ドリーム小説
※ユーリの愛猫ピョーチャが語り部です。勝手にオス設定にしています。名前以外はすべて捏造です。
ボクの名前はピョーチャ。
正しくはピューマ・タイガー・スコルピオン。
でも長いからピョーチャ。
ユーリ・プリセツキーがボクの飼い主。
でもいつからかそこにもう一人飼い主が増えた。
それがこの人。
「ピョーチャ、ご飯よ」
ナァン。
ひと鳴きして彼女の元へ駆けていき足にすり寄る。
ボクにご飯をくれる、この人が後から増えたもう一人の飼い主。
・プリセツキー。
ユーリのいとこのおねえさん。
ここサンクトペテルブルクで一人暮らしするユーリを心配して一緒に住んでくれている。
ユーリは「心配しすぎなんだよ、姉ちゃんは」ってちょっと煙たそうなこと言っていたけど。
でも本当は彼女と一緒に暮らせることを喜んでいるの、ボクは知っている。
ユーリはのことが大好きだ。
ボクも大好き。
毎日おいしいご飯をくれるし、毛並を整えてくれるし、おもちゃで遊んでもくれる。
一時期ボクはユーリと一緒にリリアっていう人の家に住むことになってと離ればなれになったんだけど、そのときはちょっと寂しかった。
でもそれも1年も経たずにまた一緒に暮らせるようになったけどね。
今からボクが話すのはそんな大好きな彼女の話。
主にユーリの応援にバルセロナっていうところに行ってそこから帰ってきてからの彼女の話。
ボクの主人のユーリはフィギュアスケートっていう人間の遊びでなかなかすごい成績を出す人なんだ。
その大きな大会に出ることになって、ユーリももリリアもみんな出かけちゃうからボクはロシアのペットホテルでお留守番していた。
大会が終わるとだけみんなより先に帰ってきてホテルにいるボクを迎えに来てくれた。
ユーリたちが帰国するまで元の家でと過ごすことになりいっぱい遊んでもらおうってウキウキしていたんだけど。
「ピョーチャ、あのね」
久しぶりに会ったはちょっと様子がおかしかった。
ぼうっとどこかを眺めてため息をつく回数が多い。
どうもね、気になる人ができたらしいんだ。
バルセロナで知り合ったんだって。
ユーリの友達なんだって。
ボクを抱きしめながら彼女は「困ったわ……思い出すだけで胸が苦しくなるなんて」って言ってまたため息をつく。
ナァン。
、大丈夫?
熱でもあるの?顔が赤いよ。
彼女の頬をひと舐めして心配だよって鳴いたら、彼女は胸がいっぱいって感じの顔でボクの知らない人の名前を呟いた。
オタベック・アルティン。
それが彼女の気になる人の名前。
今からボクが語るのは、そのオタベックっていう人に恋煩うの話。
猫のボクに人間の恋愛はよくわからないけど、彼を想うの姿は傍から見ていてもすごくキュートだったっていう、そんな話。
ピョーチャは語る。 @
■2017 春
ずっとリリアのところにいたユーリとボクは約10か月ぶりに元の家に帰ってきた。
またと3人(2人と1匹)で一緒に暮らせるんだと思うと嬉しくて勝手に尻尾が揺れちゃう。
リリアの大きすぎるぐらい大きいおうちも悪くはないけど、やっぱり住み慣れたユーリの家の方が落ち着く。
「ユーリ、ピョーチャ。おかえりなさい」
「姉ちゃん、ただいま」
ナァン。
におかえりって言われるの、なんか新鮮だった。
だっておかえりって言うのはいつも家にいるボクの仕事だったから。
でも言われて嫌な言葉じゃないね。
