ドリーム小説
東京に行ったときからずっと気になっていたことがある
今がそれを確かめる絶好のチャンスなんだと思う
14:道頓堀ヤキモキセレナーデ3
「千堂くんは生まれも育ちも大阪ですか」
「せや。生粋の大阪人やで。昔っからの地元民や」
「じゃ、この辺り詳しいんですね」
「おぅ。道頓堀周辺やったらどこでも案内できるで」
千堂くんは橋の欄干に片腕で頬杖ついて、私の方を見てニカッと笑う
一方で私は彼が発した言葉の中から「道頓堀」というキーワードに敏感に反応していた
千堂くんと道頓堀の関連性について(大学のレポートのタイトル風)
今がチャンス、と私は思いきって訊いてみることにした
「あの・・・、訊いてもいいですか?」
「あん?なんやねん」
「千堂くんって・・・・・・・・・、夜の道頓堀とかお好きなんですか?」
「・・・はぁ?」
自分でもおかしな質問だと覚悟はしていたが、案の定彼は訝しげな顔で聞き返してきた
「夜の道頓堀ぃ?まぁ別に嫌いなやいで。けど、そんなん訊いてどないすんねや、ワレ」
「あ、・・・えっと・・・その・・・」
改めて聞き返されるとちょっと・・・いやだいぶ恥ずかしい
加えて、これから訊こうとしている本題のことを考えるともっと恥ずかしかった
けれどチャンスは今しかない!恥は後でかこう
私は欄干の上に乗せた両手をぎゅっと握りしめた
「あの・・・、この間鴨川ジムで、千堂くん鷹さんに言ってたから」
「この間・・・?鷹村さんに・・・?ワイ何か言うたか」
「はい・・・、その・・・」
千堂くんは自分の発言を覚えていないらしい
隣で頬杖ついたまま思い出そうとしている
私はあのそのを繰り返しながらも、時間をかけてなんとかあのときのことを言葉におこして伝えた
「その・・・千堂くん自分で・・・・・・え、えっちなとこ得意分野だって・・・っ」
最後の方はだんだん声が小さくなっていってしまったが、そこは勘弁してもらいたい・・・
これでもかなり勇気を振り絞って訊いてみました
思い出されるのは、鴨川ジムを去る間際のこと
千堂くんが鷹さんにこそこそ耳打ちしていたのが私には聞こえてしまったのだ
『ホンマ世話になりましたわ。大阪来ることあったら声かけてください。道頓堀案内しますよって』
『・・・エッチなとこか?』
『得意分野ですわ』
あのときの、にししと犬歯を覗かせて笑っていた千堂くんの顔をよく覚えている
それから、木村さんが「早く乗ってくださいよ」と声をかけるまでの数分間、鷹さんの好みの女性について千堂くんが詳しく訊いていたことも
千堂くんはそれでようやく思い出したらしい
「あー。あんときのことかい」
合点がいったとばかりに千堂くんは明るい声で答える
女の私にそんな話を聞かれていたと知られても、全然ギクリとした感じもない
かといって開き直っているわけでもなさそう・・・と思っていたら
「おぉ。エロいとこ得意やで」
「・・・」
満面の笑みではっきりと宣言されてしまった
がーん・・・
なんだかよくわからないが、私はボフッと顔を赤くしながらもショックを受けていた
「そう・・・なんですか」
「ま、ワイも男やさかいな。・・・ん?なんや、ワレ。なんかがっかりしてへん?」
「いえ・・・。ただちょっと意外だったというか」
「意外か?」
「・・・はい。千堂くんってもっとこう、なんていうか・・・『女になんて興味あるかい!どつき合いやどつき合い!』って感じかと思っていたので」
「おぅ、よぅわかっとるやないか。間違うてないで。一番好きなんは、強い奴とのどつき合いや」
私が勝手に持っていた「硬派な千堂くん」のイメージ通り、彼はメキリと音が鳴りそうなほど拳を握りしめる
眉をつり上げてニッと笑う顔がすごくかっこいいと思う
そんな私のイメージ通りの千堂くんは、けれど次の質問であっさり型をぶち破ってくれるのだった
「あの・・・ちなみに二番目に好きなのは?」
「そりゃ別嬪のおネェちゃんやな」
「・・・さいですか」
即答だった
別嬪のおネェちゃんを口にするときの千堂くんの楽しそうな顔ったらない
確か鷹さんも木村さんも青木さんもそんな感じだった気がする
私はまだほんのりと赤いほっぺたをぴたぴたと叩きながら、道頓堀川に向かってはぁとため息をこぼした
「・・・男の人ってみんなそうなんですかね」
「あー?まぁ、大概そうやろ。世の中におネェちゃん嫌いな男なんぞおらんと思うけどなぁ」
