ドリーム小説
信じない
愛してるとか
君が好きだとか
そういうこと平気で言う男の人なんて
絶対信じない
□■□わたしとスネイプ先生の奇妙な学園生活 <1>□■□
「君!!今日こそ私と愛について語り合おうではないか!」
「・・・いい加減にしてください。ロックハート先生」
振り返った少女は、半ばうんざりした表情をしていた。
ため息をつけば、肩まで伸びたハニーブラウンの癖のある髪が揺れる。
「お誘いは嬉しいのですが、何度来られても”Yes”とはお答えできません、先生」
「先生だなんて何を他人行儀な!私のことはギルデロイと呼んでくれたまえよ!」
「・・・結構です」
本日二度目のため息。
まだ何か言いたげなロックハートを残し、はきびすを返した。
だがロックハートは懲りた様子もなく彼女の後をついてくる。
ついて来られないように歩調を速くするも、残念ながら彼の方が足は長い。
すぐに追いつかれ、ずずいと前をふさがれてしまった。
仕方なく、は止まり、肩で三度目のため息をつき、ロックハートを見上げた。
「本当に困ります。一体、何なんですか?」
これだけ女性が嫌がっているというのに、なぜこの男は気づかないのだろうか。
辟易するの気持ちを知ってか知らずか、ロックハートは満面の笑顔だ。
白い歯がきらりと光る。
「これはね、好意というものですよ。つまりは、私が君を好いているということで」
「言葉の意味はわかります。ですが、理由がさっぱりわかりません」
「理由など単純明快。君があまりにも魅力的だからさ。さぁ、私の部屋でお茶でもどうだい?」
「・・・申し訳ありませんが、次の授業がありますので」
それだけ言うと、はローブと緑色のネクタイを翻し、その場を去った。
後ろから「く〜ん!!」と呼ぶ声がいつまでも聞こえたが、彼女が振り向くことはなかった。
現在この少女・は、教師ロックハートによるストーカー被害を受けていた。
はスリザリンの7年生。
頭脳明晰、容姿端麗で寮を超えて生徒たちからの人気も高い。
なぜスリザリンに選ばれたのかわからないくらい、優しく穏やかな性格をしている。
そんな彼女がロックハートのお気に入りになるのに、さほど時間はかからなかった。
が受けた彼の最初の授業は、はっきり言ってひどいものだった。
彼はハリーたちの授業でおこなったピクシー小妖精の授業を挽回しようと、再び妖精を教室で解き放ったのだ。
当たり前だが教室は錯乱状態となり、解き放ったロックハート本人にも収集がつかなくなってしまった。
そのとき迅速な対応でその場を抑えたのがだったのだ。
『ステューピファイ』
それはそれは静かな、水が流れるような詠唱だった。
彼女のたった一言で、教室を飛び回っていた全ての小妖精が一瞬にして麻痺して堕ちてきたのだ。
シーンと静まり返る教室で、彼女は自分の教科書を鞄にしまい、
「すみません。早退させてください」
静かにそう告げて、教室を出て行った。
パタンと扉が閉まり、しばらくして生徒たちの囁きがわき起こった。
(すごい!一瞬だったわね)
(さすが、さんね)
ざわめく教室の片隅で、この授業を任されていた教師は目を丸くして固まっていた。
勝手に退出していった女子生徒に怒りを覚えるのかと思いきや。
「・・す・・・・・・・・・素晴らしい」
頬は紅潮し、目の中には無数のハートが飛び交っていて。
この僅か数分で、完全に彼女の虜になってしまった教師が1名いたのだった。
その日からロックハートは執拗にを追い掛け回すようになった。
彼女が微塵も相手にしていないのなんてお構いなし。
ロックハートのファンの子は心底羨ましそうにを見るが、彼女が相手ではどうしようもない。
「君。愛する・君。今日こそは私とお茶を」
「丁重にお断りさせていただきます」
公衆の面前でよくもまぁ堂々と愛の言葉を囁けるものだと、は若干鳥肌が立った。
そのままスタスタと通り過ぎようとした。
だが今日はいつもと違った。
逃げようとする彼女の手首を、ロックハートが掴んで放さなかった。
「放してください」
