ドリーム小説
盛大な卒業式を終え、大広間から出てくる7年生を、各寮の下級生たちが出迎えた。
花束を渡す者もいれば、抱き合って互いを励まし合う者もいた。
も両手いっぱいに花束を抱え、声をかけてくる下級生と別れの言葉を交わした。
ようやく人垣から抜け出し、息をついて落ち着いていると、を待ちかまえる者と目があった。
「マルフォイ君、」
「やっと来たか」
金髪を後ろに撫でつけ、今日も偉そうな態度でスリザリンの権力者は立っていた。
「なぁに、マルフォイ君。私を待っていてくれたの?」
「調子に乗るな。わざわざ人混みに行くのが嫌なだけだ」
ドラコは、ふんと鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
は苦笑して、
「相変わらず、可愛くないのね。君は」
「なんだと、」
「はい」
は自分から彼に近づくと、花束から一本のバラを引き抜き、それをドラコの胸ポケットに挿した。
ドラコは訳がわからない顔でを見上げた。
「王子様には、やっぱりバラでしょう」
「お前、僕を馬鹿にしているのか?」
「あら、気に入らない?似合うのに」
がにっこりと微笑むと、ドラコは牙を剥き出しにして、チッと舌打ちをした。
顔は嫌そうだが、胸ポケットの花を捨てようとはしなかった。
ドラコはちらちらとを見て、何か言いたそうな顔をしていた。
だが、きっと彼のプライドが邪魔をしているのだ。
は「じゃぁね」と告げて、ドラコの横をすり抜けた。
「待て、」
「言いたくないことを、今無理して言わなくていいわ」
「・・・・」
「言えるときが来たら、呼んでちょうだい」
は「あぁ、そうだ」と思い出したように、最後に一言ドラコに残した。
「スリザリンをお願いね」
その一言で、剣呑だったドラコの表情がゆっくりと変化していった。
睨むような態度は変わらないが、そこに微かな凛々しさが混じっていた。
「言われなくてもわかっている」
は離れながら、一度だけ後ろを振り返ってドラコに向かって笑いかけた。
□■□わたしとスネイプ先生の奇妙な学園生活 <13>□■□
汽車は時折鼻息を荒くし、いつでも出発ができる状態でホグズミード駅で待機していた。
は荷物をコンパートメントに入れ、プラットホームに出てホグワーツ城を眺めていた。
これが本当に最後の別れだ。
蒸気を噴き出し、汽車が間もなく出発の合図を出していた。
は愛した学舎を見つめて心の中でサヨナラを告げて、汽車に乗り込んだ。
「」
聞き慣れた声に呼ばれて、は後ろを振り返った。
いつの間に来たのか、スネイプがホームに立っていた。
スネイプは相変わらずの無表情でに近づいてきた。
の胸は高まった。
まさか、最後の最後にスネイプに会えるとは、彼が来てくれるとは思わなかった。
「スネイプ先生、」
の声は、汽笛の咆吼にかき消された。
声が届かない。
伝えたいことはたくさんあるのに。
汽車が出てしまうことをは焦った。
不意に、スネイプが汽車の中に一歩乗り込んできて、の手を強く引いた。
驚きに声を出す暇も与えず、スネイプは噛みつくようにに口付けた。
ゆっくりと唇が離れていき、スネイプはの耳元に口を寄せた。
「また会おう」
スネイプはの肩をとんと押し、するりと汽車から飛び降りた。
汽車がゆっくりと車輪を動かし始めた。
は慌てて乗車口から身を乗り出し、ホームに立つスネイプを見つめた。
汽車は速度を上げていく。
の柔らかな髪が風になびいた。
「いってきます!」
汽車が見えなくなるまで、スネイプはを見送ってくれた。
ホグズミード駅が遥か遠くになり、スネイプの姿も完全に見えなくなってしまった。
は汽車の壁に背を預けて息をついた。
ローブのポケットから、小さな宝石箱を取り出し、その中に蒼い実があることを確認した。
は目を閉じて、これから始まる新しい生活に向けて、一つ大きく息をした。
長い夏休みが終わり、慌ただしく新学期が始まった。
ハリーやドラコたちは3年生となり、新しく選択授業が始まり、バタバタと校内を駆け回っていた。
スネイプは、ここに来ての秘書としての有能さを改めて感じていた。
彼女がいなくなり、まるで仕事が2倍に増えたかのようだった。
そのことを、スネイプはから送られてきた手紙の返事に書き綴った。
の手紙には、ボーバトンでの生活のことが書かれていた。
『スネイプ先生、お元気ですか
私は、ようやくボーバトンの生活に慣れてきました
生徒たちもきさくに声をかけてくれます
とは言っても、私も数ヶ月前までは生徒だった身
どちらかと言えば、後輩のような感覚です
授業は今は、薬草学と魔法薬学の助手をしています
スネイプ先生のもとで学んだことが、とても役に立っています
スネイプ先生からいただいたバラの実は、部屋で育てています
花が咲いたらご報告しますね
スネイプ先生はお変わりありませんか
あまりグリフィンドールから減点しすぎず、優しくしてあげてくださいね』
綺麗な筆記体で書かれた手紙を、スネイプは紅茶を片手に読んでいた。
は元気にしているようだ。
大変なこともあるだろうが、彼女ならきっとやっていけるだろうとスネイプは思った。
手紙の最後に、追伸が記載されていた。
『P.S.
