ドリーム小説
Camellia
【名】椿、山茶花
椿姫 camellia 1
「今日も雨」
外は曇天、絶え間なく雨が降っている。
「昨日も雨」
ここのところ続くこの天気が気に入らないのか、銀髪の少女はポツリとつぶやく。
細くしなやかな指で一枚のガリオン金貨をもてあそぶ。
そんな少女の様子を見て、初老の女性がくすりと笑う。
「あらあら。椿ちゃんは雨が嫌い?」
“椿”と呼ばれた少女は軽くため息をつく。
「嫌いじゃないよぉ。・・・・・でも明日も雨ならやだなぁ・・・と思って」
初老の女性は明日が何の日か悟り、苦笑する。
少女は2度目のため息をついて、転がしていた金貨をつかむ。
「・・・・・・さん。私と賭けしようか?」
賭けの対象は『明日が晴れか雨か』。
は苦笑しながら、指でO.K.サインを作る。
「じゃ・・・・・行くよ?」
そして少女は金貨を指の上に載せ、天井高く弾いた。
少女の深い青の瞳が、クルクルと回転する金色のコインを見つめ続けた。
金髪の少年はベッドに寝そべって、指先でコインを弾いている。
部屋の中には、別の少年が本をめくるパラパラという音だけが響く。
窓からは、ここ連日降り続ける雨しか拝めない。
金髪の少年は不意にコインをもてあそぶ手を止めた。
「・・・・・・・セブルス。明日、ホグズミード行かねぇ?」
全く話に脈絡のないことに、本を読んでいたセブルスは訳が分からずに顔を上げる。
「なんだ突然。何か用でもあるのか?」
セブルスの問いに少年は答えず、ゴロゴロとベッドの上を転がる。
自分から言ってきておいて、とセブルスは少しイラついた。
「、人の話を聞け!」
セブルスのイラつきを感じとったのか、と呼ばれた少年は人懐っこい笑みを向ける。
とてもスリザリン生とは思えない可愛らしい笑顔。
「ちょっとさ、セブルスに付き合って欲しいとこあるんだよ!だから行こうぜ!」
この少年、・とは5年も同じ部屋で生活しているが、こういう破天荒なところは未だにセブルスにもわからない。
「悪いが、レポートが残っているんだ。僕は」
行けない、と断ろうとした言葉は、の一言で逆転する。
「植物関係の店なんだけど」
その単語に、セブルスの肩がピクッと反応する。
突然出てきた自分の趣味の分野のことに、俄かに興味が湧く。
「・・・・・・・薬草か?」
思わず聞いてしまった。
だがは楽しそうに笑うだけで、その詳細を言おうとしない。
「来ればわかるって。絶対セブルス興味持ってくれると思うんだぁ」
セブルスはしばし考える。
実は残っているレポートというのは薬草学で、しかもかなり煮詰まっていた。
気分転換や新発見にも、たまには外に出るのもいいかもしれない。
珍しくも、そんな考えがセブルスの頭をよぎる。
が期待に満ちた目で見ている。
「・・・・・・わかった。付き合おう」
「よっしゃっ!!絶対だぞ、セブルス!」
はこぶしを握り締める。
何がそんなに嬉しいのかわからないが、彼の目は明日が楽しみでしょうがないと言っている。
がああいう顔をしているときは、あまりいいことはない。
長い付き合いになるセブルスにはわかっていたが、どうせいつものことだと思って深く考えるのはやめた。
そしてセブルスは、深く考えるべきだったと後悔することになる。
翌日の土曜日は、昨日までの雨が嘘のようにカラッカラに晴れた。
太陽が眩しい。
ホグズミード名物、三本の箒は今日も繁盛していた。
小粋な女主人マダム・ロスメルタは片手にジョッキ3つを持って店内を歩き回っている。
セブルスともとりあえずテーブルに座り、断るセブルスを宥めてはバタービールを注文した。
「。その薬草の店というのはどこなんだ?」
時間を無駄にしたくないセブルスはさっきからずっとそればかり聞いてくる。
だがはハニーデュークスによって大量にお菓子を買ったりと、暇つぶしのようなことばかりしていた。
