ドリーム小説
タイミングよく現れたのは、今まさに話題となっていた薬学教授だった。
「失礼する、。すまないが、満月草のストックは・・・」
入ってきたセブルスの目に最初に映ったもの。
真っ赤な顔で瞳に涙を溜めると、そのすぐ横に立つリーマス。
いつも綺麗に片付いているの部屋が、今は本も散らばり、惨状と化している。
何を想像したのか知れないが、セブルスの鋭い視線は一瞬でリーマスに向けられた。
「ルーピン、貴様・・・に何をした!?」
目だけで射殺しそうなセブルスに、は誤解だと慌てて手を振る。
「な、なんでもないのよ、セブルス!その・・・ちょっと掃除をしていたら、目に埃が入ってしまって」
そんなすぐばれてしまうような嘘しかつけず、は「なんて自分は馬鹿なのだろう」とうなだれた。
首垂れてしまったを見て、セブルスも内心おたおたしていた。
そんな2人を見つめるリーマス。
ふむ、とペ○ちゃん(不○家)の如く舌を出す。
ニッコリと場違いな笑顔を浮かべ、リーマスはに声をかけた。
「ねぇ、。なんでセブルスがスリザリン寮監なんて面倒なことしているか知っているかい?」
「え・・・・?」
どうしてここでそんな話題が出てくるのかわからない。
唐突過ぎるリーマスの質問に、はうなだれていた顔を起こして目を丸くする。
は首を横に振った。
言われた本人のセブルスもわけがわからず、不審そうにリーマスを睨む。
2人の視線を受けながら、リーマスはにっこりと微笑むととんでもないことを言い出した。
「それはね、好みの女生徒をたぶらかすためだよ」
「・・・・・・え?」
「な、何を戯けたことを言っているっ!」
リーマスの回答に、はピキッと固まり、セブルスは眉間に皺を寄せて吼える。
予想通りの2人の反応にリーマスは内心ウキウキしながら話を続けた。
「寮監なら自分で好きな子を監督生に選べるしね。監督生の個室に入り放題、唾付け放題だからね。それに職権乱用。
教師の名で、あの暗くて人気のない防音完備の研究室に自由に生徒を呼び出せる」
「・・・・・」
「ルーピン、ふざけるのも大概にしろっ!!」
リーマスの言葉に、の瞳から色が消えていく。
傍から聞けばものすごくバレバレの嘘だが、今のには深く考える余裕はなかった。
頭の中ではグルグルとマーブル模様が描かれ続け、「そうか。セブルスはものすごい年下好みなのね」などと
いらないことまで考え始めた。
真っ白になっていくとは反対に、セブルスの方は侮辱されたことに真っ赤になり、低く重みのある声で
怒声を吐き続ける。
セブルスの声などさらりと交わし、リーマスはにんまりと黒い笑みを浮かべてとどめの言葉を口にした。
「ほら、図星を突かれて向きになっているだろう?淡白そうな顔して毎年毎年女の子をとっかえひっか」
「黙れっ!!我輩はずっと一筋だっ!!」
シーン・・・
セブルスが何か言った。
何か叫んだ。
その瞬間、喧騒にまみれていた室内は一瞬で静けさを取り戻した。
静寂がかえって耳に痛い。
グルグル回っていたの頭の中は、あろうことか今度は逆回転を始めた。
セブルスの今の発言はどういうことだろう。
セブルスは自分と同名の“”さんが好きなのだろうか。
“”さんとはどういう人なのだろう。
ずっと一筋?
