ドリーム小説
君がひどくか細い声でつぶやくから。
僕は聞かなかったことにしておくよ。
これ以上君の傷に触れたくないから。
君のあの囁きは聞かなかったことにしておくよ。
でも確かに僕は聞いたよ。
君の小さな囁きを。
“Mamma”
スピカ 第十夜
何気ない日常の中で、ある一人の少女を中心としてホグワーツ中に噂が飛び交っていた。
“あのスリザリン一の美少女から笑顔を引き出したのは一体誰なんだ!?”
“彼女に一体何があったんだ!?”
そんな噂が立つのも仕方がない。
だって入学以来数回しか笑ったことのない少女が、ある日突然笑顔を振りまき始めたのだから。
今までの4年間はなんだったのだという程の極上の笑みを浮かべる・に、周囲は唖
然としていた。
そして同時に周囲の目は、彼女が突如ファーストネームで呼び出したある少年に向けられることになる。
「あら、リーマス。一人なの?」
図書室の窓側の席。
光が程よく当たるこの席に座って本を読んでいたリーマスに、彼女は話しかけてきた。
一瞬ざわりとした室内を気にも留めず、サラリと長い銀髪を揺らす。
「やぁ、。君こそ」
「えぇ。一人でいる方が気が楽だから」
「じゃぁ、僕はお邪魔じゃないかい?」
皮肉気に口端を軽く上げると、少女はそれに肩眉を上げた挑戦的な笑みで答える。
「あら。私から声をかけたのよ。一人が良ければ初めからそうするわ?」
その言葉にリーマスは肩をすくめ、自分の前の席を彼女に勧めた。
もお礼を言って素直に座る。
そして腕に抱えていた本を開き、無言でそれを読み始めた。
着席から、本のページをめくるそのちょっとした仕草まで。
の優雅な立ち振る舞いは図書室中の生徒の目を惹くのに十分だった。
「どういうことなんだ。これは?」
ここ数日、リーマスはシリウス他数名に尋問を受けていた。
談話室に帰ってくるなり質問を受け、リーマスは「またか」と小さく溜め息を吐く。
「なに溜め息なんか吐いてんだよ。なんでこないだ水ぶっかけてきた女と、こんな短時間でここまで親密
になってんだ?」
腑に落ちないシリウスが何度も問い詰めてくる。
「だーかーら。仲直りしたんだよ。それだけ」
「それだけ?嘘だ。他になんかあんだろ?リーマス」
「どうしてシリウスはそんなにさんのこと聞きたがるの?」
サイドテーブルで宿題をしていたリリーが話に割り込んでくる。
リリーの言葉に、彼女の隣に座っているジェームズがニヤリと意地の悪い顔をした。
「おやおや。パッドフット君。男の嫉妬は醜いぞ〜?」
「アホか!!俺が何に嫉妬してるってんだよ!」
むきになって叫ぶシリウスをリリーが煽る。
「思いもかけずスリザリンの美少女と親しくなったリーマスが羨ましいんでしょう?」
「ばっ!!何言ってんだ!」
「はもうセブルスのものだからねぇ。次は狙いかい?」
「リーマス!!〜〜〜〜〜み、みんな敵だぁ〜〜!!」
やや涙目の黒犬は真っ赤な顔をして叫びながら個室へと駆け込んでいった。
バタバタという足音が遠ざかる中、その場にいた仲間たちは声をそろえて言った。
「「「「・・・・・負け犬の遠吠え」」」」
それから日が経ち、本日の最後の授業、飛行術。
これもまたグリフィンドールとスリザリンの合同授業。
冬の屋外での授業は、寒さとの戦いである。
特にスカートの女生徒たちは寒さに身をちぢこませている。
「さっ・・・む〜〜い!!凍っちゃいそう・・」
「やめて、!よ、余計寒いわ」
がちがちと震えながら、リリーとは手をこすり合わせる。
その日は自由飛行。
元気に空中回転するジェームズとシリウスを他所に、女の子たちは地上で身を堅くしていた。
「女の子は大変だね」
「リーマス、人事〜。だって女の子はスカートなのよ!寒くないわけないわ」
ついに座り込んで丸くなってしまったを見て、リーマスはあははと笑う。
団子蟲になってしまった女の子たちから目を離し、ふと顔を巡らせる。
少し離れたところにが立っていた。
