ドリーム小説
スピカ 第十四夜
さすがは学年、いや学校一の魔法薬学の成績保持者というべきか。
セブルス、そしてが作った薬のおかげでリーマスの怪我はものの一週間で治った。
復帰後の最初の授業でリーマスはに会い、礼を告げた。
「本当にありがとう。・・・とセブルスのおかげだよ」
セブルスの名を出すべきかどうか迷ったが、リーマスははっきりとした口調で言った。
の心の傷をぶり返してしまうかと思ったが、リーマスの予想と反してそんなことはなかった。
「どういたしまして。でも私はスネイプ君の指示通りにやっただけだから。お礼は彼に言うべきよ」
意外にもあっさりとセブルスの名を口にし、かつ余裕の笑みを浮かべていた。
そんな彼女の様子にリーマスはホッとする。
どうやらは完全にハードルを越えたようだ。
月は満ち、欠け、そしてまた満ちる。
リーマスの嫌いな日がやってきた。
空には大きな銀色の卵が浮かんでいる。
それを見上げてリーマスは。
リーマスだったものは、深いため息を付く。
全身が鳶色の毛で覆われた狼は、深い森のとある一角に座り込んでいた。
さっきまで暴れまわっていたのが嘘のように大人しく。
ぴくぴくと耳を数度動かすと、何度目になるか、もう一度自分の後ろ足を見た。
綺麗な鳶色に混じって赤のような黒のような色が見える。
毛にこびりついた赤い血。怪我をした足から流れ出る赤い血。
地面に広がる黒い液体。変色してしまった黒い血。
破れかぶれに理性を捨てて走り回っていたら、後ろ足に怪我を負ってしまった。
上手く歩くことすらできず、仕方なくそこに座り込んでいるのだ。
後ろ足なので自分で舐めることもできない。
(・・・何ヲシテイルンダロウ、僕ハ)
人の形をしていたら明らかに落胆の表情を浮かべている。
このまま動かず、朝になってジェームズたちが探しに来るのを待とうか。
いや。変身の解けた人の姿で冬の朝を乗り切るのは不可能に近い。
だからと言ってここでがむしゃらに遠吠えなんかしたら、ホグワーツの者たちが詮索に来てしまう。
どうすればいい。
リーマスは必死に考えていた。
そのときだった。
(・・・・ナンダ・・・アレハ・・・?)
ガサッと草の揺れる音がしたと思ったら、リーマスの視界に白銀の獣が飛び込んできた。
その獣には見覚えがある。
一ヶ月前にもこの森で見た。一瞬だったが自分の前を通り過ぎた。
良く見るとそれは月の光を受けて銀色に輝く雪豹だった。
(雪豹ダ。雪豹ハ確カ・・・・幻ノ生物)
授業で習ったことを思い出す。
もう世界に何頭といない、非常に稀で特殊な生き物。
雪豹には他の生き物にない貴重な力が備わっている。
リーマスはそれを必死で思い出す。
さくりと音がした。
耳を立てて音がした方を向く。
雪豹がすぐそばまで来ていた。
“僕ニ近ヅクナ”
警告するようにリーマスは唸り声をあげる。
グルルと腹の底から響きを利かせ、目を光らせる。
だが雪豹は顔色一つ変えず、それどころかゆっくりとリーマスに近づいてくる。
“離レロ!”とリーマスが叫ぼうとした。
だがリーマスのそんな威嚇は、まるで白い獣には利かなかった。それどころか。
雪豹はどんどんリーマスに近づいて、しまいには彼の足元にどっかりと座り込んだのだ。
これにはリーマスも唸るのを忘れ、雪豹を見つめるに留まった。
何をされるのかとドキドキし、雪豹の行動から目を放さんとする。
白い獣はちらりとリーマスを一瞥し、そして。
(・・・・・エ・・・?)
