ドリーム小説
Sleep
【名】睡眠、眠り;永眠、死
【動】眠る、永眠する
椿姫 sleep 1
再会は最悪でした。
彼女に再び会いに行くと決心した日の夜から、セブルスは突然不眠症にかかった。
ただでさえ睡眠時間の短いセブルスなのに、1日2時間弱の睡眠は体に害を及ぼす。
それでも授業はきっちりと出て、だるい体を図書館で休ませたりして日々を送った。
そんな日が数日続き、今日は金曜日。
明日はホグズミード行きの許可が出る土曜日。
明日になれば彼女に会える。
まるで遠足を心待ちにする子供のようで、昂ぶる心を静めようとするも、それは全くの無駄で。
再会という期待が余計にセブルスを睡眠から遠ざける。
あと一回夜が来て、日が昇れば彼女に会える。
ぼぉっとする頭でその日一日を過ごす。
どこを歩いたかも、何を食べたかも、誰と何を話したかも覚えていない。
気が付くとすでに日付が変わっており、セブルスの体はホグワーツ特急の中で、目の前にはホグズミード村が広がっていた。
つい先日来たばかりなのに、その光景を見るだけでセブルスの頭から眠気は一瞬で消えた。
夢遊病者のようにふらつく足で、セブルスはの後についていく。
やはり今日もはハニーデュークスで大量にお菓子を買った。
セブルスも手持ちの金でいくつか菓子を見繕う。
この間が喜んでくれたチョコレートも買った。
そして2人は再び百花楼を訪れた。
無愛想なマスターの男にセブルスが券を渡すと、ひどく不審そうな目で見られた。
「どうして、お前がこの券を持っている?」と言いたげな目で。
だがセブルスは黙ってその目を睨み返す。
マスターは咥えていた煙管を放し、小さく舌打ちすると、またあの少女たちの写真の入ったボードを引っ張り出そうとした。
それを制するようには大声で「桜ちゃ〜ん!!」と叫んだ。
マスターが苦々しげに大きく舌打ちする。
の声に応えるように、奥からあの少女が出てきた。
途端に少女の顔から笑みがこぼれる。
はニコニコ笑顔で桜の肩を引き寄せ、軽く抱きしめる。
そういうことを人前でもできる少年なのだ。
桜は頬を紅潮させ、嬉しそうに微笑む。
それを横目で見ていたセブルスは、マスターの「早くしろ」という声で彼と向き合う。
ぼぉっとする頭に、その男の声や態度は不快感しか呼び起こさない。
ここまで来て何を戸惑う必要があるのか。
自分が何の花の名を言えばいいかなど、よくわかっている。
それでも口から飛び出しそうなほどドクドクと脈打つ心臓を落ち着かせ、セブルスは一言、「椿」とだけ言った。
だがセブルスの口からその言葉が漏れた瞬間、マスターは醜悪な顔でほくそ笑んだ。
その顔を見ているだけで、セブルスは胸の奥がむかむかするのが分かった。
「・・・・椿か。あぁ、問題ない」
マスターは何が面白いのか、喉の奥を震わせて嫌な笑いを続ける。
彼は「!こいつを椿のところへ」と叫んだ。
その声を聞きつけ現れた初老の女性は、ひどく複雑な顔をして現れた。
「マ、マスター・・・・椿ちゃんは・・・」
おろおろしている女性に、マスターは一瞥を与える。
「問題ないと言っただろう?あいつの客だ、すぐに案内しろ」
それだけ言うとマスターはもう何も言わず、次に入ってきた客の相手を始めた。
と桜は、もう奥の部屋へと進んでいた。
セブルスも、何か足取りの重いの後を追って、椿がいるであろう部屋へと足を進めた。
がなぜセブルスをのところへ連れて行くのを渋るのか。
それはもうすぐ分かることだった。
セブルスは前回来たときと同じ部屋に案内された。
が軽くドアをノックし、「椿ちゃん」と控えめに声をかける。
しばらくして、中からか細い声が聞こえてきた。
「・・・・・さん?入っていいよ・・」
それは聞き覚えのある、だがどことなく疲労混じりの声。
セブルスの鼓膜をその声が刺激する。
ずっと聴きたかった声。
