ドリーム小説
Pain
【名】苦痛,苦悩;悲嘆;痛み
【動】苦痛を与える;苦しむ
魔女に呪いをかけられた王女様の御話
あなたは知っていますか?
椿姫 pain 3
途中先生に注意されるのも聞かず、セブルスはひたすら廊下を走り寮の部屋を目指した。
図書室で見つけたいつかの本。
普段のセブルスだったら決して目も向けないような他愛無い御伽噺。
だがページを開いた瞬間、セブルスの中の全てが逆転した。
ページに張り付いた真っ黒な文字の羅列とセブルスの頭に浮かぶの話が綺麗に渦巻い
ていった。
奇妙な一致。
奇妙すぎて、疑いたくなる。
それでもやっと見つけ出した一握りの手がかり。
今はもうこれにすがるしかなかった。
『フェアリー・テール』
昔々 悲しい運命を背負った王女様がいました
王女様は生まれたときに悪い魔女によって呪いをかけられてしまったのです
魔女は言いました
もし王女様が一人の男性を好きになったら
王女様は呪いによって死ぬだろう
王様と王妃様は王女様を離れた塔に住まわせました
ただし念に一度の誕生日だけは外に出ることが許されました
王女様はとても美しい少女に成長しました
王女様は14歳の誕生日に森の湖で遊んでいました
そのときです 突然木の陰から誰かが現れました
それは隣の国の王子様でした
狩りの途中で道に迷ってしまったのです
2人は一瞬で恋に落ちました
王様はこのことを知りすぐに2人を引き離しました
しかし時すでに遅く 王女様に魔女の呪いがかかっていました
王女様はどんどん弱っていきました
セブルスは小脇にしっかりと本を抱え、早口に合言葉を告げると寮の部屋へと飛び込んだ。
「っ・・・、いるかっ!?」
突然入ってきたセブルスに反応してベッドの上に寝転ぶ影が微かに動く。
「どした?セブルス。そんなに慌てて」
いたって普通の状態で尋ねてくるにセブルスは息も荒げに捲くし立てた。
「っ!このっ・・・本っ」
息が続かず言葉が出ない自分に苛立って、セブルスの眉間に数本皺が寄る。
片手で乱暴に額の玉の汗を拭い、再び言い放った。
「この本っ・・・確かお前読んでいたな!?」
そう言ってが寝転ぶベッドの上に無造作に本を投げ置いた。
その装丁には見覚えがあった。
それはつい先日が読んでいた本。
セブルスに読み聞かせた本。
“フェアリーテール”
本のタイトルにの瞳の色が本の少し濃くなる。
「あーそういえば読んだな、そんな本。それがどうかしたか?」
さして興味もなさそうに答えるに、セブルスは焦った様子で本を開いた。
いつも書物を大事に扱うセブルスからは信じられないほど無造作にバラバラとページを乱
暴に捲る。
「おいおい、ページ破れるぞ」
呑気なの言葉も無視しセブルスが開いたページ。
それはいつかが半ば無理矢理セブルスに読み聞かせた話。
開いた本を目の前に出されてもはあまり熱心にそれを見ようとはしない。
「この御伽噺っ、この続きを教えてくれっ!」
そう言ってセブルスが指差した先には、
『このままでは王女様は死んでしまいます
そこで王様は』
という文章が載っていた。
力強くページをおさえるセブルスとは裏腹に、はひたすら冷静に答える。
「なんで?自分で読めばいいじゃん」
何の感情もなく、単調に告げる。
そんなとは対照的に、セブルスは白い顔を蒼くして今度はゆっくりとそのページを捲
った。
今にも破けてしまいそうなほど古い紙が半月を描いて倒れる。
御伽噺が載っているであろう次のページは。
「うわ。ひでぇな」
ページは、綺麗に破られていた。
破られたギザギザのページを見て、だがは淡々とした口調で感想を述べる。
抑揚のないに、抑えていたセブルスの感情に再び火がついた。
「教えてくれっ!この話の続きは・・・結末はどうなるんだっ!?」
