくなっていて、を驚かせた。
同じくハーマイオニーも、生徒から教師へと雰囲気を変えたに目をひかれた。
「ハーマイオニー。久しぶりね」
「はい。新聞で研究のこと見ました。おめでとうございます」
「ありがとう。嬉しいわ」
「さんも、今年一年間はホグワーツにいるんですか?」
「えぇ。残念ながら敵同士だけれどね」
はハーマイオニーと別れ、遅れた到着をマダム・マクシームに報告した。
同席していたダンブルドアにも、再会の挨拶をした。
「ご無沙汰しております。校長先生」
「おぉ、久しぶりじゃの。ボーバトンでの活躍ぶり、ホグワーツにも届いておるよ」
半月型の眼鏡の奥で、青い瞳が穏やかに細められた。
は褒められたことが純粋に嬉しく、誇らしげに微笑んだ。
「ミス.。お世話になった寮監への挨拶は済んだかね」
「いえ。まだです」
「早く行ってきなさい。一番に会いに行きたい人ではないのかね」
ダンブルドアの言葉に、は思わずどきりとした。
まるで二人の関係を知っているのかのような口ぶりだった。
は二人の校長に礼をし、その場を後にした。
*
たくさんの他校生に物珍しげに観光気分で歩かれ、スネイプは眉間に皺を寄せていた。
ダームストラングの生徒のえばり腐った態度が気に入らなかった。
ボーバトンの生徒が高い鼻を見せびらかして、高慢ちきな顔で練り歩くのも気に入らなかった。
『おっと。これはこれはボーバトンのお嬢様方。あまり絵には触れないでいただきたいですな』
「まぁ、何でしょーか。首のとれたゴーストでーすわ」
「気味が悪ーいです。話しかけなーいでくださーい」
美しい絹の制服を纏った娘たちは、首なしニックを見てクスクスと嘲笑した。
話の通じない子女たちに、ニックもため息をついた。
スネイプも傍で見ていて、女子たちの我が儘に吐き気がした。
客人だとはいえ目に余る言動に、スネイプは「早く通り過ぎろ」と一層表情を険しくした。
そのときだった。
「こんにちは、ニコラス。お元気そうですね」
『やぁ!これはこれは、嬢。貴女も相変わらず血色がよろしい』
ニックは、スネイプの後ろからやってきた人物に、笑顔で挨拶を返した。
後ろを振り返ったスネイプの表情が、驚きに変わった。
そこには、2年間で髪が伸び、女性らしい顔つきに変わった恋人が立っていた。
はスネイプに目配せし、くすりと笑った。
そしては、ボーバトン生へと視線を向けると、目元を厳しくして彼女らを睨んだ。
に睨まれ、ボーバトン生の顔色が青く変わった。
「それが教養あるボーバトン生としての礼儀ですか。他校の方々への無礼な態度は許しませんよ」
に叱られた生徒たちは、シュンと尻尾を下げ、ニックに無礼を詫びて去っていった。
はため息をつき、ニックに謝罪すると、ニックも満足げに壁をすり抜けていった。
「頼もしいですな。ボーバトンの若き教師は」
親しみを込めて、スネイプは皮肉を言った。
は振り返り、嬉しそうに微笑んだ。
「お久しぶりです。スネイプ先生」
「元気にしていたかね」
「はい。先生もお変わりないようで」
は、一番会いたかった人に会えた喜びでいっぱいだった。
一方でスネイプは、の容姿と雰囲気の変化に内心驚いていた。
教養高いボーバトンで過ごす内に、の振る舞いは以前にも増して女性らしくなっていた。
髪も伸び、女性らしい体つきに成長したに、スネイプはとても魅力を感じた。
「プライドの高い娘たちに、手を焼いているようだな」
「えぇ。本当にお嬢様ばかりで。ボーバトンの格調の高さを見せびらかしたいのでしょう」
は腰に手を当ててため息をついた。
「ご苦労なことですな。先生」
「なんだかくすぐったいですね。その呼ばれ方は」
は苦笑した。
二人は並んで校内を歩きながら近況報告をし合った。
スネイプは、去年ホグワーツであった話をし、は蒼バラの研究の成果を話した。
話しても話してもしたりなくて、会えなかった日々の寂しさは容易には埋まらなかった。
「長旅で疲れたであろう」
「そんなことはありません。十分休ませていただきましたから」
「これからの予定は」
「特にはありません。今日は自由にしていいと言われましたので」
「そうか。ならばよい」
スネイプが足を止めたので、も歩みを止めた。
スネイプはを振り返り、にやりと笑った。
「部屋に来るかね」