奇病のように、セブルスの頭から離れなかったその声が聞こえる。
この扉1枚の向こうに、彼女がいる。
は、躊躇いがちにドアノブに手をかける。
そっと扉を押し開けると、微かに光が漏れてきた。
ドアを開けるとすぐそこにベッドがある。
そこに、セブルスが会いたかった少女の姿があった。
そこには、いつものように―――業務的なものでも構わない―――笑顔のがいるものだと思っていた。
「・・・・・・・・・・セブルス・・君・・・」
確かにそこにがいた。
それはセブルスがまだ見たことのない彼女の姿で。
なぜが辛辣な顔でセブルスを案内したのかも、なぜマスターが醜悪な笑みを浮かべたのかも、の姿を見て全てを悟った。
細くしなやかな一糸纏わぬ姿―――生まれたままの姿でベッドに座り込む。
少し上気した体には無数の赤い痕が残され、情事のすぐ後であることを物語っている。
乱れたシーツも、床に脱ぎ散らかされたチャイナ服や下着も、全てがセブルスの心を揺さぶるには十分なものだった。
がたった今、客の相手を務めたことを知っていて、マスターはわざとセブルスを部屋に案内させたのだ。
店の看板娘を、金も払わずに相手するセブルスが気に入らないのだろう。
それでも部屋に入った瞬間から、セブルスの目はの姿だけを捉えていた。
「・・・・・・・・・お願い・・・・・見ないで」
消え入りそうなか細い声が聞こえ、セブルスは自分が食い入るように彼女を見つめていたことに気付いた。
知らぬ間には退出しており、部屋には2人しかいない。
の小さな肩が微かに震えているのに気付き、セブルスは行き場のない想いと視線を彼女から逸らす。
セブルスは極力彼女の姿を見ないようにした。
それでも、が微かに笑ったのが分かった。
「・・・・・来てくれて、嬉しいよ。・・・・でも・・・・こんな姿は・・見られたくなかったな」
自分の一番汚い姿。
拭っても拭っても落ちない汚れ。
綺麗なあなたには見られたくない。
ギシッとスプリングがきしむ音がした。
はシーツを体に纏い、ベッドから降りると、シャワー室へと向かった。
ペタペタと、硬質の床に彼女の足音が響く。
一歩一歩その音が遠ざかる度に、の心に傷が一つずつ増えていく。
それは誰にも癒すことのできない傷。
が一生一人で抱えていかねばならない傷。
「・・・・・・・セブ・・ルス君・・・・・・?」
どうしてかはわからない。
頭なんて、完全に働いていなかった。
だが眠気はもはやなかった。
それは本能としか言いようがない。
気付くと、セブルスはを後ろから抱きしめていた。
その小さな体を、無数についた傷を包み隠すように―――全てから守るように、きつく抱きしめていた。
薄いシーツ越しに彼女の昂ぶった体温が伝わってくる。
のしなやかな肢体の曲線が直に分かる。
セブルスの鼻筋を、甘い桃の香りがくすぐる。
男の理性を飛ばすには十分な要素がそこには数多くあった。
それでも、今、彼女を抱きたいとは思わない。
今は、そばにいて、こうして包んでいてやりたい。
「き、汚いよ、セブルス君!・・・私なんかに触ったら・・・!!」
は何とかしてセブルスの腕の中から抜け出そうともがく。
知らない男にベタベタ触られた体なんて見られたくない、触れてほしくない。
それでも彼の低い体温がどうしようもないくらい心地いい。
本音を言えば、もっときつく抱きしめてほしい。
このまま放さないでほしい。
「セブルス君!!」
会うことさえできれば、それでいいと思っていたのに。
あなたを私の汚れで穢したくなんてなかったのに。
「・・・・・・・・会いたかった・・・・・・」
あなたがそばにいれば、安らかに眠れる気がするよ。
NEXT
BACK
DREAM
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送