ドリーム小説
彼は何も変わっていなかった
あの頃のままだ
彼はきっと今でも強さの意味を探し求めているのだろう
02:ゴンタがうちにやってきた2
「千堂武士や。よろしゅう」
翌日の夕方、彼は改めてなにわ拳闘会を訪れ入門手続きを終えた
ぺーぺーの入門生だというのにやたらと態度のでかい挨拶をする
けれど妙に彼の風貌とマッチしすぎていて兄も会長さんも咎める気にならなかった
「ワイはトレーナーの柳岡や。よろしゅうな」
まずは専属トレーナーになる兄の柳岡が挨拶をした
すると意外なことに彼は柳岡に向かってぺこりと小さくお辞儀?のような仕草をした
これには兄と私、顔を見合わせて驚いた
意外だ・・・。彼は礼儀も知らない根っからの不良だと思っていたから
彼に対するイメージが変わりそう
「そんでこっちは妹のや」
「あ、柳岡です。よろしくお願いします」
兄に紹介され、私は彼に向かってぺこりと頭を下げた
すると彼は三白眼の目を大きく見開いて驚いた
「妹・・・?娘とちゃうんか」
「へ?」
「アホ!ワイはまだ独身や」
「こないにでかい娘がいてたまるかい」と兄は彼の頭をコツンとどついた
流石はなにわ拳闘会のトレーナー・・・怖いもの知らずだ
これで彼が「何すんねん!!」とやり返してきて兄と乱闘にでもなったら・・・
ジム初日から問題勃発か!?と冷や冷やする私を尻目に、だが彼はどつかれた頭を素直にさすっていた
浪速の虎の異名を持つ彼が、なんとも可愛らしい姿を見せてくれる
私は思わずほころんでしまいそうな口元を必死に引き締めた
というわけで、浪速の虎こと千堂武士くんは改めてなにわ拳闘会の一員になったわけだが
「いででででで・・・っ!!な、なにすんねや柳岡はん!?」
「これが正しい柔軟の仕方や。しっかり覚えて毎日家でもやり!」
「はぁ!?誰がするかい!」
兄柳岡指導のもと、プロボクサーを目指すとなれば一筋縄ではいかないトレーニングが待っているわけで
「千堂、次はロードワークや!まずは10qコースからやな」
「10qって・・・殴り合いすんのにそないに走る必要あるんかい」
「殴り合いやない、ボクシングやボクシング。つべこべ言わんとさっさと着いてきぃ!」
ただの練習生とは比べものにならないほどのトレーニングが待っているわけで
「おぅ、ワレ。ここで一番強いらしいのぉ。どや、俺と勝負」
ゴツン!
「何やっとんねん、ワレは!次は腹筋背筋腕立て。ジムのもんにちょっかい出しとる暇ないで!」
「いっ・・・いちいち叩くなやっ!これ以上アホんなったらどないすんねん!?」
ボクシング初心者の彼を、兄が中心になってビシバシ鍛え上げる日々が始まるのだった
「・・・なんやねん、この包帯の山。ワイどこも怪我してへんで」
「包帯やない、バンデージや。グローブつける前に両手に巻くんや」
「ほー、んなことするんかい。面倒くさいのぉ」
「巻き方はに教われや。んで三日で覚えぇ」
「三日って・・・、そんなんワイの頭で無理に決まってるやないか。それより、なんで女のこいつに教わらなあかんねん」
「なんや、文句の多い奴やなぁ。ボクシングに関してはの方がワレの何倍も先輩やで」
「は・・・?」
兄の言葉に驚き目を丸くする千堂くん
彼はぐるっと向きを変えて私の顔を見据えると、驚いた顔のまま訊いてきた
「ワレもボクシングやっとるんかい?」
「ま、まぁ・・・少しだけ」
私の答えに彼は「意外すぎるわ・・・」と素直に感想を述べる
「強いんか?」
「え。い、いえ全然」
「どんくらいやっとるんや」
「えと・・・3、4年くらいかな?」
「ほんまかいな・・・。ごっつぅ先輩やんけ」
彼がなんだかやたらと感心してくれるものだから、私は後ろ手に両手を組み照れ笑いを浮かべるのだった
こうして浪速の虎こと千堂武士くんは改めてなにわ拳闘会の一員になったわけだが
覚えなければならないことは山積みで、体を使ったり頭を使ったりと
その日を境になにわの拳闘会の賑やかさは今までの1.5倍増しになったのだった
なんだかんだ文句言いながらも徐々に柳岡兄妹色に染まっていく千堂です
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