寒さに震えるわけでもなく、白い息を吐いてただ立っていた。
「」
何気なく声をかけてみる。
「リーマス」
彼女が振り向いた。
「君は寒くないの?」
「寒いのは割と好きなの。リーマスは飛ばないの?」
お友達は飛び回っているわよ、と言われ上を向くと、ちょうどジェームズが高速旋回したところだった。
子供のようなグリフィンドールの名シーカーにリーマスは思わず苦笑する。
ふと横を向くとが箒にまたがっていた。
「飛ぶのかい?」
「えぇ。“シリウス”を目指してみようかと思って」
「え?シリウス?」
まさかあの暴れ者を追いかけるつもりかと思っていたら、にくすくすと笑われてしまった。
「違うわ。星よ」
そう言っては徐々に闇に染まり始めた空を指差す。
確かに彼女の指の先には、白く輝く天狼星があった。
「リーマス。一緒に飛ばない?」
声がした方を向くと、すでにはふわりふわりと空中に浮かんでいた。
浮かんだ状態のまま足で地面を軽く蹴り、そのままゆっくりと上昇していく。
デリケートな飛び方が彼女らしいとリーマスは思った。
自分も箒にまたがり、彼女の後についていく。
ずいぶんと高いところまで来た。
下にいる生徒たちを見分けることができない程の高さ。
その高さをキープしたまま2人はフワフワと浮かんでいる。
「高いね」
リーマスは正直な感想を述べた。
別に怖いわけではない。
がふわりと微笑んだ。
「そうね。でも私はこの不安定さが好きよ」
そしてはリーマスから空へと視線を移す。
じっと空を見つめたまま何をするのかと見ていると、彼女は箒から両手を放した。
リーマスが危ないと注意しようとした。
だが彼はそれを口にせず、代わりに彼女の行動を見守った。
は放した両手を空に掲げ、親指と人差し指で四角いカメラのレンズを作り上げた。
位置からして、そのレンズには“シリウス”が映っているはず。
「“カシャ”」
「・・・・・・?」
彼女の口からシャッターを切る音が聞こえてきた。
「何してるんだい?」
「“シリウス”を、レンズに収めたの」
そう言ってまた微笑んだ。
冬の風がヒュゥッと吹き抜け、の銀髪を揺らしていく。
はまた視線を空へと戻す。
「Dadが教えてくれたのよ。綺麗なものはそうやって目に焼き付けるのだよ、って」
“シリウス”を見つめる彼女の横顔は、微笑んでいたけれど、どこか悲しげだった。
ふぅと一息つく彼女の息を、冬の夜の寒さが白く変える。
「ごめんなさい、リーマス。先に戻ってもらえるかしら?」
少しだけリーマスの方に顔を向けてそう告げると、はまた空に目を戻した。
もうレンズは作らず、ただひたすら空を見ていた。
「わかった。気をつけてね、」
リーマスの言葉に、「Thanks」とだけ返し、はまた少し上昇した。
高度を下げながら、リーマスは彼女を見ていた。
の視線は空に向いたまま微動だにしない。
闇夜に揺れる銀髪が、素直に綺麗だと思った。
もう少しで足が着くという所まで来て、リーマスは再び上を見上げた。
箒から手を放し、四角い窓を作ってみる。
そこに、一人の少女と一つ星をあてはめてみる。
「・・・・・・・」
沈黙だけが流れる。
リーマスはシャッターを切ることはなかった。
何も言わず、手を下ろす。
いつの間に降りたのか、遠くでジェームズとシリウスが彼を呼んでいた。
リーマスも地面に足を着き、友人たちに手を振って歩き出す。
目の端に、揺れる銀髪がゆっくりと降下してくるのを捕らえ、口元だけに笑みを浮かべる。
絶好のシャッターチャンスは、他にあるはず。
いつの間にか、そう自分に言い聞かせていた。
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仲良しリーマスとヒロイン♪
ジェームズ王とリリー女王♪
ヘタレシリウス♪プププ
しかし私の書くヒロインは銀髪ばっかだな
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