ドリーム小説
スピカ 第十一夜
日増しに笑顔が増えていくに、周囲は彼女に対する壁のようなものを取り去りつつあった。
ときたま廊下ですれ違う生徒の中に―――たとえ違う寮だとしても―――に挨拶をする者も現れ
始めた。
彼女の周りは確かに変化していた。
そしてその変化に一番驚いているのは、本人であった。
「最近、よく声をかけられるわ」
夕方の図書室。
自分の前の席に座るリーマスに声をかける。
リーマスは読んでいた本から顔を上げ、と目を合わせた。
「どうしてかしら?」
知っている、リーマス?と問いかけてくる。
キョトンとして、本気で分からないという顔をする彼女に、思わず失笑してしまう。
なぜリーマスが笑うのかもわからず、なおは首をかしげる。
(頭はいいのに。って結構)
「鈍いよね?」
「何が?」
リーマスの断片的な言葉に、少しだけ彼女の眉間に皺が寄る。
「珍しい人にも声をかけられたの」
「誰だい?」
広げた本の上に肘をつき、顎をのせる。
は目線を外さないまま、次のページをめくる。
「マルフォイ先輩よ」
『スネイプといい、、君といい。最近はグリフィンドールと付き合うのが流行っているのか?』
「嫌味かしら?」
思い出すように一語一語告げるに、リーマスは笑わずにはいられない。
「だろうね」
あのとセブルスの事件以来、ルシウス・マルフォイはいくらか丸くなった気がする。
(にちょっかいも出さなくなったし)
ふむ、と思案していたリーマスの耳に、パタリと本が閉じる音が入ってきた。
見るとが席を立っていた。
「帰るのかい?」
「ええ。ミネ・・・・・マクゴナガル先生に呼ばれているの」
(ミネ・・・?)
が言い誤った言葉にリーマスは耳聡く反応する。
だがあえて聞かないことにした。
「そっか。それじゃ、また」
「えぇ。またね」
ふわりと笑顔を浮かべ、は図書室を出て行く。
さりげなく見ていると、出口のところでまた声をかけられていた。
レイブンクローの男子生徒数人。
彼らが声をかけたのに向かってが笑顔で返すと、途端に彼らは照れて慌て始めた。
だがは不思議な顔をするばかり。
その何とも言えず面白い光景に、リーマスはクックックッと喉を鳴らすしかなかった。
厳かな木製のドアをノックする。
中から同じように厳かな女性の声が聞こえてきた。
「開いてますよ。お入りなさい」
「失礼します」
重い音を立てて開いたドアから入ってきた女生徒を見て、一人の女性教諭は少しだけ優しい笑みを作る。
「遅くなり申し訳ありません」
「いいえ。時間通りです」
立ったままでいるに先生はソファーを勧め、もそれにお礼を述べて腰を下ろした。
縁の細い眼鏡をかけた中年の女性教諭は、自分も座っていた椅子から立ち上がりソファーに移動する。
そして女生徒にゆっくりとした口調で問いかけた。
「どうですか?術の方は」
授業のときや、廊下や大広間で会うときとは一風違った声で。
「順調ですわ、ミネルバおば様」
いつものように名前で呼ばれ、先生は少しだけ厳しい目を向ける。
「ですから、学校ではマクゴナガル先生と」
叱られているにもかかわらず、はそれをふわりとした笑みで受け流す。
「あら。プライベートでくらい、いいじゃありませんか」
今までにあまり見せられたことのない笑みを見せられ、流石のマクゴナガル先生も少しばかり驚く。
だが年相応のの笑みを見て、口元に笑みを浮かべた。
「では時間もおしておりますし、今日の分の訓練に入りましょう」
その言葉には浮かべた笑みに力を込めた。
「おい、ルーピン」
図書室から寮へ帰る途中の寒い廊下で声をかけられた。
振り返るとそこには見知らぬ少年が数人立っていた。
タイの色からしてスリザリン。
「僕に何か用かな?」
とりあえず言葉を返すと、少年たちはムッとした表情を浮かべた。
「なにすましてんだよ」
