ドリーム小説
不良少年こと千堂武士くんがなにわ拳闘会にやってきて早1ヶ月
意外と順応性の高かった彼は、ジムにもすっかり馴染んだ様子
巷では浪速の虎と怖れられる存在の彼が、実は意外と良い人だということがわかり
今ではジムの誰からも好かれる存在となっていた
03:ゴンタがうちにやってきた3
「柳岡はん、先ロード行っとるでぇ!」
「ちょぉ待ち、千堂!すぐ行くさかい待っとれや」
すっかりジムに居場所を作った千堂くん。今日も元気のいい彼の声が響き渡る
初めは心配していた会長さんも、彼の潜在能力の高さを知って今ではすっかり期待の新人として見ている
それは勿論私自身も同じだった
「あ。千堂くん待ってください!」
「あん?なんや」
「走る前にこれ飲んでいってください」
ジムの玄関先で足踏みして待つ彼をとめて500のペットボトルを手渡した
「なんやこれ。スポーツドリンク?」
「はい。浪速の虎スペシャルです」
「浪速の虎すぺしゃる・・・?」
「市販のものより発汗作用を促す成分を多めに入れてあります。減量の手助けになるかと」
「ほー。ワレが作ったんかい」
「はい」
もうすぐ彼はプロボクサーのライセンス取得の試験を受ける
それまでにもう少し減量が必要なのだ
自称まぁまぁ料理が得意な私は特技を生かして特製ドリンクを作ってみたのだが、果たして彼の反応は・・・
「おおきに。ありがたく飲ましてもらうわ」
「・・・!はいっ」
彼は特徴的な犬歯を見せて笑いながらお礼を言ってくれた
千堂くんが喜んでくれた。それが私は何より嬉しかった
*
初めは音を上げていた10qのロードワークも、1ヶ月も経てば千堂は軽々とこなせるようになっていた
大阪の街を抜けて川の土手沿いを走る。千堂はランニングで、ワイは自転車で併走
「はっはっ・・・、はっはっ・・・」
「そや、そのリズムや。段々えぇ感じになってきたわ」
「はっはっ・・・、そやろ・・・!ワイ飲み込み早い」
「走りながら喋んなや、息乱れるやろ!」
「ぐ・・・っ。は、話しかけてきたのそっちやないか・・・!」
「えぇから黙って走り」
「・・・っ」
以前だったらもっと言い返し、ともすれば手まで出していた彼だったが・・・
(素直に走っとる。ほんま、根っこはえぇ奴なんやな)
わずか1ヶ月で随分と棘が抜けたものだ
文句は言いつつも、言われたことは素直にやるから飲み込みも早い
走る彼の背中を見ながら、ワイはうっすらと浮かぶ笑みを隠せずにいた
「よっしゃ。この辺で一旦休憩しよか」
「はっはっ・・・。・・・ぶ、はぁぁ・・・っ」
「息整えて。いきなり止まるなや〜、ゆっくりゆっくり」
「おぅ、・・・わかっとるがな・・!」
ランニングからウォーキングへ、そしてゆっくりと足を止める彼の後ろで自分も自転車を停めた
千堂はいつの間にか土手の草っぱらに寝転がって大の字になっている
ふと見ると、千堂の額の汗がいつもの倍近くあることに気づいた
「冬場やっちゅーのに、今日はよぉ汗かいとるなぁ」
「あ?・・・あー・・・、浪速の虎スペシャルのおかげやろ」
「浪速の虎スペシャル?」
「あんさんの妹に出がけに飲まさせられたんや」
「にか。なら効くわけやな」
「・・・?どういう意味や」
千堂の疑問に、ワイはまるで自分のことのように自慢げに語った
いや、実際自慢なんやけどな
「あいつは昔っから料理が得意でな。今は高校の調理科に通っとるんや」
「調理科かいな。なら納得やわ」
「それだけやないで。今度卒業したら、大阪の調理師専門学校に通うんや」
もう推薦ももらっとるさかいな、とワイは身内のことながら鼻高々に話す
*
柳岡はんの喋りっぷりからもわかる
自分の家族を誇らしく思っとるのやろう
えぇことやとワイは思う。誇れるような家族がいることがちょい羨ましい
ふとワイの脳裏に駄菓子屋の縁側に座るばあちゃんの姿がよぎった
ワイはけしてばあちゃんにとって誇れるような孫やない・・・
柳岡はんにわからんように、ワイは小さく笑った
「はほんまにえぇ子やで。ただのバイトがジム生一人一人に愛情かけて接してくれて」
「はぁ」
「やらんでいい洗濯やら掃除やら、挙げ句には選手の減量のサポートまでしてくれんねん」
「ほぉ」
「えぇ子やろ」
「そうでんな」
「千堂」
「あん?」
それまで妹自慢しとった柳岡はんの声がそこでやたらと真剣になった
何を言われるのかと思いきや
「に手ぇ出したらしょうちせんで」
「ぶっ」
さすがのワイも意表を突かれたわ・・・
がばりと起きあがると、自転車にまたがったままハンドルにもたれている柳岡はんに食ってかかった
「誰が手なんぞ出すかい!」
「ほー。ほんまか?汗くさい男くさいジムに咲く一輪の花やぞ」
「だ、だからなんやねん」
「若くてピッチピッチで顔もそこそこ可愛くて、しかも」
しかも・・・。続きをやたらと焦らす柳岡はんにワイはやや苛つく
いや、それよりも柳岡はんの「の顔がそこそこ可愛い」という発言やけど
(柳岡はん、意外と女見る目あらへんなぁ)
ワイの中ではアイツはかなりかわえぇ部類なんやけどな・・・
話を戻そう。柳岡はんがためにためて待っとる
柳岡という娘は、若くて可愛くて、しかも・・・?
「Dカップやで」
「・・・っ!」
言うに事欠いてそれかいな
思わずつっこみそうになったが、ワイは耐えたわ
なぜって・・・胸のでっかいやつは、なんや・・・結構ワイのタイプやさかい
「どうや。これでも手出さへんなんて言えるか」
「ぐ・・・っ」
「どや、千堂」
「だ・・・、・・・出さん・・・っ」
「ほぉ」
明らかに耐えているのが見え見えやったやろうなぁ
ワイのこと、柳岡はんは含みのある細い眼で見下ろし笑うとった
その眼がまたいやらしく、ランニングとは別の汗をかきながら柳岡はんから目をそらした
「ま、しばらくはボクシング漬けで女にかまける時間もあらへんやろうがな」
言うだけ言って、「さ、そろそろ行くでぇ」と柳岡はんは自転車を漕ぎ出す
ワイも原っぱから起きあがると土手の斜面を蹴り、その後を追いかけた
「はっはっ・・・、はっはっ・・・」
「ペース落とすなや〜」
「はっはっ・・・、はっはっ・・・」
「えぇで、その調子や千堂」
「はっはっ・・・、はっはっ・・・、・・・・・・たぶん、な・・・」
「あん?」
呼吸の合間、ワイはぽつりと呟いた
それは一応さっきの会話の続きやったんやけど
前方で柳岡はんが自転車をこぎながら首だけ後ろに向け、「なんか言ったか〜?」と問いかけてくる
ワイは追いかけながら「なんでもあらへん」と笑って誤魔化した
千堂さんは胸でかちゃんが好きそうだ・・・という私の妄想です
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