ドリーム小説
この恋に障害は多い
ぶつかりあうこともある
けれど、愛を失うことはない
だから、乗り越えていける
ずっと、二人で
トライウィザード・トーナメントの全行程が終了し、この戦いにも決着がついたのは夏休み間近のことだった。
大広間で、トーナメントの表彰式とともにホグワーツ寮杯の結果も発表され、一年に及ぶ大きな行事は幕を下ろした。
そして、ダームストラングとボーバトン両校がホグワーツを去る日がやってきた。
初めはいがみ合っていた三校も、一年という長い時間を掛けて随分と交流を深めていた。
他校同士で交友ができた者も多く、三校それぞれの生徒たちが入り交じって別れの挨拶を交わしている姿があちこちで見られた。
そしてここにも、
「またしばらくお別れですね」
は足下にトランクを置き、スネイプと向かい合った。
肩の高さで綺麗にそろった蜂蜜色の髪が、風に揺れていた。
□■□わたしとスネイプ先生の奇妙な学園生活 <24> The Last Day□■□
空飛ぶ馬車に翼を生やした馬たちが綱で繋がれ、ボーバトンの出発を今か今かと待っていた。
ホグワーツの広い玄関前では、ボーバトンの子女たちがホグワーツの生徒たちと別れの挨拶をしていた。
文通をするのか、互いの住所を記した羊皮紙の切れ端を交換している者もいる。
それらを目の端に、もまた別れの言葉をスネイプに告げた。
スネイプはもう完全に傷も癒え、以前と同じ姿での前に立っていた。
相変わらず、何が不機嫌なのか表情はむすっとしている。
「早いですね、一年って。あっという間でした」
「そうだな。ゆっくり過ごすこともできなかった」
「いろいろとご迷惑をおかけしました」
「本当にな。危うく死にそうにもなったしな」
「もう・・・。少しは遠慮して言葉を選んでくださってもいいではないですか」
は苦笑する。
スネイプも小さく笑った。
二人はしばらく何も言わずに見つめ合った。
別れの時間が迫っていたが、どんな話をすればいいのかわからなかった。
もう二度と会えなくなるわけではない。
だがいつも、絆を深められたかと思えば、すぐに離ればなれになってしまう。
それが哀しくて、の苦笑は少しずつ哀しい笑みに変わっていった。
それに気づかないスネイプではなかった。
「」
「はい?」
「泣くなよ」
「なんですか。泣きませんよ。もう、いつまでも子ども扱いしないでくださいってば」
「そうか。それは悪かった」
(え・・、)
は目を丸くした。
何てことはない会話だったが、いつものスネイプと何かが違った。
悪かった、だなんて。
スネイプが素直に謝るなんて。
何がスネイプを変えたのかはわからないけれど、その変化には小さく笑った。
スネイプは怪訝な顔をした。
「なんだね」
「ふふ。いえ、別に。なんでもありません」
「気味が悪いな。まぁいい。ところで、夏休みはロンドンに帰ってくるのかね」
「はい。母が寂しがっていますし。それに、私が帰らないと実家で飼っている梟が寂しさのストレスで羽が抜けて
丸坊主になってしまうので」
は場を和ませるように冗談を言って笑った。
「先生もお休み中はホグワーツを離れるのですか?」
「あぁ。ロンドンに家を借りている」
「そうですか。では、ダイアゴンでお会いすることもあるかもしれませんね」
は何気なく世間話のようにそう言ったのだが、スネイプはやや不機嫌そうに眉を寄せた。
「恋人同士なのに、そんな偶然の出会いでしか一緒にいられないのかね」
「え?あ・・・そっか。そうですよね。ごめんなさい」
スネイプが間接的に「会おう」と言ってくれているのがわかり、は嬉しく思った。
頬が緩んだが、周りに生徒もたくさんいるのだし、気を引き締め直してスネイプに程ほどに明るく振る舞った。
「ロンドンに帰る日が決まったらすぐに連絡します。日を決めて、どこかにお出かけにでも、」
「」
が小さな幸せを噛みしめて投げかけた約束の言葉は、スネイプの声で遮られた。
は視線をスネイプに向けたまま目を丸くして動きを止めた。
そして、まさか良識あるスネイプがこんなところで自分の名前を呼ぶなんて思わなかったから、誰かに聞かれてやしないかと焦った。
「先生?」
不注意で思わず呼んでしまったのだろうか。
は辺りを軽く見回し、スネイプに視線を送った。
目があった瞬間、スネイプの手がゆっくりと伸びてきて、の短くなった髪をそっと撫でた。
スネイプらしくない行為に驚きながらも、は拒むことなく大人しくそれを受け入れた。
