ドリーム小説
Call
【名】呼び声、叫び;通話;召喚
【動】呼び掛ける;呼ぶ;電話する
椿姫 call 1
気になって気になってしょうがない。
それが今のセブルスの気持ち。
学校の授業意外でこんなにも夢中になれたものが、いまだかつてあっただろうか。
自分以外の人間を、こんなにも知りたいと思ったことがあっただろうか。
百花楼からの帰り道、は楽しげな顔でセブルスに尋ねた。
「なぁ、セブルス。お前の相手って誰だったんだ?」
そう言われ、思わず『』と答えそうになってしまった。
セブルスは平静を装い、一言『椿』とだけつぶやいた。
それだけなのに、の驚きはすごかった。
「マジか!?・・・お前、椿っていったらあそこの一番人気の女の子だぜ!?」
いつも予約が入っていて、普通はなかなか相手ができないらしい。
値段・・・も、他の娘の倍はあるようだ。
なんとなく、の言うことに納得してしまう。
あれだけの容姿と人を和ませる笑顔があれば、彼女につく男など山のようにいるはずだ。
やはりあそこの常連だったも、椿のために通い詰める男を何人か知っていた。
そう聞いただけで、セブルスは胸の奥にチクチクとした痛みを感じた。
わかってはいるのだ。
それが彼女の・・・の仕事なのだ。
あの声で、あの笑顔で、セブルスの知らない男の名を呼ぶのだ。
『セブルス君』
透き通るガラスのような声が耳の奥にこだまする。
あの声で名前を呼ばれ、あの手で顔に触れられ、あの唇でキスされた。
それを一つ一つ思い出すだけで、セブルスの男としての部分が疼く。
自分はおかしくなってしまったのだろうか。
自分はおかしくなってしまったのでしょうか。
今、どうしても彼に会いたくて仕方がないのです。
お客なんて来なくていい。
男のざらついた肌になんて触れたくない。
誰も私に触れないで。
ずっとそう思ってきたのに。
椿・・・・否、の心は一人の少年でいっぱいだった。
彼に会いたい。
彼に触れたい。
あの低い声で私の名前を―――本当の名を呼んで欲しい。
たった今、常連の客の相手をし終わったばかりだけど・・・・・
最中に考えていたのは、ずっと彼の事ばかり。
この男に体をまさぐられながら、無意識に彼の名を呼んでしまうのではないか。
そればかりが心配だった。
「また来るよ、椿ちゃん」
名前なんて覚えたくもない男が、脂っぽい笑顔をに向ける。
「はぁい。お待ちしてまぁす」
仕事用の笑顔を顔に貼り付かせては業務的に対応する。
男は満足気な顔で部屋を去っていく。
パタンと扉が閉まる音を聞き、は盛大に息を吐く。
それと同時に流れ込んでくる不快感。
体がだるい。
ベタベタする。
乱れたシーツに汚れた体。
感じたくなどないのに、人間の本能から体はどうしても反応してしまう。
少女の喘ぐ声で男は感じ、その欲望は少女に向く。
穢れは、洗い流されることなく蓄積される。
「・・・・・・・・・・セブルス君」
会いたい想いばかりがひたすら募る。
自分が汚い存在だから、綺麗なものに触れたくなる。
男の体液で汚れているのも忘れ、は自分の唇をそっと指でなぞった。
彼の唇の感触だけが忘れられない。
(・・・・・・会いたいよぉ・・・・・セブルスくぅん・・・)
気だるげな体をベッドの上に寝転がらせる。
少しずつ襲い掛かる眠気に素直に従おうとしたところで、ドアをノックする音が聞こえ、慌てて身を起こす。
「・・・・・大丈夫?椿ちゃん」
入ってきたのは次の客ではなく、初老の女性。
は少しだけ安堵し、彼女に笑みを向ける。
「さん。平気だよ、いつものことでしょ?」
そう言って浮かべる儚げな笑顔が、を余計に心配させることをは知らない。
はが百花楼にいる頃からの世話係だが、が笑顔以外の表情をしたことをあまり見たことがない。
初めは精神障害かとマスターもいぶかしんだが、そうではなかった。
はただたんに感情を表に出すのが下手なだけなのだ。
に一番似合う顔―――笑顔がそれらの感情を押しくるめているだけなのだ。
「椿ちゃん。とりあえず、次のお客さんまで1時間空いてるけど。何か欲しいものある?」
欲しいもの
今の私が一番欲しいもの
それはどうやっても手に入らないもの
そんなことよくわかっているのに、どうして口にしてしまったのだろう。
「セブルス・スネイプ」
彼が欲しい。
それ以外は何もいらない。
「・・・・・え?」
のつぶやきに、は少々戸惑う。
おろおろするを見て、はプッと噴き出した。
「冗談よ、さん。・・・・・・そうだなぁ・・・・メープルティーが飲みたいかな?」
カラカラと笑い、はベッドを降りてシャワー室に足を進める。
それを見てもぼぉっとしていた自分に気付く。
「あ・・・えぇ、わかったわ。メープルティーね」
は「よろしくね」と言い残し、シャワー室の扉を閉めた。
すぐに硬い床を水が叩く音が聞こえてきた。
はまた考えていた。
がを困らせるようなことを言ったのは、これが初めてだ。
子供が「おもちゃが欲しい、お菓子が欲しい」と言うのとはわけが違う。
欲しいものなど何一つ手にすることのできないが言った、初めてのわがまま。
はとりあえず彼女の希望のメープルティーを淹れる準備をした。
その次の彼女の要望をどうしようかと考えながら。
生ぬるいシャワーが体を打つ。
の真っ白な肌を透明な水が流れ落ちる。
上気した体が次第に冷めていく。
水が全てを洗い流してくれればいいのに。
だがそれは叶わぬこと。
自分の体に染み付いたものは、もう一生とれることはない。
はまた、そっと唇をなぞった。
そこに残る彼の唇の感触を思い出す。
「セブルス君」
そっと目を閉じ、彼の姿を思い出す。
黒い髪、血色のない肌、細い指、薄い唇・・・・
いけないことだとはわかっている。
それでも体の疼きが止まらない。
「・・・・ん・・・・・・・・・・・ぁ」
もう一度だけ彼の名を呼び、は自分の下腹部にそっと手を伸ばした。
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