ドリーム小説


死の呪いを打ち破り運命のもとに結ばれた二人がいる

幸せな学園生活を送る彼らの物語が再び始まる





□ 魔女の条件U 〜The Adventure of Lovely Twins〜 <1> □





ここはロンドン郊外の一軒家。周りを草原に囲まれた小高い丘の上にぽつりと建つ家はけして大きなものではない。だが、家族4人が暮らすには十分なものだった。とはいえ、この小綺麗な家は一年のうちそのほとんどが住人不在の状態で存在していた。その理由は、この家の住人が皆主立った休暇以外を一つの場所で過ごしているからだ。この小さな家が賑やかになるのは、―――ちょうど今のような、夏休み休暇の間だけ。真夏の太陽が照りつける今日も、家の2階の子ども部屋から休暇中に戻ってきた住人たちの密談をする声が聞こえてくるのだった。


「ねぇ、パパとママがもうすぐ戻ってくるわ。急がなきゃ」
「わかっているさ。けど、・・・本気かい。
「私は本気よ。なぁに、。今更怖じ気づいているの?」
「いや、元より乗り気じゃなかったけどね」
年の頃17ぐらいの2人の男女―――というよりも少年と少女がこそこそと話をしていた。この2人、とても仲がよいが恋人同士ではない。その証拠に、2人は性別こそ違えど顔立ちはほぼ瓜二つだった。
「乗り気じゃない?あら、どうしてよ」
「だって非常識だし」
「なによ、のケチ。相変わらず堅物くんね」
「堅くて結構さ。が柔軟すぎるんだよ」
少年の名は、という。短いが滑らかな髪は銀色に光り、透き通った蒼い瞳をもつ精悍な顔立ちをした少年である。
少女の名は、という。背中の中程まである黒い髪と黒曜石のような黒い目をもつ、少々きついが美しい顔立ちをした少女である。
「それで。一体どの時代へ行く気だい」
「うーん、そうね・・・ママが17歳の時」
「はあ。それはまた面倒な・・・」
「だって、そうすればイーブンに戦えるじゃない?」
は自慢の黒髪を揺らし、にっこりと笑ってみせた。何を言っても止められそうにないなと、はため息を零す。
2人の密談が終了したちょうどそのときだった。部屋の壁に掛けられた黄色いカエルのマスコットが「ゲロゲロ・ゲロゲロ」と2回鳴いた。1階のリビングにある暖炉に2人の人物が到着した合図だ。は顔を見合わせた。
「まずいわ・・・、急がなきゃ!」
焦りながらも、の顔はとてもウキウキしていた。呆れるの耳に、帰ってきた2人の人物が荒々しい足取りで階段を昇ってくる音が聞こえた。は慌てながらも冷静に杖を振り、大きなトランクの中に2人分の旅行グッズを詰め込んだ。まるでこれから2人で旅立つかのような用意だった。





