ドリーム小説
千堂くんに腕を引っ張られて半ば無理矢理連れてこられたお化け屋敷
せめてカートとかに乗って自動で進むタイプのものであってほしいという私の願いは
入り口で係員に懐中電灯を手渡され、自分の足で歩くタイプのお化け屋敷だと申告され無惨に散っていった
入る前から心臓がどっくんどっくん激しく脈打っている
果たして自分の心臓が出口まで持つか・・・今は泣きたいくらい自信がなかった
21:ドッキドキの初デート4
入り口の黒カーテンをくぐりぬけた瞬間、そこから先は真っ暗闇と化した
千堂くんが懐中電灯を持って前を行き、私が彼の後ろを行く
怖いくらい静かな時間が数秒続いた
絶対何か出てくる・・・・・・、絶対何か出てくる・・・・・・
恐怖が全身を駆けめぐり、どっくんどっくんだった心音はばっくんばっくんに変わっていた
そして次の瞬間、歩いていた暗い通路の両側の壁から無数の手が飛び出してきて、そこで私の正常な意識は途切れた
ここから先のことはよく覚えていない
ということで、ここからの語りは千堂くんに託します・・・
「ぬぉ!?なんやねん、・・・驚かすなや!」
いきなし両側の壁から手が仰山出てきよった
どれもこれも血だらけでワイらに向かっておいでおいでしよって、ごっつ気色悪いわ
何か出てくるような気配はあんねんけど、突然出てきよるからかなわんわ
「おー・・・なんや、わかっとってもびっくりするなぁ」
無数の手においでおいでされながら思わずぼそりと呟く
別に誰に話しかけたわけやあらへんけど、から「そうですね」ぐらいの返事が返ってくるかと思うとった
けど、後ろにいるはずのアイツからは何の反応もない
ちゅーか、・・・ホンマに後ろにいるんやろな?
「おい。、ついてきとるか?」
入り口くぐってまだ数メートルやで
これでもうおらんかったらホラーやで、ホラー
お化け屋敷で神隠しってシャレにならんやろ
けど、声かけても返事も何も返ってきぃへんから本気で心配になった
一応確認のため、歩きながら後ろを振り返ろうとして・・・ワイの足はそこでいきなし止まった
「・・・?」
止まったっちゅーより、正確に言うと足が進まなくなりよった
なんやねん。まさか・・・金縛りかいな
(って、ありえへんやろ・・・)
自分の考えがアホらしゅぅて、ちぃとばかし呆れながらワイは振り返った
前に進まん理由はすぐにわかった
「?」
「・・・っ」
「ワレ、・・・何しとんねん」
「・・・っ」
原因はや。アイツがワイの背中をしっかり掴んで足止めしとった
どないしたんやろか
様子を見ようとしても、背中を掴まれ取ってワイは首しか回せへん
声かけてものやつ何も答えへんし、俯いたままじっと動きもせん
なんなんやろかと思うとったけど、しばらくしてワイはピンと来た
「なんや、ワレ」
「・・・っ」
「もしかしてこういうの駄目やったか」
「・・・――っ」
ワイの問いに、アイツ無言で激しく頷いてみせた
なんや、そうやったんか。そら悪いことしたわ
・・・と、思うたのは最初だけで
なんやろな・・・。必死にワイの背中にすがりついて震えとるアイツ見とったら、なんか意地悪心がうずうずしてしもうてな
つい、やってもうたんや
「情けないのぉ。こんなん怖くなんてあらへんやろ」
「・・・っ」
「ほれ。克服せぇ!」
「・・・っ?・・・・・・――っ!?」
気付いたらアイツのこと背中から引っぺがして、ずずいとワイの前に押し出しとった
「ほれ!」とアイツの背中押して一歩前に歩かせた瞬間
おさまって静かになっとった両側の壁の手どもが、なんともタイミング良く再びババッ!!っと表れよったで
「・・・・・・――――っ!?!!!?」
のやつ、言葉にならへん悲鳴あげて硬直してしもうた
(あー・・・。あかん、逆効果やったか)
荒療治過ぎたかもしれん、とワイもちぃとばかし反省した
のやつカッチンカッチンに固まってもうて、この後どないしよ思うたときやった
アイツいきなしくるっと右回れしてワイの方向いたかと思うたら、・・・勢いよく抱きついてきよった
「は・・・!?ちょっ・・・、な、なんやねん!?」
これには流石のワイも動揺したわ
まぁアイツ完全に動転しとったみたいやけど
せやけどこないな真っ暗闇でいきなし女に抱きつかれたらワイも慌てるわ
しかも、それがよく知るやつやったら余計や
「おい・・・、ちょ・・・落ち着けや!一回離れぇって」
「・・・!?――っ、・・・!!?」
「だぁ・・・――っ、・・・ワレ胸あたっとるがなっ!」
「・・・――〜〜・・・っ!?」
ワイの必死の叫びもまったく耳に届いてへんみたいやわ
のやつ、スタジャンの胸んとこに顔押しつけて、ワイの背中にがっちり両腕まわしてしがみついとって引き離すこともできん
や、引き離そうと思えばできるんやけど、なんやそれも可哀相ちゅーか
まぁ・・・なんや・・・もったいないっちゅーか
けどこのまま立ち往生しとっても埒明かへん
(どないしよ・・・)
次の客がまだ来てへんからえぇけど、誰か入ってきよったらワイらめっちゃイチャついとるように見られるやんけ
ちゅーことで、まずは自分を落ち着かせて、それからを宥めることにした
「・・・あー・・・。その、なぁ・・・平気か?」
「・・・――っ」
できるだけ静かに声かけてやったら、は首をぶんぶん横に振って否定しよった
まぁそうやろうな・・・ワイに抱きついてきたりしとる時点で普通のとちゃうんやからな
「なぁ、でも進まんとあかんさかい・・・前見て歩けへん?」
「・・・――っ」
これにも首横振りで拒否されてもうた
歩けへんか・・・。やっぱさっきワイが無理矢理前に進めたのかあかんかったかな
ちょっと反省やわ
「・・・」
「・・・っ」
「・・・しゃぁないな」
ワイはひとつため息ついて、アイツの頭をぽんぽんと叩いた
それからぎゅっとしがみついたままの両腕を引き剥がすと、あいつの左手とって手繋いでやった
ジムで手当てしてもろうたり、見たり触れたりすることはよぉあったけど
こうして手ぇ繋ぐんは初めてで、正直その手の細さと小ささにびっくりしたわ
「・・・―っ」
手ぇ握った瞬間、アイツが反応したのがわかった
「・・・っ」
「ん?手ぇ繋ぐん嫌か」
「・・・―っ」
声かけたら、アイツはまた首を横に振った
嫌やないんやな。ならえぇわ
俯いとって表情はよぉわからんけど、アイツの緊張が少しだけ緩くなったのがわかった
「目ぇつむっとって構わへんよ。このまま引っ張ってったるさかい。音だけ我慢しぃ」
「・・・―」
それまでずっと横に振っとった首を、ようやく縦に振りよった
ワイもようやくホッとして口元が緩む
「よっしゃ。行くで」
入り口から数メートル
だいぶ時間かかりよったけど、ようやくワイらのお化け屋敷はスタートを切った
半泣きのお姫さんの手ぇとって、ワイはちぃとばかしヒーロー気分で暗闇に進んでいった
ヒロインの台詞が「・・・っ」しかなくてすみません・・・
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