普段の冷静さを忘れて声を張り上げるセブルス。
滅多に見られるものではない。
その貴重な友人の姿にいつものだったら一言二言茶々を入れていただろう。
だがはやはり淡々と答えた。
「んー悪い。忘れた」
あまりにもあっさりとした答えに、思わずセブルスの動きが止まる。
数秒停止し、セブルスの眉間の皺が数本増えた。
「・・・忘れた・・って。そんなっ。お前ついこの間読んでいただろうっ!?」
必死な形相で食って掛かるセブルスに、は明らかに“そんな寓話程度で”という顔を
向ける。
「んなこと言われたって。俺、そんな興味持てなかったし」
そう言って呑気に欠伸をするに、セブルスは無性に腹が立った。
だが何も事情を知らないに腹を立ててもそれは理不尽というもの。
セブルスは冷静になろうと大きく息を吸った。
「・・・そうか。すまない、いきり立ってしまい」
自力で血の気を引いて見せた。
恐ろしいくらい気が沈む。
セブルスは重い動作で本を手にし、談話室を出るべくに背を向けた。
「そんな落ち込むなよ、セブルス。司書の先生に頼んで取り寄せてもらったらどうだ?」
「・・・・・あぁ。そうする」
友人のアドバイスに生返事を返し、セブルスは部屋を後にした。
セブルスの今の心を映しているかのように、部屋の扉が重い音を立てて閉じた。
はベッドの上に胡坐をかき、今しがた友人が出て行った扉に視線を送る。
部屋に静寂が満ちる。
はそのままごろりと後ろに倒れた。
スプリングが効いてベッドが軋みをあげた。
「あー・・・・くそ」
片手を顔に、閉じた青の目を更に隠す。
不意にはもう片方の手をズボンのポケットへ忍ばせた。
指先に何かがあたり、かさりと乾いた音を立てる。
それを掌におさめ、丸められたそれをさらにギュッと握りつぶす。
クシャクシャになったそれの角が皮膚に当たってちょっと痛いと感じた。
「嘘つくのも・・・・・楽じゃねぇなぁ」
手のひらにあたる微かな紙の感触など忘れてしまうくらいの激痛を胸に感じ、はベッ
ドの上で小さくうずくまった。
図書室に着くなり、セブルスは司書の先生に例の本をもう一冊取り寄せて欲しいと頼んだ。
だが返ってきた答えはセブルスの心を更なる闇へと突き落とした。
「この本はもう絶版になっているのよ。取り寄せはできないわ」
目の前が灰色に染まる。
マグルの白黒ビデオの世界に立ったみたいだと思った。
その場に座り込みたい。
でもそんな子どもみたいなことしてもどうにもならない。
セブルスの心と頭が葛藤する。
それでもセブルスは鎖につなげられたような重い足取りで本棚に歩み寄り、再び呪いの書
を読み漁り始めた。
(立ち止まってなんか・・・いられない)
通り過ぎる生徒がセブルスから漂う異様に張り詰めた空気に彼をよけていく。
だがそんなこと全く気にせず、セブルスはただひたすら本を読み漁った。
朝食の前。
昼休み。
授業の合間の中休み。
夕食後。
就寝ぎりぎり前まで。
そんなことを無意識に数日続けて。
気が付くとまた土曜の朝になっていた。
ランプがついたままの机に太陽の光が注ぎ込む。
「・・・・・朝か」
茫洋とする頭を軽く振る。
寝不足からいつもならずきずきと痛む頭が、今は不思議なほどすっきりしている。
狂った自分だけを残して、世界が正常に動いている。
そんな気がした。
意識せずとも足は洗面台の方に進み、顔を洗い、歯を磨き、服を整え、赤い列車に乗るべ
く荷物をまとめる。
寝不足で働かないはずの頭は、ただただセブルスの本能のままに行動していた。
に会いたい
乾いた空気を揺らすように木の弾かれる音が聞こえてきた。
「・・・椿ちゃん。入ってもいい?」
ノックする音に次いで聞こえてきた可愛らしい声。
控えめな、どこかおどおどした子どものような声にはドアの向こうの人物に検討をつ
け、静かに了承の言葉を送った。