「その前に答えて欲しいものだね。何故だい」
「はい?」
「この私が、これほどまでに誘っているというのに、何故一度たりとも振り向かないんだ」
それは百戦錬磨の男の自信過剰な言い分だった。
「私は君に伝えたよ。君に好意を寄せているとね。好意ある者からの誘いを君は無碍に断るのかい。どうして」
彼は、自分が誘えば女性なら誰もが”Yes”と言ってついてくると信じて疑わないのだ。
そんな身勝手な男のプライドを押しつけられ、の眉が嫌悪に歪む。
「それはあなたにも、恋愛にも、興味がないからです」
だから、きっぱりとはっきりと彼女は告げた。
確かには17歳にしては変わっていると言っていいほど冷めた女の子だった。
このくらいの年の子なら普通は恋愛に熱中するのだろうが、彼女は全面にそれを否定する。
(恋だとか愛だとか・・・・何がおもしろいんだろう)
頬にかかる癖のある髪を指に巻き付け、彼女はため息をつく。
軽々しく「好きだ」とか、「愛してる」とか言う男の人は信じられない。
キスだってセックスだって、寂しい心を繋ぎ合わせる手段でしかない。
彼女の心は、恋に対して酷く冷めていた。
「あなたに興味がないんです」と、どきっぱりと言ってやったのに。
「君!」
「・・・・・・」(もはや言葉にならない)
ロックハートの彼女への関心は、全くと言っていいほど下がることはなかった。
むしろ、手に入らない女性を我がものにせんと、以前より執拗になっている。
魔法薬学の授業を終え、地下牢を早足で進んでいたときだ。
もはや返事を返すのも億劫で、はロックハートをほとんど無視して歩き続けていた。
この追いかけっこは今年1年(もしくはロックハートが退職するまで)続くのだろうか。
そう思うだけでどっと肩が重くなった。
盛大にため息をついて目を閉じた瞬間、突然後ろから手首をきつく掴まれは急停止した。
驚きと、それから触れられる嫌悪に、抗議するべく後ろを振り向いた。
「なんですか」
「いい加減にしたまえよ」
聞き慣れた、おちゃらけた返事が返ってくるものだと思っていた。
だが自分を見つめるロックハートの顔は全く笑っていなかった。
真剣そのもので、は面食らってしまった。
「あ」
気づけば壁に背を押しつけられ、逃げ道を全て塞がれていた。
ロックハートは壁の両側に手をつき、を逃がさんとする。
「こういう形は、あまり好きではないのだがね」
「・・・やめてください。大声出しますよ」
「結構。その前に全て済むさ」
地下牢の暗さも相まって、ロックハートが獲物を狩る獣に見えて仕方なかった。
ギラギラと光る男の目に、は鳥肌が立つのを感じた。
本当に大声出してやろうと思い切り息を吸い込んだ瞬間だった。
「何をしているのかね。ミス.」
低く重みのある声が、ロックハートの向こう側から降ってきた。
突然の声に、ロックハートも弾かれたように後ろを振り返る。
その隙を逃さず、はスルリとロックハートの拘束から逃れ、スネイプの背後に回った。
自寮の教え子の不可思議な行動に、スネイプは眉間に皺寄せる。
「お・・おや。これはこれは、スネイプ先生」
ロックハートはといえば、見られてはいけない場面を目撃され、かなり焦っているようだった。
先程までの余裕はどこへ行ったのやら、額には冷や汗をかいている。
「これはまた偶然ですね。お・・・・お散歩中ですかな?」
「不審な行動をとる者がいないか、巡回中、と言えばおわかりですかな」
「・・・・・・」
じろりと蛇のような目で睨まれ、ロックハートの冷や汗が頬を伝い落ちる。
笑顔も引きつっていて、はスネイプの背中からそれを見て、笑いたいのを顔を背けてこらえた。
「そ、そうですか。巡回、ですか。それは立派な心がけですね」
「えぇ。貴方にもおすすめしたいですな」
「そ・・・・そう、ですね。私も不審な生徒の行動を取り締まるために、一肌脱ぐとしましょう」
そう言うと引きつった笑顔でくるりと向きを変え、ロックハートは「巡回、巡回!」と叫びながら遠ざかっていった。
は、遠ざかる声が聞こえなくなるのを確認して、ようやくスネイプに向き直った。