スネイプの目は、穏やかにだけを見つめていた。
黒い瞳の奥には、彼女だけが映っていた。
もうずっと前から、彼女だけが
「一緒に暮らさないか」
その言葉に、スネイプの黒い瞳に映る彼女が目を丸くして驚いていた。
声を失い、なんと返事していいかわからないでいる彼女に、スネイプはうっすらと笑った。
「君が嫌でなければ、だが」
スネイプの言葉に、彼女はゆっくりと首を横に振った。
柔らかな蜂蜜色の髪が穏やかに揺れる。
声にならなかった。
嬉しくて。
「傍にいてくれる約束であろう」
スネイプは再び唱える。
それは彼女を縛る、幸せな呪縛の言葉。
永遠に彼女を縛る、甘い呪いの言葉。
そして、スネイプの黒い瞳の中で、彼女は静かに涙を流し、微笑むのだ。
「愛している、」
スネイプは彼女の柔らかな髪に右手を差し入れ、彼女の小さな頭を自分の胸へと引き寄せた。
彼女はたたらを踏んでスネイプの胸の中へと飛び込んでいく。
スネイプのローブの胸元を掴み、静かに涙する。
スネイプは甘い色の髪に口付け、そっと頬寄せる。
幸せな時間が流れていた。
周りで別れの言葉を交わしていた生徒たちがみな驚き一様の顔で二人に好奇の視線を送っていた。
目を丸くして信じられないという顔をするホグワーツ生の姿も、黄色い声をあげて飛び跳ねるボーバトン生の声も、
今の二人には届くことはなかった。
時は止まることなく、驚くほど早く過ぎていく。
あれから2年の月日が流れていた。
ボーバトンで実習を終えたは、再び学舎であるホグワーツに戻ってきていた。
薬草学のスプラウトが引退し、その後席にが迎え入れられた。
はボーバトンでの実績を高く買われ、若くして研究学会にも名前を轟かせる存在になっていた。
そして、がホグワーツに迎え入れられた年の冬に、彼女の姓はからスネイプへと変わることになるのだった。
夫婦で同じ学校に勤務するという、なんとも奇妙な学園生活の再開だった。
そのことを、2人はゴートンの墓前にも伝えた。
年が明けたばかりの寒い冬の日だった。
とスネイプは、ゴートンと彼の妻が眠る墓石の前に並んで立っていた。
は膝を折り、ゴートンの名が刻まれた十字架の前に蒼いバラの花束を供えた。
すると、それを見ていたかのように灰色の空からちらちらと粉雪が舞い降りてきた。
「あ、」
「奴だな」
2人は空を見上げ、同じ想いでいた。
それがゴートンの祝福であることは言うまでもない。
近くの教会から、聖歌隊の賛美歌の歌声が流れていた。
ゆっくりと立ち上がるを、スネイプは背後から抱きしめ、再び長く伸びたの柔らかな髪に顔をうずめた。
あの日、雪降る森でゴートンの死を悼んだあのときよりも深く身体を寄り添って抱き合った。
「」
「はい」
「愛している」
「なんですか、急に」
「嫌かね」
「いえ。大歓迎の言葉です」
「そうか。君は?」
「聞きたいですか?」
は笑い、彼の耳元に口寄せた。
貴方よりも愛している、と。
小さな声で愛の言葉を囁く、彼にだけ聞こえる声で告げれば、彼は満足そうに微笑む。
そして、ふたりは頬寄せ合い、天に祝福されながら唇を重ねた。
空からは、まるで白い花びらのように粉雪が降りそそいでいた。
『ずっとあなたの傍にいます』
− fin −
+++ Postscript +++
ここまでお付き合いくださった皆様に、心より感謝の言葉を贈ります。
まさかこんな長編になるとは思ってもいませんでした。
はじめは、キリリクでいただいた「ロックハート先生にストーキングされる少女をスネイプ先生が助ける」だけの
お話だったのに・・・。まさかこんなにのびるとは、また今回も作者どびっくり。
作風がどんどん『魔女の条件』に似てきてしまい、途中大変焦りましたが、たくさんの方からコメントをいただき
毎回励まされながらここまで来れました。
読んでくださった皆様に、もう一度心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
+++ Cast +++
・(It's you!)
Severus Snape
Albert Gran
Draco Malfoy
Gilderoy Lockhart
Justin Gorton
Wilhelm Ted Macmillan
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