ドリーム小説
PM6:40
ガラガラと社会科教員室の扉を開けて現れたのはバスケ部マネージャーの
部活終了後、先にあがった顧問のマルコに報告兼まったりしにやってきたのだった
「先生、片付け全部終わりましたよ」
「おぅ、ご苦労さん。部員は全員帰ったかい?」
「イエス、ボス。残すは自分だけです」
ゆるゆると手を額に掲げて敬礼するにマルコは「了解」と一言
上下ジャージ姿のマルコはデスクチェアにぐったりとよりかかっていた
「くぁ・・・」
「旦那。だいぶお疲れのご様子で」
「ったく・・・エースの野郎。1対1にずっと付き合わせやがって」
「まぁまぁ。それだけ必死なんですって、エースも」
エースは部活命。チームの要だ。誰よりも練習に一生懸命なのはマルコもよくわかっている
だからエースへの文句を言う彼の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる
はソファーに鞄を置くと、どさっと力を一気に抜いて腰掛けた
「せんせー、まだ仕事してくの?」
「あー・・・、少しな。明日の授業で使うプリント作ったら帰るよい」
「・・・待っててもいい?」
一日の中で二人きりでいられる貴重な時間。一分でも一秒でもいいから少しでも長く一緒にいたい
ソファーからマルコを見つめるの目には期待が満ちていて、見えない尻尾がパタパタと揺れていた
アホなぐらい素直な彼女にマルコは苦笑して指でOKサインを出してやった
途端は両手をあげて「やったー!」と喜んだ。そのときだった
ぐー、ぎゅるるる・・・
「・・・」
「・・・」
気持ちが良いくらいの快音でのお腹が鳴った。これにはさすがのアホの子の彼女もほっぺたを真っ赤にした
思わずマルコはプッと吹き出してしまう
「いい音出すねぃ」
「う・・・っ」
「正直な体だねぃ。んな腹減ったのかい」
「あー・・・、へへ。実は」
は後頭部をさすって照れ笑いしながら今日のお昼のことを話した
自分の弁当を全部ルフィにあげてしまい、いちごミルクしか飲んでいないのだと
話を聞いたマルコは「そういうことかい」と納得すると、机の一番引き出しを開けてごそごそと中を漁った
出てきたのはコンビニでよく売っている菓子パン。マルコはそれをに向かってポイッと投げた
「食っとけよい」
「へ?いいの?これ、先生のじゃ」
「あぁ。昼飯用に2つ買ったんだけどな、時間がなくて1つ残っちまったんだよい」
「うわーぉ、やたー!ありがと、先生」
遠慮なくいただきまーす、とパリッと袋を開くとはにこにこ笑顔でアーンと口を開けてかぶりつこうとして
ふと。思うところがあり口を開けたままとめた。そしてマルコの方を向くと
「先生っていつもお昼コンビニパンなの?」
ふと疑問に思ったことを率直に訊いてみた
そういえばお昼はいつもエースと食べているからマルコのお昼事情をほとんど知らない
マルコはペットボトルのスポーツドリンクを飲みながら質問に答えてくれた
「いつもってわけじゃないけどねぃ。まぁほとんどそうだな」
「ふーん、そうなんだ・・・。お弁当は?」
「誰が作るんだよい」
「え、先生が自分で」
「お前、俺の家のキッチン見たことあるだろい」
「へ?う、うん。それが・・・?」
「日頃から料理してるように見えたかよい」
「・・・あー・・・。・・・うーん・・・」
返事が濁る。正直、マルコの部屋のキッチンはあまりにも綺麗で普段使っているようには見えなかった
調味料もほとんどないし、というかキッチン器具も最低限のものしかなかった覚えがある
独身男性の家庭事情にはちょっと本気で心配になってしまった
「先生、菓子パンばっかりじゃ栄養失調で倒れるよ?」
「そんな柔な体にできてねぇよい」
心配すんない、とマルコは椅子をくるりと反転させて片手をあげる
プリント作りに入ってしまったマルコの背中を見つめながら、はまた考えていた
そして心の中で「よし」と何かを決意すると、開けたパンにはぐりと噛みついた
*
日付変わって翌日 PM12:35
昼食の時間となり人々が動き出す時間
いつもは教室でエースや時々サボと昼食をとるだったが、今日は場所を変えていた
お弁当箱を持ってホッホッと走り、やってきたのは毎度お馴染み、大好きな恋人のいるあの部屋、社会科教員室
ソファーに腰掛けて今まさに菓子パンの袋を開けようとしていたマルコだったが、その手には未開封のパン袋
彼の隣にはが座っていて、テーブルには彼女の弁当箱が広がっていた
中身は豪勢というわけではないが、色合いも栄養もきちんとバランスのとれた内容
「さぁ、どうぞ」
「・・・」
「何から食べますか?あ、嫌いなものとかありました?」
「・・・ちょっと待てよい」
いきなりやってきて、いきなり弁当広げて「はいどうぞ」ってこれは一体・・・?
