あぁ、つらい。
どうしてこんなにつらいのでしょう。
忘れられたらどんなにか楽でしょう。
誰か教えて下さい。
この胸の痛みを取り去る術を教えて下さい。
第二夜
クリスマスも新年のお祝いも終わってしまったのだ。
後2,3ヶ月でテストが始まる。
ホグワーツの名高い悪戯4人組だって皆勉強・・・するわけがない。
勉強より悪戯をとるに決まってる。
でもちょっと待って。
4人ともがそうなわけじゃない。
ジェームズとシリウスは、もともと天才的な頭脳を持ち合わせているのか、がり勉なんかしなくてもいつ
も好成績なのだ。
ピーターは必死にやらないとそれに追いつけない。
そしてリーマスも、しっかりと勉強しないといけない。
でも真面目なリーマスは、授業もしっかり聞いているからテスト前に慌てたりはしない。
人より少し前からこつこつと試験勉強をする秀才なのだ。
今も鳶色の髪を窓辺の光に反射させて、図書館の隅に座っている。
「リーマス、何やってるの?」
突然声がしたからびっくりした。
でも声と、目の隅に微かに見えた黒髪で誰だかわかる。
「やぁ、。呪文学だよ。予習しとかないとね」
「さすがリーマス。予習とは」
ニッコリ笑って見せると、もつられて笑う。
前は大分長かった彼女の髪。
諸事情で短くなってしまったけど、僕は短いのもに似合うと思う。
「は。魔法薬学の本探さなくていいの?」
「え?何で私の探してる本、わかったの?」
不思議な顔をする。
でもわかるよ。だって、ほら。
僕はくいっと親指での後ろを指してやる。
が振り向いた先には、眉間に皺を寄せて僕を睨むセブルスの姿があったから。
「・・・そうだ。頼まれてたんだ。で、リーマス見つけたから・・・」
「早く探して行ってあげなよ。じゃないと僕が睨み殺される」
嫉妬に狂った蛇は怖いからね。
しかも君たち新婚なんだから、彼氏を不安にさせちゃダメだよ。
は悪戯っ子のようにベェッと舌を出すと、慌てて本を探しに行った。
さて、僕にも静寂が戻ったことだし、予習の続きをしよう。
そう思って羽ペンを握って。
一度うぅ〜んっと背伸びをして。
集中しようとしたのに。
でもさ、でも。
偶然なんだ。
気付いちゃったんだよね。
セブルスとが座っているテーブルのもっと奥のテーブル。
窓から一番光が差し込む、ちょっと明るすぎるくらいの席。
そこに女の子が座ってるのに。
別にホグワーツにはたくさんの女の子がいる。
そのこたちの顔を全部知ってるなんて、そんなシリウスみたいなこと僕はできないけど。
それが最近見たことのある子なら、僕だって覚えてる。
窓の光で光っているけど、あれは銀髪。
僕が一等好きになれないものに似ているから、ちょっと覚えてるんだよね。
あの子も勉強しているのかな?
呪文学の予習をしながら、ちょっとだけ観察してみよう。
窓の光が反射して、ひろげた本の文字が読みにくい。
それでもここは私が一等好きな場所。
窓枠の影がテーブルに映って、何だか教会の椅子に座っているみたいなの。
それに窓からいっぱいに降り注ぐ光が私を包んで、私の全てを飲み込んでしまうんじゃないか。
そんな不安の中にいるのも好き。
でも、そんな綺麗な理由だけじゃないの。
私がここに座るのは・・・。
「ねぇ、セブ?この本でいいの?」
「・・・・・。誰が呪文学の本を持って来いと言った?魔法薬学だ、薬学!!」
図書館に似つかわしくない、あの人に似つかわしくないちょっと荒げた声が聞こえてくる。
私のちょっと前のテーブルに男の子と女の子が座って、勉強・・・喧嘩?をしているの。
ちょっと不健康そうな少年・・・私と同じ寮・・・実を言うと私と同学年の彼は、獅子寮の女の子を叱る
と、自分はまた黙々と羊皮紙とにらめっこを始めた。
「ちょっ!セブ!」
「探してこれたらこの問題を教えてやる」
「ずるい!」
女の子は少しむくれたようだけど、負けず嫌いなのか、また本を探しに戻った。
一生懸命探すそんなあの子の姿を、ほらあなたは。
冷たく叱りながらも、ちょっとだけ目線を上げて見つめている。
女の子が腕組みして、高いところにある本を取ろうと手を伸ばして。
とれなくて飛び跳ねてる。
そんな姿を見てあなたは優しい顔で苦笑して、溜め息はいて、席を立って、ほら。
「取ってやる。これだろう?」
ちゃんとあの子のために本を取ってあげる。
私の思ったとおり。
それはそうよ。
だって私は、あなたのこと、あなたの一挙一動を、前からずっと・・・・・。
この続きを言うのは止めよう。
こう考えただけで胸に針を刺されたような痛みを覚える。
ぐさりと差し込むんじゃなくて、遠まわしにチクチク刺す痛み。
もういい加減にして欲しいのに、あなたを見ているだけでこの痛みはやってくる。
だからここまでで目をそらす。
ちょっと休憩、本に集中。
また痛みがひいたら、本はお休み。
懲りないなぁ、私。
「・・・・・・」
何だか不思議なものを見た気がした。
なるほど。
あの子があんな明るい席に座っているのはそういうことか。
確かにあの席からならあの2人が良く見えるし、あの2人からは見られない。
なるほど。
僕はそれだけでなんとなくわかってしまった。
意外と勘がいいんだよ?
でもそのことは口にしないでおこう。
あくまであの子のプライベートだからね。
幸いなことにあの子は僕の存在に気付いてないみたい。
どうせだから、もう少しだけ見ていよう。
そして僕は開いていた分厚い本をパタリと閉じた。
(あ。もしかして、あの時も・・・?)
不意に思い出す、あの子とぶつかった時のこと。
そういえばあの時も僕らの先にはセブルスがいた。
(やっぱり、そういうことかな?)
確信が、6割から8割に増えた。
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