迎え入れてくれる人がいるのって嬉しい。
家族って感じがする。
ユーリは戻って来て早々、日本の長谷津っていうところに遊びに行ってしまった。
ヴィクトルとカツ丼っていう人たちに会いに行くんだって。
ボクとはお留守番。
「フットワークが軽いというか、あなたのご主人様はひとつ所に落ち着かない人ね。ねぇ、ピョーチャ」
ナァン。
本当にね。
すぐボクたちのこと置いてどこかに行っちゃうんだから。
これじゃどっちが猫かわからないよ。
「ピョーチャ。お掃除するからソファーに座っていて」
ナァン。
了解、。
ボク、掃除機嫌いだから向こうでおとなしく待ってる。
終わったらいっぱい遊んでね。
彼女の足の周りを一周してから指定されたソファーの上に飛び乗って丸くなる。
「いい子ね」って言ってユーリの部屋に掃除機をかけに行く彼女を見送る。
それからしばらく大きな機械の音が鳴り続け、時折部屋からユーリの洗濯物とかお菓子の空き袋だらけのゴミ箱を持った彼女が出てくるのを片目を開けて確認した。
ユーリは片付けるの苦手だからいつも部屋散らかってるんだよね。
リリアの家に住んでいたときは彼女に「部屋は常に綺麗になさい、ユーリ・プリセツキー」って怒られていたから整頓していたけど。
今はがいるからまた甘えたい放題だ。
も甘やかすからユーリは片付けないんだよ。
なんて猫のボクが言ったところで伝わらないけど。
「掃除おしまい。ピョーチャ、おまたせ。おもちゃで遊ぶ?」
ンナァ!
遊ぶ!
彼女が手にした猫じゃらしに全力で飛びかかる。
捕まえられないように前後左右に振られるそれを必死に追いかける。
楽しい!はボクが飽きるまで遊びに付き合ってくれる。
優しい、大好きだ。
猫じゃらしもボール遊びにも飽きたところでボクはソファーに座る彼女の足の上にのって寛いだ。
彼女は彼女でスマホをいじっている。
インスタグラムとかいう写真を載せる日記みたいなのを見ているんだって。
は前より頻繁にスマホでそれをチェックするようになった。
スマホの画面を見る彼女の顔はなんだか楽しそうだ。
何を見ているのかと彼女の胸の上に足をのせてスマホの下から顔を出したら「なぁに?ピョーチャも見る?」とボクの方に画面を向けてくれた。
そこに写っていたのは知らない街の風景とか青い空の写真。
氷の張ったスケート場、スケート靴、それからリンクの上を滑るひとりの人間。
ボクの知らない人間だ。
「オタベック、練習頑張っているのね」
ぴくりと耳がそば立つ。
その名前には聞き覚えがある。
そうか、この人がの気になる人なんだ。
黒い髪の毛、黒い瞳、真剣な顔はちょっと怖い。
同じ人間のオスでもユーリとは全然違うタイプだね。
そうか、はこういうタイプのオスが好きなのかぁ。
オタベック。
どんな人なのかな。
声もユーリとは違うんでしょ?
どんな喋り方するの?
猫、猫は好き?
ボクと遊んでくれそう?
いつか会えるなら会ってみたいなぁ。
だってボクが大好きなをこんなに笑顔にする人、ユーリ以外で初めてだもん。
が頻繁にオタベックのインスタグラムをチェックしてはボクにも見せてくれるから、ボクの中で彼への関心は日増しに大きくなっていった。
あるとき昼寝のベストポジションを探しに彼女の部屋にお邪魔するとテーブルの上に広げられた雑誌の中の写真が目に留まった。
そこに写っていたのは見覚えのある人間。
ンナァウ!
オタベックだ!