そっか。セブルスは年下好みでかつ“”さんが・・・
あれ?あれあれ・・・
考えすぎによるオーバーヒートで、の頭からはシューシューと湯気が出始めていた。
グルグルと目まで回り始めたをチラリと見たリーマスは、楽しそうに瞳を細める。
「へぇ、セブルスに想い人がいたなんてねぇ。しかもと同じ名前の女性とは。驚いたなぁ。ねぇ?」
突然話をふられて、はよくわからない驚きの声をあげる。
「え・・あ・・・そ、そうね」
ただ驚いた様子の声とは裏腹に、の瞳はより一層深い闇色へと変わっていっていた。
それを見たセブルスの顔が焦りの色を帯びる。
「ち、違う!いい加減にしろ、ルーピンっ!!」
「何が違うっていうのさ」
まだなお知ったかぶりを決め込むリーマスに、セブルスの堪忍袋の緒がぷちりと切れた。
「我輩が言っているのは、そこにいる・のことだ!!」
シーン・・・・・
二度目の静寂は、さっき以上に痛かった。
の胸に嬉しさと困惑が混ざったものが渦巻いていた。
セブルスの言葉は真実なのだろうか。
リーマスの意地悪発言を回避するために、知ったよしみで自分の名を出したのでは。
ぬか喜びして後で悲しい想いをするくらいなら。
そう考え、は無理矢理笑顔を作って2人を宥めた。
「もうやめて、リーマス。セブルスも・・・そんな貴方らしくない冗談言わないで」
自虐的な嘘に傷ついたのは自分の心だった。
ズキズキと痛む胸を押さえ、は視線をあげられないでいた。
そんな彼女のもとに、彼の聞いたことのない優しげな声が降ってきた。
「冗談などではない・・・・・事実だ」
その言葉に、は潤み瞳を大きく開け、ゆっくりと顔を上げた。
自分を見下ろすセブルスと目が合った。
幾度となくそらされた黒い瞳がを見つめていた。
憂いを帯びた彼の目に見つめられ、の顔は真っ赤になる。
(上手くいったみたいだね)
自分の黒い策略が成功し、満足そうに微笑むリーマス。
少女のようなを見つめニコニコしていたリーマスは、ココアの入ったカップを手に取ると扉へと足を向けた。
「リーマス!」
の呼ぶ声に、リーマスは楽しそうに笑って手を振る。
「それじゃ、お邪魔者は退散することにするよ。後は2人で話した方がいい」
それだけを簡単に告げ、笑顔でバイバーイと去っていくリーマス。
去り際に目が合ったセブルスの顔は、リーマスに借りを作ってしまったことで酷く悔しそうだった。
パタンと扉が閉まり、三度部屋に静寂が流れる。
静まり返る小さな部屋。
最初に静寂を破ったのはセブルスの深い溜め息だった。
「やられたな。あの狼めが」
「え?」
ちっと舌打ちして毒づくセブルスにはふと視線を上げる。
だがその瞬間バチッと合ってしまった目をふいっとそらしたのはの方だった。
あからさまな態度には自分を叱咤し、セブルスはまた溜め息を漏らす。
「」
「・・・・・」
「その・・・こちらを向いてほしいのだが」
気遣わしげなセブルスの言葉に、はゆっくりとだがセブルスのほうに顔を向けてきてくれた。
正面から見つめるの瞳は、ひどく何か言いたげだった。
それがどんな言葉かわからず逡巡しているセブルスの耳に、の小さな声が聞こえてきた。
「私も、よ・・・」
蚊の鳴くような声だったが、セブルスの耳にはしっかりと届いていた。
聞き違いかと思った。
それでも再度確認するかのようには続けた。
「私も・・・ずっとあなただけだった」
の瞳は、セブルスが部屋に入ってきたとき同様波打っていた。
学生時代から変わらない瞳の美しさに、セブルスはジッとそれに魅入る。
「親に何度もお見合いをせがまれたけれど、全て断ったわ。こんな私だけれど研修時代に声をかけてくれる人も
いたの。でも、お付き合いはしたものの、それ以上にはならなかった・・・」
その言葉にセブルスは内心驚愕する。
ほどの女性ならば、引く手数多だったであろうに。
きっと大勢の男が彼女に声をかけただろうに。
その男たちのことを考えると、自然とセブルスの眉間に皺が寄った。
目の前にいる自分よりも小さな女性が酷く愛しく思えた。
微かに潤む瞳はじっとセブルスを見ていた。
「あなたが忘れられなかったの。学生時代からずっと。ホグワーツで薬草学教授として採用が決まったとき、
ここにあなたがいると聞いて・・・すごく嬉しかった」
たとえ同僚としてでも、また近くにいられる。
そこまで告げて、ようやくは小さな笑みを浮かべてくれた。
「とっくに、結婚してしまっているものだとばかり思っていたわ」
目尻に溜まった涙を細い指先で拭いながらは微笑んだ。
セブルスはバツの悪そうな顔をする。
「それはこちらの台詞だ。お前ほどの女が恋人すらおらぬなど。我輩を驚かすためか」
セブルスの言葉に、は楽しそうに笑う。
「お互い、遠回りしすぎてしまったわね」
ふふっと柔らかに笑うは昔と変わらず、本当に少女のようだった。
愛くるしさは全く色褪せない。
この笑顔を日常でも浮かべるのだから、周りの男たちが思わず立ち止まってしまっても仕方がない。