「・・・」
独り言のつもりで言ったら答えが返ってきた
私は彼にわからないように小さく唇を尖らせる
別に男の人が美人のおネェさん好きなことに偏見はない
ただ、千堂くんが「おネェちゃん、おネェちゃん」と楽しそうに言っているのを聞くと・・・
ただ、千堂くんが夜の道頓堀の美人のおネェさんがいるお店で遊んでいるのを想像すると・・・
胸がもやっとして、なんだか自分が不機嫌になるのだ
そして不機嫌になった私は、彼の言葉をなんとか否定しようと無意味にあがく
「・・・いっちゃんは違いましたよ」
自分が知っている男の人の中で、世の中の男性像(ごめんなさい悪い意味でです)にあてはまらなさそうな人の名を挙げてみた
いっちゃんとは私の知り合いで一つ年下の男の子だ
私が東京に住んでいたとき家が隣同士で、何をするにも一緒だった
私が聞いたことのない男の子の名前を挙げると、千堂くんの眉毛が片方だけぴくりと上がった
「あ・・・?誰や、いっちゃんって」
「・・・幼馴染みです」
「はーん・・・」
何がはーんなのかわからないが、千堂くんの声からするに別に興味もなさそうだ
と、思っていたら
「そいつ、金○ついとらんのと違うか」
「・・・――っ!?な、な、・・・なに言ってるんですか・・・っ。も・・・、信じられない・・・!千堂くんのアホ!え、えっち・・・っ」
「かかかっ!おう、ワイはドアホでスケベやで〜」
完全にからかわれている・・・
再び真っ赤になって怒る私を見て、千堂くんはおかしそうに笑い転げる
もう知らない!
私は頬を膨らませて彼から顔をそらした
「お。またその顔かいな」
「・・・」
「やめときやめとき。せっかくの可愛ぇ顔がブッサイクになるで」
「・・・・・・」
可愛いと言われたことに思わず頬が緩みそうになってしまった
私はグッとこらえて、「・・・ほっといてください」と強がってみせる
まったくもう・・・。私はまだふて腐れたまま、ふと手首につけた腕時計を裏返した
もうそろそろ休憩も終わりだ
千堂くんに声をかけようと、フグみたいなほっぺたを元に戻した
「あの、そろそろ時間」
「今度の新人王戦」
「え・・・、あ、はい?」
私から声をかけたのに、千堂くんに話の流れを持って行かれてしまった
今度の新人王戦?それがどうしたのだろう
その続きを待っていると、千堂くんは私の方を向いてニッと笑った
「新人王。絶対にワイが獲るさかい、そしたら会長はんに頼んでパァーッとやってもらう」
「パァーッと・・・?あ、祝勝会ですね。いいですね、優勝ですもんね、ちょっと豪華に」
「二次会、道頓堀に行くさかい、お前も来ぃや。」
「二次会は道頓堀で。はい、じゃ会長さんに言っておきます・・・・・・って!わ、私もですかっ?」
自分で確認作業しておいて自分でびっくりしてしまった
一瞬よくわからなかった
二次会は道頓堀?私も行く?
話の流れからして、千堂くんが言う二次会の場所は・・・つまりそういうお店ということだろう
「道頓堀がどんなとこか案内したるわ」
「え・・・、や・・・っ。け、結構ですよ!私・・・、男の人たちが行くお店になんてっ」
美人のおネェさんとイチャイチャするようなお店に女の私が行ってどうするのだろう
千堂くんは一体何を考えているのか
さっきまで真っ赤な顔をしていた私は、今度は半ば顔を青くして両手を振って拒否した
そうしたら千堂くんに呆れ口調で怒られた
「アホ。ワレがどんな想像しとるか知らんけどな、どこもかしこもスケベな店ばっかやあらへんで」
「へ・・・・・・?そ・・・そうなんですか?」
私は眼をパチクリさせて千堂くんを見つめる
てっきりそういうお店しかないと思っていた
というかまだ半信半疑なのだけれど
「ワレ、ぜんっぜん世の中わかっとらんみたいやからな。社会勉強や」
「社会勉強・・・」
「おぅ。楽しみにしとき!」
そう言って千堂くんは両腕を組んで仁王立ちしてみせる
美人のおネェちゃんがいるお店に行くのが社会勉強だとは思えないけれど・・・
ただ一つだけ、自分に都合良く考えていいのなら
彼の口から祝勝会に誘ってもらえた・・・それだけは嬉しくて、楽しみでならない自分がいた
私の中で、千堂さんはオープンスケベというどうでもいい設定があります
浪速の虎なので。ガツガツしていてほしい
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