ドリーム小説
「任務報告。懸賞金1億と2000万ベリー、スパイス海賊団。リセロ島南南西湾岸ポイントB6に停泊中。出航は3日後。よってこの二日以内に討伐する必要性あり。海軍本部に派遣部隊を要請します」
『報告受信完了。大佐、お疲れ様です。一時ご帰還ください』
「了解です。すぐに戻ります」
小型船に備え付けの電伝虫の受話器を置き、はふぅと一息。任務報告も終え、とりあえずこれで潜入捜査は終了。操縦席に乗り移り、は船を出航させた
「さてと。それじゃ、帰りますかね」
ゆっくりと海に乗り出していく船の後部に立ち、は名残惜しげに島を振り返った。海風に長い髪とスカートの裾がなびく。徐々に遠ざかっていく島、その上空を名前も知らない鳥たちが飛んでいた。その中に、いるはずのない蒼い鳥の幻影を見てしまい、は目を細め「重症だ・・・」とぽつり呟いた
その数日後、の潜入捜査が功を奏しスパイス海賊団は討伐されお縄となった。討伐に向かったのはヒナが率いる黒檻部隊ととレイダーの部隊。リセロ島での一仕事を終え海軍本部に到着し、鉄の錠で繋がれた海賊たちがぞろぞろと船から降ろされるのをは船の上から見下ろしていた。カツンと硬いヒールの音と潮風の中に紫煙の香りを感じて振り返れば、そこには討伐の指揮を執ったヒナの姿があった
「」
「あ、ヒナさん。どうも。お疲れ様でした」
「全然。億越えにしては歯ごたえのない相手でがっかりだわ。ヒナ落胆」
「はは。さすがはヒナさん」
「お疲れなのは貴女の方じゃなくて、。潜入捜査から討伐まで本部と島を行ったり来たりで。疲労がたまっているでしょう」
「あー・・・、そうですね少し」
「貴女なんだか元気もなかったわ。まぁいつもそんなに元気いっぱいじゃないけれど、今日は特にね。心配よ、ヒナ心配」
「すみません、気を遣っていただいて」
厳しいけれど優しい先輩には緩く笑って敬礼する。同じ大佐階級だけれど上官の命令をよく聞く優等生のヒナは上からの指示も厚い。揺るぎない絶対的正義を掲げる彼女には入隊当時から憧れていたし、それは今も変わらない。何より、ずっと年下なのに同じ階級のを疎ましく思うことなく接してくれるからそれが嬉しかった
「さてと。それじゃ、後は兵士たちに任せて報告に行きましょうか」
「はい。(・・・・・・あ)」
ヒナが隣を通り過ぎたときふと煙草の香りがの鼻先を掠めた。少しバニラの混ざった女性らしい甘さのある香り。無意識に比べてしまう、彼が好む煙草の香りと
「重症だ・・・」
「何か言った?」
「いえ、何も・・・。行きましょうか」
は手を振って笑って誤魔化し、「変な子ね」と片眉をひそめるヒナの背中を追いかけた
act 21 : セールス勧誘お断り
「お前、白ひげ海賊団の一員になれよい」
「・・・・・・」
情事後、気を失ってしまったが目を覚ましたのはそれから数時間後のことだった。ぱちりと目を開けたとき、は木箱を横に並べただけのベッドの上に寝かせられていた。服は・・・どうやらマルコが着せてくれたらしい。しかし彼の足を枕にしていたためちょうど真上に彼の顔があってばっちり目が合ってしまってにやりと笑われてしまい。びっくりしたやら気恥ずかしいやらでとりあえず手の甲で両目を覆って赤くなっていく目元を隠した
目を覚ましたにマルコが「おはようさん」と挨拶してきて、「どうもです・・・」と少し手の甲をずらして目を合わせて返事して。それから「激しくしすぎたかねぃ」と笑ってからかわれて、そこでようやく自分が気絶したことを思いだして余計に恥ずかしくなって。とりあえずは上半身を起こしてぼさぼさの長い白髪を指で梳いていたら、いきなり上の台詞を言われたのだった
「え・・・?」
