ドリーム小説
マルコはポケットから煙草を一本取りだし、口にくわえて火をつけた。吐き出された紫煙がゆらゆらと天井に昇って霧散していく。(不本意だけれど、)煙草を吸うその姿はちょっとかっこいいなとは思った。煙草の匂いはそんなに好きではないけれど、マルコが吸っている銘柄の香りは嫌いではない。煙草を吸う彼の横顔をじっと眺めていれば、マルコはそれに気付き横目線でにやりと笑いかけてきた
「惚れたか」
「自意識過剰ですよ」
「言うねぃ、相変わらず」
マルコは咥え煙草でおかしそうに肩を揺らす。それから「そういえば、次会ったら俺のこと捕まえるんじゃなかったのかよい」と笑って挑発してきた。は「お望みなら」と肩をすくめて笑い、グラスを傾ける
「けど、まぁあなたを捕まえるのは少し延期ですね。今は彼らを捕まえなければなりませんから」
グラスを放し、は口元にうっすらと笑みを。今度はマルコが、咥え煙草で頬杖ついて彼女の横顔を見つめた
「捕まえるって、あの海賊団をかよい」
「そうですよ」
「この村の英雄を無慈悲にとっつかまえるって?」
海軍は冷てぇよい。半分芝居がかって嘆くように愚痴ってマルコは紫煙を吐き出す
「英雄、ですか・・・」
「そうじゃねぇのかよい。海賊とはいえ、一応はこの村を山賊から守ってくれた英雄だろ。人助けをして村人に感謝されてる。そんな奴らを、お前は捕まえに行くんだろい」
「んー・・・そう言われてしまうと」
困りますね、とは眉を下げて笑う。海軍が海賊を捕らえるのは当たり前のことだ。なのに、そんなことを言われたら捕まえにくいではないか
「わかっています。彼らがこの村の人々に感謝されるようなことをしたことは。けれど、この村でどんな善行を積んだからといって彼らが他の島やこれまでの海でやってきた悪事は消えません」
彼らは犯罪者なんですよ、とは言う。けれどそう言うときの彼女の笑みは少し寂しそうだった。はその笑顔をマルコにも向ける
「マルコさん。あなたも同じなんですよ」
「あぁ。わかってるよい」
「あなたのことも、いつか捕まえなきゃいけない」
混じり合うことは許されない者同士。生きる道が違うのだから仕方がない。そんなことは重々承知。マルコは最後の紫煙を細く長く天井に吐き出し、それからぽつりと「海軍なんだねぃ」と呟いた。改めて彼女の立場を確認するように。短くなった煙草を灰皿に押しつけ、それからふと彼女からの視線を感じてマルコは隣に視線を向けた。そして新しい煙草を一本取り出そうとしていた手がポケットの入り口で止まった
act 19 : そんな哀しそうな顔お前には似合わない
たった一言。彼女が海軍の軍人であることを証しただけなのに。「そうですよ、私は海軍本部の人間ですから」とあっけらかんと返してくると思っていれば、はほとんど無表情で沈黙を保っていた
「・・・」
「」
「・・・。・・・え、・・・あ」
「どうしたよい」
「え、・・・あー・・・いえ、どうもしませんよ」
ちょっとボォッとしてしまいました。そう言って照れ隠しのように笑う。が得意とするその誤魔化しの笑顔も、今はどうしてしまったのかというくらい作れていなくて。思わずマルコは頬杖ついていない方の手を伸ばし、彼女の頬にするりと指を這わせた。は拒むこともなく、ただされるがままになる
「マルコさん・・・?」
「今自分がどんな顔してるかわかるかい」
「顔・・・?いえ、わかりませんが」
「ひでぇ面してるよい」
マルコは彼女の鼻っ面を軽く指で弾いてやった。「いっ」と彼女は反射的に目を瞑り痛みに耐える顔をする。けれどそれもすぐにつまらなそうな顔になってしまう。のらしい笑顔が消えてしまった。さっきのたった一言で。お前は海軍なんだな、とマルコが言っただけで
「そんなに気に障るようなこと言ったかよい」
「あー・・・、いえそんなことは」
「ならなんでそんな顔になる」
「・・・どうして、でしょうかね」
は眉を下げて困ったように笑う。本音を言うと、は自分の心情にがっかりしていた。「お前は本当に海軍の人間なんだな」と言われて、胸を張って「そうですよ」と言えない自分に。それから、海軍が海軍らしいと最大の賛辞を受けて、「嬉しくない・・・」と思ってしまったことに。自分が海軍将校であることに迷いがあるのだろうか。その感情は自分ではわからないけれど十分顔に出てしまっていたらしい
「」
「はい。・・・!」
名を呼ばれて反射的に彼の方を向けば、顎に指をかけて押し上げられ唇を塞がれてしまった。不意打ちのキス。驚きにの目が丸くなる。近すぎてぼやける視界いっぱいにマルコの顔が映りこんだ
後ろで村人たちが一斉にグラスをぶつけ合う音が聞こえた。まるでみんなが二人のキスを祝福しているかのように。これはそんな幸せなキスじゃないのに。唇を放せば熱い息の中に煙草の香りを見つけた。息のかかる距離で彼と視線を合わせる
「なんですかいきなり・・・」
「そんな寂しそうな顔してるお前が悪いよい」
「そんな顔していませんよ」
「そうかい。自覚がないなんてな、重症だよい」
彼の親指がそっと彼女の下唇を押して撫でる。まるで慰めるように優しい手つきで。彼が顔を近づけてきて、の耳元でぼそりと呟く。慰めてやるから一晩付き合えよい、と。は返事をしない。頷きもしない。困ったように視線を伏せる、その目元が朱色に染まる。悔しいけれど、それだけで十分に彼への返事となっていた
※割愛してしまったネタ。マルコはリセロ島に斥候で来ていました。モビーディックのログポースの次の島がリセロなので
※act20は裏口からお入りください
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