自寮の寮監に、小さくお辞儀をする。
「ありがとうございました、スネイプ先生。助かりました」
「。何があったかはわからぬが、奴を訴えることもできるが」
至極真面目に自分を心配してくれる寮監の顔をしばらく見つめ、それからはふっと苦笑した。
「余計に面倒なことになりますし、先生にご迷惑をおかけしてしまいますから」
「泣き寝入りするのかね」
「そこまで深刻な事態にはなっていません」
「精神的苦痛も、被害と言えるが」
「心配してくださりありがとうございます。でも、大丈夫です」
は肩をすくめてみせる。
それ以上は何を言っても無意味だと思い、スネイプの方が折れた。
「何かあれば、いつでも言いたまえ」
その一言だけを残し、スネイプは長いローブを翻し、地下牢の奥へと消えていった。
最後にもう一度礼を伝えたかったが、言えずに終わった「ありがとう」がの口内に留まっていた。
冷たく、何事にも無関心で、人を助けることなどないと思っていた自寮の寮監の思わぬ姿に遭遇した。
頼りにしてもいいかなと思える大人が居ることを知り、は少しだけ気持ちが楽になった気がした。
巡回など、校長に頼まれでもしなければ自分からなどしたことがない。
何を嘘などついているのだろう、とスネイプは自室のソファーに深く座り、考えていた。
ロックハートが自寮の女生徒を執拗に追いかけていることは、スネイプも知っていた。
その被害にあっている生徒のことも、よく知っていた。
まぁ6年ちょっとも在籍していれば知っているのは当たり前だが、それを抜いてもは有名人だった。
スリザリンの名に恥じぬ成績を維持し、その容姿から他寮の生徒にも人気がある。
だがが有名なのは、彼女の性格だった。
17歳にしては落ち着きすぎ、何事にも無関心で、女生徒の集団に混じって黄色い声をあげるわけでもない。
合理的で現実主義者な彼女が無邪気に笑っているところを見たことなど、ほとんどない。
「スネイプ先生。お宅の寮の・ですがね。感情が欠落しているのではないでしょうか」
1年生で入学してきて1ヶ月が経ったとき、他の教科の先生にそう言われたこともあった。
笑わないからなんなのだ。
泣かないからなんなのだ。
スネイプ自身、それほど感情を表に出すことがないので、彼女の性格を特異だとは思わなかった。
むしろ自分に似ているところがあり、割りと気に入っている生徒の一人だった。
そんな生徒が、新顔の気障で役に立たない男の教師に襲われているのを見て、無視できなかった。
というよりも、それは独占欲に似た感情だった。
(彼女から目を離せんな)
何故そう思うのかはスネイプ自身わからない。
ただ今は、自寮の生徒を害虫から守るためと自分に言い聞かせ納得させていた。
そんなことがあったわけだが。
次の日も。
その次の日も
そのまた次の日も。
そのまたまた次の日も。
「何をしておいでかな、ロックハート先生」
「お・・おっと、またお会いしましたね、スネイプ先生」
「・・・・・・」(助けてください、といううんざりした目で訴える)
ホグワーツのどこかしらで、スネイプはロックハートがに言い寄っているのを見かけては仲介に入るのだった。
これほどまでにしつこいと、言い寄られるでなくとも苛々してくる。
こんな執拗なストーキングに、はよく耐えていると褒めたいくらいだった。
「今日も巡回ですか。いやぁ、スネイプ先生はとても仕事熱心だ」
「ロックハート先生がに声をかけるのを止めて頂けると我輩の仕事が半分に減ってとても楽なのですがな」
皮肉をたっぷり含んで投げつけても、ロックハートは白い歯を見せて笑うだけで話にならなかった。
それどころか、
「それはできない相談ですね」
「ほぉ・・・。それは何故」
「何故って、それはねぇ。君との楽しいおしゃべりタイムが、今の私の最大の楽しみですからね」
「にとっては時間を無駄に消費しているだけのようですが」
「は?何かおっしゃいました?」
「いや、別に」
これ以上何を話しても無駄だと思った。
話せば話すほど苛々してくる。