忙しいときは仕事のことで頭がいっぱいですが、空き時間ができてふっと余裕が出ると
スネイプ先生に無性に会いたくなるときがあります
早くあなたに会いたいです
スネイプ先生も同じ気持ちならいいのに・・・そんなふうに考えているのは私だけでしょうか』
スネイプは口元を緩め、机に肘をついて目を細めて笑った。
会いたくてもすぐに会えないという障害があるが、彼女に恋しがらせるこんな恋愛も悪くないと
スネイプは椅子に背を預けた。
*
「先生。刻みヨモギはこのぐらいでいいんですか?」
「もう少し多くてもいいわ。その方が薬の効果が高まるから」
の指示通り、ブロンドの女子生徒は鍋に材料を入れた。
幼い1年生が背伸びをして鍋をかき混ぜるのを、は可愛らしいと思った。
「シャルロットは調合が上手ね」
「本当ですか?嬉しいです。わたし、将来は魔法薬学の先生になりたいんです」
「じゃぁ、たくさん勉強しないとね」
の頭の中に、大好きな『魔法薬学の先生』がぽっと浮かんだ。
それは授業中の厳しい顔のスネイプだった。
は教壇に目を向け、大きな鼻とサンタクロースのような髭のオベール教授をまじまじと見つめた。
御年128才のオベール教授は、優しいお爺ちゃんという印象の先生だった。
魔法薬学もいろんな先生がいるものだと、は可笑しげに口元を緩めた。
「先生。何、笑ってるんですか?」
「うぅん。何も、」
「恋人のことでも考えてたんだろー。やらしー」
「ケヴィン、先生になんてこと言うのよ!先生に謝りなさいよ!」
「へ!やなこったー」
ケヴィンと呼ばれた少年は、べーと舌を出して教室を走り回り始めた。
シャルロットは半べそでに泣きついてきた。
は、ふぅとため息をついて「ウィンガーディアム・レビオーサ」と杖を振った。
「うわ、うわ・・!お、降ろせよーっ」
「危険な調合中に走り回ったりするからよ。反省したら降ろしてあげるわ」
ケヴィンは教室の天井近くをじたばたともがきながら浮いていた。
シャルロットはに向けてパチパチと手を叩き、オベール教授は髭を揺らして笑っていた。
のボーバトン生活は、なかなかに順調だった。
その日の授業を終え、職員寮の部屋に戻ったに、2つの嬉しいプレゼントが待っていた。
一つは、机の上に置かれていた。
は手紙を手に取り、封筒の裏を見た。
の顔が、驚きから満面の笑みへと変わった。
ははやる気持ちを抑えて封を切り、手紙をゆっくりと読み進めた。
スネイプらしい短い手紙、その最後に添えられた一文に、の頬は桜色に染まった。
『I always think of you. −いつも君のことを想っている−』
それはを元気にさせる魔法の言葉だった。
会いたいという気持ちがの中で日増しに大きくなっていった。
二つ目の幸せは、が夕暮れの窓辺に目を向けたときに姿を現した。
は、それを見て、じわじわとこみ上げてくる嬉しさに目を細めて笑った。
小さな植木鉢で大切に育てていた蒼い実が、綺麗な蒼い花を咲かせていた。
*
月日は流れ、あっという間に数ヶ月が過ぎていった。
寒かった冬も終わり、雪が溶けて、季節は春へと向かっていた。
ハリーたち3人組は、グリフィンドール席で朝食をとっていた。
ハリーとロンは眠い目をこすりながらシリアルを食べていた。
日刊予言者新聞を読んでいたハーマイオニーは、突然声を上げて、呼んでいたページを二人に見せた。
「見て見て、二人とも!これ、さんよ」
「へ?だれ、」
「忘れたの、ロン!去年卒業した、」
「あぁ。ハーマイオニーが気に入っていた、あのスリザリンの人か」
「そうよ!ここ、これ見て」
日刊予言者新聞の1ページに、フランスの薬学研究団のことが写真入りで記事にされていた。
その写真の中心に、の顔が写っていた。
見出しには、『ボーバトン魔法アカデミーの薬学研究室、蒼いバラから新魔法薬の開発に成功』とあった。
『今回の新薬発見は、ホグワーツ魔法魔術学校より迎え入れた・実習生の鋭い着眼点により・・・』
記事を読み進めるハーマイオニーの頬が興奮に血色良くなっていくのを、ハリーとロンはジュースを飲みながら
「やれやれ」と見守っていた。
*
大広間の前に横一列で並ぶ職員席で、スネイプは紅茶をすすりながら新聞のその記事を読んでいた。
写真の中のは白衣を着ていて、何人もの研究員に囲まれて、満面の笑顔で写っていた。
彼女の胸ポケットには、蒼いバラが一輪飾られていた。
新種の蒼いバラから抽出された液には、魔法薬の可能性を広める力があった。
おそらくそれは、ゴートンが叶えられずに終わった悲願だ。
は十二分にその才能を発揮し、彼の本懐を遂げていた。
スネイプはカップに付けた口を、微かに釣り上げた。
「何か面白い記事でも載っていたのかい。セブルス」
「別に。何もない」
隣の席のリーマスに声をかけられ、スネイプは無愛想に答えて新聞を閉じた。
不自然に咳をしたりするスネイプを不思議に思いながら、リーマスは食後の紅茶をすすった。
一瞬スネイプが笑ったように見えたが、見間違いかとリーマスは首を傾げるのだった。
ボーバトン1年生シャルロットとケヴィン
フランス版ハーマイオニーとロンです
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