「まぁ、慌てるなよ。そこに行くにはこれが必要なんだよ」
はお菓子の詰まった紙袋をポンポンッと叩く。
セブルスは明らかに不審な目でと菓子を見比べる。
入店に菓子が必要な薬草店など初めて聞く。
それは本当に植物関係の店なのだろうか。
は何食わぬ顔でバタービールを飲む。
がすすめるので、セブルスも仕方なくグラスに口を付ける。
遠くでマダム・ロスメルタの威勢のいい声が聞こえる。
「いらっしゃい、!!カウンターでいい?」
ロスメルタに声をかけられた少女は笑顔で頷くと、カウンターの一番端に座った。
ジョッキを配り終えたロスメルタがカウンターに戻り、少女の相手をする。
「昨日までずっと雨だったからさ。今日はてっきり来ないかと思ったよ」
少女はグラスを受け取り、ロスメルタに何か言って、また笑う。
店内の照明を借りて、少女の長い銀色の髪が光る。
髪だけではない、その少女の容姿の美しさも、店内では異色を放っている。
ホグワーツの制服でも、一般的魔法使いの服でもないいでたちをした少女は、数人の目を引く。
彼女の服は、東洋の大きな大陸国で見ることのあるチャイナ服というもの。
膝丈の動きやすそうなその服は、横に太腿半ばまでのスリットが入っており、少女の白足がチラチラと見え隠れする。
その姿は年相応とは言えず、とても扇情的なものだ。
だが彼女自身は全く気にしていない様子で、グラスに注がれた液体を優雅に飲み干す。
少女の胸元で赤い花が微かに揺れた。
セブルスはいい加減痺れを切らした。
彼の癖で、眉間に数本の皺が寄る。
それを見てさすがのもやばいなと思った。
「・・・・・・・・・・。・・・・・・いい加減」
「オッケー、わかったわかった。じゃぁ、もうそろそろ行くとするか」
ジョッキの底に残ったわずかな液体を飲み干し、は立ち上がる。
セブルスはイライラするのを落ち着かせ、ローブを羽織った。
そこの勘定はのおごりとなり、セブルスは礼を言って2人は三本の箒を後にした。
緑と銀のストライプのタイをした2人の少年が出て行くのを、カウンターに座る少女は見ていた。
グラスを左右に揺らすと、中に残った氷がカラカラと音を立てる。
2人が出て行ってからも扉を見続ける少女に、ロスメルタはにやりと笑う。
「なんだい、?今の、好みかい?」
茶化すように言うも、少女は薄く笑っただけで、また氷をもてあそび始める。
グラスの氷が、オレンジ色の照明を受けて、淡く光る。
少女はそのオレンジ色の氷をじっと見つめる。
まるでその中に、見えない何かが見えているようだ。
「好みとかじゃなくて・・・・・・・・・また会えるような気がしただけだよ」
カラカラと氷が立てる音が響く。
三本の箒を出てから、は無言でセブルスの前を歩いていた。
ガサガサと紙袋の中身をあさる音だけがする。
しばらくしてはセブルスの方を振り返ると、包み紙を一つ投げよこした。
「それ持ってた方がいいぞ」
それはハニーデュークス店のマークの入ったチョコレートの箱。
「僕は甘いものは好きじゃない」
持っているのも嫌という顔をすると、が「違う」と言う。
「お前が食うんじゃねぇよ。これから行くとこで必要になるの!」
それだけ言うと、はどんどん足を進めた。
セブルスはわけがわからないという顔をする。
「・・・・・・・・チョコレートと薬草と・・・・一体何の関係があるんだ?」
「いいから!黙ってついて来いよ!」
は不敵な笑みを浮かべる。
その笑顔がセブルスを余計不安にさせる。
今更ながらに、騙されたかもしれないという考えが頭の中をリピートした。
そんなセブルスには関係なく、はその足をホグズミード裏路地へと向けた。
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