スネイプは早々に退散しようと、に寮に戻るよう声をかけようと後ろを振り返った。
うんざり顔のの顔を見下ろしたスネイプは、小さなことに・・・だが深刻なことに気づいた。
「・・・・・」
「スネイプ先生?」
自分を見下ろしたまま動かないスネイプに、の方から声をかけた。
なんだろう、自分の顔に何かついているのだろうかと思った。
「」
「はい?」
「用がある。ついてきたまえ」
「え?あ、はい」
突然の命令に断る理由もなく、むしろロックハートから離れられることには軽い足取りでスネイプを追いかけた。
後に残されたロックハートは、突然を奪われたことに呆然とし、一人ぽつんとその場に立ちつくしていた。
が連れてこられたのは、なんとスネイプの自室だった。
魔法薬学を教える階の奥にある地下研究室。
まるで牢獄のような雰囲気を持つ、グリフィンドールの生徒が嫌いそうな空気を醸し出していた。
薄暗いランプが幾つも並び、部屋をオレンジ色に染め上げる。
本棚にはびっしりと本が詰まり、古い紙とインクの匂いが部屋を満たしていた。
静かで、喧噪を嫌う賢者の部屋。
冷たいのに、どこか暖かい。
の第一印象は、『嫌いじゃない』だった。
「何の御用ですか?」
革張りのソファーに深く座る寮監に、は扉の前に立ちつくしたまま声をかけた。
どんな形であれロックハートから逃げられたことにはかわりない。
何の用かは分からないが、少しぐらい大変な用でも喜んで引き受けようと心に決めていた。
だが、スネイプの返答は、
「用は、特にない」
とても短く、内容のないものだった。
スネイプへの恩返しに何でも働こうと思っていたは、拍子抜けしてしまった。
「では・・・先程のは。あの場を去るための口実ですか?」
「それもある。だが、ひとつ気になったことがあったのでな」
「何でしょうか」
「隈だ」
「はい?・・・くま?」
何のことだろう、と不思議に思っていると、スネイプが腕を上げた。
に示唆するように、スネイプは自分の指で自分の目の下を指して見せた。
つられても自分の指で目の下に触れるも、当然そこには感触で分かるものはない。
「ミス.は鏡を御覧にはならないのかね」
「化粧をする習慣がありませんので」
「髪を梳くのにも見んのかね」
「あまりまじまじとは」
「・・・そうか」
何かがっかりしたように言うと、スネイプは早口で呪文を唱えて、の目の前に鏡を出した。
突然現れ出た鏡に自分の顔が映っていて、は驚いて目を丸くする。
「あの」
「よく見てみたまえ」
は言われたとおり、鏡をのぞき込んだ。
焦点を自分の目の下に当てた瞬間、自分でも出したことがないような驚きの声を発していた。
「な・・・なにこれ?」
の両目の下には、薄墨を塗ったような隈ができていた。
「なんですか、これは・・・」
「隈だ」
「それはわかります」
「ならば何故聞く」
「いえ・・・あの。何故できたのかと思いまして」
「身体の持ち主が知らぬのに、何故我輩が知っている」
「それもそうですね」
間抜けなやり取りをして、は今一度鏡をのぞき込んだ。
くっきりと浮かぶ隈と睨めっこしていると、スネイプのため息が耳に届いた。
「君を誘うのに素晴らしく熱心な防衛術教師のせいではないのかね」
はスネイプの方を振り返った。
スネイプは長い足を優雅に組んで座っていた。
その見慣れない姿が少しだけ素敵だと思いながらも、は眉をひそめて嫌悪を露わにした。
「ロックハート先生が私の身体に影響を及ぼしているなんて、考えるだけで嫌です」
「だが事実だと思われるが」
「・・・・・」
「平気だと思いこんでいても、奴に追われることが心身にストレスを及ぼしているのは明らかであろう」
スネイプの言うとおりだった。
ロックハートのしつこい言い寄りも、もう慣れたと思っていたが、それはただの思いこみだったようだ。
実際には心がひどく疲弊していたのだった。
「どうしたらいいのでしょうか」
「関わらないようにするしかあるまい。目が合う前に逃げればよかろう」
「目が合ってしまったら」
「顔を背け、方向を変えて逃げればよかろう」
