あの慌しい事件に幕が下りたのは、ちょうどクリスマスから冬期休暇にかけての時期。
グリフィンドールに所属する少女とスリザリンの少年とのドタバタコメディー&恋愛模様。
結局、ある一人の男の汚職事件が取りだたされ、そのおかげで少女は助かり、結果少女と少年は晴れて結
ばれるに至った。
その結末に納得のいかない黒髪の犬っぽい少年、ホッとする眼鏡の少年とその恋人である赤毛の少女、そ
して静かに祝福する背の低い少年。
だがこの物語の主役は彼らではない。
これから事件・・・とは言えないほど静かな、極普通の日常の中で起こる物語を紡ぐのは・・・。
「久し振り、リーマス!元気にしてた?」
そんな彼らを、彼らの周りを静かに見守る、鳶色の髪の少年である。
第一夜
冬休みも終わり、生徒たちも学校へ。
雪で埋もれるホグワーツに活気が戻ってきた。
開かれたとある寮の扉。
そこから入ってきた黒髪の少女の姿に、リリーは満面の笑みで半ば興奮気味に叫ぶ。
「ーーーッ!!おかえりなさい、!!」
「リッリィーーーッ!!ただいまーっ!!」
それほどの期間でもなかったはずなのに2人の喜びようはすごい。
それもそのはず。
今入ってきた少女、は休暇前に大事件を起こして帰省してしまったのだから。
だがそれも無事解決し、リリーもからのふくろうで報告を受け、やっと笑い合えることが実現した。
にんまりと意地悪な笑みを浮かべるリリー。
「なに?リリー」
「フフフ。おめでとう、♪晴れてセブルスと!」
あえて続きを言わないリリーの前で、はこれでもかというほど顔を真っ赤にする。
「う・・ん。ありがと、リリー///」
「で?式はいつなの?」
そんなが可愛いのか、リリーはしきりに問い詰める。
「・・・卒業・・・してからだって。父様が///」
「やったわね、このぉー!!」
たまらずギュッとを抱きしめると、微かな叫び声が帰ってきた。
だがすぐにそれは笑い声と変わり、2人の少女は満足いくまで微笑みあった。
体を交換してしまうなどという嘘のような本当の事件も幕を閉じ、その間に起こった様々な過去のしがら
みも解決し、晴れてとセブルスは結ばれた。
そのことにの仲間たちは大いに喜びあう。
のルームメイトのリリーはもちろん、ジェームズもリーマスもピーターも。
ただシリウスだけはちょっとばかりご機嫌斜めだった。
「おはよう、シリウス!久し振り!」
「・・・・おう」
「?新学期早々、何でそんなに暗いの?」
の笑顔の問いかけにもシリウスは無言で首をうなだれるだけである。
それもそのはず。
黒犬君。この愛の結末の一番の被害者だからである。
「悪いね、〜。シリウスちょっと便秘でさぁ」
「嘘付け、ジェームズッ!!くだらねぇこと言ってんじゃねぇ!」
ガッと肩を抱いたかと思ったら妙なフォローをする友人に、たまらずシリウスは激昂する。
だがそれもすぐに大人しくなり、しゅんとしっぽが垂れてしまう。
「よくわからないけど・・・元気出してね。シリウス」
今はの優しさが一番痛い。
だがシリウスの気持ちを知らず気付かず、しかも結構鈍ちんのにはどうすることもできなかった。
「・・・・サンキュ」
とりあえず今日は失恋ソングズでも聴いて泣こうかなと思うシリウスであった。
そのときはふと何かが足りないことに気付く。
「ねぇ、リーマスはまだ来てないの?もうすぐ朝食だよ?」
「あぁ、リーマスにしては珍しく寝坊したみたいでさ。次の特急も着いたし、もうすぐ来るんじゃないか
な?」
まだ落ち込んだままの犬君の肩を叩きながら、ジェームズは軽い口調で答える。
そうかと納得しながら、は自分の荷物を部屋に運ぶため手をかけた。
(あ。そういえば朝食前にセブと会う約束してたんだっけ)
ふとそのことを思い出したは、手をかけたバッグを床に下ろすと扉の方へ足を向けた。
「?」
「リリー。私ちょっと用事思い出しちゃった。朝食前には戻るね!」
足取り軽やかに出て行くを一同は見守る。
「「・・・・セブルスだと思う?」」
思わず揃ってしまった声にリリーとジェームズは顔を見合わせて笑い、シリウスは益々落ち込むのだった。
ばたばたと廊下を走り抜ける音が響く。
右肩に大きめのバッグを担ぎ、少年は寮へ向けて走っていた。
「うわ〜っ!間に合うかなぁ?」
鳶色の柔らかい髪をなびかせ、少しだけ息を切らせて走る走る。
もうホグワーツも4年目となる少年には、学校の構造など手に取るように分かる。
まぁそれも仲間同士での悪戯のおかげともいえるのだが。
(よっし!ここの角を曲がれば図書室!)