2人が部屋の中央に描かれた魔法陣の中に立ち、今まさに呪文の詠唱を終えた瞬間。解錠呪文とともに荒々しく扉を蹴破って入ってきたのは、黒いローブを纏った厳しい顔つきの男だった。2人は一斉に男の方を向き、そして怒り狂う男の顔を見て冷や汗を流す。
!何をしている!?」
「ごめんなさい、パパ。ちょっとした魔法実験のつもりだったんだけど」
しゃあしゃあと嘘をついて誤魔化そうとするを、は冷や冷やしながら見守った。だがの嘘など男にはお見通しで、男は歯を剥き出しにして2人に怒鳴った。
「馬鹿者!!早く魔法を止めろ、時空が歪んでおる!このままでは、」
「もう手遅れよ。パパ、危ないから離れててね」
魔法陣の円を描く線が天井に向かって蒼い光を伸ばす。は光の円柱の中に閉じこめられる形となった。魔法陣の外側に強い風が吹き、本やぬいぐるみなど部屋中の物が吹き飛ばされている。男は2人を囲む光のカーテンに手を伸ばした。だが触れた瞬間バチッと火花が散り、男は慌てて手を引っ込めた。
「くそ・・っ」
「無理よ、パパ。中に入っちゃったらもう誰にも止められないもの」
「お前たち、どういうつもりだ!?こんなことをして、・・・時空魔法など発動させて一体何をするつもりだ!」
「何も。別に世界征服とかするつもりじゃないから安心して。大丈夫、1ヶ月くらいしたら帰ってくるから」
は蒼い光の円の中から、バイバイと父親に手を振った。男はどうにもならない状況に苛つきを増し、そしての後ろに立つに怒りの視線を送った。
!お前がいながら何故止めなかったのだ!?」
「・・・・・」
男の怒りを受けたは俯き加減になり、わずかに眉を落とす。そのときだ。男の後を追ってきた一人の女性が部屋に足を踏み入れた。銀色の長い髪を風に吹かれ、女は目を丸くした。
「な、何をしているの、あなたたち・・・っ」
「ママ・・・」
「母さん・・・」
母と呼ばれた女性は、とても17歳の子どもがいるとは思えないほど若く美しかった。蒼い瞳を大きく開いて驚いていたが、すぐに焦りの表情に変わり光の円に向かって手を伸ばした。冷静でいたがうろたえ叫んだ。
「母さん、触っちゃだめだ!」
!!」
伸ばした指先が光のカーテンに触れる直前で、男が妻を後ろから抱きしめ引き寄せた。そのおかげで無傷に済んだことにはホッとし、それから―――母を助け、今もきつく抱きしめる父に哀しげな視線を向けた。
その様子を見ていたもまた頬を膨らませ、ひどく面白くない顔で両親を見つめていた。だが魔法陣を囲む蒼い光が輝きを増すと、そろそろ時間だと悟り、少女の顔は期待に満ちた楽しげなものに戻った。はにっこりと笑うと、2人に向かって再び手を振った。
「時間だわ。それじゃ、パパ、ママ。行ってきまーす」
!」
「心配しないで。すぐに帰ってくるから」
笑顔で手を振ると浮かない顔をする。2人を包む光は狭い室内で爆発的な閃光を放ち、円の外にいる2人の目を眩ませた。その光は数秒の間続き、しばらくしてふっと消えた。腕で視界を覆っていた男は、恐る恐る目を開けた。そして風で吹き飛ばされた物が乱雑に散らばった部屋の中、魔法陣が消え、少年と少女の姿も消えていることに呆然としたのも束の間、男は歯を食いしばり頭をがしがしと掻きむしった。
「くそ・・・っ、あいつらめが。やってくれたわ・・・」
、・・・・・・・」
消えた我が子の身を案じ、母は胸元をきつく握りしめる。そんな妻の肩を男は優しく抱き寄せた。
「いずれこの日が来ることは、・・・わかっていたはずなのに・・・」
眉間に皺を寄せ悔やむ黒髪の男―――セブルス・スネイプは、子どもたちの行動を止められなかった自分を叱咤する。そしてスネイプの腕の中に守られながら、と同じ蒼い瞳の女―――・スネイプは、遥か遠く自分たちの手の届かないところへ旅立っていった我が子を想い、祈るように強く目を閉じた。



2人の少年少女が旅立っていった先は、この時代よりも時間を過去へと遡る、18年前のホグワーツだった。
少年の名は、という。・ゴールディン・スネイプ。母譲りの銀色の髪と蒼い瞳をもつ、穏やかな少年だった。
少女の名は、という。・シルバニア・スネイプ。父譲りの黒髪と黒い瞳をもつ、美しい少女だった。
この二卵性双生児の17歳の兄妹は、愛し合うとスネイプの間に生まれた子どもたちだった。



死の呪いを打ち破り運命のもとに結ばれた二人がいる

幸せな学園生活を送る彼らのもとへ旅立った二人の子どもたち

舞台は未来から過去へ

さぁ、新しい物語が始まる





 



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