「どぉぞ。入っておいで、桜ちゃん」
「・・・うん」
控えめな声と共に扉が開き、そこに立っていたのはやはりの予想通りの人物。
揺れる金色の髪にと同じ青い眼を持つ少女。
桜の花名を持つ少女。
「どうかしたの?桜ちゃん」
いつも元気な桜の花が、今日は妙にしぼんでいる。
は優しく問いかけ、自分が座っているベッドに桜を座らせた。
少し待っていると、桜はポツリポツリと話し出す。
「・・・うん。椿ちゃん、もうすぐ身請けされちゃうでしょ?だから、話がしたいなぁと
思って」
桜の言葉にの胸がギシリと軋む。
忘れることなど許されないが、それでも忘れようとしていたことが蘇ってくる。
わかってはいるが他人の口から告げられると再認識してしまう。
「いいよ。桜ちゃん、何かあったの?」
入ってきたときからどこか寂しそうな桜に、は優しく問いかける。
ベッドに座っても俯いたままの桜は、それでも小さな声で語り出した。
「椿ちゃんは・・・・・あの、さんのお友達とお別れするの、嫌じゃないの?」
「・・・・え?」
桜が言っているのがセブルスのことだと悟り、の胸は再び軋みを上げる。
桜の見えないところで胸を押さえるに、桜はまた問う。
「つらくない?悲しくないの?」
「・・・どうしたの?桜ちゃん。さんと何かあったの?」
の問いに、だが桜はフルフルと首を横に振る。
相変わらず顔は下を向いたまま。
「椿ちゃん」
そこでやっと桜は顔を上げ、ゆっくりとと向かい合った。
自分と同じ青い瞳は微かに揺らいでいた。
「私も椿ちゃんも、普通の女の子だよね?」
桜の言葉がの胸の奥深くに吸い込まれる。
目が合ってしまった瞬間から、なぜかはそらすことができなかった。
「普通の女の子なのに、なんで普通に人を好きになってその人と幸せになることはできな
いの?」
眉を歪ませて今にも泣きそうな桜を、はただ見つめてやることしかできないでいた。
不要に口を開けば、きっと言ってはいけない言葉が出てしまう。
“私は普通じゃない”
胸の奥に潜む“私”が何か言っている。
見つめてくる少女の青い瞳からやっとのことで目をそらす。
桜もから眼をそらし、下を向いたのが影でわかった。
は桜の金色の頭を優しく撫でた。
「桜ちゃん・・・さんのことが好きなんだね?」
誰が言わずとも、が来るときの桜の行動や表情が全てを物語っていた。
の言葉に一瞬ピクリと反応を見せるも、桜は静かに頷く。
真っ白なシーツにポタリと雫が落ちた。
「・・・好き。私・・・さんが好きなの」
震える小さな頭をは優しく撫でる。
シーツの染みはどんどん増えていった。
「さんに名前を呼ばれるときが、抱きしめられてキスされるときが・・・・・抱かれ
ているときが一番・・・好き」
掠れていく声でそれでも最後までしっかりと言い切る少女を、は本当に強い子なんだ
なぁと思った。
それでも次に出た桜の言葉は幾らかトーンが落ちていた。
「でも・・・・・いつかお別れしなくちゃいけないんだよね?」
「・・・・桜ちゃん」
はなぜ桜が自分のところへ来たのかがわかった気がした。
自分とセブルスの姿を見て、桜はと自身との未来を予想してしまったのだろう。
所詮遊女に幸せなど訪れないと。
自分の心の奥底を見ているようで、の心はますます軋んだ。
だらりとベッドの上に落ちた桜の手が、ギュッとシーツを握り締めた。
「・・・死んで生まれ変わりたい」
不意の桜の言葉にの心臓がどくりと脈打つ。
「さんの・・・一番近くにいる女の子に生まれ変わりたい」
少女の言葉に答えるように、ぽたりとシーツの上に雫が落ちた。
の桜の頭を撫でていた手が止まる。
絶望とも違う、虚無とも違う、何と言っていいかもわからない想いがの心に渦巻く。
本当なら今こうして泣いているのは自分かもしれない。