寝起きで頭が回らないのに、そんなこと言われたら余計に混乱してしまう。なんだかよくわからないが、そのときの自分の顔が相当マヌケだったことはマルコの「ひでぇ面だよい」という含み笑いで分かる。いやいやしかし、笑い事ではないだろう。どこの世界に海賊に入隊勧誘される海軍がいるか
「いきなりなんの冗談ですか」
「冗談で言ったつもりはねぇよい」
「尚悪いです。・・・まぁどっちにしろ答えは、」
「すんなりイエスをもらえるとは思ってねぇよい」
「・・・」
「けど、留めておいてほしいんだな」
遊びで誘ったわけじゃねぇよい、と真剣な声で言ってマルコは煙草を咥えて火をつける。天井を仰ぎ煙を吐き出し、ぷかりと浮いていく輪っかには思わず「器用ですね」なんて感想を告げる。マルコは横視線で得意げににっと笑った
「海賊への勧誘なんて、どうしてまた。私は海軍本部の軍人ですよ」
「よく知ってるよい」
「なら、なに馬鹿なことを」
「お前が。あんまりにも窮屈そうな顔で生きてるからかねぃ」
「え・・・」
窮屈そう・・・。マルコの言葉が思いのほかの鼓膜を震わせた。そんなふうに自分は見えるのだろうか。本部の将校たちには「へらへらしている」、「やる気が感じられない」と軍人として緩すぎる姿を蔑まれているのに。マルコはの本質を見抜こうとする。それがなんだか少し恐ろしかった
「何がお前をそんなに苦しめてんのかねぃ」
「別に私は苦しんでなんかいませんよ」
「嘘言うなよい。海軍の人間が海軍らしいと言われて困った顔するくせに」
「・・・(鋭いなぁ・・・)」
「さてな。原因は意外と身近にあるもんだよい。原因は海軍元帥か。同じ将校の奴らか。海軍の掟か」
の心を探ろうとするマルコには「あたらないと思いますよ」と薄く笑う。だって自身にだってはっきりとわからないのだから、他人のマルコにわかるわけが・・・、
「はたまた海軍本部のすべてか」
「・・・」
わかるわけが、ない・・・。そんなことありはしないのだ。マルコの言葉に動揺してしまうなんてこと、ありはしないのだ。ならば何故彼の言葉に私は沈黙するのだろう。マルコは短くなった煙草を床に落として足でもみ消し、「あたったかよい」と不敵に笑う
どうして彼にはわかるのだろう。私が姿形の分からない何かに苦しめられていることにどうして気付いてくれるのだろう。あぁだめだ・・・これ以上踏み込まれたらきっと彼に持って行かれてしまう。意識を・・・、心を・・・。だから開き掛けた心を両手で押さえて閉じこめるのだ。再び閉じこめられた心の奥底で本当の自分が啜り泣いているのに、私は両手で耳を塞いで聞こえないふりをするのだ
「海軍にいることに迷いがあるんじゃねぇのかよい」
「・・・」
「なぁ、」
「仮にそうだとしても、海賊のあなたには関係のないことですよ。マルコさん」
二度寝たぐらいで私のすべてを知った気にならないでください。は珍しく語気を強める。そうやって彼女が何かを隠したことに気付きはしたが、マルコは今はそれ以上無理矢理踏み込むことはしなかった
「まぁ何にしてもだ。いずれ」
「・・・」
「いずれ、お前を苦しめてるものからお前を奪いに行ってやるよい」
にやりと笑い、マルコは片手を伸ばして彼女の頭を引き寄せる。顔を近づけ、互いの息がかかる距離でとめて掠れた小さな声で「」と名前を呼んでやれば、彼女の長い睫毛がぴくりと揺れて戸惑いがちな両目がマルコを見つめた。唇を重ねれば自然と閉じていく彼女の瞳。次、またどこかで会ったとき迷わず彼女を探し出せるように。マルコは時間を掛けて口付け、彼女に自分の煙草の残り香をうつした
※ヒナ大佐の口調が好きです。ヒナさんは優等生らしいですよ(ウィキ○ディアより)。萌です
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