ドリーム小説
それはいつだったか図書室で見たことがある色。
茶を濃くしたような鳶色は、窓からの光を受けて一層きれいに輝くの。
スピカ 第八夜
やっぱりいた。
薄暗い薬学教室で一人罰掃除。
僕らは悪戯が見つかってたまにやらされるけれど、女の子が一人でやっているところなんて滅多に見ない。
ちょっと不思議な気分だな。
マグル式で掃除させられているのか、手に箒を持っている。
今日はすんなり目が合った。
それはそうだね。ここには僕と君しかいないからね。
そして僕らはそのまましばらく見つめあった。
こんなに長く目を合わせているのは初めてだね。
さて、いつまでもつかな。
ちょっとゲーム感覚だったけど、さんはフッと瞳の力を抜くとあっさりと目をそらした。
そして黙々と掃除をする。
ざっ、ざっという箒のこすれる音がして、その音に重なって彼女の声が聞こえてきた。
「仕返しに来たの?それとも、嘲笑いに来たの?」
初めて会ったときと変わらぬ、冷たいスリザリンらしい声。
シリウスとかが聞いたらかまわずつかみかかってそうな言葉も、僕には効かない。
自然と口元に笑みが浮かんだ。
「違うよ。謝りに来たんだ」
僕の言葉に彼女の手は止まる。
「なぜあなたが?謝るべきは私でしょう?」
口ではあぁ言っているけれど、今の彼女にはきっと謝る気なんてないんだろうなぁ。
そして彼女は再び手を動かそうとするから、僕はわざと音を立てて彼女に近づいた。
カツカツッと音がして、私が水をかけた彼は近づいてきた。
暗い地下教室には不似合いなさわやかな笑顔を浮かべて。
そして彼は私と机ひとつ挟んで立ち止まった。
叩かれるのだろうか、などと少しだけ不安になっていると彼はゆっくりと、だが厳かに口を開いた。
「君の傷口を抉ってしまったのなら、謝るよ。でもね」
その笑顔が少しだけ酷薄なものに変わったの。
私の心がまたちくちくと痛み出す。
(・・・・・やめて)
次に何を言われるのかわからない。
それでも私の心は、彼に何を言われてもいいように、薄いヴェールを張り出す。
「傷口は、早く何とかしないと膿が溜まって腐ってしまうんだ」
怖い。
ガードしなきゃ。
心をガードしなきゃ。
「は僕の友達で、はセブルスが好きなんだ」
ガードしなきゃ。
壊れてしまう。
「そしてセブルスは。あのプライドの高いセブルスは、のことで僕たちグリフィンドールに頼みごと
をしに来たことがある」
容赦ない彼の言葉が、私の心に針を。
いえ。ナイフを刺す。
心が痛い。
「セブルスにとっては。にとってセブルスは、大切な存在なんだ」
ガード・・・・・しなきゃ。
壊れてしまうよ。
私は必死になって抑えるけれど、彼の言葉は私の脆い防壁など簡単に打ち破る。
そして彼は残酷な言葉を吐く。
「ごめんね」
カタンと音がして、彼女の手から滑り落ちた箒が床でバウンドした。
カランカランと乾いた音が教室に木霊する。
僕は箒に眼を向けた。
落ちた箒の横に並ぶ、少し内股気味の足。
だらりと下がった両腕が、もう彼女に力ないことを示している。
僕より少し背の低いさん。
今は首をうなだれているからもっと低い。
どんな顔をしているのかもわからない。
不意にぽたりと音がして、床に小さな染みを作っていた。
彼女の小さな肩が震えている。
空気の振動が、彼女の震えが、僕に伝わってくる。
「わかってる、・・・・・・・わかっているの。頭では・・・・・よくわかっている」
時折嗚咽を漏らし、堅く閉じた瞳から雫を流し、それでも彼女は最後の壁を壊そうとはしない。
震える声が僕の耳に届く。
「でも・・・・・・心がそれに・・・ついていけないの・・・・っ!」
止まらない涙を止めようと、さんは必死に指で目をこする。
どうして折角現れ出した心を隠そうとするのかな。
でも、必死になって目をこする、そんな姿が、不謹慎にも綺麗だと思う。
僕はまだ下がったままの彼女を手首を服の上から掴んだ。
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なにーーーーっ!?
どうなるのこれ!?どうなるの!?
はい、斉唱。
どうなるの〜〜〜♪♪♪
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