この子が自分の代わりに泣いてくれているのかもしれない。
あぁ、私はなんて身勝手な女なんだろう。
生きると彼に言ったのに、今、この少女の言葉にこんなにも揺らいでいる。
なんて弱いんだろう。
彼はあんなにも強いのに。
私にも、あんな力があるだろうか。
あんな強さがあるだろうか。
強さが。
あぁ、そうか。
そうか。
思い出した。
私にもほんの少しだけあった。
止まっていたの手が再び桜の頭を撫で始める。
凍り付いていたの周りの空気が少しずつ溶け出す。
「だめだよ?」
不意のの言葉に、桜は少しだけ顔を上げる。
青い瞳はウサギのように赤くなっていた。
「椿・・ちゃん?」
「だめだよ、桜ちゃん。ちゃんと生きなきゃ、だめ」
桜が見上げる先には、いつもと変わらぬ先輩遊女の柔らかな笑顔があった。
「さんが悲しむよ。死んじゃったら全て終わりだけど、生きてさえいれば、いつかは
会えるんだから」
まるで自分に言い聞かせるように、一つ一つ大切に言葉を紡ぐ。
流れていた桜の涙がゆっくりと引いていく。
「好きな人の傍にはいたいよ。でもね、遠くから見守る恋もあるんだよ?」
そう告げるの深蒼の瞳には、桜ではない、遠くの誰かが映っていた。
「椿ちゃん・・・」
「ね?」
笑顔を向けると、桜もぎこちなくだがやっと笑顔を見せてくれた。
久し振りに見た後輩の笑顔に、は撫でていた手で金色の髪をクシャクシャと混ぜた。
不意に窓の外に視線をやると、見慣れた黒い影が二つ。
黒い髪と金色の髪。
緑と銀のストライプ。
は口元を緩ませる。
「桜ちゃん、さんが来たよ。顔洗っておいで」
の名に桜は目を見開き、突然あたふたし出した。
「うんっ。あ。ありがとう、椿ちゃんっ」
慌ててに礼を述べて桜は部屋を飛び出した。
そんな姿も可愛いなぁとどこかの心境になりながら、は慌てて降りていく桜を見
送った。
突然静かになる部屋。
誰もいなくなった部屋に一人。
は静かに自分の鼓動に耳を傾ける。
穏やかだった鼓動が少しずつ速くなっていく。
彼と会えるのは今日を除いて後一回。
軋む胸に手を当てて、は静かに桜の言葉を思い出す。
そして落ち着いた足取りで彼を迎えに階段を駆け下りた。
当たり前のように店の玄関をくぐる。
まるで自分の故郷のように落ち着いた気持ちで敷居をまたぐ。
セブルスは気味が悪いほど落ち着いていた。
手を広げた友人の胸の中に金髪の少女が飛び込むのを静かに見守っていた。
それでもセブルスの耳に入るのはたった一つの足音。
遠くから軽い足音が近づいてくる。
奥から姿を現すや、長く会えなかった息子を迎える母のように少女はクシャクシャになっ
た笑顔でセブルスに飛びついた。
少女の体はまた痩せていた。
人はここまで痩せ細ることができるのかと驚嘆させられるほどの、細く折れそうな、小鳥
のような少女の体。
「セブルス君」
姿は変わっても、少女が自分を呼ぶ声が変わっていないことに安堵する。
繋いだ手の、変わりない低目の温度に安堵する。
「・・・・・悪い」
部屋に入るなり謝罪するセブルスにわけが分からず、は首をかしげた。
「セブルス君?」
扉の前に立ち尽くしたまま動かない彼の前に立ち、手を引っ張ってようやくベッドのある
ところまで連れて行った。
が肩を押すと、セブルスは重力に逆らうことなくすとんとベッドに腰を下ろした。
ギシリとスプリングが軋む。
「なに謝ってるの?」
セブルスの横に腰を下ろし、いつも以上に青い彼の顔を覗きこむ。
静かな部屋に、より一層静寂が流れる。
どちらとも何も言わず、はただひたすら彼が口を開くのを待った。
沈黙に耐えかねたのか、セブルスは両手で顔を覆い隠した。
「悪い・・・・」
ゆっくりと鉛のように重い口を開いた。
「何も・・・・・何も、わからなかった。の呪いを解く術が・・・何も」
