満月は僕を狂わせる。
だから嫌い。
でも満月はあの髪を思い出させる。
それはちょっと好き。
第五夜
寒い冬の夜。
僕は一人、禁じられた森の中を彷徨っていた。
こんな季節のこんな時間に生徒が徘徊しているなんて尋常じゃない。
凍死する可能性だってある。
でも大丈夫。
今の僕は、決して人の形ではなく、月に向かって悲しく吼える獣の姿だから。
こうして思考しているけど、それもかなりの集中力を使っていて、実は変身してしまっているときはその
ほとんどの記憶がない。
自分がどこで何をしていたかわからないなんて・・・・・なんて恐ろしいんだろう。
僕が今心待ちにしていること。
それは親友たちのアニメーガスが早く完成しないかな、ということ。
(ジェームズハ、ホボ完璧ナンダヨネ。シリウスガ、モウ少シ。ピーターハ、マダマダカナ?)
ピーターがネズミに変身できないと、折角ダンブルドア先生が植えてくれた暴れ柳のスイッチも押せない。
それにやっぱり、全員で行動したいからね。
(アァ、早ク完成シナイカナ)
そんなことを考えながら歩いていたときだ。
不意に僕の目の前を何か真っ白なものが横切った。
獣の俊敏さですぐにそれを目で追う。
タタッ、タタッ、タタッ、というリズミカルな足音が徐々に遠く小さくなっていく。
遠めに見たそれは、月の光を受けて真っ白に輝く毛皮を持っていた。
(今ノハ・・・・・何ダッタンダロウ?)
飛びそうな理性を必死に押さえて考える。
考えても考えてもわからず、随分考えているうちにどうやら日が昇っていたようで、僕の体から厚っこい
獣の毛が消え始めていた。
長い時間をかけて、僕はもとの自分の姿に形を変えた。
変身後の気だるさと戦いながら、僕は何とか寮へと戻った。
僕がどんなスペクタクルな夜を過ごしたとしても、日常は何も変わることなくやってくる。
だから僕も時間の流れに合わせて、かなり気だるい体を起こして朝食を取りに行く。
それでもいつもとちょっとだけ違うのは、僕がいつ倒れてもいいようにジェームズたちが僕を支えるよう
にできるだけ近距離で、ゆっくり歩いてくれること。
そんな友人たちの心配りに感謝しながら、僕らは大広間へ入ろうとして、彼に会った。
僕らの前を歩いていたが反応する。
「セブ、もうご飯食べ終わったの?」
血色の悪い顔をして、セブルスがの言葉に頷く。
「もう!またちょっとしか食べてないんでしょう?」
「・・・悪いか。何度も言うが、僕は低血圧なんだ」
そんな感じで談笑する2人。
でも楽しそうな2人には申し訳ないけど・・・・・実は立っているのがつらくてね。
早く座りたいんだけどなぁ。
そんなことをぼぉっと考えていると、セブルスの後ろからちょっと高めの声がかかった。
「失礼。通してもらえる?」
横になびいた銀色の髪で誰だか分かった。
あの子は・・・は風のようにするりとセブルスの横を通り抜け、フッと顔を上げた。
あ。また目が合っちゃったね。
そしてまたそらされちゃった。
そのまま何事もなかったかのように去っていった。
あくまで普通を装っていたけど、僕の眼は誤魔化せないよ。
気付かれてないと思った?
でもわかったよ。
君が、セブルスの横を通り過ぎるとき、ちらりとだけど一度彼に視線を送ったのを。
彼女の心はまだセブルスに囚われたままなんだね。
何だか自由を知らない・・・いや違う。
自由を知っていてあえて飛ぼうとしない鳥のようで。
自ら籠の中に閉じこもってしまう鳥のようで。
何だか昔の自分を思い出してしまった。
その日の昼食後、ピーターが体調を崩した。
残る合同授業は魔法薬学のみ。
僕はジェームズ、シリウスとともに同じテーブルに座っていた。
先生の声がかかった。
「ミスター・ペティグリューがいないのですね。ではミスター・ルーピン。今日のみ組を変えましょう」
そして先生は告げた。
「ミス・。あなたもパートナーが欠席ですし、今日は二人でおやりなさい」
へぇ。こんな偶然もあるんだなぁ、って僕は感心してしまった。
何はともあれ僕は教科書一式を持って彼女のいるテーブルへと移った。
「よろしくね」
「えぇ、よろしく」
とりあえず私も挨拶を返した。
言葉を交わしたとき、今度こそ偶然なんかじゃなく、しっかりと目が合ってしまった。
そういえば最近、この人とよく目が合うわ。
この人・・・えっと。
(先生、なんて呼んでいたかしら)
綺麗な響きだった気がするけれど、忘れてしまったわ。
まぁ、スリザリンはグリフィンドールとは仲良くするなって言われているし。
(それもマルフォイ先輩の勝手な言い分なんだけれど)
とりあえず今日のみ、いつもどおりに授業をすればいいだけ。
そして私は黒板に書かれたとおりに薬草を手に取った。
不意に前を向くと、彼も。スネイプ君も同じ薬草を手にしていて。
単純な私は、少しだけ嬉しく思った。
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