訳が分からないという顔のマルコに、は箸で卵焼きを挟んでにっこりと笑う
「愛妻弁当です」
「・・・」
「あ。ひいてる」
自分から数センチ遠のいたマルコにはぷくっと頬を膨らませる
「なんですか、その態度は。せっかく可愛い彼女が彼氏のためにお弁当おすそ分けに来たっていうのに」
「可愛いは余計だよい。・・・それはともかく、これお前の弁当だろい」
「そうですよ。先生に食べてもらおうと思っていつもよりちょっと多めに作ってきました」
「・・・なんで」
「なんでって。先生がほぼ毎日菓子パン食べてるって言うから」
は至極真面目な顔で「だめですよ。バランス良く栄養とらなきゃ」とお説教のようなことを言う
いつもと立場が逆だ。マルコは手に持ったパンの袋を開けられないままため息をついた
「別にかまわねぇだろい、俺が何食ってようと」
「だめ。先生、菓子パンのカロリー甘くみてるでしょ」
「あ・・・?」
「パンは炭水化物の塊。しかも2つも食べてるなんて脂質のとりすぎ、プラス、タンパク質が足りてない」
「・・・」
マルコの目がちょっと大きくなる。が筋の通ったことを言ってていることに驚いていた
アホだアホだと思っていたが、こと家庭科のことになると本当に強い。マルコも何も言えなくなる
優勢の空気が流れ始めていたが、だが次に彼女がとった行動にはさすがに空気もとまった
「というわけで。はい、先生」
「あ?」
「あーん」
「・・・」
箸に挟んだ卵焼きを満面の笑顔でマルコに差し出す
その瞬間、カチーンと氷が固まるような音を立てて空気は凍った
まさかとは思ったが、まさかのまさかでそんなベタベタのシチュエーションに持ってくるなんて
さすがはアホの子、ここに健在だった
「・・・」(無言マルコ)
「・・・」(無言)
「・・・」(無言マルコ))
「・・・スミマセン、・・・冗談デス」
目をカッと開いたまま固まってしまったマルコに、さすがのも冒険した自分がちょっと恥ずかしくなってしまった
耳を赤くして「失礼しやした〜・・・」と照れ笑いを浮かべながらするすると箸を引っ込めようとした
だが次の瞬間、微動だにしなかったマルコの腕が伸びてきて、引っ込めようとしていたの手首を掴んだ
そして、ばくっ!と漫画みたいな音を立ててマルコは箸の先の卵焼きを一口で食べた。これには今度はがびっくり
「・・・!」
「・・・(もぐもぐ、ごくん)」
卵焼きを飲み込んだマルコはをチラッと見て、それから視線をそらして一言「うめぇ」と感想を述べた
恥ずかしい中「はい、あーん」を受け入れてくれたマルコに、のほっぺたは今度は嬉しさに赤くなっていく
「・・・わ・・・、・・・ふ、あはっ」
「・・・なに笑ってんだよい」
「ふふ・・・いえいえ〜、別にぃ」
あぁ嬉しい。くだらないことかもしれないけれど、こんな小さな幸せがたまらなく嬉しい
さて、次はどのおかずを食べてもらおうかと吟味するにマルコはふむと感心するのだった
「驚いたよい」
「え?」
「お前、本当に料理得意だったんだねぃ」
「へへ。ちょっとは見直した?」
お勉強のできない私の唯一無二の特技ですよ。はいつになく自信に満ちた笑顔でマルコに笑ってみせる
それはそれは可愛らしい笑顔で。は次のおかずを選ぶべく弁当箱に顔を戻してしまったけれど
彼氏のために一生懸命考えて弁当を作ってきてくれる彼女にマルコは愛しさが募る
「」
「ん?・・・ぅ、・・・わっ!」
マルコの大きな手のひらに頭を引き寄せられ、は彼の胸に頭を寄せて抱きしめられてしまった
「せんせ・・・?」
「ありがとな」
「ぁ・・・、・・・・・・うん」
マルコの素直な感謝の言葉が嬉しくて、は目を閉じて幸せそうに笑った
マルコの唇がこめかみに落ちて、びっくりして顔をあげたところで唇が重なった
ランチタイムのキスは、さっき彼が食べた甘い卵焼きの味がした
「あは・・・、甘い」
「なぁ、。ところで」
「ん?」
「デザートはねぇのかよい」
「へ?」
昼食に弁当と言ったらデザートまでついてくるのがおきまりだろう
マルコはぺろりと舌なめずりして、彼女の耳に髪をかけて囁く。それはおきまりの誘い文句
食後にお前を食べたい、と
囁かれた彼女の耳がほわりと赤くそまる。はにかんだ笑みの彼女からの答えはひとつ
「お弁当、全部食べてくれたらね」
満腹になったとしても大丈夫でしょう?だって言うもんね。デザートは別腹って
PM12:53。二人の甘いお昼休みは、まだまだこれからだ
教師と生徒の恋模様
13:昼食をおすそ分け
※あーん、がしたかっただけでした。マルコ先生はちょっと照れ屋です
ベタベタなことがやや苦手です(笑)
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