文字は読めないけど、写真の人間が彼だということはわかった。
キラキラした服を着てユーリみたいに氷の上を滑る写真。
よく見るとページの隅っこが小さく折れている。
がチェックした跡だ。
他のページにも写っているのかな、ちょっと見たいな。
でも猫のボクにはページをめくることはできない。
しょうがないから諦めてオタベックが載っているページの上で丸まって寝たらページがしなしなになっちゃって帰ってきたに「ピョーチャ……っ、もう」ってちょっと叱られた。
ごめんよ、。ついね。
怒らせちゃったからご機嫌を取りに足元にすり寄って行ったら彼女はボクを抱き上げて困ったような顔で笑った。
「お昼寝の場所ならたくさんあるでしょうに、よりにもよってどうしてそこを選ぶかな」
だってオタベックが載っていたからさ。
の気になる人だからボクもちょっと気になるんだよ。
伝わらないだろうけど尻尾を揺らして彼女の目をじぃっと見つめていたら「ピョーチャも彼のこと気になるの?」って笑われた。
ナァン。
伝わった!すごい、さすが。
それから彼女がオタベックの載る雑誌を読んでいるときや録画した大会のテレビ番組を観ているときはそばに寄るようにした。
オタベックを見つめているときのはとても幸せそうでそばにいるとボクまでぽかぽかした気持ちになれた。
またあるときユーリがソファーに寝転がって誰かと電話で話していたのでボクはそのお腹の上にのってごろごろしていた。
「よう、元気か?ああ、こっちは相変わらずだぜ。ヤコフとリリアがうるせーのなんのって」
誰と話しているのかな。
ユーリがこんなに楽しそうに話す姿ちょっと珍しい。
「曲?ああ、決まったぜ。今年もリリアが決めた。あ?教えねーよ。楽しみにしとけって」
けらけらと彼が笑うからお腹にのったボクも揺れる。
たしたしと前脚でユーリのお腹を叩くと電話をしながら片手間に頭を撫でられた。
ひくりと鼻がいい匂いを感知する。
「ユーラチカ?」
だ。
取り込みたての洗濯物でいっぱいの籠を持った彼女がソファーの後ろを通りかかる。
匂いのもとはお日様の光をいっぱい吸った洗濯物だ。
いいな、今すぐあの籠の中に飛び込みたい。
「あ、ごめんなさい。電話中だったのね」
ユーリの状況を把握すると声を抑えてその場を離れようと背を向ける。
そんな彼女をユーリは呼び止めるとおもむろに彼女にスマホを投げて寄こした。
受け取った彼女は画面に映し出された名前を見て驚きに目を丸くしてスマホを耳にあてる。
「もしもし、オタベック?私よ、。覚えている?……本当に?嬉しい。元気にしている?」
緊張した顔もすぐに笑顔になっては電話の相手と話し始めた。
どうやら向こうにいるのはオタベックみたいだ。
ボクはソファーの背もたれの上に上がってみたけど残念ながら声は聞こえない。
は終始にこにこして話している。
けどわりとすぐに「それじゃユーラチカに替わるわね。えぇ、また。練習頑張って。ダバイ、オタベック」と別れの言葉を告げてスマホをユーリに返してしまった。
受け取ったユーリがやけにニヤニヤしていてそれも気になったけど、足早に去っていくのことも気になってボクは彼女を追いかけて部屋に向かった。
ナァン。
?
彼女の足元にすり寄り上を見上げると彼女は真っ赤な顔をして口元を手で覆っていた。
「ピョーチャ……どうしよう」
久々に彼と話せて胸がドキドキして苦しいんだって。
嬉しいけど恥ずかしい、でもやっぱり嬉しいって赤い顔をくしゃくしゃにして笑う彼女の姿は恋する女の子って感じがして最高にキュートだった。
なんだろう、とても新鮮だ。
いつものは優しくて穏やかな笑顔を浮かべる人で、表情を崩して慌てるなんてこと滅多にないんだ。
だから人間ってすごいなって、恋をするってすごいことなんだなって思った。
誰かを好きになるだけでこんなに変わっちゃうんだね。
見ていて飽きないよ。
「ピョーチャ。オタベック、私のこと覚えていてくれたわ。忘れるはずないだろう、だって。……嬉しい、どうしよう」
ナァン。
よかったね、。
顔が真っ赤っかだよ。
目もうるうるしてるよ。
泣かないでね、。
泣かれたらボク困っちゃうよ。
猫のボクには彼女の足にすり寄り恋する彼女を精一杯応援してあげるぐらいのことしかできないけど。
どうかこの大好きなご主人様の恋が成就しますようにって願わずにはいられない。
そんな春ももう終わりかけのよく晴れた日の出来事だった。
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