愛しすぎるのだ。
だからあまりの愛しさに、セブルスが思わず抱きしめてしまったとしても致し方ない。
「ぁ、あの・・・」
「少しだけこのままでいさせてくれ」
赤い顔のを抱きしめたまま、最後にセブルスは“”と呼んだ。
それを聞いたは少しだけ身を離すと、そっと彼を見上げた。
「って呼んでほしいわ。さっきみたいに」
その顔にもう涙も、悲しそうな色もなかった。
意地悪に天使の笑顔を浮かべる。
楽しそうな笑顔に、セブルスは焦る。
「あ、あれはだな・・・その」
さっきは冷静さを欠いて思いっきり名前を叫んでしまったが、こう落ち着いてしまうと改めて呼ぶのはいささか照れる。
まさかいつも頭の中ではそう呼んでいたとは言えない。
それでも期待に満ちた瞳を向けられ、セブルスはやや視線を外しながらぼそぼそと囁いた。
「・・・・・」
ようやく呼べたが、それまでに要した時間十数秒。
普段は全生徒から恐れられるこの教授が、今は耳を真っ赤にして自然をグルグル回している。
そんなセブルスが可愛く思えて、はにっこりと微笑む。
「いいわ。私たちこれからだもの。ゆっくりいきましょう?」
優しく微笑みながら、はセブルスの左手を両手で包み込む。
薬草をいじる小さな手は、よく手入れされていて少しも荒れていない。
愛しさに、セブルスは空いた右手でを抱き寄せた。
一度だけギュッと力を入れて抱きしめ、名残惜しげにを解放する。
見上げてくるはやっぱり笑っていた。
「お茶にしましょう。新しい葉があるの」
そう言っては楽しげにキッチンへと茶葉を取りに行った。
そんな何気ない光景すら今は輝いて見える。
これからこんな毎日が続く。
そう思い緩んでしまいそうな顔を、セブルスは必死に抑えた。
不意にキッチンからの声が聞こえてきた。
「あら?」
「どうかしたか」
声をかけると、はキッチンからひょっこり姿を現した。
その手には白いカップが。
分からないという顔のセブルスには困ったように溜め息をつく。
「私、他にカップ持っていないのよ」
「・・・?」
「リーマスに私のカップ持っていかれてしまったの。セブルス、リーマスのカップでいい?」
リーマス間違えたのかしら?、とは頬に手をあて小さく笑う。
そんな無邪気なとは裏腹に、セブルスの腹の中は黒い炎で渦巻いていた。
仲介役の手数料か?
手土産とばかりにのカップを持ち去るとは、リーマスは確信犯である。
冷静に冷静にと自分に言い聞かせつつも、今まさに恋人となった彼女の持ち物を奪われて平静でいられるほど
セブルスは恋愛に関して大人ではなかった。
きっとそのことまでリーマスは見越していたのだろう。
どこまでもやってくれる狼よ。
は自分の分のカップをどうしようか首をひねって考えていた。
そんな彼女の後ろにそっと近づく。
「」
「ん?」
振り向いたの唇に自分のそれを重ねた。
突然の行為にの体は強張ったが、その唇は想像以上に柔らかだった。
ゆっくりと唇を離すと、案の定の顔は真っ赤になっていた。
「セ・・セブルス?」
突然のセブルスの行動にの頭の中はまたグルグル回りだす。
真っ赤になって慌てるの頬に再度軽く口付けた。
「あまりルーピンを部屋に入れるな」
優しいには到底できそうにないことだが、とりあえず忠告はしておかなければとセブルスは真剣な顔で告げる。
案の定、「なぜ?」とは首をかしげる。
どこまでも可愛らしい彼女を後ろからきつく抱きしめ、の手からリーマスのカップを奪い取る。
「奴にベタベタ触らせるな。それから」
この部屋に自分以外の男の匂いがあることは耐え難い。
に自分以外の男が触れるのも我慢できない。
もう遠慮する必要もない。
セブルスはにやりと笑い、の細い肩に顎を乗せた。
ぴくりとの体が反応したことに笑みを濃くし、赤くなった耳にそっと囁いた。
「ここにはお前のと、我輩専用のカップだけを置いておけばいい」
子どもの我侭みたいなその言葉。
が笑っているだろうことは、肩の揺れが教えてくれた。
それからしばらくは何事もなく穏やかな日々が流れていた。
とセブルスの関係も良好で、日陰を好む2人は周囲にばれることもなくひっそりと愛を語り合っていたのだが。
「最近スネイプよく先生のところ行くよな?」
「目聡いわね、ロン。うん、でも確かに」
「ロンもハーマイオニーも考えすぎだよ。薬草の研究でもしてるんじゃないかな?」
いぶかしみながらも穏やかに噂していたグリフィンドールの食卓に。
「とセブルスは付き合ってるんだよー」
と、ものすごい直球爆弾を投げ込み、被害はホグワーツ全体に及びながらも、自分は楽しげにのカップで
ココアをすする防衛術教師がいたとか。
「リ、リ、リーマス!!」
「ルーピンっ!!!」
「いいじゃないか、このくらい。僕が愛のキューピッドなんだから」
←
BACK
以前書いたキリリクを修正しました
黒狼さんが、わりと好きです
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送