そして勢いづけて角を曲がる。
そこで予想外の事故は起こった。
「えっ!?わっ!!」
「えっ?きゃっ!!」
ドシンッという鈍めの音とともに、2人の人影が床に倒れこむこととなった。
人がいるなど想像もしなかった。
お尻を打ってしまった痛みにしばし目を瞑っていた少年だったが、さっき聞こえた叫びにはたと気付きす
ぐに立ち上がる。
予想通り自分の目の前には自分と同じくらいの年の少女が倒れていた。
「わっ!ごめんなさい!君、大丈夫?」
「い・・った・・。いえ、・・平気です」
少しだけ目尻に涙をため、少女はよろよろと立ち上がる。
リリーと同じくらいの長い髪(ただし銀色だが)を揺らして立ち上がった少女は、緑と銀のストライプの
タイをしていた。
「ほんとごめんね。僕がよく前向いてなかったから」
「いえ。私もぼぉっとしていましたから。気にしないで下さい」
邪魔そうに髪を耳にかける少女は、にこりともしない。
あぁ、スリザリンだなぁと思った。
その単語が頭の中に浮かんだ瞬間、少年の眼にそれを象徴する人物が飛び込んできた。
少年は思わず笑顔で彼に声をかけていた。
「あ。セブルスだ。おはよう、セブルス」
遠いところに立つ彼を見つめたせいで、近くにあるものの焦点がぼやける。
だからだ。
少年は、自分の眼の隅っこに映る少女がどんな顔をしているのか気付かなかった。
「無視しないでよ、セーブールース」
「・・・・うるさい。馴れ馴れしく呼ぶな、ルーピン」
セブルスの嫌々混じりの声が聞こえた。
少女が微かに動いた、気がした。
「ひどいなぁ。に言いつけるよ」
「脅しのつもりか?全く通用しないな」
フッと皮肉気に笑うセブルスの頭を、誰かが羊皮紙で叩いた。
「誰だ!」
「リーマスを苛めないでよ、セブ!」
額に青筋を立てるセブルスに、一際明るい少女の声がかかる。
短めの黒髪を揺らして、が抗議をした。
鳶色髪の少年はフッと微笑む。
横にいる少女が微かに動いた、気がした。
「久し振り、リーマス!元気にしてた?」
「おはよう、。相変わらず元気だね」
「へへ。まぁね!」
「。人を待たせておいて侘びもなしか?」
少女が動いた。
長い銀髪を揺らしながら、リーマスの横を早歩きで立ち去る。
「あ」
もう一度謝ろうとリーマスは振り向く。
だがもうすでに少女の姿は見えなくなっていた。
「・・・・・大丈夫・・・かな」
ポツリとつぶやく。
背後から聞こえてくる2人の痴話喧嘩。
その向こうから聞こえてくる、自分を呼ぶジェームズたちの声。
全ては休暇前と何も変わっていない。
ただ一つ。
一人の少女と出会ったということを除いては。
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