ドリーム小説


図書館の最奥に位置するテーブルに彼はいた
腕組みをして椅子に腰掛けを待っていたセブルスの顔は非常に不機嫌そうだった

「遅い」
「う・・・ごめん。ちょっとごたごたがありまして」

は苦笑いをしながら後頭部をさする
セブルスは呆れ気味のため息をついて、手元の教科書をさっさと開いた

「時間がないんだ。早速始めるぞ」
「イ、イエッサー!よろしくお願いしまっす」

は額に左手をかざして気合いの入った敬礼をしてみせる
こうして二人の第一回目の特訓は始まったのだった



■♂□   っ ち が っ ち ! ?  □♀■   交換ですよ 3



「というわけだ。わかるか?」

二人は向かい合わせに座り、セブルスは自筆のノートをに見せながら実験手順を説明した
彼としてはできるだけわかりやすく説明したつもりだが、真向かいに座るの表情は何やら険しい・・・
理解できていないのだろうか。これ以上どう細かく解説したらいいのやらとセブルスは不安を覚えた
けれどそれは杞憂に終わる

「セブルス先生、質問があります!」

突然はぴしっと右腕を挙げた
セブルスは一瞬呆気にとられるも、すぐに冷静な表情に戻して答えた

「質問があるなら聞こう。だがその前に、そのおかしな呼び方はやめろ」
「あ、だめ?先生って感じで似合ってると思ったんだけどなぁ」
「・・・普通にしてくれ」
「わかった。じゃぁ、セブ」
「・・・」

それは幼い頃にに良く呼ばれていた愛称だった
久しぶりにその名で呼ばれて少々こそばゆかったが、先生呼ばわりよりはマシかとセブルスは諦めた

「・・・何だ」
「えっとですね」

は身を乗り出すとセブルスのノートに書かれた手順の途中を指さした

「ここなんだけどさ」

それからは疑問に感じたことをセブルスに質問した
苦々しい顔で質問を聞いていたセブルスだったが、の話が終わったときには彼の表情は驚きに変わっていた
なぜなら、が質問した部分は調合の全体像がきちんと理解できていないと気づけないことだったからだ

「まぁ・・・なんだ。なかなか良い着眼点だな」
「ホント?わ、うれし」

セブルスに褒められたことが嬉しくては表情を明るくした

「だってセブの説明ってすごくわかりやすいんだもん。だから私でも気付けたんだよ」

セブ教えるの上手だね
にっこり笑ってそう言われ、セブルスは思わずどきりとしてしまった
幼馴染みの少女の笑顔をこんな間近で見たのは本当に久しぶりだった

(こいつ・・・いつの間に・・・)

久々に間近で見た笑顔の彼女は、昔のあどけなさが薄れ、代わりに大人びた雰囲気をまとっていた
これが女の成長というやつか。怖いものだと思いながらも、美しくなっていくにセブルスは若干の戸惑いを覚える
それが顔や態度に出ないよう注意し、セブルスはわざとらしい咳を一つした

「まぁ、とにかく。残りの時間でしっかり動きを確認していけば作業が苦手な君でも大丈夫だろう」
「・・・・・」

セブルスは実践練習をするべく、ニコレッタ先生から借りてきた実験器具を机の上に並べ始めた
だがが急に静かになったことに気付き、セブルスは彼女の顔をうかがった

「おい、聞いているのか」
「・・・」
「時間がないんだ。君も並べるのを手伝え」
「君ってなによ」
「なに・・・?」
「私は『キミ』って名前じゃないわ」

つい今し方までにこにことしていた彼女の顔が、突然に不機嫌なものに変わっていた
はまるで子どものように頬を膨らませると、テーブルに両手をついて身を乗り出してきた

「私が気付かないとでも思ってた?」
「な・・・何だ突然」
「とぼけても無駄だよ。セブ、いつからか私のこと名前で呼んでくれなくなったよね。用事があるときも『おい』とか言って誤魔化してるでしょ?」
「・・・・・」(図星)
「どうして?昔はあんなに一緒に遊んだし、名前で呼んでくれていたじゃない。それなのに突然『おい、君』とか他人行儀になっちゃって。セブ、私のことちゃんと名前で呼んでよ。昔みたいに」
「おい、声が大きい」
「ほら、また!私は『おい』じゃありませんー。セブが私のことそう呼ぶなら、私だって明日からセブのこと初めて会ったときみたいに『セブルスちゃん』って呼ぶからね!」
「な・・・馬鹿、やめろ!」

目には目を、と熱くなるをセブルスは慌てながらも小声でとめた
ちらりと目をやると、司書のマダムピンスがこちらを睨んでいるのが見えた
まずい、これ以上おしゃべりしていたら追い出される
慌てたセブルスは自分から折れて彼女を落ち着かせることにした

「わ、わかった名前で呼ぶ!だから頼むから大声を出すな、っ」
「あ・・・!」
「な、なんだ・・・」
「やった。いま私のこと『』って呼んだわね!」
「・・・――っ」

たったそれだけのことなのに、彼女は嬉しそうに顔をほころばせる
一方でセブルスは彼女から顔をそらし、照れ隠しの仏頂面を浮かべていた
やったやった!と喜ぶ彼女を横目でちらりと見て、セブルスは小さなため息をついた
幼い頃は当たり前のように互いを親しい名で呼び合っていた
けれどホグワーツに入学し、別々の寮となってからはその機会もなくなっていった
久々に呼んだ彼女の名前はなんだか懐かしく、彼の胸の奥をむずがゆくさせるのだった

だって。んー、なんかすっごく懐かしい響き。昔に戻ったみたいで嬉しいなぁ」
「ゴホン・・・・・。浮かれるのはいいが、閉館まで時間がない。とりあえず今日やれるところまではやるぞ」
「はいはーい。俄然やる気が出たからね、頑張りますよ」

上機嫌のににこにこ笑顔を向けられ、セブルスはビーカーを並べながらわざとらしく顔を背けるのだった
。纏う雰囲気は少女から大人の女へと変わりつつあるが、性格は昔と変わらないままだ
そのことにホッとする自分がいたが、それを気付かれないようにセブルスは不機嫌な顔を維持し続けるのだった





  





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