ドリーム小説
Call
【名】呼び声、叫び;通話;召喚
【動】呼び掛ける;呼ぶ;電話する
椿姫 call 2
その日、セブルスはいつものように大広間で朝食を取っていた。
隣の席にはいつものようにが座り、トーストをかじっている。
そしていつものように飛び込んでくる大量の梟。
大きな梟がの皿に手紙や小包を落としていくのも、いつもの光景。
の家、家はそれなりに名家である。
彼の元へは毎朝、何かしらの贈り物が届く。
セブルスはそれには関心を示さず、いつもどおり食後のコーヒーをすすっていた。
そして突如それは舞い降りた。
コーヒーカップから口を放したセブルスの前に、大きな白梟が存在している。
それは、絶句するセブルスの前に1通の手紙を落とすと、また空へと舞い上がっていった。
突然のことにセブルスはしばし言葉を失う。
はらりと落ちた白い羽が光に当たり銀色に輝く。
「セブルス。なんだ、それ?」
の呼びかけに正気に戻り、セブルスは改めて手紙を見た。
白い何の変哲もない封筒。
表に一言、『セブルス・スネイプ様』とだけ表記されている。
ピラピラと封筒をもてあそんでいた彼の表情が、封筒の裏を見て固まる。
真っ白な封筒の裏には、差出人の名前の代わりに一つ、真っ赤な花の絵が描かれていた。
それは最近よく見た常緑樹の花―――椿。
セブルスは平静を保ち、封を切る。
中から出てきたのはただ1枚の紙切れ。
どことなく見覚えのあるそれに、見覚えのある文字があった。
『百花楼』
それは、先日が持っていたものと全く同じ―――百花楼の無料チケット。
なぜそんなものが自分に送られてきたのか、セブルスにはさっぱりわからない。
が見たら、きっとうるさく騒ぐ。
セブルスは封筒と券を急いでポケットにしまった。
このとき、この気持ちも一緒にしまってしまえばよかったのだ。
セブルスの中で誰かが囁く。
この券を使えば、またに会える・・・と。
テーブルに落ちた梟の羽が、キラキラと銀色に光る。
どうしてか、それがセブルスに執拗に思い出させる。
忘れられない彼女の髪の色―――の幻影。
券が届いてから、早いことに3日経つ。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
部屋の中に規則的に流れる羽ペンの音。
セブルスは来週提出のレポートの大詰めに入っていた。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
ポケットにしまい損ねた想いは、日が経つに連れて大きくなる。
机の引き出しにしまった券を思い出す度に、セブルスの頭の中にあの少女の美しい声が流れる。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
もう一度だけでいい。
あの声で名前を呼んでほしい。
『セブルス君』
カリカリカリカリカリカ・・・・・・
不意に止む羽ペンの音。
セブルスは使い込んだ羽ペンをインク壺に戻す。
書いていたレポートを中途で止め、グッと背伸びする。
セブルスしかいない部屋に、椅子がきしむ音が響く。
頭の中がすっきりしない。
勉強のし過ぎでも、病気でもない。
妙に気だるげな体をいぶかしむ。
バフッと音を立てて、すぐそばのベッドに寝そべった。
最近は何をしていても以前ほど集中できない。
すぐに彼女の―――の声が蘇ってくる。
そしてそれと同時に襲い来る、どうしようもないほどの体の疼き。
セブルスはそっと目を閉じ、自分の唇に触れてみた。
薄い唇からは、まるで今さっき重ね合わせたかのように、あの少女の体温が感じられる。
柔らかく、甘い香りのする桜色の唇。
瞼の奥に思い浮かぶのは、の笑顔、白い肌、細い指・・・・・
それを考えるだけで、セブルスの体は疼く。
(・・・・体は・・・正直だな・・)
まだ16歳という少年の若い体は、性に対して素直な反応を見せる。
セブルスは空いている方の手を、自分の中心に添わせる。
少しずつ、だが確実にそれは反応を見せ始めている。
部屋に自分ひとりしかいないことを確認し、セブルスはゆっくりとベルトを緩めた。
実際、先日ホグズミードから帰ってからというもの、一人で処理する回数が確実に増えていた。
以前は勉強に打ち込んでさえいれば、そっちの方にはあまり気がいかなかった。
なのに、最近は異常とも言えるほどそっちのことが旺盛で。
朝、目が覚めて夢精に気付いたことも何度となくあった。
そしてこれらのことは、全て彼女―――に会ってからのこと。
他に原因と思えることはない。
これ以上に説得力のある要因は思いつかない。
誰もいない部屋に、少年のくぐもった声が流れる。
「・・・・っ・・・はっ・・あ・・・・」
手を動かせば、自身の先端から白濁の液が流れ出る。
頭はぼおっとするのに、時折フラッシュバックのように現れるのは彼女の姿。
彼女に触れられたことを思い出し、その手の、唇の感触を再現する。
彼の手の中のものは張り詰め、達することだけを心待ちにしている。
「・・・・うぁ・・・は・・あ・・っ!」
絶頂が近いと感じ、セブルスは手の動きを速める。
潤滑代わりの己の体液が卑猥な音を立てる。
自分の体の中を得体の知れないものが走り抜ける。
セブルスの体がビクッと打ち震えた。
「・・・・・はっ・・・ぁ・・・・・・・・・っ!」
セブルスは気付いていない。
無意識にでも、自分が誰の名を呼んでいるのか。
荒い息を肩で整える。
ふと自分の手を広げてみた。
両の手は、彼が吐き出した白くべたつく液体で汚れている。
欲望を吐き出した爽快感と、彼女を穢してしまったという罪悪感が入り乱れる。
だが、それは決して不快なものではない。
やはり、自分はどこかおかしくなってしまったのだろうか?
