ドリーム小説
スピカ 第十三夜
ゆっくりと目を開けると、目の前には真っ白な天井が広がっていた。
大きく鼻で息をしてみると、つんっと薫るのは薬品の匂い。
見覚えのあるようなないような真っ白のシーツ。
そこでやっとリーマスは自分が保健室にいることに気付いた。
「Mr.ルーピン。目が覚めましたか?」
優しい女性の声。この部屋の主、マダム・ポンフリーの声。
「マダム・ポンフリー。・・・・・僕は?」
いまいち焦点の合わない目をぐるぐると回し、ニッコリと微笑むマダムに合わせる。
「覚えていませんか?クィディッチの試合中にブラッジャーが飛んできて」
「・・・・・あ」
そういえばそうだ。
マダムの一言に曖昧だった記憶が一気に戻ってくる。
そして今頃になって自分の額や腕、首に包帯が巻かれているのに気付いた。
気付くや否やチクチクとした痛みが走り出す。
「Mr.ブラックがひどく取り乱していましたよ。“俺のせいだ!!”とか何とか叫んでいましたが、あまり
にうるさかったので追い出しました」
そのときのことを思い出してうんざりするマダムに、リーマスは笑みを浮かべる。
これでちょっとはシリウスも反省したかもしれない。
「いつもお世話になります、マダム。ありがとうございます」
自分が人狼であるがゆえに、マダム・ポンフリーには入学からずっとお世話になっている。
ホグワーツ内でもここまでマダムと親しい生徒も少ないだろう。
お礼を言われ、マダムはニッコリと微笑む。
「お礼なら、私以外に言わねばならない人が2人いますよ」
楽しそうに笑うマダムにリーマスは不思議な顔を向ける。
シリウスとジェームズかと尋ねると、どちらでもないと言われた。
「お一人は、ここにいますよ」
“ここ”と言って、マダムは視線をリーマスのベッドサイドに投げかけた。
何があるんだろうと首を回そうとするが包帯で動けない。
リーマスは仕方なくマダムに手伝ってもらって上半身を起こした。
「・・・え?」
目を丸くして驚くリーマスの反応に、マダムは楽しそうに笑う。
備え付けの椅子に座り、ベッドの縁に頭を預けて一人の少女は寝ていた。
すやすやと穏やかな寝息をたてて寝入る少女には、とても見覚えがあった。
綺麗にシーツに広がる銀色の髪。
「どうして、・・・が」
起こさないようにと声を潜めると、マダムが笑顔で応えてくれた。
リーマスがここに運ばれてきたとき、傷薬と痛み止めをどちらも切らしてしまっていたらしい。
だが調合を頼もうにも薬学の先生は不在。
それで先生の信頼の置ける人物に頼んだそうだ。
「それが、ですか?」
だがリーマスの問いにマダムはいいえと答える。
わからないというリーマスにマダムは珍妙な笑みを浮かべた。
「Mr.スネイプです」
「げっ」
思わず出てしまった素の声にリーマスは慌てて口をおさえる。
まさかその名が出てくるとは思わなかった。
だがセブルスの魔法薬学の成績を見れば誰であろうと納得がいく。
「緊急でMr.スネイプに頼みました。嫌々ながら承諾してくれましたよ。だいぶMiss.の推し
もありましたが」
彼への悪戯も当分できませんね、とからかわれた。
リーマスは心の中で・・・とセブルスにお礼を言った。
「マダム。でははなぜここに?」
いまだに分からぬその事実を問い詰める。
返ってきた答えは、リーマスを静かに驚かせた。
「Miss.がMr.スネイプの助手を務めたのですよ」
「・・・・・が?」
その状況が上手く想像できない。
だってつい最近まで、はセブルスに上手く近づくことすらできなかったのだから。
もう一度に視線を戻す。
まだ起きる気配を見せずに静かに眠る。
「チョコのお返しがしたい、と言っていましたよ。何か心当たりでも?」
・・・・・ある。
と言っても、リーマスがにチョコをあげたのは過去2回。
一度目は秘密裏に(図書室で)。二度目は手渡し(地下室で)。きっと二度目のことだろう。
「これを。もう少ししたらお飲みなさい。Miss.が調合してくれた痛み止めです」
“上手にできてますよ”と言い残し、マダムは保健室を出て行った。
甘党のリーマスには少々つらいと思われる香りが漂ってくる。
ゴブレットからもう一度視線を彼女に戻した。
窓から吹きいる風に銀髪が揺れる。
差し込む光に白い肌がキラキラと光る。
白い肌に映える黒く長い睫がピクリと動いた。
素直に綺麗だと思った。
本当に、今ある世界で一番美しいと思った。
薄暗い地下教室にカチャカチャと器具が触れ合う音が響く。
使い終わった後の器具や、散らばった材料がテーブルの上に散乱している。
セブルスはそれらを無言で片付けていた。
静かだった地下室に、嵐のように少女が舞い込んできた。
「お疲れ様、セブ!片付け、手伝いに来たよ」
ニッコリと微笑んではセブルスに近づいてくる。
セブルスも薄く笑い、軽く礼を告げる。
「どうかしたの?セブ」
片付けもほぼ終わったところで不意にが問いかけてきた。
セブルスはちょっとだけ目を大きくして彼女に顔を向ける。
「なんだ、唐突に?」
「だって何かいつものセブらしくないっ、ていうか、ぼぉっとしてるんだもん」
の言葉に、セブは“あぁ”と妙に納得したような顔をする。
「思い出していた。さっきのこと」
「さっき?薬作ってたときのこと?」
セブルスはこくりと頷く。
わけが分からず首をかしげる少女にかまわず、セブルスは独り言のように言う。
「だ。・・・あんなに前向きな奴だったか?」
「さん?何か話したの?」
ぽつぽつと語るセブルスに問いかける。
「いや、たいした話はしていない。だが、調合の助手をかってでてきたことがすでにおかしい」
「どうして?」
「考えてもみろ。自らグリフィンドールを助けようとする者などスリザリンにはいない」
“セブルスは違うじゃない?”ということはこの際置いておいても考える。
まぁ実際そうなのだが。
「それに調合が成功したときのの顔だ。あんな嬉しそうな顔は見たことがない。まるで」
「まるで?」
そこで言葉を区切ると、セブルスはゆっくりとの顔を覗きこんだ。
黒髪の美しい少女。
自分の恋人。
いつも快活に笑う明るい少女。
「。君のようだったぞ」
そう言われて、だがも喜んでいいのか迷う。
(でもスリザリン一の美少女なのよね。・・・やっぱ褒め言葉かな?)
前向きなはそう考えることにした。
ニッコリと笑うを見て、セブルスは“やっぱり似ている”と思った。
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