静かな部屋に、ぎりりと奥歯を噛み締める音が響く。
セブルスの悔しさが、彼を触れてはいけない重い凶器のように感じさせる。
何と声をかければいいかわからず、はただじっとセブルスの両手を見つめた。
は一瞬だけ目を見開くと、フッとまた瞳を細めた。
「セブルス君。なに、その傷」
言われてセブルスはゆっくりと顔を覆っていた手の拘束を解く。
そして目の前に広げた自分の指先についた数本の線に気付く。
セブルスがそれが何かを悟るのと同時に、勘のいいも気付いたのだろう。
セブルスの手を取ると、そっと指先の線のような傷をさすった。
「どれだけページ捲ったの?普通、こんなに紙で切ったりしないよね?」
セブルスが慌ててページを捲る姿を想像し、は口端を上げて笑う。
だが柔らかな笑顔は、少しずつ悲愴を帯びていく。
「ねぇ、セブルス君」
セブルスの手をさするの姿は、この場に似つかわしくないほど神々しかった。
「私なんかのために・・・傷ついたりしないで」
愛しそうに愛しそうに、はセブルスの手を自分の頬に当てる。
冷たい彼の手が、いつも以上に心地よい。
「ありがと・・・・・ありがと、セブルス君。もう・・・十分だよ」
不意のその言葉に、セブルスの胸はぎくりと音を立てる。
の口から出た諦めのような言葉にセブルスは慌ててに顔を向けた。
「・・・?」
泣いているのかと思った。
悲しんでいるのかと思った。
こんな自分を不甲斐ないと思っているのだと思った。
でもは笑っていた。
は笑って、静かに告げた。
それは決して神の救いの言葉ではなかった。
「あと十日。私が身請けされるまで、あと十日なの。次に会うのが・・・・・・・最後に
なると思う」
突然の宣告にセブルスの目が見開かれる。
だが残酷な告辞はそれだけでは終わらなかった。
の笑顔に悲愴が混じる。
「でも、それまで私が持つかわからない。自覚してるし、抵抗もしてるけど、衰弱が激し
いの。もう、自分では止められない」
真っ直ぐ前を見ていたの瞳がゆっくりと閉じられる。
その動作があまりにも重く海の底に沈んでしまいそうで、もう開いてはくれないのではな
いかと思わせた。
再び開いたその深層の瞳には、だが輝きが満ちていた。
「でも諦めないよ。神様に背くことになったって。私は最後まで精一杯生きるよ」
セブルスに向けるこぼれんばかりの笑み。
その笑顔には見覚えがあった。
かつて一度ホグズミードを2人で歩いたとき。
彼女は丘の上からこの街を背に、最高の笑顔を見せてくれた。
自分に想いを告げてくれたときの、彼女の最高の笑顔。
セブルスはそんな少女の笑顔に眩しそうに目を細める。
「・・・」
「セブルス君・・・・・お願いがあるんだ」
真っ直ぐ自分を見つめてくるを、セブルスも眼をそらさず見つめ返す。
窓から注ぐ光が、の銀糸を一層光り輝かせる。
白い肌と銀の髪が光の中に溶け込んでしまう中、海のような青の瞳だけがはっきりとして
いた。
の心が少しずつ零れ出す。
「思い出にしたいわけじゃない」
だって思い出はいつか色褪せてしまう
「呪いの道連れにしたいわけじゃないの」
これは私のエゴだから
「ただ・・・・・セブルス君が好きだから」
何度言っても言い足りない
「今までもこれからも・・・ずっと好きだから」
それでも言わせて欲しい
「君を愛してるから」
言葉なんかじゃ私の想いは語りつくせない。それでも
「一度だけでいい」
わがままを言わせて。許して
「セブルス」
許して。神様
「私を・・・・・抱いて」
細められた深蒼の瞳に、涙は浮いていなかった。
何もかもが消えてしまいそうな儚い世界で。
絡められた指先の力と、唇に触れた温度だけがリアルだった。
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