リーマスの怪我した後ろ足を丁寧に舐め出した。
獣の本能的な、怪我をした者への配慮だろうか。
リーマスはあまり働かない頭をグルグルと巡らしてみる。
だが今この状況ではどうしようもないので、気休め程度とはいえ雪豹のその行為を甘んじて受け入れるこ
とにした。
そのとき不思議なことが起こった。
雪豹が舐めた怪我の部位が、青白く発光し出したのだ。
突然のことにまたもわけが分からず、リーマスはその光に眩しそうに目を細める。
そして奇跡は起きた。
発光する光が消えてその下に現れたのは、なんと怪我が完全に治ったリーマスの後ろ足だった。
目の前の状況を見て、リーマスの頭に瞬時に記憶が蘇る。
(ソウダ。雪豹ノチカラ。ソレハ・・・・・唾液ニ含マレル治癒能力)
その希少な力に魅了された者によって、雪豹の多くは密猟されたのだ。
だから今絶滅の危機に瀕している。
噂に寄れば、“例のあの人”もその力に目をつけて雪豹を狙っているとか。
そんな貴重な獣にこんなところで出会えたばかりか、治癒能力によって助けられるとは。
(ホント、悪運ダケハ強インダヨネ。僕ッテ)
リーマスは治った足に力を入れて四足で立ち上がった。
痛くも何ともない。
(ソウダ。オ礼ヲ言ワナキャ)
ふと気づきリーマスは顔を上げた。
だがさっきまですぐそばにいた雪豹は、もうすでに森の奥へと走っていってしまっていた。
揺れる長いしっぽが月の光を受けてキラキラと光り輝いている。
一足遅かったようだ。
リーマスはお礼を言い損なったことにちょっとばかり肩を落とす。
(マタ・・・会エルカナ?)
そんなことを思いながら、消えていく白い獣に軽く頭を下げた。
今、月はどのくらいに傾いたかな。
そう思って顔をあげて。
遠くにいる雪豹がこっちを見ていることに気づいた。
じっとリーマスを見つめている。
まるでリーマスがちゃんと立てているかを確認しているかのよう。
きちんとお礼が言いたくて、リーマスは追いかけようと足を踏み出した。
そのとき、雪豹が吼えた。
高い高い天焦がれるが如く月に向かって吼えるその姿は、狼などよりずっと似合っていた。
獣の言葉ならリーマスにもわかる。
だがそのときだけはなぜか雪豹が何と言ったのかわからなかった。
それはどこかで聞いたことがある言葉のはずなのに。
(エ?何?何テ言ッタノ?)
そんなリーマスの想いとは裏腹に、雪豹はただ一度の咆哮を残してさっと去っていった。
(何?僕ニ言ッタノ?)
白い獣は完全にリーマスの視界から姿を消した。
(モウ一度。モウ一度ダケ言ッテクレナイカイ?)
“オ願イダヨ。モウ一度ダケ言ッテ。君ハ何テ言ッタノ?”
「―――――スッ!」
「リ――――スッ!」
「リーマスッ!!」
「はいっ!!」
不意に耳元で大声で呼ばれ、慌てて返事をする。
リーマスは何がなんだかわからず、寝起きで開かない目を何度も瞬かせた。
ぱしぱしと瞼を開閉して、ふと目の前に誰かが立っていることに気づく。
何だか嫌なオーラを感じる。
チラリと横に視線だけを向けると、シリウスが悪戯が見つかったときのような顔をしていた。
不意に上から声が降ってきた。
「おはようございます、Mr.ルーピン。快眠のようですね?」
針が刺すような厳しい言葉使い。
リーマスの頬を冷や汗が流れる。
「・・・・・おはようございます。マクゴナガル先生」
笑みを引きつらせて挨拶する。
マクゴナガル先生が片眉を上げた。
「グリフィンドール5点減点。Mr.ルーピンは後でわたくしの書斎に来るよう」
「・・・・・はい」
観念してリーマスは素直に返事をする。
“今日は厄日だ”と心の中で思った。
視線を横に投げると、シリウスとジェームズが親指立てて“Good luck!!”とやっていた。
友達がいのない友人たちに、どう仕返ししてやろうかと本気で考えるリーマスだった。
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真っ黒リーマス♪
今回ヒロインあんまり出てこないですね。ぐすん。
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