「そこまで邪険にするのは可哀想ではありませんか?」
「・・・・」
彼女の答えに、スネイプは若干だが驚いた。
ここまで心身にストレスを与える相手に対して、一応最後の優しさは残しているらしい。
本当にスリザリンの生徒なのだろうかと、疑問に感じてしまった。
だが、彼女のそんな性格も嫌いではない。
(嫌いではない・・・?我輩は何を考えているのだ)
「精神的苦痛でも訴えられるんですよね。この際、訴えてみましょうか」
「本気で言っているようには見えんが」
「はい。冗談です。・・・あぁ、でも本当にどうしよう」
こんな状態があと半年以上、ロックハートがここを辞めるまで続くなんて耐えられなかった。
何か良い手はないか、と考えていると、
「奴が声をかけにくい環境を作れば良いのであろう」
何か思いついたのか、スネイプが口元に笑みを浮かべていた。
滅多に見ない寮監の笑い顔に、はひとつ鼓動が速まったような気がした。
そしてスネイプが出した提案に、は悩むことなく二つ返事でOKを出した。
スネイプとの共同戦線というのは・・・、
「な・・・。君が・・・・ス、スネイプ先生の・・・!?」
「このたびスネイプ先生の秘書となりました、・と申します」
ガクンと顎を外して驚くロックハートに、はにっこりとわざとらしいくらいの笑顔で自己紹介した。
「スネイプ先生のスケジュール管理から授業の準備、あらゆるお手伝いを仰せつかっておりますので」
「な・・・な・・・な・・・っ」
「先生のお誘いをお受けする時間がありません。申し訳ありませんが、ご理解ください」
「そ・・・そんな・・・・」
がくりと床に崩れ落ちるロックハートの背中には、あからさまな『がっかり感』が乗っかっていた。
秘書ということは、ほぼずっとスネイプの後をついて回るということだ。
スネイプが傍にいたのでは、彼女に声をかけることはできない。
それに、ロックハートとスネイプは行動する範囲も違う。
スネイプと行動を共にする彼女とは、必然的に会う機会も少なくなるということだ。
「・・・・・」(がっかり・・・・・)
デスイーター並みの負のオーラ全開のロックハートが、少しだけ可哀想かなと思うだった。
だがここで同情してしまっては、の隈も精神疲労も一生とれない。
「」
「はい。なんでしょう、スネイプ先生」
「新たな出張が入った。スケジュールの変更を話し合わねばならん」
「はい。すぐに伺います。ではロックハート先生、失礼いたします」
にっこりと残酷な笑顔を残し、はロックハートに背を向けた。
スネイプの後ろをついて歩く彼女の背を、
「・・・・・・いいなぁ・・・」
かなり羨ましそうな顔で見つめるロックハートなのだった。
「うまくいきましたね」
「当然であろう。我輩の考えに間違いなどない」
ロックハートの「羨ましい光線」を背中に浴びながら、二人は勝者の気分を味わっていた。
スネイプ専属秘書、というのがの肩書きではあるが・・・。
だが実際には、秘書の仕事は半分ほどしか行わない。
の仕事はあくまで学生として授業を受けること。
ロックハートの目を眩ませるためにするのは、「スネイプの後をついて回ること」だけだった。
スネイプが傍にいれば、基本的にロックハートは声をかけてこない。
「先生、意外と策士なんですね」
「そういう君も、割りと楽しんでいるように見えるが」
「わかります?結構楽しいです」
スネイプの荷物を胸にかかえ、は唇を緩く上げて横にいるスネイプを見上げた。
あまり見たことのないの笑みに、スネイプは僅かに面食らう。
笑わない冷たい少女だと思っていたが、意外にも笑い顔は品があり、そして・・・
「先生、口開いていらっしゃいますよ」
「・・・・」
彼女の笑顔に見とれ、隙を見せてしまったことにスネイプは内心毒づく。
スネイプは咳払いをして彼女から視線をそらした。
と、まぁこうしてスネイプとの不思議な学園生活は始まったのだった。
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