娼婦に会いたいだなんて、普通じゃない。
それでも、セブルスの中で渦巻く唯一つの想いは止められない。
そこには、どこか自嘲気味に笑う自分がいた。
その日の夜、部屋のベッドで寝転ぶに、セブルスはあの券を見せた。
それを見た瞬間、はベッドのスプリングが壊れそうなほど勢いをつけて飛び起きた。
「セ、セブルス!!どうしたんだよ、それ!?」
はいろいろ聞きたそうだったが、セブルスは彼の問いにだんまりを決め込んだ。
何を聞いても答えてくれないセブルスに、は最後に一番聞きたいことを言った。
「・・・・・セブルス。・・・・誰と行くんだ?」
セブルスの持っている券は、が持っていたのと同じ、2人で行かなければ使えないもの。
の目は素直すぎるほど、「自分が行きたい」と語っている。
セブルスは苦笑し、持っていた券をに渡した。
実際、セブルスも以外の奴に券を渡す気はなかった。
万が一、他の誰かが椿を指名するかもしれないから。
は、それを了解ととったのだろう。
その券を掲げ、嬉しそうに眺める。
だが不意に顔をあげ、意地の悪い笑みを浮かべた。
「なんだよ、セブルス。やっぱ、お前も興味あるんじゃん!」
まるでいじめっ子のようにカラカラと笑う彼に、セブルスは少しだけ赤くなった顔をそらす。
「馬鹿を言うな。・・・・・・・・・・・・社会見学だ」
なんとも苦しげな言い訳をし、セブルスはそれ以上口を開かない。
そんなセブルスを、は目茶苦茶楽しそうな顔で見ていた。
窓からチラチラと光が差し込んでくる。
それは太陽や月の自然の光ではない。
魔法で輝く、夜の店の看板のネオン。
その光を浴びながら、乱れたベッドの上で、少女は一人うずくまっていた。
虚ろな目から涙は流れていないが、そこに光は宿っていない。
不意にドアが開き、誰かが入ってきた。
「・・・・椿ちゃん。入ってもいいかしら?」
その声でだとわかり、は気だるげな体を起こす。
だが彼女の両手首は縛り上げられているため、思うように身動きが取れない。
「入ってきていいよ、さん。・・・・それで・・これ解いてくれない?」
これ、と言われてが見せたものに気付き、は眉根を寄せる。
ときたまこういう趣向の客が現れる。
だが一介の娼婦であるにも、ただの世話師であるにも何も言えない。
は優しい手付きで、だが迅速にの手首を解放してやる。
紐が解かれ、痛む手首をさすりながら、はふらつく足でシャワー室に向かう。
はその後姿に「欲しいものは?」といつものように声をかける。
の足が止まる。
だがそれも一瞬のことで、「何もいらない」とだけ言い残し、再びシャワー室に足を進める。
シャワー室の無機質な床にぺたりと座り込む。
蛇口をひねると、勢いよくお湯が降り注いでくる。
体にあたる水滴の感触が心地いい。
はそのまま床に寝転んだ。
自分の顔のすぐ横を水が流れていく。
それは無意識だった。
何も考えず、素直に彼女の口から出た言葉だった。
「・・・・・・会いたい・・よぉ・・」
ポツリとつぶやいた言葉も、床を打つ水の音にかき消される。
それでもはポツリポツリとつぶやく。
「・・・・会いに来てぇ・・・・・・・セブルス君・・・」
この巨大な鳥籠にいる限り、は自分からは動けない。
自由になることはない。
不意に目に付いた手首の痕が、まるで自分を縛りつける鎖のように見えた。
そっと瞳を閉じる。
の頬を、水とも涙とも分からないものが流れる。
全ての音がかき消される世界で、だれが聞くことができたであろう。
少女の瞳から零れ落ちた一粒の涙が小さな石となり、それが硬い床に落ちて立てた音など。
水は全てを流しさる。
少女の体の汚れも
少女の囁きも
少女の涙も
その瞳から生れ落ちた石も
それでもは、目を閉じ、その者の名を呼び続けた。
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