「いい気になるなよな?」
少年たちは言いたい放題だが、当のリーマスには何のことだかさっぱりわからない。
首をかしげる。
「何のことだい?僕が何か」
「とぼけんな!・のことだよ!」
「の?」
リーマスが彼女の名前をつぶやいた途端、彼らの眉間の皺は一層増えた。
「なんでグリフィンドールのてめぇが彼女のことファーストネームなんかで呼んでんだよ!」
他の少年も同じような言葉をリーマスに言い放つ。
(あぁ。なるほどね)
それだけで勘の良いリーマスにはわかってしまった。
つまりはこの少年たち。
(のファンか何かか)
「しかもさんまでお前のこと名前で呼ぶし。突然彼女は笑顔振りまき始めるし。お前何様だ!?」
寒い廊下に少年たちの声は響く。
時折横を通る生徒たちがちらちらとリーマスたちに目を向ける。
だがそんな視線も気にせず、リーマスはにこりと笑って見せた。
「でも、の笑顔可愛いと思わないかい?」
ちょっと仕掛けてみる。
こういうところはやはり悪戯4人組の一員である。
案の定スリザリンの少年たちは眉間に溜めていた皺を潜め、急に緩やかな表情へと変化した。
「そ・・・そうなんだよなぁ!さんって、笑顔がすっげぇ可愛くてさぁ」
「今までほとんど笑わなかったし。普段のきりっとした表情とのギャップが最高だよな!」
「光る銀髪に青い瞳。病弱そうな色白の肌の美少女なんて、なんてスリザリンらしいんだ!」
リーマスの一言で瞼の奥にの姿を思い浮かべてしまったらしい少年たちは、何やら恍惚とした表
情を浮かべて陶酔している。
「「「さすがスリザリン一の美少女!!」」」
(今のうちだね)
そんな彼らを見てリーマスは意地悪な笑みを浮かべると、少年たちに見つからないように忍び足で歩き出
した。
だが。
「あっ!てめぇどこ行く気だ!」
「おい、待て!リーマス・J・ルーピン!!」
慌てて追いかけてくるも、すでにリーマスが乗った階段は動いてしまい追いつけない。
悔しそうな顔をするスリザリン生たちにリーマスはにっこりと微笑みかけた。
「ごめんねー。また今度ね」
バイバイと手を振ると、彼らはまた何かを叫び始めた。
唸り声を上げながら動く階段が反対側に到着。
よいしょと廊下に舞い降りたリーマスに向かって、少年はおかしなことを叫んだ。
「てめぇー、ルーピンッ!!いいか!さんに手ぇ出したりしたら、スリザリンの男が許しちゃお
かねぇからな!!」
(・・・・・はい?)
まだぎゃぁぎゃぁと騒ぐ少年たちを尻目に、リーマスはすたすたと寮へと足を進める。
進めながら彼の言葉を反芻していた。
(手を出す?・・・誰が?・・・誰に?)
そこに当てはめるべき名前を思い浮かべて、思わず苦笑する。
(なに言ってるんだろ。しかしももてて大変だなぁ。まぁ、本人無自覚だけど)
冷たい風が吹き込み、くしゅんっと一度くしゃみをして鼻をすする。
なんとなくが大泣きしたときのことを思い出す。
だが思い浮かぶのは、「子供っぽくて可愛かったなぁ」という感想。
彼らが心配することなどない。
「うぅ寒っ!早く戻ってココアでも飲もうっと」
寒さに震える肩を抱き、リーマスは足早に寮へと戻った。
2人は友人。
仲の良い友人。
それ以上でも、それ以下でもない。
今の彼らには、これで十分。
いや。未熟な彼らには、これが精一杯だった。
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結成ファンクラブ。
スリザリン内男子限定。
今会員になると、の特大ポスターがついてくるぞ★
(嘘だろ)
ちなみに会員番号1番ルシウス・マルフォイ君。
(えぇ!?)
「ルシウス様ぁーーーっ!!(怒)」バチコ〜ン!
ばーいナルシッサ。
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