「え・・・」
何を想像したのか、の耳がぼわりと赤く染まった。
スネイプはにやりと意地悪げに笑った。
「何を想像しておる。我輩はお茶に誘ったのだが」
「わ、・・・わかっていますよ」
「もちろんその先もご希望なら、お応えしますぞ」
「・・・馬鹿」
は赤い顔をそっぽ向けた。
スネイプは可笑しげに笑い、の頬を指の背でするりと撫でた。
とスネイプは久々の二人だけの時間を噛みしめていた。
この時間が長く続けばよいと、二人は同じ気持ちでいた。
だが、その甘い時間を粉々に壊す者は、唐突に現れた。
*
「、やっと見つけた」
とスネイプは同時に後ろを振り返った。
廊下の向こうから、27才くらいの若くてハンサムな男性が笑顔で走ってきた。
スネイプは訳がわからない顔をしていた。
一方では、嫌いな食べ物を前にした子どものように、心底嫌そうな顔をしていた。
「アルベール・・・」
「ずっと探していたんだよ。どこに行っていたんだい」
「具合の悪い生徒がいたので、馬車の中で付き添っていました」
「なるほど。それで、生徒は」
「今はもう大丈夫です。落ち着いています」
男は、フランス人にしては流暢に英語を話した。
は最低限の言葉と愛想笑いで対処した。
そしてはスネイプに向き直り、
「紹介します。こちらは、アルベール・グラン先生。ボーバトンで占い学を教えていらっしゃいます。
グラン先生。こちらはスネイプ先生。私の恩師です」
が紹介すると、アルベールは意気揚々とスネイプの手を取り握手した。
スネイプの眉間に若干皺が寄ったのをは見逃さなかった。
アルベールは、興味深げにスネイプを見つめた。
「なるほど。貴方がスネイプ教授ですか。の恋人の」
スネイプは、驚いた顔でアルベールを凝視し、それからを見下ろした。
はばつが悪そうに眉間を指で押さえていた。
「あぁ。彼女が話したのではありません。たまたま私が、彼女宛の貴方からの手紙を読んでしまったのです」
「何がたまたまですか。人からむしり取るようにして手紙を読んだのはあなたでしょう」
は食ってかかった。
アルベールは気にした様子もなく、飄々としていた。
「ホグワーツとボーバトンの遠距離恋愛らしいですね。胸打たれますよ」
まるで人を小馬鹿にしたような言い方に、スネイプは不機嫌な顔になっていった。
は、二人が喧嘩しないかとハラハラした。
だが、アルベールは空気が読めないのか、更にズケズケと言ってのけた。
「ですが、どうせ長くは続きませんよ」
「なんだと」
「遠くから見守る愛なんてのは詭弁です。放っておかれるが可哀想でしょう」
アルベールは余程自信があるのか、余裕を感じさせる口ぶりだった。
スネイプは表情を険しくしていった。
「アルベール。スネイプ先生に失礼です。やめてください」
「そうかな。君もなぜ黙っているんだい。スネイプ教授は知らないのだろう?君が時折、恋人に会えない寂しさに
泣いていることを」
「なに?」
「やめて、」
「ご心配なく、スネイプ教授。の寂しい心も体も、貴方に代わって私が癒しますから」
アルベールは不敵な笑い方でスネイプを挑発した。
そしてアルベールは、の肩を力強く引き寄せ、スネイプに見せつけるようにキスをした。
これにはもスネイプも目を見開いて驚いた。
「放しなさい!」
「はいはい、っと」
がアルベールの胸を突き放そうとするのを見越して、アルベールは両手を挙げて彼女から離れた。
スネイプは泣きそうなの手を引き、自分の背後に彼女を隠した。
「貴様・・・っ」
スネイプの目は、アルベールを呪い殺さんと怒りにギラギラと光っていた。
「別に構わないでしょう。あなた方は結婚されているわけでもないのですから。は誰のものでもない」
アルベールは、流すような目でにやりと笑った。
「今年中には私のものにしますよ、。スネイプ教授。貴方は控えめで、人前で大胆な行動は取れなさそう
ですしね。彼女を奪うのは容易でしょう」
アルベールは硬質な靴の音を響かせて、二人の前から去っていった。
スネイプはアルベールの背中を睨み続けた。
は、スネイプの背中に守られ、彼の黒いローブを握りしめた。
舞台設定は4巻ですが、原作沿いではありません
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